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2020年12月 5日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとしてムックや新書も含めて計6冊!!!

今週の読書は、経済の専門書2冊と大学のテキストの補完として読んだ日本経済の概説書、ムック本1冊に、さらに、経済関係も含めて新書が2冊の計6冊です。以下の通りです。なお、実は、別途、12月に入って年末年始のホリデーシーズンが近づき、学生諸君に新書を中心に読書案内を学内サイトにポストしました。年末年始休みは2週間ほどあるんですから、新書の1冊くらいは読んで欲しいと期待しています。機会があれば、この読書案内をブログでも紹介したいと考えています。

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まず、エマニュエル・サエズ & ガブリエル・ズックマン『作られた格差』(光文社) です。著者2人は経済学の研究者であり、『21世紀の資本』で有名になったピケティ教授との共同研究をしていたのではなかったかと記憶しています。英語の原題は The Triumph of Injustice であり、2019年の出版です。ということで、租税の面からの不平等を分析しています。すなわち、米国のローズベルト政権下のニューディール政策から直接税の限界税率は極めて高率に設定されていたんですが、それが、レーガン政権のあたりからラッファー曲線の呪縛もあって、累進性が弱められるとともに、租税回避が進み、不平等が大きく進んだ、と結論されています。まったく、その通りです。「パナマ文書」で明らかにされたように、租税回避が進めば、行政当局が諦めてしまって、現状追認の税率引下げとか累進性の低下を招く、というわけです。最近では、OECDでデジタル課税も含めて、Base Erosion and Profit Shifting (BEPS) の議論が進んでおり、私のブログでも今年2020年10月15日付けで取り上げたところです。我が国に限らず、税制は極めて複雑ながら、基本となるのは本書でも指摘されている通り、税率の弾性値が小さいところから取る、すなわち、俗にいわれるように「取りやすいところから取る」ということになります。従って、資本課税は資本の海外逃避が容易という意味で空洞化を招きかねない一方で、労働についてはそうそう国外に逃避することはないですし、消費課税についてはさらに国内消費が海外に漏れる恐れが少ないために、ついつい資本より労働に、そしてさらには消費に偏向した課税体系になっている、といえます。本書では基本的に、米国を対象にしていることから、国際協調のようなものはスコープに入っていないんですが、繰り返しになるものの、OECD/G20ジョイントのBEPSプロジェクトも含めて、米国ではすでに、GILTI=Global Intangible Low-Taxed Income 合算課税というシステムを採用しているわけですから、そういった国際協調があればどうなるか、というのも含めて欲しかった気がします。でも、高額所得に対する累進性の強化、すなわち、高額所得に対しては極めて高率の限界税率を課すことの正当性については、とてもクリアに論証されていました。ただ、やや価値判断を含む論証であり、正しい経済理論が政策に反映されるわけではない、という点については、自由貿易なんかでも見られるとおりであり、長い期間を必要とするんでしょうが、正しい経済政策、不平等を減ずる政策への方向性を私は強く支持します。

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次に、清家篤・風神佐知子『労働経済』(東洋経済) です。著者2人は慶應義塾大学の労働経済学の研究者です。本書は2部構成であり、第1部がマイクロな基礎理論、第2部はマクロ政策も含めた実践編となっていますが、どちらもとても標準的な労働経済学の議論が展開されています。特に、バックグラウンドにあるモデルが私レベルでも明快に理解できるようになっており、特に、ノーベル賞受賞者のベッカー教授の人的資本論や結婚の経済理論については、とても判りやすかったと受け止めています。ただし、レベル感が今ひとつハッキリしません。第1部の最初の方なんかは、学部レベルよりもさらに初学者のレベルに近いんですが、引用文献がモロにジャーナル論文だったりしますので、私の専門分野ではないので、十分な判断はできないものの、学部生にはややハードルが高いものも含まれていそうな気がします。ただ、引用文献まで入らなくても、まったくの初学者からマイクロな労働経済学を十分に把握することができそうな気がします。実際の統計データに基づいてプロットされたグラフや表などとともに、無差別曲線なども概念的なグラフとしてていねいに解説されており、専門外の私なんぞにもとても理解しやすくなっています。また、基礎的な理論がしっかり解説されているだけではなく、応用編では日本経済が直面する諸課題もバランスよく取り入れられており、高齢者雇用、女性雇用に加えて、オックスフォード大学の研究者が試算したAIやコンピュータによる職の代替可能性も紹介されています。ただ、大学の研究者なのですから、もう少し若年層の職や雇用についても応用編で取り上げて欲しかった気がします。高度成長期の雇用政策や雇用慣行では、中核労働者を成す中年男性雇用者が企業にメンバーシップ的に所属意識を高められ、長時間労働や無制限のロイヤリティを示すために過酷な労働を強いられていた一方で、配偶者が育児や高齢の親の介護、もちろん、炊事洗濯などの家事全般を受け持つ、というやや偏った性別の役割分担があり、中核労働者ではない縁辺労働者である学生アルバイトや主婦パートタイマーが不況期には雇用の調整弁となり、不況がもしも長引けばそのまま労働市場から退出して、そのため、失業率が高まらない、というシステムとなっていました。また、いわゆる世代効果として、高校や大学を卒業して新卒一括採用される時期が景気後退期に当たれば、生涯賃金にまで響きかねない所得格差を生む慣行が広く観察されたことも事実ですから、学生や若年層、さらには、可能な範囲で、フリーターやニート、などの若年雇用の問題も幅広く取り上げて欲しかった気がします。

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次に、小峰隆夫・村田啓子『最新 日本経済入門[第6版]』(日本評論社) です。著者2人は、官界出身のマクロ経済研究者です。基本的に、大学の授業のテキストを意図して作成されている本であると私は認識しています。現時点で、私が授業で教科書として用いているのは、浅子和美・飯塚信夫・篠原総一 [編]『入門・日本経済論[第6版]』(有斐閣)なんですが、いろいろと考えを巡らせて参考までに読んでみました。ただ、結論からいうと、私の授業スタイルを前提にすれば今のテキストの方がベターであると考えています。私自身も考えるところがあるんですが、日本経済論を教えるに当たって、ひと通りの戦後の日本経済の歩みは、特に、戦後GHQのいくつかの経済改革、すなわち、財閥解体や農地開放や労働民主化、さらに、高度成長期に形つくられた慣行、すなわち、終身雇用とまで呼ばれた長期雇用やそれに応じた年功賃金は、例えば、年金制度でサラリーマン雇用者の妻がどうして年金保険料負担なしに年金給付を受けられるか、とか、夫婦と子ども2人のモデル家系をもとにした制度設計が山ほどあるわけですから、それなりに歴史的な経緯を把握しておく必要があると思います。日本評論社版では第2章にあるだけですが、有斐閣版では3章を割いています。また、日本評論社版では物価と為替レートと金融政策が連続しない章でバラバラに取り上げられています。細かい点では、例えば、貿易の章でGATTの下で多国間関税率交渉、いわゆるラウンドが7回に渡って成功した旨の記述があるなら、その7回のラウンドのリストくらいは欲しいんですが、それがなかったりする不便さもあります。そして、何よりも、私は一貫して、経済について解説する場合、バックグラウンドにあるモデルを重視するんですが、日本評論社版では経済の解説に当たって、いくつかの要因を並べるのに忙しくて、やや一貫していないモデルをもとにした説明と受け取られかねない記述が散見されます。ひとつの経済事象について、多面的に見ることも含めて、部分均衡ではなく一般均衡の立場から、複数の要因を並べて解説することはとても重要だと思いますが、その背景となるモデルについては一貫性が求められます。そうでなければ説得力が落ちると感じるのは私だけではないような気がします。最後に、有斐閣版では専門分野のエコノミストがチャプターを分担する形で書き上げていますが、やっぱり、少数のエコノミストが全体を通して教科書を書くのはどうもムリがあるような気がしてなりません。もっとも、この点は私自身がその能力ないから、そう思うだけかもしれません。

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次に、高橋源一郎『「読む」って、どんなこと?』(NHK出版) です。作者は、小説家であり、長らく明治学院大学の文学の研究者でもありました。本書では、小学校の国語教科書の抜粋から始まって、6時限目までの授業のような体裁の章割りで続きます。ただし、内容はかなり高度です。すなわち、1時間目のオノ・ヨーコ『グレープフルーツ・ジュース』もそうですが、2時間目の鶴見俊輔『「もうろく帖」後篇』に至っては、高校生でも読みこなせないような気すらします。もちろん、3時間目の永沢光雄『AV女優』は、著者自身も学校では教えないと言い切っていますし、4時間目に坂口安吾『天皇陛下にささぐる言葉』、5時間目に武田泰淳『審判』などは、決して一定の思想傾向ではなく、その時代背景を反映しているだけなのでしょうが、人によっては「危険思想」に分類する場合もありそうな気すらします。ただし、こういったアブナい文章を紹介した後、最後の6時間目は藤井貞和の詩「雪、nobody」でゆったりした気分にさせてくれます。私のようなレベルの低い読者には、とてもついていけないような、ある意味で、高度な内容を満載しています。少なくとも、かなりの程度に文章を読む訓練を受けていて、それなりに感受性も磨かれていないと、何のことだかわけが判らない気すらします。私は図書館で借りて読んだのでダメでしたが、おそらく、ちゃんと手元において定期的に何度も読み返すべき本だと考えます。

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次に、伊藤周平『消費税増税と社会保障改革』(ちくま新書) です。著者は、厚生労働省や国立社会保障・人口問題研究所などを経て、現在は社会保障法の研究者です。多面的に、社会保障や消費税をはじめとする税制に関する批判を繰り広げています。序章では、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響を受ける前から、すなわち、昨年2019年10月の消費税率引上げから経済が大きな打撃を受けていた、さらに、その前からすでに景気後退局面に入っていたわけですが、そういった需要不足の景気後退局面に入った後で、追い打ちをかけるような消費税率の引上げ、さらに、今年に入ってからのCOVID-19による需要供給両面での経済的な影響などから、医療をはじめとする社会保障が極度に疲弊していることは事実です。ただ、本書では、最初に「多面的に批判」と書きましたが、とても理にかなった批判ながら、惜しむらくは、体系的な全体像ではなく、本書の章別構成を見ても理解できるように、年金・医療・介護に加えて、子育て支援などという形で、現行の社会保障制度を前提にした部分的な、というか、各個撃破的な批判にとどまっています。要するに、基本は政府と同じ土俵の上で、個別政策を批判するという形でしかなく、本来の憲法に従った社会保障のあるべき姿を示し切れていない不満が残ります。その昔の「野党的な何でも反対論」とまではいいませんが、確かに、個別問題を個別に批判して、個別の解決を図る、というのもひとつの方法論として成り立つ可能性は否定しませんが、エコノミストとしては、特に、マクロ経済を考える場合は、いわゆる「合成の誤謬」についても配慮しなければなりませんし、もう少し全体像を背景に持った批判を求めたいと思います。

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最後に、島田裕巳『捨てられる宗教』(SB新書) です。著者は、ヤマギシ会の経験もあり、宗教に関する発言も多く出版しています。本書では、我が国に限らず西欧の先進各国で、伝統的な宗教の信者が減少している現状を平均寿命の伸長による「死」への距離から論じようと試みています。すなわち、「死」が身近にあり、いつ死ぬかわからないような時代の死生観Aにあっては、宗教をそれなりに必要とした一方で、現在の日本が典型ですが、人生100年とか、本書の著者によれば人生110年時代を迎えて、死のない世界の死生観Bでは終活さえもが面倒になり、葬式は不要となって宗教は捨てられる、と結論しています。私も、ほのかに理解するところがあります。私自身が還暦の60歳を少し過ぎて、祖父母はすでに亡くなり、父も死んで母だけが残っているというご先祖の構成で、同級生や役所で同僚だった年齢の近い友人は、ほとんどがこの世に残っています。1人だけ役所の同期入庁者が亡くなりましたが、ほぼほぼ例外扱いといえます。そして、もちろん、祖父母や役所の諸先輩が亡くなった際には葬式が営まれるわけですが、どうも、不文律のような基準があって、80歳を過ぎると大規模な葬式はないようです。今年に入ってからも、役所で上司としてお仕えした著名エコノミストが亡くなりましたが、大学の知り合いとともに弔電を打った一方で、お通夜や葬式への出席はもちろん、供花やお香典も受け付けず、ただ、生前の交流関係を知りたいという趣旨で弔電のみ受け付ける、ということでした。こういった形で、「死」を感じない、あるいは、近親以外では葬式やお通夜にも出席しない、という意味での宗教離れが起きているのも実感します。逆に、現在の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの世の中で、宗教は何をしているのか、という気もします。もちろん、病気や科学で治癒を目指すものであって、医学が未発達だった過去の加持祈祷で治すわけではありませんが、人びとの心の平安のためになすべきことがないというのも、どうかとも思います。私は従来から主張しているように日本人としては信心深い方で、念仏を唱えることも少なくありません。宗教が必要とされる出番には、それなりの役割を果たして欲しいと考えているのは、私だけではないと思いたいです。

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