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2020年12月14日 (月)

日銀短観に見る企業マインドは2四半期連続で改善したものの先行き警戒感が強い印象!!!

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から+17ポイント改善して▲10を示した一方で、本年度2020年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲3.9%の減少と9月調査の結果から下方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀短観、設備投資・新卒採用に慎重 景況感は改善
日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では先行きに慎重な企業の姿が浮き彫りになった。2020年度の設備投資を全規模全産業ベースでみると、前年度に比べ3.9%減で9月調査(2.7%減)から下方修正となった。新卒採用も21年度は大幅減の計画だ。新型コロナウイルスの影響が長引くことに備え、企業は守りを固めている。
全規模ベースの設備投資計画は、QUICKが事前に集計した民間予測の中心値(3.3%減)を下回った。設備投資計画の下方修正は3四半期連続になる。経済への波及効果の大きい大企業で「業績が悪化するなか、不要不急の設備投資を先送りするとの声があった」(日銀)。
大企業の設備投資計画は製造業が0.5%減、非製造業が1.6%減だった。いずれも00~19年度平均を下回る。中小企業は9月調査から上方修正となったものの、13.9%減と大幅なマイナスだ。
デジタル化に向け、ソフトウェア投資はプラスを維持した。全規模全産業で3.4%増だ。ただ、9月調査からは下方修正しており戦略分野でも投資を絞り込んでいることがうかがえる。
雇用も守勢が目立つ。21年度の新卒採用は全規模合計で6.1%減らす。大企業は7.5%減の計画だ。慢性的な人手不足に悩む中小企業は2.0%減で小幅なマイナスだった。
足元の景況感の改善で、人員が「過剰」と回答した企業から「不足」の割合を引いた雇用人員判断DI(指数)は全規模全産業でマイナス10となり、前回調査から4ポイント不足感が強まった。それでも新卒採用を増やそうとする企業は少ない。
企業の資金繰りは政策効果が下支えする。資金繰りが「楽である」と答えた割合から「苦しい」の割合を引いた資金繰り判断DIは全規模合計で7となり、2ポイント改善した。銀行や信用金庫の貸出金の伸びは6%台と高水準だ。政府が経済対策として実施する実質無利子無担保融資の効果が大きい。
企業が収益計画の前提とする想定為替レートは20年度下期で1ドル=106円55銭だ。足元の相場より2円以上の円安水準となっている。欧米では新型コロナの感染再拡大で一部で行動制限を実施し、日本企業の海外事業の収益にも影響が出る見通し。想定レートを超える円高で現地での収益悪化とのダブルパンチになる恐れがある。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月、あるいは、四半期ベースでは2020年4~6月期を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。

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まず、先週12月11日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが改善する見込みという結果をお示ししていましたし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが▲14と報じられていますので、実績が▲10ですから、やや上振れした印象はあるものの、現在までの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を考慮し、加えて、先行きの景況感の鈍化を見込めば、ほぼ「こんなもん」と受け止められているような気がします。ほかの主要な経済指標とともに、今年2020年5月ないし4~6月期が底となっているのは、ほぼほぼ共通している印象です。ただ、これもほかの指標と共通していて、回復ペースが緩やか、というより、10~12月期にはモノによってはむしろ悪化すら考えられる指標が出てきそうな印象もあります。前回の9月調査から今回の12月調査で業況判断DIを+20ポイント以上改善させた業種を見ると、大企業製造業では、自動車が+48ポイントと最大なんですが、DIの水準はまだ▲13とマイナスです。次に改善幅が大きいのは+36ポイントの木材・木製品、続いて順に、鉄鋼+30ポイント、非鉄金属+27ポイント、生産用機械+22ポイント、などとなっており、素材業種+16ポイント、加工業種+18ポイントですから、ほとんど差はありません。大企業非製造業では、対個人サービス+22ポイント、宿泊・飲食サービス+21ポイントだけとなっています。GoToキャンペーンの徒花という気もします。いずれにせよ、先行き業況判断DIが、大企業製造業で+2ポイント改善の▲8、大企業非製造業で▲1ポイント悪化の▲6ですから、ほぼ横ばいに近くて、改善幅は大きく縮小、ないし、悪化すると見込まれているわけです。先行き警戒感が強い、と考えるべきです。中でも、製造業が海外需要にリスクを分散できたり、あるいは、中国がすでに回復軌道に回帰しているなど先行きの見通しが上がっている一方で、非製造業は国内市場への依存が高く、国内での感染が拡大している現状で企業マインドが弱くなっています。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも過剰感が底を打ったんですが、DIの水準として、設備についてはすでにプラスに転じて過剰感が残っている一方で、雇用人員については不足感が緩和されたとはいえ、まだ過剰感が発生するには至っておらず、絶対的な人数としては不足感が残っている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が企業マインドに反映されていると考えています。ただし、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。特に、雇用に関しては、新卒採用計画について新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響がもっとも強く出ており、2019年度まで新卒採用は全規模全産業で+3.3%増と増加傾向だったんですが、2020年度では▲2.6%減とマイナスに転じて、2021年度は▲6.1%減へさらに減少幅を拡大すると見込まれています。雇用調整助成金で現有勢力の雇用を維持する一方で、新卒一括採用のシステムの中で、学生の就活にしわ寄せが来ているように見えます。私は2回生のゼミ生諸君に、この点だけはお知らせしておきました。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月にはマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正される、というのがあったんですが、今年度2020年度は違っています。3月調査の設備投資計画から6月調査では全規模全産業で下方修正され、9月調査、12月調査と次々に下方修正されています。しかも、上のグラフは全規模全産業をプロットしてありますが、引用した記事にもある通り、大企業ですら設備投資は前年比マイナスが見込まれています。加えて、グラフは示しませんが、設備投資の決定要因としては将来に向けた期待成長率などとともに、足元での利益水準と資金アベイラビリティがあります。12月調査の日銀短観でも、資金繰り判断DIはまだ「楽である」が「苦しい」を上回ってプラスですが、全規模全産業の経常利益の2020年度計画は前年比で▲30%台半ばの大きなマイナスです。設備投資の最後の着地点は、かなり厳しいものとなりそうです。

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