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2020年10月19日 (月)

輸出が下げ止まりつつある貿易統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比▲4.9%減の6兆551億円、輸入額も▲17.2%減の5兆3801億円、差引き貿易収支は+6750億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の中国向け輸出額、14.0%増 18年1月以来の大きさ
財務省が19日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、対中国の輸出額は前年同月比14.0%増の1兆3417億円だった。半導体製造装置や自動車などの輸出が伸びた。伸び率は2018年1月(30.8%増)以来の大きさだった。
輸入額は11.9%減の1兆4286億円で、携帯電話や衣類などが落ち込んだ。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は869億円の赤字だった。
世界全体でみると、貿易収支は6750億円の黒字と、3カ月連続の黒字となった。輸入額は前年同月比17.2%減の5兆3801億円だった。減少は17カ月連続で、新型コロナウイルス感染症による経済活動の低迷でアラブ首長国連邦(UAE)からの原油やオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)など資源関連で減少が目立った。輸出額は4.9%減の6兆551億円だった。減少は22カ月連続で、台湾向けの鉄鋼やパナマ向けタンカーが伸びなかった。
対米国の輸出額は0.7%増の1兆1953億円だった。米国での販売回復を受けて自動車が伸びた。一方、輸入額は9.9%減の5624億円で、航空機向けのエンジンなどが減った。貿易収支は6329億円の黒字だった。
対欧州連合(EU)の貿易収支は1258億円の赤字だった。赤字は15カ月連続。
同時に発表した20年度4~9月分の貿易収支は1兆1148億円の赤字だった。4期連続の赤字で、欧米向け自動車関連の輸出の落ち込みが影響した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+10648億円の貿易黒字が予想されていて、レンジの下限が+7892億円でしたので、一見すると、かなり下振れた印象ですが、少なくとも私に日本経済や世界経済への不安感はありません。まあ、「こんなもん」という受け止めが多いような気がします。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額も輸出数量も、ようやく、1桁マイナスにこぎつけた、というところです。季節調整済の系列で見るとさらにハッキリし、輸出額は5月を底に4か月連続で増加を続け、輸入額も先月8月統計からプラスに転じているわけですから、日本の国内景気も世界経済も緩やかながら回復を示していると考えるべきです。ます。貿易収支も着実に黒字幅を拡大しているように見えます。ただ、先行き不透明感が払拭されたわけではありません。日本や米国で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の再拡大がまだ続いているわけですし、欧州ではさらに感染再拡大の勢いが強いようで、フランスではCOVID-19の感染再拡大の防止のため、パリをはじめとして、いくつかの地域で夜間外出を制限し始めているのは広く報じられている通りです。ですから、ほかの経済活動も含めて、相変わらず、貿易の先行きもCOVID-19次第、ということになりそうで、ただ、COVID-19の感染拡大がフランスのように再びロックダウンを招かないとしても貿易や景気の回復はかなり緩やかと考えるべきです。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。輸出額について、季節調整していない原系列の貿易指数で見て、欧州向けが依然として前年同月比で2ケタのマイナスが続いていて、アジア向け輸出もまだマイナスから脱していないながら、米国向けは直近で利用可能な9月統計から前年同月比でプラスに転じました。中国向けは上のグラフにも見える通り、6月統計からすでにプラスに転じており、直近で利用可能な9月統計では2ケタ増の+14.0%を記録しています。ただ、輸出の先行きについてもCOVID-19次第で、ロックダウンなどの大きな影響なくとも緩やかな回復にとどまる点も変わりありません。経済の先行き見通しは、エコノミストの手を離れそうな気すらします。

最後に、引用した記事の最後のパラには、今年度2020年度上半期の4~9月期の貿易収支は▲1兆1148億円の赤字と報じていますが、四半期で見ると、季節調整済みの輸出額が5月を底に6月から増加を続けていえる一方で、輸入額が増加に転じたのは先月の8月からであり、GDPベースの外需寄与度は7~9月期にはプラスを記録する可能性が高い、と私は考えています。ちゃんと計算したわけではありませんが、あるいは、4~6月期の▲2.8%と同等のプラス寄与を7~9月期に示す可能性があります。なお、7~9月期GDP統計速報1次QEが内閣府から公表されるのは、11月16日の予定です。

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