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2020年11月16日 (月)

本日公表の7-9月期GDP統計1次QEから何を読み取るか?

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+5.0%、年率では+21.4%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きなマイナスとなった4~6月期からリバウンドを見せています。4四半期振りのプラス成長ですが、もちろん、4~6月期の戦後最大のマイナス成長をカバーするほどではありませんでした。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

GDP7-9月年率21.4%増 4期ぶりプラスでも回復途上
内閣府が16日発表した2020年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で4~6月期から5.0%、年率換算で21.4%増えた。新型コロナウイルス禍で年率28.8%減と戦後最大の落ち込みだった4~6月期から4期ぶりのプラス成長だがコロナ前の水準は遠い。
前期比の増加率は1968年10~12月期以来、約52年ぶりの大きさ。統計を遡れる55年以降で4番目となる。大幅なプラスとはいえ政府の緊急事態宣言などで経済活動が滞った4~6月期の落ち込みの半分強を回復したにすぎない。年換算の金額は507.6兆円と、コロナ前のピークだった2019年7~9月期の94%の水準にとどまる。
GDPの過半を占める個人消費が前期比4.7%増えた。8.1%減った4~6月期の反動で、自動車などの耐久財や飲食や旅行といったサービス消費が上向いた。
輸出は7.0%増と前期の17.4%減から持ち直した。自動車関連などの回復が目立つ。
設備投資は3.4%減と減少に歯止めがかからない。業績悪化や先行きの不透明感から企業の投資意欲は低いままだ。
10~12月期のGDPは回復ペースが鈍るとの見方が多い。国内外の感染の再拡大が影を落とす。内閣府幹部は「基本的なシナリオとしては持ち直しの動きが続くが不透明感はある」と述べた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2019/7-92019/10-122020/1-32020/4-62020/7-9
国内総生産GDP+0.0▲1.8▲0.6▲8.2+5.0
民間消費+0.4▲2.9▲0.7▲8.1+4.7
民間住宅+1.3▲2.3▲4.0▲0.5▲7.9
民間設備+0.2▲4.8+1.7▲4.5▲3.4
民間在庫 *(▲0.2)(+0.0)(▲0.1)(+0.3)(▲0.2)
公的需要+0.9+0.4▲0.0▲0.1+1.9
内需寄与度 *(+0.3)(▲2.3)(▲0.3)(▲4.9)(+2.1)
外需(純輸出)寄与度 *(▲0.2)(+0.5)(▲0.2)(▲3.3)(+2.9)
輸出▲0.6+0.4▲5.3▲17.4+7.0
輸入+0.7▲2.4▲4.1▲2.2▲9.8
国内総所得 (GDI)+0.3+0.2▲1.7▲0.6▲6.8
国民総所得 (GNI)+0.2▲1.8▲0.6▲7.1+4.8
名目GDP+0.4▲1.5▲0.4▲7.8+5.2
雇用者報酬 (実質)▲0.2▲0.2+0.5▲3.8+0.5
GDPデフレータ+0.6+1.2+0.9+1.4+1.1
国内需要デフレータ+0.2+0.7+0.7▲0.1+0.1

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率が4~6月期からリバウンドを示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と黒の純輸出が大きなプラスを記録しています。

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ということで、先週11月13日の金曜日に1次QE予想を取り上げた際に、前期比年率で「+20%前後のリバウンド」と書きましたが、その通りだったようです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言で4~6月期には経済活動が大きく停滞した後、7~9月期には経済活動が再開され始めたわけですので、大きなリバウンドも当然です。ただし、実質GDPの実額を示しておくと、今日発表の今年2020年7~9月期は507.6兆円、さかのぼって、大きなマイナス成長を記録した4~6月期は483.6兆円、さらにさかのぼって、1~3月期は526.6兆円ですから、4~6月期に落ち込んだ▲43兆円のうちの半分強に当たる24兆円しか取り戻せていません。しかも、足元でほかの経済指標の回復度合いが緩やかになっているのも事実ですから、ペンとアップ生産は続くとはいえ、GDPの水準がCOVID-19前に回帰するのにはかなり時間がかかる、と考えざるを得ません。また、内外需の寄与度を大雑把に見ておくと、4~6月期の前期比▲8.2%のマイナス成長の内訳は、内需▲4.9%の寄与に対して、外需寄与度は▲3.3%となっていて、内需主導の落ち込みだったのですが、逆に、本日公表の7~9月期の+5.0%成長の内訳では、内需寄与度+2.1%に対して、外需寄与度は+2.9%あり、やや外需主導のリバウンドとなっています。加えて、すでに第3波の感染拡大が始まっているとの見方もあります。英仏ですでに始まっているロックダウンは我が国から欧州への輸出に影響を及ぼすことは確実です。我が国でもCOVID-19の感染拡大のための何らかの措置が取られる可能性も否定できず、そうなると、回復どころか2番底の可能性も出て来ます。

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最後に、雇用者報酬の推移と非居住家計の購入額のグラフは上の通りです。いずれも、2011年基準の実質額をプロットしています。つい先ほど、4~6月期は内需主導の落ち込み、7~9月期はやや外需主導のリバウンドと書いたばかりですが、実質の雇用者報酬は46月期に前期比で▲3.8%減と、かなり落ちたとはいえ、7~9月期には緩やかながら回復を示しており、水準も260兆円を超えています。しかし、4兆円を超えていたインバウンド消費はほぼ「蒸発」して0.5兆円しか残りませんでした。もちろん、特に今回のようなCOVID-19のパンデミックの条件下では、輸出入とインバウンド消費のボラティリティを同一に論じるのはまったく適当ではありませんが、英仏のロックダウンを見るにつけ、雇用者報酬の増加そのものである賃金上昇と雇用拡大を実現させ、しっかりした内需に基礎を置く景気回復に資するような政策が必要と私は考えます。

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