リクルートジョブズによる8月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?
来週9月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる8月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。
アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していますが、他方、派遣スタッフの方は5月以降のデータが跳ねています。上のグラフの通りです。現時点で判断するのはややムリで、何があったのかは私には判りかねます。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は+2%台の伸びながら、人手不足がメディアで盛んに報じられていた昨年暮れあたりの+3%を超える伸び率から比べるとジワジワと低下してきています。三大都市圏の8月度平均時給は前年同月より+2.0%、+21円増加の1,084円を記録しています。職種別では「専門職系」(+37円、+3.2%)、「事務系」(+26円、+2.3%)、「製造・物流・清掃系」(+20円、+1.9%)、「営業系」(+31円、+2.4%)、「販売・サービス系」(+4円、+0.4%)の5職種で前年同月から増加し、「フード系」(▲12円、▲1.2%) だけは減少となっています。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から先月2020年4月統計まで10か月連続でマイナスを続けた後、5月度以降給は前年同月から大きく増加し、8月も+4.2%、68円増加の1,704円に増加しています。職種別では、「医療介護・教育系」(+62円、+4.3%)、「IT・技術系」(+74円、+3.6%)、「クリエイティブ系」(+39円、+2.2%)の3職種が前年同月比プラスとなり、マイナスは「営業・販売・サービス系」(▲8円、▲0.6%)、「オフィスワーク系」(▲27円、▲1.8%)の2職種にとどまっています。また、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。1年近く前年同月比マイナスを続けてきた派遣スタッフの時給が5月からジャンプしたのですが、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めていますし、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、COVID-19の経済的な影響は5月ころに底を打ったように見えるものの、雇用については典型的には失業率などで景気動向に遅行するケースが少なくないことから、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性がまだ残されていると覚悟すべきです。同時に、相反することながら、意外と底堅いという印象もあります。
そして、後者の底堅い印象については、本日取り上げた非正規雇用だけでなく、我が国の正規雇用も含めた雇用全般の要因として、私は以下の4点が重要と考えています。
(1) 雇用調整助成金の支給による企業内での雇用保蔵
(2) 休業者を失業とカウントしない統計制度
(3) 労働時間による調整=すなわち、労働時間の減少、ないし、よくいえば、ワークシェアリング
(4) 縁辺労働者の就業意欲の低下
順序は逆ですが、日本の場合、1980年代から(4)の要因が強いといわれていました。すなわち、中核労働者=我々のような中年男性ですね、の雇用を守りつつ、縁辺労働者、すなわち、パートの主婦とか学生アルバイトが雇用の調整弁として職を失い、景気が悪い中で就業意欲を喪失して労働市場に再参入することなく失業者にならない、というのがありました。逆の面から見て、日本では、中年男性雇用者がメンバーシップ的な企業への帰属意識もあって、無限定無制限に近い長時間労働をこなし、反対側で、専業主婦が家庭を守って家事をこなすとともに、育児や高齢者介護も受け持つ、という家庭像です。でも、今では派遣労働やいわゆる非正規雇用の拡大により、この要因はなくなってはいないものの弱まっていると私は考えています。(1)に戻って、これも従来からある制度ですが、今回のコロナ禍で期間が延長されているハズです。詳細はフォローしていませんが、私よりもgoogleの方がよく知っていると思います。(2)は、割と最近の『東洋経済』の記事「日本の失業率『2.9%のはずはない』という根拠」で野口悠紀雄さんが労働力調査の雇用者減と法人企業統計の人員減との比較をして、そのギャップについて解説していました。私は雑誌の紙媒体で読みました。(3)は第一生命経済研のリポート「新型コロナで労働時間が急減」で、総務省統計局の労働力調査の統計に基づいて、2月の労働時間が急減したと報告されています。もっとも、私はその後、フォローはしていません。このあたりは、お手軽にブログに書いてお終いにするんではなく、もう少しよく調べて紀要論文にでも取りまとめた方がいいのかもしれません。
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