鉱工業生産指数(IIP)は「持ち直し」よりは停滞を示す!!!
本日は官庁のご用納めです。ということで、経済産業省から11月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。ヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいでした。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産、11月横ばい 自動車6カ月ぶり低下
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比横ばいの95.2だった。新型コロナウイルスの感染が再拡大し、自動車などで海外向けの生産に弱さがみられた。経産省は基調判断を「持ち直している」に据え置いた。
鉱工業生産は新型コロナの影響で2月から5月まで低下。6月からは5カ月連続で上昇が続いていたが、生産の回復が一服した。生産水準は感染拡大前の1月の水準(99.8)に比べてまだ低い。
前月まで生産回復をけん引してきた自動車工業が6カ月ぶりに低下となった。11月は前月比4.7%低下し全体の指数を押し下げた。全15業種中9業種は上昇した。半導体製造装置など生産用機械工業が6.5%上昇した。ボイラーなど汎用・業務用機械工業も4.8%上昇した。
主要企業の生産計画から算出した生産予測指数は12月に1.1%低下、2021年1月に7.1%上昇を見込んでいる。予測通りであれば感染拡大前の20年1月の水準を超えるが、経産省は「そこまで回復するかは不透明だ。感染の再拡大による国内外経済の下振れリスクには注意する必要がある」としている。
いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+1.2%の増産との見込みで、レンジでも+0.3%~+2.5%でしたので、前月比横ばいという結果は下限を突き抜けてしまいました。引用した記事にもある通り、製造工業生産予測指数によれば、足元の12月も減産という見込みですので、たとえ、来年2021年1月が大幅増産の予想であっても、それほど見通しは明るくありません。特に、我が国のリーディングインダストリーである自動車工業が半年ぶりに減産に転じており、産業別のマイナス寄与度も大きくなっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う経済の下振れが現実味を帯びてきた気がします。統計作成官庁である経済産業省は基調判断を「持ち直し」で据え置いたようですが、私はむしろ停滞色を強めている気すらします。国内感染が第3波に入っていることは明らかな上に、感染力が強いといわれている変異ウィルスも英国などから我が国に入ってきていますし、欧州を中心に再びロックダウンも始まっており、少なくとも目先は内需・外需ともに経済の下押し圧力が強まってきていると覚悟すべきです。私は早めに東京オリンピック・パラリンピックの開催を断念した上で、COVID-19の感染拡大に最大の努力を傾けることこそが景気回復の最大のカギだと考えています。
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