3か月連続の「下げ止まり」と基調判断された10月の景気動向指数をどう見るか?
本日、内閣府から10月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+0.5ポイント上昇して93.8を、また、CI一致指数も前月から+4.9ポイント上昇して89.7を、それぞれ記録しています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、7月統計まで12か月連続で「悪化」だったんですが、先々月の8月統計から「下げ止まり」に上方修正され、今月の基調判断は据え置かれています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
景気指数10月4.9ポイント上昇 5カ月連続改善
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2015年=100)の速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比4.9ポイント高い89.7となった。上昇は5カ月連続。新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込む前の2月の水準にはまだ戻っていない。
一致指数を構成する10項目のうち集計済みの8項目全てが上昇に寄与した。19年10月の消費税率引き上げ後に消費が低迷した反動から、20年10月の小売業の商業販売額の前年比が大幅にプラスになり、全体を押し上げた。投資財や耐久消費財の出荷指数も大きく改善した。
一致指数の動きから機械的に算出する景気の基調判断は3カ月連続で「下げ止まり」を示した。
数カ月先の景気の動きを表すとされる先行指数は、前月より0.5ポイント高い93.8となった。上昇は5カ月連続。上げ幅は前月の4.2ポイントより縮小した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

CI一致指数を個別系列の寄与度に従って少し詳しく見ると、 商業販売額(小売業)(前年同月比)が+1.07ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)が+0.97ポイント、耐久消費財出荷指数が+0.68ポイント、輸出数量指数が+0.60ポイントなどとなっています。前月からの変化がプラスを記録したのは、指数の直近の谷である今年2020年5月を底として、6月から5か月連続です。ただし、3か月後方移動平均は7月からプラスに転じている一方で、7か月後方移動平均はようやく10月統計からプラスとなっています。というのは、基調判断の基準で、「下げ止まり」の次は「上方への局面変化」となっていて、7か月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、かつ、プラス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上必要なのですが、まだ、プラス幅が足りないんだろうと私は考えています。なお、7か月後方移動平均の振幅の目安は0.76ポイントとされています。早ければ来月公表の11月統計から基調判断が変更される可能性があるわけですが、上方への局面変化の定義は「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」ですから、今年2020年4~6月期に景気の谷を超えたと考えるのは、十分理由があることです。ただ、方向として上向きである景気局面はそうなんですが、水準であるボリューム感を把握するために新型コロナウィルス感染症(COVID-19)前の指数を振り返ると、昨年2019年12月のCI一致指数が94.2、今年2020年1月が94.6、2月が94.5であるのに対して、直近で利用可能な10月統計でもまだ89.7ですから、景気回復の先はまだまだ長い、と覚悟すべきです。
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