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2020年9月30日 (水)

早くも回復が鈍化し始めた鉱工業生産指数(IIP)と6か月連続で前年比マイナスが続く商業販売統計!!!

本日は月末日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+1.7%の増産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲1.9%減の12兆4190億円、ただし、季節調整済み指数では前月から+4.6%増を記録しています。7~8月は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染再拡大が見られましたが、生産は大きな落ち込みから徐々に回復を示す一方で、回復が早くも鈍化し始めた兆しがあり、消費の代理変数となる小売販売はCOVID-19の感染再拡大で伸び悩むという結果が出ています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産1.7%上昇、回復に鈍さ
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比1.7%上昇し88.7だった。新型コロナウイルスで停滞していた経済活動が再開し、3カ月連続でプラスとなった。経産省は基調判断を「生産は持ち直している」に上方修正したが、回復の足取りはなお鈍い。
鉱工業生産指数は7月に8%台の上昇となるなど大幅な減産から回復が進むものの、2月(99.5)や3月(95.8)の水準にはまだ届いていない。経産省の担当者は「戻りは鈍く、新型コロナ前の水準に回復するには時間がかかる」とみる。
業種別では15業種中10業種が上昇した。自動車は前月比8.9%上昇した。国内外で需要が回復し、新型車の生産開始なども貢献した。自動車部品の需要が増えたのに伴って鉄鋼・非鉄金属も6.5%上昇した。半導体メモリーなどを含む電子部品・デバイス工業は4.6%上昇した。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、9月は前月比5.7%、10月は2.9%の上昇を見込む。経産省は「ウイルス感染が再拡大する可能性もあり、引き続き注意が必要だ」としている。
在庫指数はマイナス1.4%の97.9と5カ月連続で低下した。4月まで高い水準が続いていたが、企業の生産調整が進み在庫の積み上がりは回避できているもようだ。鉄鋼・非鉄金属や化学工業で低下が進んだ。
小売販売額、8月1.9%減 6カ月連続マイナス
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比1.9%減の12兆4190億円となった。新型コロナウイルスの感染拡大により6カ月続けて前年実績を下回った。コンビニエンスストアなどが持ち直し、2.9%減だった7月よりは減少幅が縮んだ。
前年水準を6カ月連続で下回るのは、2016年10月まで前年割れが8カ月続いたとき以来の長さとなる。季節調整した指数を前月と比べると4.6%高まった。上昇は2カ月ぶり。経産省は小売販売の基調判断を「緩やかに持ち直している」に上方修正した。
業態別に前年同月比をみると、百貨店が21.3%減と7月の19.8%減より減少幅が大きくなった。コンビニは5.6%減と7月の7.9%減から持ち直した。家電大型専門店は9.5%増と4カ月連続のプラスとなった。「8月は猛暑でエアコンの売れ行きが良かった」(経産省)という。
品目別にみると、自動車が14.1%減、織物・衣服・身の回り品が17.4%減と2桁減が続いている。

ふたつの統計を取り上げていますのでやや長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+1.5%の上昇との見込みで、レンジでも▲1.0%~+4.2%でしたので、大きなサプライズはない結果となっています。また、製造工業生産予測調査による先行き見通しについては、前月比で見て、9月+5.7%、10月も+2.9%のいずれも増産の見込みと報告されていますが、バイアスを補正すると9月+2.8%増と試算されており、まずまず、緩やかながら回復が続くという結果が示されています。生産を業種別に少し詳しく見ると、我が国のリーディング・インダストリーである自動車工業が+8.9%増のほか、鉄鋼・非鉄金属工業+6.5%増、電子部品・デバイス工業+4.6%増などが増産となっており、他方で、生産用機械工業▲9.8%減、電気・情報通信機械工業▲3.7%減、パルプ・紙・紙加工品工業▲3.3%減などが減産となっています。製造工業生産予測調査による先行き見通しは、すべての業種で9月は増産が予想されていますが、特に、輸送機械工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業の3業種が上げられており、我が国経済を牽引する産業であり、付加価値も大きい産業群であることから、COVID-19による景気後退後の回復が期待されます。ただし、現在の景気局面は基本的に pent-up demand が中心であり、次に取り上げるように、消費の代理変数となる小売販売はまだまだ本格回復にはほど遠いことから、回復局面はかなり緩やかになる可能性が高いと覚悟すべきです。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定している点については、鉱工業生産指数(IIP)のグラフを同じです。生産が今年2020年5月を底に何とか上昇に転じたのとは対象的に、消費の代理変数である小売販売は一進一退の動きとなっています。統計作成官庁である経済産業省では、6月統計の小売販売の基調判断を5月の「下げ止まりがみられる」から「持ち直している」に上方修正し、7月統計では「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と小幅に下方修正し、さらに、引用した記事にもある通り、本日公表の8月統計で「緩やかに持ち直している」と小幅に上方修正を繰り返しており、これは基調判断ではなく落ち着きのない毎月判断であって、基調判断を放棄しているように見えます。いずれにせよ、生産も、もちろん、小売販売も先行きはCOVID-19次第ということで、下のグラフはYahoo!の特設サイトから国内新規感染者数の推移を引用しています。緊急事態宣言下の4月半ばと大きな違いのない数字が読み取れるかと思います。

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