新型コロナウィルス感染症(COVID-19)からリバウンドを見せる1次QE予想やいかに?
先月末の鉱工業生産指数(IIP)をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろって、来週月曜日の11月16日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、4~6月期にはかつてない大きなマイナス成長を記録しましたが、その大底から7~9月期にはリバウンドを見せて、逆に大きなプラス成長となるのではないかとの予想が主となっています。ただし、シンクタンクの予想が正しく、7~9月期のリバウンドが大きいとしても、緊急事態宣言以前の1~3月期の水準をまだ大きく下回っている点は忘れるべきではありません。ということで、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +4.8% (+20.5%) | 10~12月期を展望すると、イベント収容人数制限の一段の緩和やGoToキャンペーン拡大の効果などもあって、景気は回復基調を維持する見込み。もっとも、失業率の上昇や冬季賞与の減少など雇用所得環境の悪化や、欧米を中心とした感染再拡大による海外景気の下振れが重石となり、回復ペースは7~9月期から大幅に鈍化する見込み。 |
大和総研 | +4.4% (+19.0%) | 先行きの日本経済は、緩やかな回復傾向が続く見込みだ。ただし、コロナショック前の水準に戻るまでには相当な時間を要するだろう。 個人消費は、社会経済活動と感染拡大防止のバランスを模索する中で、非常に緩やかな増加傾向が続くとみている。10-12月期以降は消費の牽引役が財からサービスへと移り変わるだろう。7-9月期に消費の牽引役となった耐久財は、特別定額給付金の効果の一服などにより、当面は調整局面が続くとみられる。一方、7-9月期に弱い動きだったサービス消費は「GoToキャンペーン」が追い風となり緩やかな増加が続くだろう。 住宅投資は感染拡大に伴う雇用・所得環境の不確実性の高まりが住宅購入意欲を減退させ、弱い動きが続くとみられる。 設備投資は、先行指標である機械受注の動向を踏まえると10-12月期も低迷することが見込まれるものの、2021年1-3月期以降は生産・営業稼働率の上昇を受けて増加に転じよう。ただし、感染拡大の長期化で先行き不透明感が高まる中、企業は能力増強投資などを一部先送りするとみられる。そのため、増加ペースは緩やかなものに留まろう。 公共投資は、振れを伴いながらも高水準での推移が続くとみている。前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の対象期間は2020年度で終了するものの、建設業の人手不足などを背景に執行が遅れており、未執行分が2021年度に繰り越されると考えられる。なお、2020年度の第1次、第2次補正予算では公共事業関係費はほとんど計上されなかったが、第3次補正予算で計上されれば先行きの公共投資の押し上げ要因となろう。 輸出は緩やかな増加傾向が続くとみているものの、欧州向けを中心に下振れリスクが高まっていることには留意が必要であろう。同地域ではこのところ感染再拡大が深刻化しており、各国政府は感染拡大防止策を強化している。感染拡大の勢いが止まらず、4、5月のような厳しい措置が全域で実施されれば、景気が二番底をつける可能性が考えられる。 |
みずほ総研 | +4.4% (+18.6%) | 7~9月期の日本経済は、個人消費や輸出の高い伸びを主因として大幅なプラス成長になったとみられる。国内外の経済活動の再開に伴い、日本経済が回復傾向にあることを確認する結果となるだろう。ただし、それでも4~6月期の落ち込みの半分程度を取り戻したに過ぎない。また、個人消費については前期からのゲタの影響が大きく7~9月期の実勢としては数字ほどの力強さは無い点に留意する必要がある。 10~12月期も個人消費・輸出を中心にプラス成長が続くとみている。個人消費は、(感染再拡大がなければ)Go to キャンペーン事業が押し上げ要因となり増加基調が続く見込みだ。輸出も、9月までの回復基調の継続によってゲタが高くなっていることに加え、10月以降も米国・中国向けを中心に底堅い推移が続くことで、プラスの伸びを維持するだろう。ただし、欧州ではフランス・ドイツなどで感染再拡大に伴い部分的なロックダウン再実施の動きが出てきており、欧州向け輸出は下振れのリスクがある。 来年1~3月期を含めた年度後半の日本経済の回復ペースは緩慢なものになるとみられる。企業収益の悪化を受けて賃金・設備投資の調整が進むことが下押し要因となろう。冬のボーナスは大幅減が見込まれるなど、厳しい雇用所得環境が続くほか、設備投資も機械・建設投資を中心に低迷が続くとみている。さらに、外食・旅行・娯楽などの消費活動についてはソーシャルディスタンス確保のための制限が残るほか、感染再拡大を巡る不確実性が家計・企業の活動を萎縮させる状況が続くだろう。 実際、日銀短観(9月調査)をみると、「先行き」の業況判断DIは大企業・製造業が▲17%Pt(9月調査の「最近」の業況判断DIからの変化幅は+10%Pt)、非製造業が▲11%Pt(同+1%Pt)と、感染再拡大への懸念から非製造業を中心に改善幅は限定的だ。サービス業を中心に、企業が年度下期の需要の戻りを慎重にみていることを示唆している。 治療薬・ワクチンの普及までに一定の時間を要する中、経済活動の回復は緩やかなものとならざるを得ない。足元では、欧米で感染が再び拡大しており、先行き不透明感が高まっている。日本においても、「Go to」キャンペーン事業を受けた外出増加が感染再拡大につながるリスクがある。高齢者の感染拡大が冬場にかけて急激に進んだ場合、医療体制がひっ迫する可能性は皆無ではなく、引き続き予断を許さない状況に変わりはない。 こうした中、報道によれば、政府は年内に第3次補正予算案を編成し、追加的な経済対策を打ち出す方針のようだ。持続化給付金や家賃支援給付金、雇用調整助成金といった企業向け給付措置の延長に加え、Go toキャンペーン事業の延長、防災・減災などの国土強靭化関連の公共事業、医療・検査体制の拡充などが盛り込まれるとみられる。これまでの第1次・第2次補正予算に比べれば財政支出の規模は小さなものになると思われるが、2021年度にかけての成長率の押し上げ要因となる。政策動向も注視していきたい。 |
ニッセイ基礎研 | +3.8% (+16.1%) | 経済正常化に向けた動きが継続することから、10-12月期も高めの成長となるものの、7-9月期の経済成長を牽引した民間消費、輸出の伸びが鈍化することから、7-9月期から大きく減速する可能性が高い。現時点では、前期比年率6%程度のプラス成長を予想している。 |
第一生命経済研 その2 | +4.5% (+19.2%) | Go To キャンペーンや経済活動制限の緩和等によりサービス消費の持ち直しが予想されることに加え、輸出も中国、米国向けを中心に回復が期待できることから、今後も景気は持ち直しは続くとみられるが、成長率は10-12月期以降に大きく鈍化することが避けられない。経済活動が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻るには長い時間がかかるだろう。 |
伊藤忠総研 | +4.6% (+19.9%) | 成長率で7~9月期に急反発を見せた日本経済であるが、前年同期比で見ると▲6.0%と未だ大きく水面下に沈んでおり、中国の+4.9%はもとより、米国の▲2.9%に比べても見劣りする。米国は7~9月期に設備投資(民間非住宅投資)が前期比+4.7%、住宅に至っては+12.3%もの大幅増を記録、個人消費も4~6月期の前期比▲9.6%から7~9月期は+8.9%へかなり戻している。日本の出遅れは、7月の感染第2波で経済活動が一旦停滞した影響によるものであろう。ただ、その結果が、感染再加速の米国と、何とか踏みとどまっている日本との違いであり、それが今後の景気回復ペースに影響を与えよう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +5.2% (+22.4%) | 2020年 7~9月期の実質GDP成長率は、輸出の順調な増加と、緊急事態宣言解除後の個人消費の回復を受けて、前期比+5.2%(年率換算+22.4%)と急上昇する見込みである。しかし、コロナ禍の落ち込み(2020年1~3月期および4~6月期)の6割弱を取り戻したに過ぎない。景気は最悪期を脱したとはいえ、経済活動の水準は低いままであり、設備投資の落ち込みが続くなど、依然として回復の足取りは重い。 |
三菱総研 | +4.3% (+18.2%) | 2020年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+4.3%(年率+18.2%)と予測します。 |
ということで、4~6月期の前期比年率▲28.1%減の後、7~9月期には+20%前後のリバウンドが予想されています。ただし、いくつかのリポートに明記されているように、これでもまだ緊急事態宣言のあった4~6月期に落ち込んだ部分の半分ほどに達するだけです。しかも、現在の足元で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は第3波の感染拡大期に入ったの見方もあり、7~9月期に比べて10~12月期には成長率は大きく鈍化すると見込まれています。具体的な数字を上げているのはニッセイ基礎研のリポートだけで+6%程度と言及されています。私を含めて、エコノミストの多くは2018年10~12月期に始まった景気後退は今年2020年4~6月期に底を打った可能性が高いと考えていますが、COVID-19の感染拡大を別としても、景気回復の足取りは極めて緩やかで、加えて、感染拡大による下振れリスクが大きい、と覚悟しています。~9月期の前期比年率+20%前後の実感もさほどない中、先行きも不透明です。すべては、COVID-19次第という気がして、経済見通しはエコノミストのお仕事でなくなった気すらします。
最後に、下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。
| 固定リンク
コメント