予想外に増加を示した7月の機械受注はそろそろ底を打つか?
本日、内閣府から7月の機械受注が公表されています。機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+6.3%増の7513億円と、まだまだ受注額は小さく低水準ながら、かなり大きな伸びを示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の機械受注、前月比6.3%増 製造・非製造ともに増加
内閣府が10日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は、前月比6.3%増の7513億円だった。増加は2カ月ぶりで、増加率は昨年11月(11.9%)以来8カ月ぶりの大きさ。QUICKがまとめた民間予測(中央値)は1.9%増だった。製造業、非製造業ともに増加した。
内閣府は基調判断を「減少している」から「減少傾向にある」に表現を変更した。
製造業の受注額は前月比5.0%増の3131億円だった。2カ月連続の増加で、17業種のうち11業種で増加した。「窯業・土石製品」で建設機械関連がけん引し62.5%増えた。「造船業」はエンジンなどが増え35.4%増加した。
非製造業は3.4%増の4430億円と、2カ月ぶりに増加した。「不動産業」(56.1%増)や「金融業・保険業」(17.0%増)がけん引した。一方、「卸売業・小売業」(17.4%減)や「通信業」(15.2%減)は受注額が減った。
受注総額は7.0%増えた。外需は建設機械やエンジンなどがけん引し13.8%増と5カ月ぶりに増加した。一方、官公需の受注額は中央政府や独立行政法人などからの受注が減り30.4%減だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は16.2%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。
まず、コア機械受注に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比+1.5%の増と報じられています。もっとも、レンジはかなり広くて▲2.6減~6.2%増、ということでした。それでも、ホンの少しだけ上限を突き抜けたプラスを記録しています。製造業と非製造業で見ると、製造業は先月6月の+5.6%増に続いて、2か月連続の増加です。非製造業は、先月6月が▲10.4%と大きく落ち込んだ後のリバウンドで、今月7月は3.4%増を記録しました。でも、6月のマイナスに比べればまだまだリバウンドが小さいと考えるべきです。コア機械受注の伸びが大きいので、統計作成官庁である内閣府では、引用した記事にもある通り、基調判断を「減少している」から「減少傾向にある」に表現を変更しています。半ノッチの上方修正といえるかもしれません。報道では見かけませんが、私が注目しているのはコア機械受注の先行指標となる外需です。3月▲1.3%減と減少に転じた後、4月は▲21.6%減と大きく落ち込み、5月も▲18.5%減、6月も▲3.9%減とマイナスが続いた後、7月になってようやく+13.8%増と、5か月ぶりに前月比での増加を示しました。ただし、7月の受注額でもまだ2月の▲10%超の減少なんですが、自動車などの生産が堅調な中国からの受注がけん引しているとの情報もあり、先行きは明るいかもしれません。特に、自動車・同部品が6月+7.8%増、7月+6.2%増となっており、我が国のリーディング産業が復活しつつある可能性が示唆されています。先日の景気動向指数を見ても、家計部門を差し置いて企業部門が先に新型インフルエンザ感染症(COVID-19)の影響から脱する可能性が見られており、その意味で、機械受注の底打ちも近い可能性があります。ただし、家計部門の回復が企業に比べて遅れているだけに、我が国景気の本格回復は先のお話で、それだけに、景気回復がかなり緩やかであるとのコンセンサスもありますから、企業業績や先行きの不透明感の払拭なども含めて、設備投資をはじめとする企業活動が本格的に回復軌道に回帰するのはかなり先になると考えるべきであり、それほど楽観はできません。
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