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2020年11月 8日 (日)

先週の読書は経済書なしで小説を中心に計5冊!!!

先週の読書は、経済書がなく、教養書もやや旧聞というカンジのAIに関して否定的な見方を提供するものだけで、何と、画期的なことに小説が2冊あり、ほかに新書も2冊読んでいます。ただ、新書のうちの1冊はモロに経済に近いテーマだったりします。この週末はいろいろあって読書感想文に手が回らず、遅くなったこともあって簡単にご紹介だけしておきたいと思います。

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まず、松田雄馬『人工知能に未来を託せますか?』(岩波書店) です。著者は、NEC中央研究所ご出身の技術者であり、現在はベンチャー企業を起業しているようです。タイトルは半ご否定という形式であり、AIに未来は託せない、という結論を導き出しています。要するに、AIは人間を代替できない、という結論です。ただし、少なくとも、AIが人間を代替するだけでなく、人間を支配することもないような「未来予想」となっています。著者の強い信念の吐露は感じられましたが、私にはやや根拠薄弱と見えました。でも、そうなればイイナというのは確かです。

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次に、池井戸潤『アルルカンと道化師』(講談社) です。半沢直樹シリーズ最新刊ではなかろうかという気がします。というのは、私は少なくとも文藝春秋と講談社から出ている半沢直樹シリーズは新刊時にすべて読んでいるんですが、文庫本になった後、半沢直樹+数字のタイトルの改題の文庫本を図書館で見かけたことがあり、改題の際に何か改変があったかどうかについてはフォローしていません。これも、どうでもいいことながら、私の好きな居眠り磐音シリーズは、改題こそありませんが、文庫本を別の出版社から出す際に内容を修正していると聞いたことがあります。ということで、本題に戻って、美術雑誌出版社を買収すると見せかけて、バンクシーを思わせるような落書きのある本社ビルをまるごとM&Aしてしまおうとするベンチャー企業経営者に対して、大阪西支店の半沢融資課長がガンとして融資継続の姿勢を崩さず、本社や大阪営業本部のM&A推進方針に抗して、バンカーとしての心意気を示す、というストーリーです。いつもの半沢直樹シリーズと同じで、いかにも小説らしく現実にはありえないような都合のいいストーリ展開なんですが、小説としてはあざとい気がする一方で、うまくまとめ上げればドラマとしてはヒットするのかもしれません。

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次に、朝井まかて『グッドバイ』(朝日新聞出版) です。私はまったく存じ上げなかったんですが、先月10月6日に本願寺文化興隆財団から公表があり、本年度の親鸞賞受賞作品です。でも、本願寺とか、親鸞とか、浄土真宗とかが前面に出て来るわけではありません。私が浄土真宗の信者の門徒だから反応しただけで、失礼ながら、権威の高い文学賞なのかどうかは私は存じません。本願寺文化興隆財団のサイトを見たところ、ほかに、蓮如賞というのもあるようです。親鸞賞11回の歴史の中で、私が読んだ小記憶があるのは和田竜『村上海賊の娘』だけでした。ということで、本書は、幕末から明治維新期に長崎の大店、菜種油を扱う大浦屋を継いだ希以(けい)、後に同じ読み方で漢字を恵とした女性商人の一代記です。扱いを菜種油から茶葉に変更し、開国に伴って米国への輸出に乗り出した女傑の生涯を描き出します。もちろん、小説ですのでノンフィクションではないんだろうと思いますが、壮大なスケールで広い視野からの当時の女性像を余すところなく書き切っています。とても爽やかな読後感を保証したいと思います。ちょっと大河ドラマというわけにも行かないでしょうが、朝ドラあたりにならないものかと期待しています。でも、もう、朝ドラの「あさが来た」で似たようなのがありましたからダメですかね。

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次に、森永卓郎『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』(集英社インターナショナル新書) です。著者は、ご存じ、JTご出身のエコノミストです。私にも理解できるような非常にリベラルな論を展開するタイプのエコノミストですし、私も本書には大いに賛同できる点があります。ということで、国連のSDGsなどに議論を紹介しながら、この新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大前までのグローバル資本主義の限界を指摘し、ある意味で、ガンディー的な社会主義、というか、「隣人を助ける」原理を包含する経済社会に向けた方向性を打ち出しています。冒頭から、マルクス主義的な経済学の復権を指摘していますので、ベルンシュタイン的な修正主義的社会民主主義ではなく、共産主義の前段階としての社会主義が念頭にあるのかもしれません。立派な見立てだと私も同意します。ただ、実際の適応にあたっての「トカイナカ」とか、ベーシックインカムを別にすれば、私の頭の中で???が並ぶようなアイデアでしたので、私にはやや理解が及びませんでした。誠に残念。

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最後に、刑部芳則『古関裕而-流行作曲家と激動の昭和』(中公新書) です。著者は、日本近現代史を専門とする研究者です。ただ、学術書という感じはありません。私は何よりも現在放送中のNHKの朝ドラ「エール」を高く評価していますので、その主人公夫妻を取り上げた本書をとても楽しんで読むことができました。ドラマは今もって現在進行形です。今月で終了予定と明らかにされています。軍歌「露営の歌」で一世を風靡し、軍歌や戦時歌謡の覇者となった後、戦後はラジオドラマ「鐘の鳴る丘」とか、鎮魂歌「長崎の鐘」もヒットさせ、東京五輪行進曲「オリンピック・マーチ」の作曲者でもあります。私にとっては何といっても阪神タイガースの応援歌である「六甲颪」の作曲者と認識されています。朝ドラとともに、大いに楽しい読書でした。

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