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2020年10月 1日 (木)

9月調査の日銀短観業況判断DIは最悪期を脱するも設備投資計画は下方修正!!!

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から+7ポイント改善して▲27を示した一方で、本年度2020年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲2.7%の減少と6月調査の結果から下方修正されてます。日銀短観の設備投資計画は統計のクセとして、9月調査は6月調査よりも上方修正されるのが通例なんですが、やや異例の結果となっています。まあ、判る気もします。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業・製造業DIマイナス27 11期ぶり改善
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でマイナス27だった。前回6月調査のマイナス34から7ポイント改善した。改善は11四半期ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済活動が徐々に再開し、企業の景況感は悪化に歯止めがかかった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるマイナス23を下回った。回答期間は8月27日~9月30日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がマイナス17と改善する見通し。市場予想の中央値(マイナス18)を上回った。経済活動が正常化に向かうとの期待が企業の景況感を支えている。
2020年度の事業計画の前提となるドル円の想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=107円11銭と、実勢レートより円安・ドル高だった。ユーロ円の想定為替レートは大企業・製造業で1ユーロ=119円67銭だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはマイナス12と前回を5ポイント上回った。人々の往来が徐々に回復し国内消費が上向くとの見方が景況感を押し上げた。3カ月先のDIは1ポイント改善のマイナス11だった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス2となり、前回(マイナス3)からマイナス幅が縮小した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
20年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比1.4%増と、市場予想の中央値(0.6%増)を上回った。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月、あるいは、四半期ベースでは2020年4~6月期を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。

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まず、今週9月28日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、大雑把に、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが▲20台という結果をお示ししていましたし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが▲23と報じられていますので、実績が▲27ですから、やや下振れした印象はあるものの、現在までの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を考慮すれば、ほぼ「こんなもん」と受け止められているような気がします。ほかの主要な経済指標とともに、今年2020年5月ないし4~6月期が底となっているのは、ほぼほぼ共通している印象です。ただ、これもほかの指標と共通していて、回復ペースが緩やかな印象もあります。前回の6月調査から今回の9月調査で業況判断DIを+10ポイント以上改善させた業種を見ると、大企業製造業では、石油・石炭製品、電気機械、造船・重機等、業務用機械、自動車が上げられ、大企業非製造業では小売と通信となっています。しかし、これらの改善業種でも9月調査の業況判断DIの水準がまだ3月調査を下回っている業種が多く、上回っているのは、製造業の石油・石炭製品と非製造業の小売だけとなっています。我が国のリーディング・インダストリーである自動車はまだ▲61ですし、電気機械や業務用機械も▲10を超えるマイナスです。非製造業では、特にCOVID-19の影響が大きいと考えられている宿泊・飲食サービスが▲59、対個人サービス▲65を記録していて、6月調査からの改善幅も数ポイントにとどまっています。ただし、小売が+10ポイント超の改善を示して、水準としてもプラス幅を拡大したのは、背景に個人消費の回復があるとすれば、それなりにいいニュースではないかと私は受け止めています。業況判断DIの先行きについては、大企業製造業が+10ポイントの改善、大企業非製造業が+1ポイントの改善と見込まれています。何となく、日本だけでなく、世界中でコロナ慣れが進んできているような気がしますので、こういった世界的な雰囲気が背景にあるものと私は考えています。もちろん、対人サービスをはじめとして非製造業でCOVID-19の影響が大きいそうなのは実感としてあります。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも過剰感が底を打ったんですが、DIの水準として、設備についてはすでにプラスに転じて過剰感が残っている一方で、雇用人員については不足感が緩和されたとはいえ、まだ過剰感が発生するには至っておらず、絶対的な人数としては不足感が残っている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が企業マインドに反映されていると考えています。ただし、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。賃金動向については、考えるべきポイントもいくつかあり、一方で、グローバル化が進む中で生産関数が同じ産業では賃金が途上国や新興国の水準に影響を受けるというのが国際貿易論の結論ですが、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。他方で、ITC化などのスキル偏重型の技術進歩のため格差が拡大している、というのが主流派経済学の主張です。これもそうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。最初に書いた通り、日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ決まっている部分が少ないためか、3月には小さく出た後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正される、というのがあったんですが、今年度2020年度は違っています。3月調査の設備投資計画から6月調査では全規模全産業で下方修正され、9月調査ではさらに下方修正されています。ただ、上のグラフは全規模全産業をプロットしてありますが、引用した記事にもある通り、大企業全産業では+1.4%増の底堅い設備投資計画が示されています。もっとも、グラフは示していませんが、設備投資の決定要因としては将来に向けた期待成長率などとともに、足元での利益水準と資金アベイラビリティがあります。9月調査の日銀短観でも、資金繰り判断DIはまだ「楽である」が「苦しい」を上回ってプラスですが、全規模全産業の経常利益の2020年度計画は前年比で2桁のマイナスです。全規模全産業で見た設備投資の最後の着地点は、かなり厳しいものとなりそうです。

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