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2020年12月 9日 (水)

大きくジャンプした10月統計の機械受注の先行きをどう考えるか?

本日、内閣府から10月の機械受注が表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲4.4%減の7193億円と、まだまだ受注額は低水準ながら、プラスの伸びを記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の機械受注、伸び率最大の17.1% 受注額は3月以来の多さ
内閣府が9日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は、前月比17.1%増の8425億円だった。増加率は比較可能な2005年4月以降で最大となる。受注額は3月以来7カ月ぶりの水準に回復した。自動車関連やはん用・生産用機械が伸びた。
内閣府は基調判断を「下げ止まっている」に上方修正した。けん引役を担う自動車関連やはん用機械で増加基調が続いたことを反映した。
内閣府の担当者は「経済活動が進み(企業の設備投資活動で)抑えていたものが出てきた」と話した。ただ機械受注統計はブレが大きいとされるだけに、先行きについては「単月では判断しきれない」と慎重な見方も残した。
製造業からの受注額(季節調整済み)は前月比11.4%増の3535億円だった。伸び率は16年3月以来の大きさ。17業種のうち12業種で増えた。非鉄金属で、原子力原動機など規模の大きな案件があったことから約4倍に伸びた。「その他製造業」からは食品加工機械の受注も増えた。自動車・同付属品は13.9%増、はん用・生産用機械は9.0%増だった。
非製造業(船舶・電力を除く)は13.8%増だった。受注額は4840億円と2カ月連続で増えた。金融業・保険業からのシステム関係の受注が増えたほか、卸売業・小売業からの受注額は5割強伸びた。配送センターでの配送システム関連の受注があった。
受注総額は9.7%増の2兆3003億円だった。前月比の増加は2カ月ぶり。外需は前月の反動増などもあり20.7%増、官公需の受注は22.7%減となった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前月比で+2.3%増、レンジの上限でも+6.3%増でしたから、何があったのかは詳らかではありませんが、かなりの増加だという実感はあります。しかし、引用した記事にもある通り、単月での振れが大きい統計ですから、上のグラフの上のパネルでも、季節調整済みの系列をさらに後方6か月移動平均を取って大雑把な傾向を把握しようと試みています。その移動平均が直近で利用可能な10月統計で上向きになりましたので、とてもunivariateな判断ながら、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「下げ止まっている」に上方修正したのも、まあ、アリかなという気がします。
引用した記事にもある通り、イレギュラーな超大型案件があったというわけでもなく、かなり幅広い業種で増加が見られ、製造業と非製造業の両方ともが前月比で2ケタ増を記録しています。ただし、これも記事にあるように、「経済活動が進み(企業の設備投資活動で)抑えていたものが出てきた」という見方は成り立たないことがないとはいいませんが、決して多くのエコノミストからの賛同が得られることはないような気もします。加えて、先行きについては、これまた、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック次第という面があるのは仕方ありません。日本でもすでに第3波に乗った感染者増が始まっていますし、しかも、政府はGoToキャンペーンをまだ続けるという感染拡大を後押しするかのような政策を取っています。この政策が後になってどう判断されるか、私はとても悲観的です。もちろん、海外では一歩先を行っていて、いくつかの欧州の国で再びロックダウン措置が取られています。他方で、ワクチン開発が進んでいるのも事実で、英国ではすでにワクチン接種が始まっているとの報道があります。何とも、足元から目先の経済予測すら見通し難いところです。少なくとも、機械受注が、というか、設備投資がこの先も一本調子で増加を続けるとはとても思えません。

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