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2021年1月31日 (日)

今シーズンの花粉の飛散はそろそろか?

先週月曜日の1月25日に、ウェザーニュースから花粉の飛散開始予想2021年が明らかにされています。下の画像は、ウェザーニュースのサイトから引用しています。

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見ての通り、東京では2月上旬から、京都や大阪では2月中旬から飛散が始まるとの予想となっています。関西よりも東京の方が早いようで、私はまったく意識していませんでした。というか、知りませんでした。サクラ前線なんかも同じで、関西よりも東京の方が早く咲き始めるんでしょうか。そのうちに情報が出てくると思います。ただし、本格的な飛散は2月に入ってからとはいえ、ウェザーニュースの記事のタイトルにもなっているように、敏感な向きにはすでに花粉を感じ始めている場合も少なくないようで、私もその1人です。さらに、今日のように気温が上がればなおさらです。

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この季節に、重要なポイントのひとつがマスクなのですが、おそらく、試したことはないものの、私の場合は布マスクはまったく機能しない可能性があり、従来から愛用していたマツキヨのマスクが1月から発売再開されましたので、早速に買い求めました。マツキヨのサイトから引用した上の画像の通りです。私は特定の商品をオススメするつもりはありませんし、画像にあるような「99%カットフィルター」の謳い文句はどこまで正しいのかどうかも判りませんが、マスクについては、フィルターとしてカットできるかどうかもさることながら、顔の形に沿ってスキマができないことの方もかなり重要であり、私の顔の造作にマツキヨのマスクが合っている、ということなのだろうと理解しています。

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2021年1月30日 (土)

今週の読書は経済書に歴史書にミステリに新書といっぱい盛りだくさん!!!

今週の読書は、経済書に歴史書にミステリに新書といっぱい盛りだくさんです。でも、そろそろ、多読を終えようかと考えています。

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まず、レベッカ・ヘンダーソン『資本主義の再構築』(日本経済新聞出版) です。著者は、英国出身で現在は米国ハーバード・ビジネス・スクールの研究者です。本書の英語の原題は Reimaging Capitalism であり、2020年の出版です。現在の世界を見渡して、我が国をはじめとして、いわゆる先進国はほぼほぼ例外なく政治的には民主主義、経済的には資本主義のシステムを基本としています。政治的には、言論や集会結社の自由がなかったり、野党指導者が帰国すると空港で逮捕されたりといった形で、民主主義ならざる権威的な体制を取っている国は、先進国以外では見かけなくもないですが、他方で、おそらく、経済的に市場における資源配分を基本とするという意味で資本主義以外の、例えば、中央司令経済のような社会主義とかのシステムを取っている国は、先進国はもちろん、途上国や新興国も含めて、私は寡聞にして知りません。まあ、世界のどこかにはあるのかも知れませんが、私は知りません。ということで、本書では、その世界にほぼほぼ普遍的な経済システムとして普及している資本主義について再考を促しています。その理由として本書冒頭で3点上げられており、環境破壊、経済格差、社会の仕組みの崩壊、です。ただし、経済学的に成長を意図的に抑制することにより、これらの課題を達成しようとするのではなく、経営学的に企業行動を変化させることを眼目としています。企業行動の変容を求める論調は決してめずらしくありませんが、かなり包括的で取りまとめているという意味では私には目新しい、というか、初めての読書でした。ESG投資という言葉があり、本書でも取り上げられていますが、決して、伝統的な経済学の見方である企業が利潤を最大化するという経済主体であることを外すことなく、利潤の最大化≠株主価値の最大化である、との観点からの議論を進めています。ついでながら、企業活動の目的を「株主価値の最大化」であるという考えを広めたのは、フリードマン教授であると本書では指摘されています。そして、資本主義の欠点としても3点上げており、外部生の価格づけの失敗、機会の自由を活かすスキルの欠如、企業によるルールの書き換え、を指摘しています。ただ、その昔のバブル経済期に日本企業の強みとしてあげられていた長期的な視点というのは、それほどの力点は置かれていません。リプトンのサステイナブルな紅茶の成功、ナイキのスウェットショップへの批判、あるいは、繰り返しになりますが、投資家のESG投資の重視による金融経済の変容、などなど、本書で展開されている資本主義をよりよくするための萌芽はアチコチに見られます。本書がとても優れているのは、これらについて、共有価値の創造、共通の価値観に根差した目的(purppose)・存在意義主導によるマネジメント、会計・金融・投資の仕組みの変革、個々の企業の枠を越えた業界横断的な自主規制、中央及び地方政府と企業の協力、などなどが必要であることを説き、しかも、必要性を強調するだけではなく、こうした企業行動が結局は企業収益にプラスになるという意味で十分な経済合理性があることを明らかにしている点です。ただ、物足りないのは、現在の資本主義で何が悪いのか、という現状分析が不足している点です。加えて、些末な点で著者が悪いわけではありませんが、p.272のシティズンズ・ユナイテッド判決の訳注は、明らかに問題があります。最後に、本書に触発された私の希望なのですが、1930年代の世界恐慌の中で、当時としては極めて新しいケインズ経済学が現れたのと同じように、現在の21世紀の閉塞感の中で、誰かケインズと同じような才能と意欲にあふれるエコノミストが新しい経済学を提案してくさないものかと期待しています。現在の経済はいわゆる「長期不況」secular stagnation にあり、そういったブレイクスルーが必要な段階に達しているような気がしてなりません。

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次に、浅川雅嗣『通貨・租税外交』(日本経済新聞出版) です。本書は、財務省キャリア官僚として次官級の財務官まで上り詰め、昨年からアジア開発銀行(ADB)の総裁に就任した著者に対して、日経新聞の記者がインタビューをした口述記録という形で取りまとめられています。とても異例な回顧録です。文章を書くのは官僚のお仕事の重要な部分を占めますので、著者の方で文章が苦手であるということは考えられませんので、新たな試みか、何らかの意図があるのであろうと想像しています。財務官の在任は本書にあるように4年に及びましたが、キャリアの官僚としては極めて異例の長さといえます。比較するのに適当な例ではないものの、私の場合、海外勤務では3年間が通常としても、国内勤務では内閣官房の官邸スタッフで3年、統計局勤務で2年半あまり、というのが長い方です。ただ、著者の場合、前任の山崎財務官(当時)がアジアインフラ投資銀行(AIIB)への英国をはじめとする欧州諸国の参加を見誤った懲罰人事で、急遽財務官に上がったとの誠にまことしやかな説がありますから、もしもそうだとすれば、前任者の任期も含まれてしまったのかもしれません。ということで、タイトル通りに通貨=為替と租税の大きな2部構成で、全8章構成のうち前半5章が通貨に当てられ、後半3章が租税に当てられています。ただし、通貨=為替については、日々刻々のニュースで取り扱われて、最新情報が明らかにされる一方で、水面下の交渉の経緯などはまったく明らかにされませんから、それなりに私は興味を持って読み進んだのですが、さすがに、「口が堅い」というか、いくつか、交渉のカウンターパートの固有名詞が明らかにされたり、SDRに中国の人民元を組み込む比率について、中国がやたらと高い比率を持ち出した、といったことくらいで、特に、為替市場介入については、聞き手の方で各章の最後に置かれている部分で、官邸とのやり取りが憶測で語られているだけで、目新しさはありませんでした。逆に、租税についてはアジアから初めてのOECD租税委員会議長に就任したということをはじめとして、リポートがいっぱい出版されていますし、制度論なんかも複雑で説明の甲斐があるのか、かなり内容が豊富です。特に、デジタル課税にも対応したOECDのBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)については、私のこのブログでも昨年2020年10月15日付けの記事で、OECDとG20の共同提案を取り上げていますが、とても詳しく紹介されています。税の世界は制度をはじめとしてホントに専門家でないと理解が及ばない場合が少なくないわけで、なかなかに興味深い内容でした。ただ1点だけ、私の知りうる範囲で補足すると、GAFAのホームグラウンドである米国がデジタル課税にやや不熱心、という趣旨の記述がありますが、他方で、米国の国外軽課税無形資産所得合算課税(GILTI)制度については何ら言及がなく、やや片手落ちな気もしなくもありません。最後に、通貨=為替については、エコノミスト的な解説はいくらでも出てくるような気がしますが、著者はそのエコノミスト的な見方はほとんど示していません。例えば、最近の日本ではかつてと違って円高に振れにくい状況になっているといわれていますが、その要因については、p.82で一般的によく上げられるいくつかのポイントに言及しているだけで、こういった点にはやや物足りないと感じる読者もいるかも知れません。でも、本書はそういうエコノミスト的な見方を展開する目的は持っていない、と考えるべきです。ですから、悪くいえば、新聞記者の提灯記事を拡大したものとの見方もあり得ようかという気はします。

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次に、森安孝夫『シルクロード世界史』(講談社選書メチエ) です。著者は、長らく大阪大学に在籍した歴史の研究者です。本書では、ご専門のシルクロードの中でも中央アジアに関する歴史をひも解いています。そして、本書のタイトルは、著者によれば、前近代のユーラシア大陸を中心に見た世界史、ということになります。その上で、歴史学としては近代的な西欧中心史学を否定し、アジア・ユーラシアこそが世界の中心であって、4大文明や古典古代のギリシア・ローマすら中央アジアからすれば周辺、ということになるようです。そして、この「周辺」という概念は、もちろん、ウォーラーステイン流の近代世界システム論から取られています。私は歴史については、基本的に、マルクス主義的な歴史観=唯物史観に立脚して、エコノミスト的に生産力中心主義であり、原始共産制、奴隷制、農奴制(中世)、資本制(近代)、といった発展段階を取るものと考えています。もっとも、その先が社会主義・共産主義に進むかどうかは、少なくとも現時点では実証されていません。これに対して、著者はp.42で展開するような8段解説、すなわち、(1)農業革命、(2)4大文明の登場、(3)鉄器革命、(4)騎馬遊牧民集団の登場、(5)中央ユーラシア型国家優勢時代、(6)火薬革命と海路によるグローバル化、(7)産業革命と鉄道・蒸気船(外燃機関)の登場、(8)自動車・航空機(内燃機関)と電信の登場、を取っています。地域的には、まさに、中央アジアというのは(4)や(5)の時代における中心的な役割を果たすわけです。また、この地域で中心になるのは、民族としてはウイグルとソグド、宗教としてはマニ教になります。本書でも指摘されている通り、いわゆる史料として現在に伝わる文書は、権力者あるいは政府や統治者の残した行政記録、宗教の記録、そして、公益というか商業の記録が主です。そして、著者の指摘に従えば、中央アジアは乾燥しているがゆえに紙や木簡・竹簡といった文書の記録媒体の保存状態がいいということらしいです。そうかも知れません。民族のウイグルとソグドについては、中国の元朝で「式目人」として重用されたわけですし、マニ教は今ではすっかり消滅した宗教ですが、ローマ初期にはキリスト教の最大のライバル的な勢力があり、カレンダーの日曜日を赤くするのはマニ教の影響ではないか、と指摘されたりしてます。お恥ずかしいことに、私の知らないことばっかりでした。最終章では、シルクロードと日本、と題して我が国をシルクロードの終着点と位置づけ、前近代の日本文化では、中国から伝わった稲作と発酵食品と漢字を別にすれば、青銅器・鉄器も、車輪も馬も、仏教はいうまでもなく粉食文化も、すべてシルクロードによって中国に伝わり、それが中国から直接あるいは朝鮮半島を通じて日本にもたらされた、と指摘しています。私自身がそれなりに歴史の興味あるとはいえ、分野も地域も不勉強で、知らないことがいっぱい詰まったいい読書だった気がします。

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次に、ジェフリー・ディーヴァー『ネヴァー・ゲーム』(文藝春秋) です。作者は、どんでん返しのミステリで有名な米国人のベストセラー作家です。本書の英語の原題は The Nevew Game であり、2019年の出版です。この作者の作品では、ニューヨークを拠点とするリンカーン・ライムを主人公とする物的な微細証拠を集めまくるのと、カリフォルニア州警察に所属してキネクシスというボディランゲージ分析を駆使する人間嘘発見器のキャサリン・ダンスを主人公とするシリーズを中心に私は読んでいて、特に、この作者を代表する前者のリンカーン・ライムのシリーズはすべて読んでいると思います。ということで、この作品はそのどちらでもなく、懸賞金ハンターを職業とするコルター・ショウを主人公としています。新しいシリーズです。というのも、通奏低音となっているのが、この主人公の家族、特に、15年前に亡くなった父親であって、警察では自殺とされたんですが、おそらく、何らかの陰謀が進んでいた結果の謀殺ないし殺人ではないか、と強く示唆されていて、主人公のところにその証拠を隠滅するためにゴロツキが送り込まれてきたりするわけです。ですから、本来のゲームに見立てた事件の解決も、それなりに面白くはあるんですが、この父親の事件の解決というのが、ひょっとしたら、永遠に終わらないテーマなのかもしれません。「エール」でやっていた「君の名は」で主人公の男女が永遠に出会えないのと同じです。それはさておき、私はやっぱりリンカーン・ライムが魅力的に見えます。ダンスの尋問も魅力的なんですが、どうしようもない個人的な能力で事件を解決するのに対して、ライムの方はさまざまなハードウェアを駆使しつつ地道に事件解決を図るからです。その上、私自身の人生経験と照らし合わせて、年齢とともに酒が飲みたくなるなんてのは、実に理解がはかどります。それから、作者のディーヴァーといえばどんでん返しのツイストな謎解きなんですが、段々と加害者、というか、犯人の方からのミスリードではなく、作者自身が勝手にミスリードされているようなストーリーが増えた気がします。その意味で、私はこの作者の作品の中では、『ウォッチ・メーカー』が最高傑作だった気がします。その後は必ずしも作品として質が上がったかどうかは疑問です。加えて、犯罪としてとても手が込んでいるのは認めますが、現実味が薄れていってきている気がしないでもありません。作家としては手の込んだプロットを考えて努力しているのには違いないのですが、現実からますます離れていって、地に足のつかないストーリーになっています。日本では綾辻行人の館シリーズのうちの『時計館』がもっとも壮大なトリックだったのですが、現実にはあり得ません。私が年取ったのだろうという気もしますが、もう少しライトなミステリに興味が移りつつあるのを実感しています。

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次に、菅義偉『政治家の覚悟』(文春文庫) です。著者は、流石に紹介するまでもなく、我が国の総理大臣です。私は単行本ではなく、上の表紙画像にあるように、文春新書で読みましたので、時事通信のニュースなどで指摘されているように、例の民主党政権時の東日本大震災対応に関係した公文書の重要性を指摘する記述は削除されています。その代わり、といっては何ですが、前の安倍内閣の時の官房長官として受けたインタビューがいくつか収録されています。どうでもいいことながら、私は京都府立図書館の公立図書館横断検索で前の2012年出版の単行本バージョンの『政治家の覚悟』を検索してみましたが、文春新書は13館が所蔵している一方で、旧版は何と所蔵はゼロでした。ついでに、使い慣れた東京都の公立図書館横断検索も試みましたが、ヒットしたのは都立図書館の1冊だけで、区立や市立の図書館からは一掃されているようです。ご参考まで。ということで、副題は「官僚を動かせ」となっています。私は政治家の経験はありませんが、公務員であれば定年まで長らく勤めていました。本書では、当然のことながら政治家の視点ですから、完了は新規の提案に否定的で、それを政治家として実現した、しかも、スピード感を持って実現した、というお話がオンパレードになっています。ですから、なかなか興味を引き立てるものがありません。おそらく、インタビューの内容を文章化したのではないか、と想像しますが、少なくとも、口述筆記そのままの印象が強く、それを基にそれなりのゴーストライターがまとめれば、もう少し読者の興味を引き立てる内容に取りまとめてくれるのではないか、という気すらします。おして、私の興味を引き立てない一因は、他の読者は違う観点を持つ可能性は否定しないものの、官僚を動かすやり方がほぼほぼムチを使っていることです。通常、「アメとムチ」と対にして使われますが、ほぼほほことごとくムチで官僚を動かそうとしているような例ばかりが取り上げられています。典型は、第6章 「伝家の宝刀」人事権の章であり、冒頭に総務大臣のころにNHK担当課長をう更迭したことを自慢話として書いています。というか、全編自慢話ばかりのつもりなんでしょうが、読む人が読めば背筋の寒くなるような強権的な行政運営であると受け止める向きもいっぱいある可能性を私は否定できません。その、「伝家の宝刀」を抜きまくって内閣総理大臣として人事権を官僚だけでなく閣僚にまで及ぼしているのですから、S.キングのホラー小説よりも怖い話です。公務員をバッシングしておけば国民の支持を得られるというのは、その昔の民主党政権の末路に示されているように私は考えるのですが、公文書の保管が十分でないので忘れ去られているのかもしれません。

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最後に、高嶋哲夫『「首都感染」後の日本』(宝島社新書) です。著者は、フィクションのパニック小説を数多く出版している小説家であり、本書のタイトルから用意に想像される以前の作品の『首都感染』は2010年に出版されています。当時の感染症の主たる注目だったH5N1などの鳥インフルエンザを取り上げています。コロナ前には3万部あまり売れた一方で、コロナ後は14万部あまり売れたと本書で紹介されています。私のこのブログでも2011年5月29日付けの読書感想文で取り上げています。ついでながら、本書でも触れられている『首都崩壊』も私は読んでいます。首都圏直下型地震に備えて、首都移転を模索する人々の心理や活動を描写しています。2014年3月21日付けの読書感想文です。ということで、タイトルに入っている『首都感染』を現在の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックと関連させつつ、実は、著者の主張の主眼は『首都崩壊』にあるんではないか、と感じさせたりもする内容です。というのも、ノッケからコロナ禍よりも、次なる災害、すなわち、首都圏直下型地震と南海トラフ地震であると高らかに宣言されており、少なくとも、昨年2020年4~5月の緊急事態宣言によるロックダウンは過剰であったといった趣旨で書き始められています。著者の主張も、私からすれば、もっともな部分もあります。それは、あまりに東京中心の視点でCOVID-19パンデミックが取り沙汰されている点です。まあ、判らないでもないですし、私も長らく役所に努めて東京に住んでいましたから、その時点では東京に特化した視点は特に違和感なかったんですが、京都に移り住んだ今となっては、日本人の残りの大部分は東京中心の視点を疑問に思っているかもしれません。例えば、日々のテレビニュースでは、東京については時系列のグラフで感染者数がプロットされているのに対して、そういった扱いを得ているのはほかには大阪府くらいのもので、京都府については日本地図で本日の感染者数のみが数字で示されるに過ぎません。その点から、著者が首都移転、あるいは、首都機能分散を危機管理の一環として主張するのも、パニック作品を多く手がけてきた作家らしいと感じてしまったりします。ただ、私自身はパーマネントな首都移転は問題の解決にならないような気もします。というのは、移転先は地震のリスク低い場所を選ぶとしても、東京の密さ加減が新首都に移ってしまえば、結局、感染症のリスクはそれほど変化ないことになるからです。その点で、私は東京が機能不全に陥った場合の首都機能の受け皿を形成することこそが必要そうな気がしています。更地に新首都を建設するのではなく、おそらく、実際的には大阪と名古屋くらいしか候補がなさそうですが、東京の機能をスムーズに受け継ぐことができる都市機能の整備が必要ではないでしょうか。ただし、本書の主張とは違って、それは大阪都構想ではなさそうに私は受け止めています。

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2021年1月29日 (金)

減産続く鉱工業生産指数(IIP)と正規雇用にシフトしつつある雇用統計をどう見るか?

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2020年12月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から△1.6%の減産でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による影響と考えるべきです。また、雇用統計については、失業率は前月から変わらず2.9%、有効求人倍率も前月と同じ1.06倍と、11月については雇用指標は底堅い動きを示していますが、COVID-19に関連した解雇・雇い止めにあった人数は見込みを含めて1月22日時点で83千人を超えています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

20年12月の鉱工業生産指数、2カ月連続低下 20年は13年以降で最低
経済産業省が29日発表した2020年12月の鉱工業生産指数速報値(2015年=100、季節調整済み)は前月比1.6%低下の93.2と、2カ月連続で低下した。ただ、20年10~12月期では6.2%の上昇と2四半期連続で上向いていることや、21年1月の企業見通しの回復傾向を踏まえ、経産省は生産の基調判断を「持ち直している」に据え置いた。
20年12月の生産を業種別にみると、15業種のうち10業種が前月比で低下し、5業種が上昇した。一般用蒸気タービンなどの汎用・業務用機械工業が前月までの需要増による反動減で3カ月ぶりに低下したほか、需要減によって自動車工業も低下した。
20年12月の出荷指数は92.3と前月から1.6%低下した。低下は2カ月連続。在庫指数は前月比1.1%上昇の95.3、在庫率指数は同2.0%上昇の113.6だった。
製造工業生産予測調査では、21年1月は8.9%の上昇、2月は0.3%の低下だった。例年の傾向などを踏まえて経産省がはじいた1月の補正値は4.4%の上昇となった。今回の調査は1月当初の計画に基づくもので、緊急事態宣言の発出や対象地域拡大の影響は十分に織り込んでいないという。先行きへの影響について経産省は「前回の宣言発出時ほど大きくはない」との見方を示したものの、「内外の感染拡大による経済の下振れリスクの高まりにも十分注意する必要がある」としている。
同時に発表した20年の鉱工業生産指数(原指数)は90.9と、現在の基準で比較可能な13年以降では最も低くなった。前年比では10.1%の低下と2年連続で低下。下げ幅も13年以降では最も大きかった。
20年の有効求人倍率、下げ幅45年ぶり大きさ 休業者最大
2020年の雇用情勢は大幅に悪化した。厚生労働省が29日発表した20年平均の有効求人倍率は1.18倍で前年比0.42ポイント低下した。下げ幅はオイルショックの影響があった1975年以来45年ぶりの大きさだ。総務省が同日発表した労働力調査によると20年平均の休業者数は過去最大となった。完全失業率は2.8%で11年ぶりに悪化した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す指標。19年は1.60倍で過去3番目の高水準だったが、20年は14年(1.09倍)以来の水準に低下した。働く意欲のある有効求職者数は6.9%増え182万人に達したのに対し、企業からの有効求人数は21%も減り216万人になった。
20年12月の単月でみた有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じ1.06倍だった。就業地別でみた都道府県ごとの有効求人倍率は最高の福井県が1.62倍で、最低の沖縄県が0.79倍だった。東京都は0.88倍で、7月から6カ月連続で1倍を割り込んだ。
20年の休業者は春の緊急事態宣言の発令後に大幅に増加した。昨年4月に597万人と過去最大に増え、6月まで高水準が続いた。20年平均の休業者数は前年から80万人増の256万人で比較可能な1968年以降最も多い。昨年12月時点では新型コロナウイルスの感染拡大前の水準にほぼ戻っているが、今年1月の再発令で再び急増する懸念もある。
休業者を除く雇用者の働く時間も減った。週35~42時間働いた人は全体の36.1%で前年比3.1ポイント増加した一方、週43時間以上働いた人は軒並み減少した。
20年の完全失業率は前年比0.4ポイント上昇した。リーマン・ショックの影響を受けた09年は前年から1.1ポイント上昇し、5.1%に悪化した。失業率はリーマン時ほどは悪化しなかったが、休業者の増加などで踏みとどまっているとみられる。
非正規雇用が特に厳しい。非正規社員は2090万人と75万人減少し、比較可能な14年以降で初めて減った。正社員は3539万人と前年に比べ36万人増加した。人手不足の産業が正社員を中心に採用を進めた。完全失業者は191万人で29万人増えた。
20年12月の就業者数は6666万人で9カ月連続で減少した。「勤め先や事業の都合」で離職した人は40万人で前年同月に比べ20万人増加した。11カ月連続の増加で、厳しい経営環境で解雇を迫られている企業が増えている。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は1月22日時点で8万3千人を超えた。厚労省が全国の労働局やハローワークを通じて集計した。解雇後の状況を把握できていないため、再就職できた人も含まれている。

やたらと長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は▲1.5%の減産との見込みでしたので、ほぼほぼジャストミートしています。ただ、産業別に季節調整済みの系列の前月との比較で詳しく見ると、増産は無機・有機化学工業+2.2%、その他工業+0.7%、電子部品・デバイス工業+0.7%が寄与度高い一方で、汎用・業務用機械工業が△11.7%、自動車工業△3.0%、電気・情報通信機械工業△2.4%など、我が国基幹産業の減産幅が大きくなっています。基本的に、欧米先進国向におけるCOVID-19感染拡大の影響による輸出の動向に起因していると私は考えています。特に、自動車工業は11月△4.5%に続く2か月連続の減産となっています。ですから、第2波までのCOVID-19で落ち込んだ分のペントアップ生産が一巡し、同時に、第3波のCOVID-19感染拡大の影響も出ているのではないか、と私は想像しています。ただ、1月の製造工業生産予測指数がとても強気な計画で上がってきており、補正なしなら+8.9%の増産、上方バイアスを補正しても+4.4%の増産ですから、実績の11月の減産△0.5%と12月の△1.6%を上回るリバウンドを見せる勢いです。特に、電子部品・デバイス工業、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業などで増産が見込まれています。この強気な1月生産計画とは逆に、2月は減産との見込みです。いずれにせよ、国内的には2月7日までの予定の緊急事態宣言が、1週間前になってもまったく見通せないんですから、経済の先行きがCOVID-19との連動を強める中で、もはや、エコノミストには経済見通しは不可能に近くなっているような気がします。鉱工業生産や出荷も同じことです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。まず、失業率について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは3.0%、有効求人倍率についても、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは1.05倍でしたので、いずれも前月統計から悪化と予想されていたのですが、実績はいずれもこの市場の事前コンセンサスよりも堅調であり、雇用が改善しつつあることを示しており、そこそこ雇用は底堅い、と私は認識しています。人口減少の経済的影響が人手不足としてまだ残っている可能性があるわけです。ただ、別の日経新聞の記事では、総務省統計局から「完全失業率は横ばいだが、就業者数は減少、完全失業者数は増加しており、いずれも悪い方向」との認識が示された旨が明らかにされています。もっとも、私は雇用全体として量的にはその通りという気がするものの、質的に正規雇用に切り替わっている点も見逃すべきではないと考えています。すなわち、役員を除く雇用者が2019年12月の5698万人から2020年12月には5626万人と1年間で△72万人減少している一方で、同じ期間の1年間に正規が3518万人から3534万人と+16万人増加し、非正規はといえば2179万人から2179万人から2093万人へと△86万人減っています。季節調整していない原系列ながら、なぜか、整合性がありません。それはともかく、従って、非正規比率は2019年12月の38.2%から2020年12月には37.2%へと△1%ポイント低下していたりします。全体の雇用としては減少しているわけですので、評価は単純ではなく難しいところですが、正規雇用の改善もそれなりに評価すべきと私は考えています。なお、統計局の労働力調査だけでなく、厚生労働省の職業紹介業務統計でも同様の傾向は見られ、例えば、12月統計で正規雇用の有効求人倍率が11月から上昇している一方で、パートの有効求人倍率は逆に低下していたりします。ですから、正規職員とパートの有効求人倍率の乖離は、2016年ころには0.8を超えていた時期もありますが、2020年12月には0.3まで縮小しています。あくまで相対的な評価ながら、パートへの就職が難しくなった一方で、正規職員への就職はそれほど難しくなくなった、とも評価できます。繰り返しになりますが、評価はそれほど単純ではありません。

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最後に、本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。いつものグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。季節調整済みの系列で見て、前月から▲2.2ポイント低下して329.6と、2か月連続で前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を前月までの「足踏みがみられる」から下方修正し、「弱含んでいる」としています。COVID-19により消費者マインドはかなり影響を受けています。

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2021年1月28日 (木)

2020年12月の商業販売統計に見る小売業販売額はコロナ禍で伸び悩み!!!

本日、経済産業省から昨年2020年12月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.3%減の14兆4340億円、季節調整済み指数では前月から▲0.8%の低下を記録しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波の感染拡大による影響と考えるべきです。日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを簡潔に報じる記事を引用すると以下の通りです。

20年12月の小売販売額、0.3%減
経済産業省が28日発表した2020年12月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.3%減の14兆4340億円だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が3.4%減の2兆1033億円だった。既存店ベースでは3.5%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.8%減の1兆234億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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昨年2020年12月の小売業販売額は明確に減少に転じました。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波の感染拡大が始まり、緊急事態宣言が出たのは年明けとはいえ、年末の繁忙期にはすでにカウントダウンに入っていましたので、市場価格で評価される小売業販売額には大きな影響あったといわざるを得ません。産業別に前年同月比で見て、暖冬の影響に伴う冬物衣料の販売不振などから、織物・衣服・身の回り品小売業が▲4.4%減を記録したほか、COVID-19の感染拡大の中でも堅調な伸びを示してきた飲食料品小売業でも前年同月比プラスは2020年4月から11月までしか続かず、12月は9か月ぶりのマイナスを記録し、しかも、▲1.4%減とそれなりに大きなマイナスを記録しました。他方で、2020年3月から前年同月比マイナスを続けている燃料小売業は、COVID-19が遠因をなしているとはいえ、国際商品市況における石油価格の下落に起因しています。他方で、いわゆる耐久消費財の中核となっている自動車小売業や電気を含む機械器具小売業については堅調な伸び、すなわち、自動車小売業+3.9%増、機械器具小売業+16.4%増を記録しています。他方、さまざまな商品構成となっているとはいえ、ネット通販を含む無店舗小売業も+5.5%増となっています。

最後に、グラフはありませんが、業態別の特徴としては、在宅勤務やテレワークの実施に伴って、コンビニの売上が伸び悩みを示しています。2020年に入ってCOVID-19パンデミックが拡大して、3月から12月まで前年同月比マイナスが続いています。2020年通年では▲4.4%減と、1998年10月に統計を開始して以来初めての前年割れだそうです。

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2021年1月27日 (水)

リクルートジョブズによる昨年2020年12月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

本日は、お昼に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定」のブログをポストしましたので、先月に続いて今月もリクルートワークスの平均時給調査の結果はパスしようかと考えないでもなかったんですが、2か月連続のパスは避けたいと思わないでもなく、今週金曜日明後日の1月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる昨年2020年12月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していて、11月にはとうとう前年同月比で+0.7%増まで上昇幅が縮小た後、12月になって+1.0%増にやや盛り返したのは上のグラフで見て取れると思います。他方、派遣スタッフの方は5月以降のデータが跳ねています。上のグラフの通り、11月にはとうとう前年同月比で+5.8%増に達し、12月にも+5.1%増を記録しています。派遣スタッフの時給の方は、どうやらCOVID-19に伴う正社員の代替需要のような気がします。ただし、正確には現時点で判断するのはややムリで、何があったのかは私には判りかねます。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は繰り返しになりますが、12月には+1。0%増の伸びまで縮小し、人手不足がメディアで盛んに報じられていた昨年暮れあたりの+3%を超える伸び率から比べるとかなり低下してきています。三大都市圏の12月度平均時給は前年同月より+1.0%、+11円増加の1,100円を記録しています。職種別では「事務系」(+30円、+2.7%)、「専門職系」(+30円、+2.5%)の2職種だけが増加を示し、「営業系」(△5円、△0.4%)、「販売・サービス系」(▲5円、▲0.5%)、「製造・物流・清掃系」(△8円、△0.7%)、「フード系」(▲11円、▲1.1%)の4職種で減少となっています。「フード系」が減少幅大きいのは、まさに、COVID-19の感染拡大の影響だと考えるべきです。「事務系」では電話対応が伸びており、これもCOVID-19の影響だと考えられます。「専門職系」では塾講師が+305円、+23.4%増と大きな伸びを見せています。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2020年4月統計まで1年近く連続して前年同月比マイナスを続けた後、5月以降は大きく増加し、12月も+83円増加、+5.1%増の1,713円に達しています。職種別では、「IT・技術系」(+45円、+2.1%)、「クリエイティブ系」(+32円、+1.8%)、「医療介護・教育系」(+16円、+1.1%)、「営業・販売・サービス系」(+4円、+0.3%)の4職種が前年同月比プラスとなり、マイナスは「オフィスワーク系」(▲9円、▲0.6%)だけにとどまっています。なお、12月統計で「営業・販売・サービス系」のうちの旅行関連が+61円、+4.2%増を記録していますが、GoToトラベルが大きく縮小されていますので、1月統計ではどこまで伸びるかは疑問です。ただ、地域別では関東・東海でプラス、関西でマイナスを記録しています。
1年近く前年同月比マイナスを続けてきた派遣スタッフの時給が5月からジャンプしたのですが、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めていますし、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、COVID-19の経済的な影響は5月ころに底を打ったように見えるものの、雇用については典型的には失業率などで景気動向に遅行するケースが少なくないことから、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性がまだ残されていると覚悟すべきです。同時に、相反することながら、意外と底堅いという印象もあります。この底堅さが、昨日の企業向けサービス価格指数(SPPI)の動きの背景をなしているのではないか、という気もします。

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国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定」やいかに?

昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。pdfの全文リポートもポストされています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は2021年+5.5%、2022年+4.2%と見込まれており、昨年2020年10月時点での「世界経済見通し」から2021年は+0.3%ポイント上方修正されました。2022年は変更ありません。

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まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economic Outlook Growth Projections を引用すると上の通りです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響により、昨年2020年は大きく成長率が落ち込んだものの、ワクチン開発への期待などについては不透明感はまだ強いものの、今年2021年はリバウンドが見込まれています。なお、上のテーブルに見られるように、日本の成長率については、2020年に△5.1%のマイナス成長と、先進国平均を下回る成長率であったにもかかわらず、今年2021年は+3.1%、来年2022年は+2.4%と、それなりのリバウンドを見せるものの、先進国平均を下回る成長率と見込まれています。

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その成長率の基礎、というか、GDPの水準を中国と先進国と中国を除く新興国・途上国の地域の3分割でプロットしたのが上のグラフです。IMFのリポートから Figure 1. Divergent Recoveries: WEO Forecast for Advanced Economies and Emerging Market and Developing Ecocnomies 引用しています。赤い折れ線グラフの中国はかなりのハイペースでCOVID-19パンデミック前の水準に戻りつつあるように見えますし、青の先進国もまずまずといったところですが、黄色の中国を除く新興国・途上国については、傾き=成長率こそもとに戻りつつありますが、GDPの水準を取り戻すのにはまだ時間がかかりそうです。

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そして、そのCOVID-19パンデミック前と比較したGDPの損失をもう少し詳しい地域別にプロットしたのが上のグラフです。IMFのリポートから Figure 4. GDP Losses Relative to Pre-COVID by Region 引用しています。米国のロスがもっとも小さく、次いで、権威主義国家として強力なロックダウンを実行した中国が続いています。もっとも損失が大きいのは中国を除くアジア新興国となっています。世界でもっとも死者数が多くなっている米国の産出ロスが小さいという結果には、違和感を覚えるエコノミストも少なくありません。要するに、国民の生命を犠牲にして経済を守った、という推測ができるかもしれません。もっとも、私が従来から主張しているポイントで、この推計には機会費用や外部経済が含まれておらず、市場価格だけで試算した結果ではなかろうか、と想像しています。COVID-19で死亡した米国人の生命の価値はゼロとされているのではないか、と危惧しています。日本政府も第3次補正予算にしつこくGoToトラベル事業の経費を積んでいます。ワクチンの開発が進んだとはいえ、COVID-19の感染拡大を許容し、すなわち、感染拡大による死者の増加を容認するかのごときGoToトラベル事業の推進などの経済活性化政策には私は強く反対します。

最後に、IMFの政策提言には、COVAXファシリティによるワクチンの全世界的な流通を確保するための多国間協力 "COVAX facility to accelerate access to vaccines for all countries" とか、不平等に対応して現金給付や低所得家計への医療費補助などの社会的扶助の強化 "strengthening social assistance as needed (for example, conditional cash transfers and medical payments for low-income households)" など、極めて必要性の高い政策がある一方で、いくつかの国では債務リストラが不可避 Debt restructuring may be unavoidable for some countries なんて、重要性も緊急性も極めて低い政策も上げられていたりします。

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2021年1月26日 (火)

2020年12月の企業向けサービス価格指数(SPPI)はやや下落幅を縮小させる!!!

本日、日銀から昨年2020年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は▲0.4%の下落でした。変動の大きな国際運輸を除くと▲0.2%の下落と、いずれもややマイナス幅を縮小させています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

20年12月の企業向けサービス価格、前年比0.4%下落 広告持ち直し
日銀が26日発表した2020年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.6と、前年同月比で0.4%下落した。下落は3カ月連続だが、広告価格の持ち直しを背景に11月と比べると下落幅は縮小した。
テレビ広告で企業に年内の予算を消化する動きがみられ、前年比のマイナス幅が縮小した。インターネット広告では自動車やキャッシュレス決済、動画配信サービスの広告需要が堅調との声があった。
一方、新型コロナウイルスの感染再拡大や、政府の需要喚起策「Go To トラベル」の中断を受け、宿泊サービスは前月から下げ幅を拡大した。
日銀は足元の感染再拡大で「一部に価格の下落圧力が強まる兆しがみられる」とし、今後も影響を注視する姿勢を示した。
20年の企業向けサービス価格指数は前年比0.8%上昇した。上昇は7年連続。伸び率は19年(1.1%)から縮小した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、前年同月比で見て広告の下げ幅縮小が寄与しています。すなわち、テレビ広告やインターネット広告を始めとする広告が11月△4.3%下落から12月には△1.6までマイナスを縮小させています。確かに、広告は景気に敏感な項目であり、景気悪化に歯止めがかかりつつある可能性を示唆しているわけですが、他方で、まだ前年同月比マイナスである点は忘れるべきではありません。大類別の前年同月比で見ても、広告こそマイナス幅を縮小させていますが、金融・保険、不動産、情報通信、リース・レンタルなど、軒並みマイナス幅が拡大しています。小類別として様々なコンポーネントを含む諸サービスは11月、12月ともに+0.2%の上昇を示しましたが、人手不足を反映した労働者派遣サービスや土木建築サービスはプラスを記録している一方で、GoToトラベル事業の影響で宿泊サービスは大きなマイナスとなっています。人手不足は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響をいくぶんなりとも緩和する方向に働いているのかもしれません。ただし、引用した記事にもあるように、第3波のCOVID-19感染拡大は価格の下押し要因になることは明らかです。物価目標を達成するために日銀は複雑なオペレーションを強いられることとなりそうです。

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2021年1月25日 (月)

やっぱりGoToトラベルは新型コロナウィルス(COVID-19)感染者増加に影響しているのか?

とても広く報じられているところで、京都大学の西浦博教授らのグループが Journal of Clinical Medicine 10(3) で明らかにした "Go To Travel" Campaign and Travel-Associated Coronavirus Disease 2019 Cases: A Descriptive Analysis, July-August 2020 という論文で、タイトル通りに、GoToトラベルは新型コロナウィルス(COVID-19)感染者増加に影響を及ぼしている可能性を示唆しています。今どきのことですから、pdfの全文ファイルもポストされています。論文の結論部分に当たる 3.Results から、ごく簡単に冒頭の2パラだけを引用すると以下の通りです。

3.Results
A total of 3978 confirmed COVID-19 cases were reported from 1 May to 31 August 2020 in 24 prefectures of Japan. Male individuals accounted for 57.3% of cases (2211 cases); the sex was unknown for 119 cases. The average patient age was 42.6 years. The presence of symptoms upon diagnosis was known for 3060 patients (76.9% of the total), involving 2150 mild cases (70.3% of cases with known symptoms) and 891 asymptomatic cases (29.1%).
Of the 3978 cases, 817 (20.1%) had a travel history across prefectural borders or a contact history with another person who crossed prefectural borders; we defined these as travel-associated cases. The average age of travel-associated cases was 36.2 years old, and that of the remaining cases was 44.2 years old (Figure 1A). The month of reporting for all confirmed cases is shown in Figure 1B, dominated by July with 2074 cases (52.7%), followed by August with 1597 cases (40.5%). There were 482 travel-associated cases (23.2%) in July and 289 cases (18.1%) in August 2020.

昨年2020年5月1日から8月31日まで、24都道府県から報告のあった新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染者3978例について、県境をまたぐ旅行歴ある人と、その接触歴ある人を travel-associated として感染確率を弾き出しています。もちろん、感染が確定 confirmation した日付と実際に感染したであろう日付は異なりますので、incidence rate ratio (IRR) を用いて95%の信頼区間で推定しています。そして最後に、"we believe that the present study provides critical insights into the epidemiological impact of the Go To Travel campaign on the transmission dynamics of COVID-19 in Japan" と結論しています。極めて妥当な結論ではなかろうかと私は考えています。エビデンスに基づく政策立案(EBPM)の必要性が高まっている中、こういった分析は極めて有益なものであろうと考えます。もっとも、私は専門外ですので Journal of Clinical Medicine というジャーナルのインパクトファクターは知りませんが、少なくとも、専門外の私でも名前を聞いたことのある New England Journal of Medicine とか、The Lancet ほどの権威はなさそうに感じています。

最後に、私が見た限り、西浦先生らの論文は IRR とか、epidemiological とか、私が見たこともない医学的な用語もなくはありませんが、基本的には統計学の英語が理解できれば、それほど難しくもありませんし、参考文献を除けば7ページと長くもありません。一番最初に取り上げたのはNHKニュースだと私は受け止めていて、こういったメディアの報道を引用してツイートしたりするするのもとてもいいんですが、私がよく学生諸君にオススメしているように、できるだけ原典に当たるのもいいんではないでしょうか?

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2021年1月24日 (日)

今日は東京で雪が降るのか?

私の住む京都南部では今雨が降っていますが、東京では雪に変わるそうです。
大学に通うために、自らの意図で大阪に下宿している下の倅と違って、上の倅は、私が自分の再就職のために勝手に関西に移り住んだため、東京に取り残してきてしまいました。まあ、大学も出て立派な社会人ですし、常識的な行動ができるように育て上げたつもりですので、それほど心配はしていませんが、大雪の可能性は低いとはいえ、天気だけはどうしようもありません。
下の画像は、上はウェザーニュースのサイトから、下は日本気象協会のサイトから、それぞれ引用しています。

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2021年1月23日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとしてミステリも含めて計5冊!!!

今週の読書は、経済書と教育に関する専門書、さらに、ミステリに新書まで含めて、以下の通りの計5冊です。大学の方の授業は今週で終わりましたが、まだまだ、次第では入試が始まったりして、時間的な余裕はできません。

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まず、竹森俊平『WEAK LINK』(日本経済新聞出版) です。著者は、慶應義塾大学の経済学の研究者であり、政府の経済財政諮問会議の民間議員も務めるエコノミストです。タイトルから明らかな通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックにさらされた世界、特に、経済について論じています。私は、当初、著者の専門分野が国際経済学ですから、グローバル・バリューチェン(GVC)の切断のお話かと想像していたんですが、それほど狭い分野に限定したわけではありません。すなわち、米国、欧州、中国、そしてもちろん日本も、それぞれの経済社会における切れやすい弱い輪=Weak Linkについて議論を展開しています。そして、それぞれ国や地域の弱い輪がCOVID-19パンデミックにつながっていると指摘しています。まず、序章で総括的な世界システムの概観をしてその想像と崩壊を見た後、第1章からは、スペイン風邪のパンデミックの歴史を振り返り、COVID-19との異同を論じるところからお話が始まります。事前予防のワクチンや事後治療の特効薬といった「決め手」がない中で、結局、ソーシャル・ディスタンシングに頼るしかない現状からの考察が始まります。本書ではないんですが、「ソーシャル・ディスタンシング」を単に1.5ないし2メートルの距離を保つという狭い意味ではなく、より広い意味で捉え、隔離やロックダウンも含めている文献がいくつかありました。本書もややそれに近い印象を私は受けました。そして、何より本書にいて、世界のCOVID-19対応の間違いの元ともいえる要因として、自信過剰(Hubric)が上げられます。もっとも、私のような唯物論者はこういった観念論はやや苦手だったりしますが、類書との差別化として判らなくもありません。そして、もうひとつの本書の特徴は中国が世界の「弱い輪」である可能性を示唆している点です。ただし、この「中国弱点論」は類書でもいっぱい見られます。例えば、パニック小説作家の高嶋哲夫の『「首都感染」後の日本』という宝島社新書を借りたんですが、タイトルに入っているパニック小説の『首都感染』で中心となる新型インフルエンザもFIFAワールドカップ開催中の中国の首都北京から世界に感染拡大する、という展開になっています。現在のCOVID-19の感染震源地が中国の重慶であることは広く報じられているとおりです。その上で、ソ連が崩壊して米国一強の世界が出現したことも、冷戦が終了したことも終章で否定しています。私はこの点は理解できませんからパスします。そして、本書が書かれた昨秋の時点では、山中先生の「Xファクター」ではありませんが、何らかの未知の要因で日本はCCOVID-19パンデミックにうまく対応していると考えられていたような気がしますが、本書では日本の対応についてかなり厳しい評価が下されています。いずれにせよ、私なんぞの凡庸なエコノミストは、経済外要因であるCOVID-19次第といいつつ、結局、先行き見通しに取り組むことを放棄しているんですが、さすがに一流エコノミストは先行きについて考えるべきヒントを与えてくれています。その点で、自信過剰(Hubric)という観念論を別にすれば、優れた論考であると私は受け止めています。

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次に、川口俊明『全国学力テストはなぜ失敗したのか』(岩波書店) です。著者は、教員養成大学の研究者であり、まさに、教育学などが専門のようです。本書では、2007年度から始まった、というか、再開された全国学力テストが失敗であると結論し、その理由は学力調査の基本的な設計ミスであると指摘しています。すなわち、「指導のためのテスト」と「政策のためのテスト」は違うと指摘し、現状を正確に把握するという観点が欠けていることを理由に上げています。加えて、官僚機構に起因する遠因として、現状を正確に把握して欠点を改善するという発想がなく、無謬主義に陥っている可能性を示唆しています。教育者ながら、私自身は全国学力テストについては詳しくありません。全国学力テストは義務教育の生徒や児童を対象にしているわけですので、大学教員の私からすれば、やや縁遠い関係です。ただ、本書で上げているように、テストには何種類かあるんですが、「指導のためのテスト」と「政策のためのテスト」のほかに、「選抜のためのテスト」があります。まさに先週末の大学入学共通テストをはじめとする受験のためのテストであり、20年ほど昔に私は公務員試験委員に併任されて、当時の国家公務員Ⅰ種経済職試験委員として、公務員試験を作成したことがあり、こういった「選抜のためのテスト」は一部の医大で男女間の不正操作があったとはいえ、国民の間でかなりの信頼を得ていると私は考えています。ただ、本書で取り上げている全国学力テストについては、経済協力開発機構(OECD)が主催するPISAのようなしっかりした設計がなされておらず、どのような能力=学力を計測しているのかがサッパリ判らない、という点につきます。ただ、直感的に判りやすい表現を本書から取ると、「指導のためのテスト」であれば、テスト結果だけでもって判断でき、全員が満点に近ければそれで十分なのですが、「政策のためのテスト」であればテスト結果だけでなく、親の学歴をはじめとする社会的属性といった生徒や児童の学力の背景にある要因を把握する必要があり、しかも、全員が満点であれば困ったことになり、適度に散らばった結果が好ましいといえます。ちなみに、私の経験した「選抜のためのテスト」であれば、学力の背景は不要で、テスト結果だけが重視されるべきなのですが、他方で、全員が満点だと選抜に困るので適度な散らばりがあるように設計する、という中間的なものとなります。いずれにせよ、全国学力テストは本来の目的である教育政策の改善にはまったく役立たず、むしろ、得点競争をあおって、例えば、大阪のようにこの得点を持って学校や教員を評価する、という誤った使われ方をしている弊害の方が大きい、との議論が余すところなく展開されています。

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次に、千田理緒『五色の殺人者』(東京創元社) です。著者は、新進のミステリ作家であり、この作品で本格ミステリの第30回鮎川哲也賞を受賞しデビューしています。ということで、高齢者介護施設のあずき荘が殺人の舞台となり、あずき荘で働く20歳代半ばの女性が主人公です。タイトル通りに、目撃者が逃走する犯人の着衣を赤・緑・白・黒・青のバラバラの5通りの色で証言し、その謎解きから始まります。しかも、凶器が見つかりません。高齢者介護施設ですので、当然のことながら、認知症患者も証言者に含まれており、警察の事情聴取も進みませんし、なかなか犯人探しは難航します。そこで、主人公ともうひとりの同じ年代の女性の介護職員が協力して犯人探しに取り組み、もちろん、最終的には謎が解き明かされる、というストーリーになります。ただし、5色の違いが一般的な方法で解消されたといえるかどうかは、ややビミョーなところです。東野圭吾のガリレオのシリーズほどではないものの、やや高齢者の色の見え方に関する専門的な知識が必要とされるような気がします。その点で、ノックスの十戒をクリアしているかどうかはビミョーですが、詳しく解説していますので、あるいは、OKなのかもしれません。色の誤任に加えて、人の誤任も少し反則のような気がします。これは色の誤任よりも反則度が大きいのですが、詳しく展開することは控えます。菅総理の答弁を控えると違って、ミステリですのでネタバレを避けたいと思います。もうひとつは、キャラの設定はそれなりに立っているわけで、まあ、高齢者ですから、ここまでワガママなことをいう人もいるのだろうとは想像しますが、謎解きに関連することがバレバレな場合もあって、その点は未熟な描写ともいえます。ただ、謎解きに関するキャラとそうではないキャラを、うまくごまかしながら設定するのであれば、ミスリードにはうってつけかもしれません。いずれにせよ、色の誤任も、人の誤任も、言葉のトリックである点は同じで、うまくミスリードされたと感じる読者がどこまでいるかは不明です。おそらく、言葉のトリックに対しては、作品の評価低くなる可能性の方が高そうな気もします。第2作が期待できるかどうかについては、ぞうも、私は次回作はパスするのではないか、と思います。

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次に、エノ・シュミットほか『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』(光文社新書) です。基本的に、ベーシックインカム(BI)に関する本なんですが、ほとんど、というか、まったくのように経済学のお話は出てきません。一部に直接民主制を取るスイスに置いてベーシックインカムを求める国民投票が実施されましたが、著者代表で上に名前を上げたシュミット氏はその国民投票を実現させた1人であり、スイスのアーティストです。ということで、経済学的な意味ではなく、ベーシックインカムをどのように捉えているかというのが本書のタイトルとなっています。昨年暮れの2020年12月27日に、ご寄贈いただいた松尾匡『左翼の逆襲』(講談社現代新書) を取り上げましたが、その帯に「人は生きているだけで価値がある!」と記されており、かなり近い物があると私は受け止めています。ベーシックインカムについては単に左派だけでなく、政府介入のミニマイズという観点から、リバタリアンや右派からも支持があります。昨年、ツイッターで竹中平蔵教授がベーシックインカムに賛成するツイートをしたのを見た記憶が私にもあります。ただ、その直後に、共産党の志位委員長がベーシックインカム反対のツイートをしたのには失望させたれました。共産党の内部でどこまでベーシックインカムについて議論されているのか私はまったく知りませんが、委員長のツイートに忖度する党員はいっぱいいそうな気がして、やや心配です。それは別にして、「働かざる者食うべからず」という昔からの道徳律に反して、人間としての能力を全面的に開花させるための所得の基礎という意味で、私はベーシックインカムに賛成ですし、今までのいくつかの社会実験の結果からもベーシックインカムが勤労意欲を大きく損じることはないと証明されています。ただ、我が国では、というか、世界各国でも同じなんでしょうが、財政収支に関する誤った懸念から、財源問題を解決した上でないとベーシックインカムが実現できないと考える向きは少なくないものと想像しています。本書はその懸念に応えるものではなく、財源よりもベーシックインカムの効果の方に着目しているわけですが、広くベーシックインカムに関する議論が展開されることは私も大賛成です。願わくは、私のように財源論を無視してでもベーシックインカムを採用する見方も広がって欲しいものです。いずれにせよ、経済的な観点ならざるベーシックインカム論も、とても面白いと感じました。

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最後に、スティーブン・グリーンブラット『暴君』(岩波新書) です。著者は、米国の大学のシェークスピア研究者であり、その分野における世界的権威であると紹介されています。英語の原題は Tyrant であり、2018年の出版です。邦訳タイトルはこの英語の原タイトルの直訳のようです。ということで、本書では、シェークスピアの暴君に関する疑問、すなわち、国民の利益ではなく私利私欲に走る暴君に、どうして多くの国民が屈服するのか、どうして、リチャード3世やマクベスのような暴君が王座に上るのか、という疑問です。もちろん、こういった暴君にまつわるシェークスピアの疑問が解き明かされるわけではありません。そうではなく、基本的人権とか、ましてや、言論の自由が確立されていない世界で、暴君に対する批判や避難は命を失うことにもなりかねない社会情勢の中で、シェークスピアがいかにシニカルかつ暗喩に満ちた劇作を続けてきたのか、という点に焦点が当てられています。直接に暴君を批判したり、避難したりすることができないというのは、日本でも同じことであった時代があるわけで、やっぱり、文学作品の中でも劇作に残されています。例えば、あまりにも有名な赤穂浪士の討ち入りは歌舞伎などの伝統劇で残っていますが、時代や登場人物をビミョーに現実とは異なるもので構成し、赤穂浪士の切腹という幕府の仕置きを避難するような雰囲気を漂わせつつ、赤穂浪士の義挙を称賛するような仕上げになっているわけです。他方、シェークスピアの劇もそうですし、赤穂浪士の劇もそうなんですが、本書が見落としているのは、そういった暴君をはじめとする権威筋への批判は、単に劇作家が持っていただけでなく、おそらく、世間一般、国民すべてではないまでも、それなりの影響力ある階層が権威への批判的な見方を支持していた可能性が高いと私は考えています。ですから、そういった暴君や権威筋への批判の雰囲気を持つ劇が大衆から支持され、客の入りもよかったんではないか、と私は想像します。シェークスピアの作品を作家のシェークスピアだけで完結させるのはムリがあります。その劇を楽しんだ客、たぶん、一般大衆ではなく、中間層から少し上のアパーミドルかもしれませんが、そういった芝居の客層も含めて、暴君や権威筋への批判や避難を考える必要があります。その意味で、少し物足りない論考だった気がします。

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2021年1月22日 (金)

日銀「展望リポート」と内閣府「中長期の経済財政に関する試算」と消費者物価(CPI)をあわせて考える!!!

まるで三題噺みたいなタイトルですが、昨日1月21日、日銀から「展望リポート」が、また、内閣府から「中長期の経済財政に関する試算」が、それぞれ公表されています。また、本日1月22日、総務省統計局から昨年2020年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。「展望リポート」では昨年2020年10月時点の見通しから、着実に上方修正がなされており、また、「中長期の経済財政に関する試算」では、公債等残高対GDP比は試算期間内は概ね横ばいで推移する一方で、成長実現ケースでは安定的な低下が見込まれる、と評価しています。消費者物価(CPI)上昇率については、季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲1.0%の下落と、5か月連続の下落を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.4%の下落を記録しました。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2020年度−5.7 ~ −5.4
<−5.6>
−0.7 ~ −0.5
<−0.5>
−0.8 ~ −0.6
<−0.6>
 10月時点の見通し−5.6 ~ −5.3
<−5.5>
−0.7 ~ −0.5
<−0.6>
−0.8 ~ −0.6
<−0.7>
 2021年度+3.3 ~ +4.0
<+3.9>
+0.3 ~ +0.5
<+0.5>
 10月時点の見通し+3.0 ~ +3.8
<+3.6>
+0.2 ~ +0.6
<+0.4>
 2022年度+1.5 ~ +2.0
<+1.8>
+0.7 ~ +0.8
<+0.7>
 10月時点の見通し+1.5 ~ +1.8
<+1.6>
+0.4 ~ +0.7
<+0.7>

まず、日銀「展望リポート」で示された2020~2022年度の政策委員の体制見通しのテーブルは上の通りです。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀のサイトからお願いします。ということで、日銀の前回の金融政策決定会合の開催が12月半ばでしたから、その後、今年に入ってから首都圏や京阪神などに緊急事態宣言が出されたというタイミングとなり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の動向にも注意が必要なところです。もちろん、COVID-19の感染拡大だけではないんですが、上のテーブルから明らかな通り、昨年2020年10月時点での見通しから、成長率は下方改定、物価は上方改定、という結果が示されています。これは、緊急事態宣言に伴う供給ショックという受け止めなんだろうと想像されます。すなわち、供給ショックでは、需要曲線は大きくシフトしない一方で、供給曲線が左方にシフトするわけですので、価格は上がって数量は下がります。ただ、物価動向に対して、経済外に近い影響を及ぼす要因がいくつかあり、「展望リポート」のp.4の脚注2で示されています。すなわち、GoToトラベル事業と携帯電話通信料金の引き下げや新たなプランの設定の影響です。前者のGoToトラベル事業による影響については、2020年度が△0.2%ポイント、2021年度が+0.1%ポイント、2022年度が+0.1%ポイント、との試算結果が示されている一方で、後者の携帯電話通信料金については、今回の物価見通しには織り込まれていません。ただ、もうひとつの大きな経済外要因として、東京オリンピックの開催の可否があります。これはさすがに、「展望リポート」には何の言及もありません。他方で、海外メディアの The Times のサイトで、"The Japanese government has privately concluded that the Tokyo Olympics will have to be cancelled because of the coronavirus, and the focus is now on securing the Games for the city in the next available year, 2032." と報じられています。国内にはあくまで虚偽答弁で押し通しながら、海外メディアを使ってアドバルーンを上げるとは、いかにも菅内閣の考えそうな、また、やりそうな陰湿なやり方だという気がします。私はもともと東京オリンピックは中止すべきと考えていますが、この内閣にはまったく信頼を寄せることが出来ません。

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続いて、昨日1月21日に、内閣府から公表された「中長期の経済財政に関する試算」の中の国・地方のPB(対GDP比)及び国・地方の公債等残高(対GDP比)のグラフを引用すると上の通りです。現在のようなCOVID-19感染拡大のコロナ禍においても、まだ、財政収支を期にしているエコノミストは少なくないと思いますが、私はフローの財政収支やストックの債務残高は経済学的にはほとんど意味がない、と考えています。現代貨幣理論(MMT)学派のように、独立した発券機能のある中央銀行を持ち、変動相場制を採用し、自国通貨建ての公債を発行しているのであれば、財政政策運営はインフレによって制約されるだけで、政府の支払い能力には問題はない、とまでは考えませんが、主流派の議論の中でもブランシャール教授のペーパーで分析されているように、成長率を下回る利子率でしかない場合、すなわち、動学的効率性を喪失している場合は、財政のサステイナビリティは問題ないという結果もあります。少なくとも、財政のサステイナビリティよりもCOVID-19の感染拡大防止、ひいては、インフレを招かない範囲で国民生活の安定の方がより重要だということに、多くのエコノミストに理解して欲しいと考えます。

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最後に、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。ということで、コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲1.1%でしたので、ジャストミートではないとしても、大きなサプライズはありませんでした。大きな物価下落は、一昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果の剥落もさることながら、エネルギーや政策要因の幼児向け教育あるいは高等教育の無償化やGoToトラベル事業に伴う部分が小さくありません。すなわち、CPIヘッドラインの前年同月比の下落△1.2%への寄与で見て、国際商品市況における石油価格の変動に伴ってエネルギーが△0.64%の寄与があり、大学授業料(私立)はさすがにウェイト小さく△0.04%の寄与にとどまるものの、GoToトラベル事業により宿泊料の寄与度も△0.40%に上っています。日銀金融政策の力不足を否定するものではありませんが、それだけで物価目標が達成されないと評価するにはやや厳しいところです。

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2021年1月21日 (木)

輸出金額が25か月ぶりに前年同月比プラスを記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2020年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+2.0%増の6兆7062億円、輸入額は▲11.6%減の5兆9552億円、差引き貿易収支は+7510億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年12月の貿易収支、7510億円の黒字 通年は3年ぶり黒字
財務省が21日発表した2020年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7510億円の黒字だった。黒字は6カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は9427億円の黒字だった。
輸出額は前年同月比2.0%増の6兆7062億円、輸入額は11.6%減の5兆9552億円だった。中国向け輸出額は10.2%増、輸入額は1.8%増だった。
併せて発表した20年の貿易収支は6747億円の黒字だった。通年ベースの黒字は3年ぶり。輸出額は19年比11.1%減の68兆4067億円、輸入額は13.8%減の67兆7320億円だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は+9427億円の黒字でしたので、やや市場予想よりも下振れたとはいえ、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。広く報じられている通り、貿易をはじめとする我が国の経済活動も新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けましたが、本日公表の貿易統計についても、かなりの程度に回復を見せている一方で、12月統計では輸入金額が前年同月比で11月からマイナス幅を拡大してます。現時点では、欧州をはじめとして世界的に再びロックダウンが広がっているとはいえ、諸外国の供給制約によるものではなく、COVID-19の第3波の影響による国内経済活動の伸び悩みに起因すると私は受け止めています。もちろん、輸出も輸入も上の季節調整済みの系列のグラフに見られる通り、最悪の時期は脱しています。他方で、ここ1~2か月で輸出の伸びが鈍化し、輸入はマイナスに転じているのが見て取れます。世界と日本におけるCOVID-19の影響に起因するとしか考えられません。従って、今後の先行きは極めて不透明です。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額指数の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国向けの輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。輸出金額について、季節調整していない原系列の貿易指数の前年同月比で見て、何と、25か月ぶり、すなわち、2018年11月以来のプラスの伸びを示しています。もっとも、輸出数量はまだ△0.1%のマイナスです。まあ、輸出数量についてもほぼほぼゼロにまで回復してきたと評価することは可能かもしれません。ただし、12月から年明けにかけて、COVID-19の第3波なのか、変異種による感染拡大なのか、私は専門外でよく判りませんが、感染がまたまた拡大しているように見えます。従って、我が国でも首都圏や京阪神を中心として都市部で緊急事態宣言が出たりしています。先行きははなはだ不透明と考えざるを得ません。

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2021年1月20日 (水)

世界経済フォーラムの The Global Risks Report 2021 やいかに?

昨日1月19日に、もうすぐ始まるダボス会議を主催する世界経済フォーラムから The Global Risks Report 2021 が明らかにされています。結局、昨年2020年の最大のリスクとして出現した Infectious diseases については、昨年のリポートでは Likelihood では10位にも入らず、Impact でようやく10番目に顔を出していただけなんですが、今年のリポートでは、当然ながら大きな見直しがあって、2年以内の短期の Clear and present dangers で堂々のトップリスクに上げられていたりします。

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まず、上のグラフは、リポートから Global Risks Horizon を引用しています。0~2年の短期、3~5年の中期、5~10年の長期、となっていて、短期は感染症、中期は資産バブル崩壊、長期は大量破壊兵器、がそれぞれトップリスクとされています。エコノミストの目から見て、青いバーチャートの経済的なリスクは短期と長期ではそれほど見当たらず、中期に集中しています。まあ、そうなのかもしれません。中期の経済的リスクとして上げられている資産バブル崩壊ほかについては、実は、現在のCOVID-19への対応として取られている財政支出拡大や低金利の政策が継続されれば、さらにリスクが大きくなることが考えられます。

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次に、上のグラフは、リポートから Global Risks Landscape を引用しています。上の画像の右下に小さくリストアップされていますが、リスクが現実化する蓋然性 likelihood の大きな順で並べると、(1) Extreme weather、(2) Human environmental damage、(3) Climate action failure、(4) Infectious diseases、(5) Biodiversity loss、の順となり、実は、緑色の環境関係が感染症以外でトップ5に4項目も入っていたりします。そして、リスクが顕在化した場合のインパクト impact の順では、(1) Infectious diseases、(2) Climate action failure、(3) Weapons of mass destruction、(4) Biodiversity loss、(5) Natural resource crises、の順となります。

ついでながら、1月4日に明らかにされている Eurasia Group の Top Risks for 2021 では、46* がトップに上げられています。すなわち、第46代米国大統領に就任するバイデン氏は asterisk presidency だということらしいです。具体的には、"Biden will emerge with the weakest mandate since Jimmy Carter in 1976. Few observers believe he will run for reelection in 2024." とリポートでは指摘しています。そして、Long COVID が2番めに上げられていて、3番めが Climate となっています。実は、Eurasia Group では、昨年のリポートは3月半ばになって、Coronavirus Edition と題して差替えリポートを明らかにしていたりします。まあ、世界経済フォーラムの昨年のリポートでも、COVID-19のリスクが必ずしも十分に評価されていなかったわけですし、2019年のリポートとか、2020年のリポートくらいまでは、少なくとも likelihood か impact のどちらかのトップ5のリスクに入っていた Natural disaster も忘れ去られようとしているような印象があります。「天災は忘れたころにやってくる」にならなければいいのですが、何とも先行きは見通し難く不透明感が払拭しきれません。

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2021年1月19日 (火)

労働政策研究・研修機構(JILPT)による「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査(第3回)」やいかに?

昨日1月18日、労働政策研究・研修機構(JILPT)から「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査(第3回)」の結果が公表されています。民間企業の雇用者とフリーランスで働く者に分けた調査なんですが、前者の民間企業雇用者に関する調査結果の要約をリポートから引用すると以下の通りです。

「民間企業の雇用者」に対する調査結果より
  • 新型コロナウイルス感染症に関連した影響の中心は、「収入の減少」へ
  • 4人に1人超が(前年はあったが)冬季賞与が減額、支給無しまたは未定に
  • 5人に1人が在宅勤務・テレワークを「3~5月(新型コロナウイルス感染拡大期)に初めて経験」するも、その半数超は12月には既に「行っていない」か、直近1ヶ月の日数が「減少」と回答
  • (現状では)約2/3が、在宅勤務・テレワークによる仕事の生産性・効率性は「低下する」と回答。効果的な実施が課題に

ということで、30ページのボリュームあるリポートなんですが、私の興味の範囲に従って、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、リポートからから 図表3 新型コロナウイルス感染症に関連した自身の雇用や収入にかかわる影響についての4・5・8・12月調査の定点比較 を引用しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の雇用や収入への影響につては、まったくないというのも考えにくいんですが、25%から30%近い回答がそうなっています。「大いに」と「ある程度」を合わせた影響があった回答は約40%を占め、あまり影響がなかったとの回答が30%余りとの結果です。この回答の比率については、感染拡大防止のための緊急事態宣言が初めて出された4月を別にすれば、5月以降はそれほど大きな変化はなかったんですが、どうも、その影響の中身が少し注目すべき変化を生じているようです。すなわち、影響の中心が、勤務日数や労働時間の減少から収入の減少へ着実にシフトしてきています。2020年前半の時期にはまだ雇用調整助成金などの措置もあって、勤務日数や労働時間が減少しても、企業からの給与は大きな減少がなかった一方で、徐々にお給料が減リ始めている、ということなんだろうと思います。とくに、年末12月にはボーナスの支給月なんですが、2019年まで支給されていた年末ボーナスが2020年には支給無し、支給は未定、わからないの合計で10%を越えています。

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次、上のグラフは、リポートからから 図表8 「在宅勤務・テレワーク」の4~11月における実施日数の変化 を引用しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大防止のための在宅勤務やテレワークについては、4月の緊急事態宣言から5月にかけて急速に拡大した後、7~8月にかけて揺り戻しがあり、7月以降はほぼ変化なしとなっています。8月にやや増えているのは、猛暑の影響ではないかとの分析が示されています。週1日以上の在宅勤務・テレワークを行っている割合が約55%と、リポートでは「定常状態」と呼んでいたりします。現在の緊急事態宣言では在宅勤務・テレワーク7割といわれていますので、週に3日以上で7割くらいが必要とされそうな気がしますが、その後の推移はどうなっているのか、気にかかるところです。

やはり、気がかりなのは最初のグラフから推測される所得への影響であり、緊急事態宣言を出すのであれば、もう一度、特定給付金を必要とする可能性を強く示唆した調査結果だと私は受け止めています。

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2021年1月18日 (月)

内閣府による今週の指標「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」やいかに?

先週金曜日の1月15日に、内閣府から『今週の指標』として、「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」が公表されています。まだ、年末年始の帰省旅行などのデータは含まれていませんが、昨年2020年4~6月期の緊急事態宣言の期間の分析もなされており、現在の首都圏や近畿圏などの緊急事態宣言に関する示唆を受け取る向きもいそうな気がします。いくつか、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、リポートから 国内旅行消費額 (目的別) を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期はもちろん、その後の夏休みを含む旅行のハイシーズンである7~9月期になっても旅行需要は低迷を継続しています。私は、緊急事態宣言が出た際には、解除されると元の生活が戻ってくるのかと期待しないでもなかったのですが、決して、緊急事態宣言前と同じ生活が戻ったわけではありません。旅行については大きく変容をしたわけであり、このあたりは、とても弁証法的な時間の進行だと感じています。

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続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、目的別の前年比 を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期と、その後の夏休みを含む7~9月期のそれぞれの前年同月比を比較しています。2020年4~6月期から7~9月期にかけて、いくぶんなりとも減少幅が縮小しているわけですが、ビジネス目的の「出張・業務」はそれほどの回復は見せていない一方で、「帰省・知人訪問等」、さらには「観光・レクリエーション」と娯楽度や自由度が高くなるほど、減少幅も小さければ、回復度合いも大きい、という結果が示されています。感染拡大という急所は大きく外したものの、旅行需要拡大の観点からは、GoToトラベルは評価される可能性があります。

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続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、同一都道府県内への宿泊旅行の割合 を引用しています。パンデミック前の2019年は押し並べて20%を少し下回る水準で推移していましたが、2020年に入って大きく割合が上昇しているのが見て取れます。グラフは引用しませんが、これに伴って、宿泊数も減少を示し、1泊旅行の割合が増加しているようです。従って、マクロの旅行需要の減少とともに、旅行形態として「少人数化」、「短期化」、「近距離化」などが進んだ可能性が示唆されている、と結論しています。

繰り返しになりますが、夏休みを含む7~9月期には、緊急事態宣言も明けましたし、旅行の娯楽度や自由度やが高いほど旅行需要は回復した、とのGoToトラベルの一定の効果を示唆する分析結果ではありますが、感染拡大という社会的コストを無視した議論であるといわざるを得ません。感染症については外部経済があまりにも大きく、市場で観察される私的なベネフィット-コストだけではなく、スピルオーバーも含めた社会的なベネフィット-コストの分析が必要です。従って、この点は大きく外しています。

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2021年1月17日 (日)

昨日、1月16日に宮古島でサクラサク!!!

昨日から大学入学共通テストが始まっていますが、実に縁起のいいことに、昨日夕刻の日本気象協会の日直主任のリポートによれば、宮古島でヒカンザクラ開花だそうです。まさにサクラサクです。

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上の画像は、日本気象協会のサイトから引用しています。
がんばれ受験生!

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2021年1月16日 (土)

今週の読書は通常通りの計4冊!!!

今週の読書は、経済書に教養書・専門書、さらに、学生諸君への参考のために新書まで含めて、以下の通りの計4冊です。

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まず、クラウス・シュワブ, & ティエリ・マルレ『グレート・リセット』(日経ナショナルジオグラフィック社) です。著者は、もうすぐ始まるダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)の会長とオンラインメディア『マンスリー・バロメーター』の代表です。英語の原タイトルは COVID-19: The Great Reset であり、2020年の出版です。本書では、タイトルから容易に想像されるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の後の世界について、それまでの世界がリセットされる、という印象で議論を進めています。視点は、マクロ、産業と企業、個人の3つなんですが、圧倒的なページ数がマクロに割かれています。そのマクロも、経済、社会的基盤、地政学、環境、テクノロジーとなっています。当然です。特に、資本主義のリセットが念頭に置かれている印象で、その目指す先はステークホルダー資本主義とされています。その昔に「勝ち組の集まり」と揶揄されたダボス会議の主催者とは思えないほどに、ネオリベな経済政策を反省し、リベラルな政策手段で格差を是正し、大きな政府が復活する可能性を論じています。特に印象的なのは、命と経済の間でトレードオフがあるのは別としても、命に圧倒的な比重を置いていて、命を犠牲にしてでも経済を守る姿勢を強く非難している点です。やや、私には意外でした。もっと、ポイントを絞った効率的な政策によって財政赤字が積み上がらないように、といった視点が飛び出す可能性を危惧していただけに、コロナがいろんなものの変容をもたらした、ということを実感させられました。少なくとも、現在の日本の菅内閣よりもずっと立派な視点だという気がします。いずれにせよ、世間一般で、リベラルな中道左派が描きそうな未来図ですから、特に、メディアで示されているメインストリームな未来像と大きな違いはないという気がします。おそらく、何が何でもオリンピックをやりたくて、「自助」を真っ先に持って来る日本の内閣の方が世界標準からして異常なんだろうという気がします。

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次に、ジャック・アタリ『命の経済』(プレジデント社) です。著者は、欧州を代表する有識者といえます。その昔のミッテラン社会党政権のブレーンだったわけですから、社会民主主義的な色彩の強い方向性が打ち出されています。フランス語の原題は L'Économie de la Vie であり、2020年の出版です。舷梯はされませんが、当然ながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)を中心とした議論が展開されています。感染対策として、中国が強く避難されるとともに、韓国が称賛されています。すなわち、中国の場合、事実誤認、というか、曲解や恣意的な解釈も含めて、初動に大きなミスがあり、そのため、権威主義国家らしく強権的なロックダウンに頼った感染拡大防止を図った一方で、韓国では検査・追跡・隔離といった科学的な手段が取られて感染拡大を防止した、と評価されています。その意味で、政府だけでなく企業や個人も含めて、「真実を語る」ことの重要性が何度も強調されています。ただし、その昔の「ジャパン・パッシング」よろしく、日本に関する評価、どころか、ほとんど記述すらありません。日本では、山中教授いうところの「ファクターX」があって、科学的方法論では解明しきれない要因により感染者数や死者数が抑制されてきたという説もあるようですから、科学的な一般化は難しいのかもしれません。でも、年末から年明けにかけて、ハッキリと欧州などと歩調を合わせる形で感染拡大が観察されますから、日本だけがファクターXによりCOVID-19の例外、というわけにいくハズもありません。国家や企業や国民のあり方について、スケールの大きな議論が展開されている一方で、決して難解ではなく、むしろ、心に響くような新鮮さを感じました。類書の中で、ここまでマスクの重要視を強調しているのは初めてでした。また、次のランシマン『民主主義の壊れ方』共関連して、「闘う民主主義」の5原則も興味深いものがありました。

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次に、デイヴィッド・ランシマン『民主主義の壊れ方』(白水社) です。著者は、英国ケンブリッジ大学の政治学教授であり、世界的な権威ある政治学の研究者だそうです。英語の原題は How Democracy Ends であり、2018年の出版です。どうでもいいことながら、同じ2018年の出版で How Democracies Die という学術書が米国ハーバード大学のレヴィツキー教授とジブラット教授により出版されていて、私はまったく読んでいませんし、専門外ながら、ソチラのほうが有名なんではないか、という気がしないでもありません。ということで、本書では、クーデタを始めとする暴力、災害などの大惨事、そして、テクノロジーの3つの観点から民主主義が終わる可能性について論じています。たぶん、米国トランプ政権の成立が本書のモティーフのひとつになっている気がしますが、最近の議事堂占拠なんて米国の暴力はスコープに入っているハズもありません。もう少し長い期間を考えていて、大惨事も不可抗力っぽい気がしますし、テクノロジーが主眼に据えられている印象で、例えば、「トランプは登場したが、いずれ退場していく。ザッカーバーグは居続ける。これが民主主義の未来である。」といったカンジです。デジタル技術は直接民主主義への道を開くと論ずる識者がいる一方で、本書のように民主主義を終わらせる可能性もあるということです。本書でも指摘されている通り、古典古代のギリシアにおける民主主義は終了を迎えました。原題の民主主義はヒトラーやファシズムといった暴力で覆されるとはとても思えませんが、新たに出現した民主主義への驚異はテクノロジーに限らず、いっぱいありそうな気がします。ですから、何もしないでノホホンとしていて民主主義が守れるとは限りませんし、アタリのように「闘う民主主義」を標榜しつつ、しっかりと自由と民主守護を守る姿勢が大事なのであろうと思います。いずれにせよ、哲人政治ならぬエピストクラシーと衆愚に陥るかもしれないデモクラシーと、どちらがいいかと問われれば難しい回答になります。最後に、センテンスが短い訳文は好感が持てるのですが、そもそも、章が長くて節とか、小見出しがいっさいなく、それなりに忍耐強くなければ読み進むのに苦労させられます。ご参考までのご注意でした。

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最後に、三浦佑之『読み解き古事記 神話篇』(朝日新書) です。著者は、古事記研究の碩学であり、三浦しをんの父親です。その昔の三浦しをんデビュー時は「三浦佑之の娘」と紹介されていた記憶もありますが、今ではどちらも同じくらいのウェイトか、あるいは、人によっては直木賞作家である三浦しをんの方をよく知っていたりするのかもしれません。ということで、古事記の神話編を歴史学というよりも、文学的かつ民俗学的に解釈した解説となっています。日本書紀と古事記には少し違いがあるようですが、私のような専門外の読者にはよく判りません。まあ、国作りの物語とか、出雲と伊勢の暗闘透とかはよく知られたところです。本書でもヤマタノオロチが出てきますし、因幡の白うさぎも登場します。中国で奇数が陽数とされるのに対して、日本では対になりやすい偶数が好まれ、三種の神器も、実は、剣と鏡は銅製であるのに対して、玉は翡翠製なので違うんではないか、という意見も表明されたりしています。そうかもしれません。常識的には知っているお話が多くて、ひとつだけ、神様のお名前が極めて何回、というか、現代日本人からすれば長ったらしいので覚えにくいんですが、それ以外は常識的な日本の教養人であれば、見知っていることと思います。でも、こういった碩学の本で改めて読み返すと有り難みがあるのはいうまでもありません。

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2021年1月15日 (金)

明日から始まる大学入学共通テスト、がんばれ受験生!!!

明日から、新装オープンなった大学入学共通テストが始まります。少子化が進んだとはいえ、みんな平等、全員合格、というわけには行きませんので、すべての受験生が実力を出し切って、後悔ないことを願っています。

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我がキャンパスの受験生は2000名を少し超える予定のようです。
がんばれ受験生!

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2021年最初の「さくらリポート」に見る地方経済やいかに?

昨日、日銀支店長会議にて「さくらリポート」(2021年1月) が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもポストされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、北海道の景気判断は下方修正された一方で、北陸、四国、九州・沖縄で景気判断が引き上げられています。その他のブロックでは据え置かれています。このブログでは暫定的に昨年2020年5月、ないし、4~6月期を景気の底と認定していますが、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大はまだ終息していないように見える一方で、地域の景気は上向いているところが多くなっています。

 【2020年7月判断】前回との比較【2020年10月判断】
北海道新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあり、足もとでは持ち直しのペースが鈍化している
東北厳しい状態にあるが、持ち直しの動きがみられている厳しい状態にあるが、持ち直しの動きがみられている
北陸下げ止まっているものの、厳しい状態にある厳しい状態にあるが、持ち直しつつある
関東甲信越内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している。ただし、足もとではサービス消費を中心に感染症の再拡大の影響がみられている
東海厳しい状態が続く中でも、持ち直している厳しい状態が続く中でも、持ち直している
近畿新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状態にあるが、足もとでは、持ち直しの動きがみられる新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状態にあるが、全体として持ち直しの動きが続いている
中国新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続いているものの、持ち直しの動きがみられている新型コロナウイルス感染症の影響から、依然として厳しい状態にあるが、持ち直しの動きが続いている
四国新型コロナウイルス感染症の影響から、弱い動きが続いている新型コロナウイルス感染症の影響から一部に足踏み感もあるが、全体としては持ち直しの動きがみられている
九州・沖縄持ち直しの動きがみられるものの、厳しい状態にある厳しい状態にあるものの、持ち直しつつある

前回、昨年2020年10月時点でのリポートでは、四国ブロックを唯一の例外として、その他の地域はすべて景気判断が改善を示していましたが、さすがに、年末からの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を受けて、地域経済の回復にもブレーキがかかった格好です。もともと、COVID-19の影響からの景気の回復は決してV字回復ではなく、かなりの時間を要すると考えられていましたので、大きなサプライズはありません。ただし、この「さくらリポート」は景気の総括判断だけではなく、需要などのコンポーネントとして、公共投資、設備投資、個人消費、住宅投資、生産、雇用・所得についても、同じように判断が示されていますが、設備投資、個人消費、住宅投資の3つのGDPコンポーネントについては全体的に弱い動きが続いている印象ですが、生産については持ち直しないし増加という方向が報告されており、輸出主導の形となっている可能性が示唆されている、と私は受け止めています。ただし、昨年末から日本だけでなく欧州などでもCOVID-19感染拡大防止のためのロックダウン措置が広がっており、輸出が景気拡大を牽引するかどうかは、かなり不確実性が高い、といわざるを得ません。

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2021年1月14日 (木)

2か月連続で増加を示す機械受注と大きな下落が続く企業物価指数(PPI)!!!

本日、内閣府から昨年2020年11月の機械受注が、また、日銀から昨年2020年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+1.5%増の8548億円と、まだまだ受注額は低水準ながら、2か月連続でプラスの伸びを記録しています。また、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲2.0%の下落を示しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

20年11月の機械受注、1.5%増 通信伸びる、基調判断を上方修正
内閣府が14日発表した2020年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は、前月比1.5%増の8548億円だった。2カ月連続の増加で、QUICKがまとめた民間予測の中央値(6.5%減)を上回った。内閣府は基調判断を「下げ止まっている」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。判断の上方修正は2カ月連続。
内訳を見ると、製造業の受注額は前月比2.4%減の3452億円だった。3カ月ぶりの減少で、17業種のうち6業種で増加、11業種で減少した。非鉄金属などで10月に大きく伸びた反動が出た。
非製造業は5.6%増の5109億円と、3カ月連続で増加した。通信業や建設業が伸びた。内閣府の担当者は「通信業では次世代通信規格の5G投資などで、ネットワーク関連機器を含む通信機が増加したと推測している」と話した。
受注総額は1.5%減、外需の受注額は5.9%増、官公需の受注額は0.4%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は11.3%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
20年12月の企業物価指数、前月比0.5%上昇 上昇は4カ月ぶり
日銀が14日発表した2020年12月の企業物価指数(15年平均=100)は100.3と、前月比で0.5%上昇した。前月比の上昇は4カ月ぶりで、石油製品を中心とした値上がりが寄与した。一方、前年同月比では2.0%下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。一部の国で新型コロナウイルスワクチンの接種が開始され、景気回復への期待が高まったことや、米国で原油在庫が減少したことから、11月から12月にかけて原油価格が上昇した。銅やアルミニウムの国際市況の値上がりも企業物価を押し上げた。
円ベースでの輸出物価は前年同月比1.3%下落、前月比では0.8%上昇した。円ベースでの輸入物価は前年同月比で9.8%下落、前月比では1.9%上昇した。
20年(暦年)の企業物価指数は100.3と、前年に比べて1.2%下落した。20年春の新型コロナ感染拡大で原油価格が一時、大幅に下落したことが響いた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前月比で▲6.5%減、レンジの上限でも+1.0%増でしたから、この上限を突き抜けて、ややサプライズとなりました。季節調整済み系列のの前月比で見て、製造業は前月10月統計の+11.4%増の反動もあって、直近で利用可能な11月統計では△2.4%減と減少を記録しましたが、船舶と電力を除くコア非製造業が10月統計の+13.8%像に続いて、11月も+5.6%増となっています。非製造業の中でも、通信業が+41.6%増と大きな伸びを示し、引用した記事にあるように、「次世代通信規格の5G投資などで、ネットワーク関連機器を含む通信機が増加した」のかもしれません。いずれにせよ、コア機械受注は10月の2ケタ増に続いて11月もわずかとはいえプラスを記録したことから、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「下げ止まっている」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正しています。コア機械受注が市場の事前コンセンサスを超えた伸びを示していることに加えて、機械受注の先行指標とされる外需も10月+20.7%増の大きな伸びに続いて、11月も+5.9%増と堅調に推移しており、こういった条件を踏まえての基調判断の修正なのですが、いかんせん、12月は日本国内でも、欧州をはじめとした海外でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックが拡大しているだけに、まったく疑問がないわけではありません。もちろん、数字だけを見れば、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期のコア機械受注は2兆5698億円で、月単位なら8566億円となりますから、11月統計の8548億円はほぼほぼパンデミック前の水準に回帰したといえますし、質的な面を考えても、中国ではCOVID-19がかなりの程度に終息したとか、イレギュラーな大型案件ではなく通信業の5G投資という将来を見据えた実需であるとか、それなりの根拠はないわけではありませんが、12月統計も見たい気がする私としては、やや拙速な判断である可能性は指摘しておきたいと思います。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、先の機械受注と同じく、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比が▲2.2%の下落でしたし、前月11月の実績△2.3%ほどの大きな下落ではありませんでしたので、実績の△2.0%はやや上振れはしましたが、一昨年2019年10月からの消費税率引上げ効果の剥落があるとはいえ、まだまだ日銀の物価目標とは整合的ではないといわざるをえません。加えて、引用した記事にあるように、4か月ぶりの前月比プラス、+0.5%を記録しましたが、そのほぼほぼ半分に当たる+0.25%はガソリンをはじめとする石油・石炭製品の寄与であり、残り半分の半分に当たる+0.11%は非鉄金属、特に国際商品市況に連動した銅地金などの寄与すから、それほど楽観的になれるハズもありません。

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2021年1月13日 (水)

ダイヤモンド・オンラインによる「生活満足度」が高い都道府県ランキングやいかに?

本日、ダイヤモンド・オンラインにて「生活満足度」が高い都道府県ランキング2020【完全版】が明らかにされています。昨年2020年8月の「消滅しない」都道府県ランキング【2020完全版】、同じく9月の都道府県「幸福度」ランキング2020【完全版】、さらに、同じく10月の都道府県魅力度ランキング2020【47都道府県・完全版】、さらにさらにで、12月の住みたい都道府県ランキング2020【47都道府県・完全版】などなどに続くシリーズであり、いずれもダイヤモンドとブランド総合研究所の共同調査の結果だそうです。以下の通りです。

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こういったランキングでは、北陸3県が上位に来て、東北や九州の評価が低い、という結果をついつい想像しがちなのですが、沖縄県がトップに躍り出ています。統計的には、沖縄県は平均所得でほぼほぼ常に最下位な気がするのですが、その分、物価が安くて、収入に依存せずに得られる生活満足度が高い可能性が指摘されています。また、鳥取県が昨年のランクからジャンプアップしていますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染確認数が全国最少で、人口比でも最少クラスに抑えるなど、COVID-19感染対策に成功していることが要因として分析されています。私が住む京都府とか、近隣の大阪府などは、まあ、こんなもんなんでしょうね。でも、京都府や大阪府に比べて、兵庫県のランクが高くなっています。

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ということで、それほど強い関係はないながら、Aera dot. のサイトから感染者数の推移と主な出来事のグラフを引用すると上の通りです。引用元の記事のタイトルは「菅首相『年末年始は感染者減少』と致命的な読み違えも 無策が招いた感染拡大」となっています。何ら、ご参考まで。

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2021年1月12日 (火)

大きく低下した12月の景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支の先行きやいかに?

本日、内閣府から昨年2020年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲10.1ポイント低下の35.5を示した一方で、先行き判断DIは+0.6ポイント上昇の37.1を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆8784億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、米国や中国向けの自動車輸出などが回復している一方、輸入は原油を中心に前年同月から減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

20年12月の街角景気、現状判断指数は2カ月連続悪化
内閣府が12日発表した2020年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は35.5で、前の月に比べて10.1ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は37.1で、0.6ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。
内閣府は基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさが残る中で、持ち直しに弱さがみられる」から「新型コロナの影響により、このところ弱さがみられる」に変更した。
20年11月の経常収支、1兆8784億円の黒字 77カ月連続黒字
財務省が12日発表した2020年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8784億円の黒字だった。黒字は77カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆5500億円の黒字だった。
貿易収支は6161億円の黒字、第1次所得収支は1兆7244億円の黒字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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よく知られているように、消費者マインド指標としては、本日公表の景気ウォッチャーとともに消費者態度指数があり、どちらもこのブログで取り上げているところながら、消費者態度指数はダイレクトに消費者世帯のマインドを調査しているのに対して、景気ウォッチャーは消費者マインドを反映しそうな事業者の供給サイドの指標となっています。ということで、先行き判断DIがわずかながら上昇した一方で、現状判断DIは10月の54.5から11月には前月差▲8.9ポイント低下の45.6に落ちた後、さらに、12月統計では▲10.1ポイントの低下で35.5まで下げてしまいました。このため、引用した記事にある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」から「このところ弱さがみられる」に変更しています。いうまでもなく、悪化の大きな要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大であり、逆に、先行き判断DIは感染拡大が終息に向かうことを期待している可能性があると私は受け止めています。ですから、12月統計の現状判断DIを少し詳しく見ると、企業動向関連では、製造業・非製造業ともに前月差マイナスなのですが、非製造業のほうが大きな落ち込みを示していますし、家計動向関連では、飲食関連が▲20.5ポイント、サービス関連が▲19.9ポイントといずれも大きなマイナスを記録しています。先行きについては、繰り返しになりますが、先行き判断DIがわずかながらプラスを示しており、COVID-19終息期待があると想像されますが、もう、エコノミストの領域ではなさそうな気がしています。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性がある一方で、第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えています。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいましたが、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の11月統計でも貿易黒字が拡大しいています。ただし、輸出の増加というよりは、国内景気に下がっ連動した輸入の減少に起因している面が強いと私は受け止めています。いずれにせよ、欧州でCOVID-19第3波によりロックダウンに入っている国もあり、あらゆる経済指標の先行きはCOVID-19次第と考えざるを得ません。

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2021年1月11日 (月)

木元哉多「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズ7巻を読み終える!!!

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昨夜、「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズ全7巻を読み終えました。小説というよりは、NHKのドラマ、中条あやみ主演で一部に話題になっていたような気がします。ドラマは見ていないのですが、いかにもドラマにしやすそうな短編、かつ、安楽椅子探偵ミステリです。もっとも、それは5巻までで、しかも5巻には沙羅の日常が挿入されていたり、あるいは、犯人当てが成功しなかったりと、少しバリエーションをもたせています。最後の6巻と7巻は長編で、似通ったテーマで、いかにも種切れをカンジさせる微笑ましい終わり方です。閻魔堂沙羅という警察ならざる超越存在が裁いていますので、物証ではなく論理性が重視されているという意味で、それなりに本格ミステリに仕上がっています。

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2021年1月10日 (日)

年末年始からの読書は2週間かかってもわずかに6冊か?

年末年始の2週間に読んだ読書です。ただし、この年末年始の読書は、「鬼滅の刃」のコミック全23巻が中心で、また、中条あやみ主演のNHKドラマで話題になったことから、最近まで『閻魔堂沙羅の推理綺譚』の原作全7巻も読んでいましたので、それとは別枠の通常読書ということになります。このお正月は初詣に出かけることすらなく、ほぼほぼ家で引きこもっていましたから、私の場合、かなり大量の読書をこなしたように思います。ハッキリいって、以下に取り上げた数冊のうちの専門書や教養書については、それほど印象に残るいい読書をした気もしませんから、まあ、すでに忘れ始めているものもあり、簡単なコメントで済ませておきたいと思います。ただし、定評あるミステリ作家の東野圭吾と伊坂幸太郎によるエンタメ小説2冊は面白かったです。コチラは2冊とも大学生協の本屋さんで1割引きで買い求めたもので、買ったかいがありました。

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まず、日本経済新聞社[編]『これからの日本の論点2021』(日本経済新聞出版) です。日本経済、日本企業、世界の3章に渡って、日経新聞の記者が23の論点を取り上げて、先行きの見通しなどをリポートしています。もっとも、脱炭素とか、ジョブ型の雇用とか、どうも誤解、というか、曲解に基づくリポートも見受けられます。第3章の世界の今後については、何分、米国大統領選挙の行方が判然としない段階だったものですから、決定的・断定的な結論が下せていません。バイデン大統領の就任後もしばらくはそうなのかもしれません。でも、米中関係が画期的に改善することもないのだろうという結論は、それなりに受け入れられやすい気もします。何といっても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックの先行きが誰にもわからないものですから、日本も世界も、経済も政治も社会も、今年2021年がどのようになるかはハッキリしません。もっとも恐ろしいのは、現在の菅内閣がCOVID-19パンデミックについて、ほとんど何も理解していないようにすら見える点です。おそらく、無知や無理解に基づく対応の誤りなのではないかと、私自身は善意に受け止めているんですが、尾身先生がついていてすらこうなのですから、悪くいえば反知性的な対応を取っているようにすら見えかねません。尾身先生ですらダメなのですからどうしようもないこととは思いますが、別の誰かが、ちゃんと科学的な見方を教えてあげればいいのに、とすら思えてしまいます。

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次に、冨山和彦『コーポレート・トランスフォーメーション』(文藝春秋) です。これも、どうしようもなくありきたりなコンサルの見方を示しているだけで、何の目新しさもありません。データ・トランスフォーメーションのDXにならって、コーポレート・トランスフォーメーションをCXとしているだけで、プレゼンコトコンサルらしくてお上手なんですが、ほとんど何の中身もないと私は見ました。それから、これもコンサルですから仕方ありませんが、上から目線で、今の日本企業の欠陥をあげつらっているだけです。詳しい人からすれば、こんなこと、まだいってるの、というカンジかもしれません。前の『コロナショック・サバイバル』の続編であり、前作がそれなりに面白かったので図書館で借りて読んでみましたが、本編たる本書は決して出来はよくありません。買っていれば大損だったかもしれません。

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次に、ケネス B. パイル『アメリカの世紀と日本』(みすず書房) です。本書も、日本の対米従属を解き明かす鍵があるかと思って読んだのですが、ボリュームほどの内容の充実はありませんでした。日米関係史ではなく、あくまで米国史の中に日本を位置づけているわけで、その意味で、読ませどころはペリーによる開国の要求ではなく、むしろ、第2次世界対戦からコチラの現代史につながる部分なんだろうと思いますが、その中で、第2次世界大戦が終結する前に、米国は明確に「無条件降伏」による戦争の終わり方を目指していた、という下りには目を啓かれるものがありました。ただし、その後の戦後処理から現在に至るまで、米国のサイドから軍事を起点に、外交・政治、経済・社会、そして最終的に生活や文化に至るまで、いかに日本の対米従属を進めたか、そして、日本のエリート支配層がそれをいかに受け入れていったか、といったあたりにはやや物足りないものが残りました。もちろん、経済史ではなくあくまでプレーンな歴史学の研究成果でしょうから、仕方ないのかもしれません。

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次に、東野圭吾『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』(光文社) です。父親が殺されたアラサーの主人公の視点によるミステリです。なぜか、それほど面識ない叔父、すなわち、殺された父親の弟が事件解決に乗り出します。米国で手品師として成功しただけに手先の器用さや誘導尋問をはじめとする心理戦には強く、ややミステリとしては反則な気がしますが、科学的知識の「ガリレオ」シリーズほどの反則ではありません。いずれにせよ、「ガリレオ」シリーズと違って、ノックスの十戒に反しているわけではないと私は受け止めています。

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次に、伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社) です。短編集です。「逆ソクラテス」、「スロウではない」、「非オプティマス」、「アンスポーツマンライク」、「逆ワシントン」の5篇からなっており、私はタイトルにもなっている最初の「逆ソクラテス」は読んだ記憶があり、教員になって改めて「褒めて伸ばす」教育方針の重要性を認識させられています。ほかも、主人公は基本的に小学生、あるいは、せいぜいが中学生といった少年少女の視点からの小説です。バスケットボールや教師の磯憲などでつながりある短編も見受けられますが、すべての短編がつながっているわけではありません。でも、著者独特の正義感が感じられて、私はとても好きです。

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最後に、林望『定年後の作法』(ちくま新書) です。著者は、私にはよく判りません。本書の中で、自分で自ら「ベストセラーを書いた」旨を書いていますので、文筆業なのかもしれません。タイトルからしてそうなのですが、上から目線の押し付けがましい内容です。それを受け入れられる人にはいいのかもしれませんが、そうでなければ迷惑に感じそうな気すらします。本書ん冒頭から男女の枠割分担のような観点がポンポンと飛び出し、さすがに後半ではエディターのご注意があったのか、かなり減りますが、ここまで男女の枠割分担を明確にしているのは最近ではめずらしいかもしれません。ほかにも、定年後は1日2食でいいとか、大丈夫かね、エディターはちゃんと見てるのかね、と思わせるヘンな部分満載です。何よりも、定年前の50歳で早期退職したと自ら定年を迎えたことがないことを明らかにしているにも関わらず、こういった本を書かせるエディターの真意を測りかねます。年末年始で最大のムダな読書でした、というか、ここ10年でもまれに見るムダな時間の潰し方だった気がします。

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2021年1月 9日 (土)

再びコロナ禍で悪化に転じた2020年12月の米国雇用統計から何を読み取るべきか?

日本時間の昨夜、米国労働省から昨年2020年12月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の大幅減の後、5月統計からはリバウンドしていましたが、感染拡大を受けて12月には▲140千人減を記録し減少に転じました。同じく、失業率も一気に悪化した4月からのリバウンドが続ていましたが、12月は前月と同じく横ばいの6.7%でした。いずれにせよ、COVID-19前の昨年2019年11~12月や今年2020年2月には失業率は3.5%だったわけですから、それらと比べるとまだ2倍近いの水準であることも確かです。いずれも季節調整済みの系列です。まず、やや長くなりますが、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の11パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy loses 140,000 jobs in December as unemployment holds at 6.7% amid COVID-19 spikes
U.S. employers shed 140,000 jobs in December amid COVID-19 surges and new business constraints, closing out a dismal year with the first payroll losses since the pandemic upended the economy last spring.
Restaurants and bars hemorrhaged jobs, and the report kicks off a potentially brutal winter as the nation awaits wide distribution of a vaccine that should pave the way for brighter days.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, held steady at 6.7%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 50,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Leisure and hospitality, including bars and restaurants, drove last month's job losses, shedding 498,000 positions.
State and local governments, which are coping with massive pandemic-related revenue declines, lost about 50,000 jobs. Private education payrolls fell by 63,000. The losses more than offset surprisingly strong payroll advances in other sectors.
Professional and business services added 160 1000 jobs. Retail added 120,000 amid the holiday shopping season, much of it at warehouse clubs and supercenters. Construction, which is benefiting from the housing boom, added 51,000. And manufacturing, which has been churning out a steady stream of appliances and other goods for consumers stuck at home, added 38,000.
The disappointing showing overall was also partly softened by upward revisions of 135,000 to job gains in October and November.
Prior to December, job gains had slowed for five straight months since peaking at 4.8 million in June. The nation has recovered 12.3 million, or about 56%, of the 22.2 million jobs wiped out in the health crisis as restaurants, shops and other businesses shuttered by the outbreak were allowed to reopen, and the outlets brought back many furloughed workers.

エラく長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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米国の失業率については、4月統計で14.7%と一気に悪化した後、5月13.3%、6月11.1%そして、7月10.2%まで2ケタが続いた後、8月には8.4%と10%を割り込み、9月7.9%、10月には6.9%となりましたが、11月には改善幅がわずかに0.2%ポイントまで縮小して6.7%を記録した後、12月の失業率は前月から横ばいの6.7%のままでした。COVID-19パンデミック前の2020年1月には失業者数5,796千人、失業率3.5%に比べて、12月統計の10,736千人、6.7%は2倍近い水準といえます。加えて、非農業部門雇用者数の増加は12月統計では半年ぶりにストップし、前月差で見てマイナスに転じました。緩やかながら昨年2020年4~6月期を底に回帰が反転した兆しがあっただけに、COVID-19のパンデミック再拡大のために景気回復に大きくブレーキがかかった形です。もちろん、このCOVID-19の感染拡大は米国だけでなく、すでにいくつかの都市で再びロックダウンに入った欧州でも、あるいは、首都圏に続いて関西京阪神でも緊急事態宣言が出る見込みの日本でも同様です。

振り返って目を我が国に転じると、何度もこのブログで主張しているように、日本のGoToキャンペーンは、感染拡大の「急所」のひとつである人的接触が多いセクター、本来は、シャットダウンすべきセクターに、COVID-19による経済的ダメージが大きいという理由で、補助金をつけて消費者を向かわせて感染拡大を引き起こしてしまったわけです。一昨年2019年10月の景気後退局面での消費税率引上げとともに、政府の大きな失政であるといわざるを得ません。従って、何度でも繰り返しますが、一時的に経済を犠牲にしてでもCOVID-19の感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。

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2021年1月 8日 (金)

6か月振りに下降した2020年11月の景気動向指数から何が読み取れるか?

本日、内閣府から11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+2.3ポイント上昇の96.6を、また、CI一致指数も前月から▲0.3ポイント下降の89.1を、それぞれ記録しています。昨年2020年5月を底に上昇を続けてきたCI一致指数は6か月振りの下降なんですが、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「下げ止まり」に据え置かれています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年11月の景気一致指数、6カ月ぶり悪化 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した2020年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント低下の89.1となった。悪化は6カ月ぶり。「商業販売額(小売業)」や「耐久消費財出荷指数」などが伸び悩んだ。内閣府が一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、4カ月連続で「下げ止まり」となった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比2.3ポイント上昇の96.6と、18年12月以来の水準となった。「新規求人数(除学卒)」の持ち直しなどが指数を押し上げた。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比1.4ポイント低下の89.8だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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CI一致指数を個別系列の寄与度に従って少し詳しく見ておくと、マイナス寄与では 商業販売額(小売業)(前年同月比)が▲0.48ポイントともっとも大きなマイナスを示そており、次いで、 耐久消費財出荷指数が▲0.37ポイントとなっています。要するに、家計消費が振るわなかったわけです。他方、プラス寄与に目を転じると、輸出数量指数が+0.34ポイント、有効求人倍率(除学卒)が+0.25となっています。先月統計でも輸出数量指数はそこそこ大きなプラス寄与度を示していましたので、やっぱり、海外景気の外需に牽引される形での景気回復になりそうな気もします。もっとも、欧州では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより二度三度のロックダウンに入っている国も少なくないわけで、どれほどまでの海外経済のサステイナビリティなのかは現時点では不明です。いずれにせよ、国内でもCOVID-19の感染拡大による非常事態宣言ですので、CI先行指数が上昇したからといって景気の先行きが楽観視できるわけもありません。それなりのボリューム感も表現しているCIですが、一致指数はCOVID-19パンデミック前の2019年12月の水準が94.2、昨年2020年1月でも94.6です。この90台半ばの指数値は、実は、2019年10月の消費税率引上げにより、かなりの低下を見た後の統計なんですが、10~11月のCI一致指数でもまだ90を割っていて、12月は感染拡大が進んで11月統計よりも低下することが明らかですから、まだまだ景気回復には時間がかかると覚悟すべきです。上のグラフでは、私のこのブログのローカルルールで、2020年5月を景気の底に暫定的に同定していますが、場合によっては2番底をつける可能性も十分あります。それでも、ここは景気を犠牲にしてでも感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。

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2021年1月 7日 (木)

コロナ禍で毎月勤労統計に見る賃金は下げ続ける!!!

本日、厚生労働省から昨年2020年11月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲1.1%減少の27万9095円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+0.6%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

11月の実質賃金、前年同月比1.1%減 賞与の減少響く
厚生労働省が7日発表した2020年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.1%減少した。実質賃金の減少は9カ月連続。新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の悪化などを背景に賞与が減少した。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は27万9095円で前年同月比2.2%減った。減少は8カ月連続。内訳をみると、賞与など特別に支払われた給与は22.9%減少し、減少幅は19年2月以来1年9カ月ぶりの大きさとなった。厚労省の担当者は、新型コロナの影響で「企業は賞与を減額したり、支払いを遅らせたりしたようだ」と説明した。
残業代など所定外給与は10.3%減で減少は15カ月連続となった。一方、基本給にあたる所定内給与は0.1%増の24万5779円と微増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.2%増の1205円だった。パートタイム労働者の比率は前年同月から0.10ポイント低い31.62%で、低下は10カ月連続。新型コロナの影響でパートタイムの新規採用者数が減ったり、契約の更新を見送ったりした可能性が高い。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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景気との連動性高い所定外労働時間は、わずかな差で1ト月違いながら、私がこのブログ向けに暫定的に仮置した2020年5月の景気の谷にほぼ整合的な形で反転しているのが、上のグラフから見て取れます。季節調整済みの系列で見て、11月の所定外労働時間は前月からわずかに+0.6%の伸びとなっており、雇用が生産の派生需要であることから、鉱工業生産指数(IIP)が横ばいだったのに対応していると考えるべきです。賃金もおおむね2020年5月で下げ止まったところなのですが、2020年11月には再び下げ幅を拡大しています。引用した記事にある通り、いわゆるボーナスに相当する特別に支払われた給与の減少が響いているようです。季節調整していない原系列の統計で見て、▲22.9%減となっています。逆に、きまって支給する給与は▲0.7%減まで下げ幅を縮小させています。ただ、よくよく考えると、ボーナスは11月よりも12月の給与により大きなインパクトがあると考えるべきであり、の12月統計ではさらに賃金の下げ幅が大きくなると覚悟すべきです。統計がそもそもガタガタな上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックで給与統計は下げ続けており、国民生活はひどいことになっています。

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2021年1月 6日 (水)

大きく落ちた12月の消費者態度指数から政策の方向を考える!!!

本日、内閣府から昨年2020年12月の消費者態度指数が公表されています。季節調整済みの系列で見て、前月から▲1.9ポイント低下して31.8と、4か月振りに前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を前月までの「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」から下方修正し、「足踏みがみられる」としています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年12月の消費者態度指数、4カ月ぶり低下 判断も下方修正
内閣府が6日発表した2020年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.9ポイント低下の31.8となった。前月を下回るのは4カ月ぶり。内閣府は消費者心理についての基調判断を「足踏みがみられる」と4カ月ぶりに下方修正した。20年11月は「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」としていた。
新型コロナウイルスの感染再拡大などが消費者心理を冷え込ませ、指数を構成する「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4指標はいずれも前の月から低下した。4指標がすべて低下するのは20年4月以来8カ月ぶりとなる。
日ごろよく購入する物の1年後の物価見通し(2人以上の世帯が対象)では「上昇する」と答えた割合が65.9%(原数値)と前の月を2.5ポイント下回った。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。今回発表分の調査基準日は20年12月15日で、調査は全国8400世帯が対象。有効回答数は7415世帯、回答率は88.3%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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先月11月統計の際にも明記しましたが、消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントのうち、特に「雇用環境」が指数の前月差で▲2.9ポイントの低下と大きく悪化しているのが懸念されます。11月統計では「雇用環境」だけが前月差マイナスで、ほかの3指標はプラスを示していましたが、12月統計では、「雇用環境」のほかの3指標もすべてマイナスに転じています。すなわち、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.9ポイント、「暮らし向き」が▲1.8ポイント、「収入の増え方」が▲0.7ポイントです。中でも、消費のための原資を稼ぎ出す「雇用環境」がもっとも前月差で大きなマイナスですから、消費が増えようはずがありません。当然、この消費者態度指数の大きな低下、すなわち、消費者マインドの悪化の背景には新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック拡大があるわけで、経済の回復のためにもまずCOVID-19パンデミックの終息に向かう取組みが必要とされるところです。COVID-19によるダメージが大きいという理由で、GoToトラベルやGoToイートのように人的接触が多いセクターへ補助金を出して人的接触を増加させるなんぞというのは真逆の政策です。繰り返しになりますが、宿泊や外食などの人的接触の多いセクターにGoToで消費者を向かわせるのではなく、そのセクターの労働者の所得を保証する政策が必要です。今の内閣は、まったくこの点が理解されていないので怖いです。

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2021年1月 5日 (火)

緊急事態宣言に伴う経済損失に見るブルシットな市場価格への無批判な信仰!!!

昨日、グレーバー教授の著書『ブルシット・ジョブ』を引いた東洋経済オンラインの記事を取り上げた際にも、社会的なスピルオーバー効果とか、宇沢教授のようなシャドープライス試算とかを無視した市場価格だけによる資源配分は大きく歪められている可能性を指摘しましたが、今週末にも予想される首都圏での緊急事態宣言の経済損失について、いくつかのシンクタンクが試算結果を取りまとめています。本日午後の時点で私が知る限り以下の通りです。

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上のグラフは大和総研のリポートから、緊急事態宣言1カ月間の消費抑制額 を引用しています。どちらのリポートも数ページでコンパクトなもので、私はしっかりと目を通したつもりですが、誠に残念というか、何というか、緊急事態宣言を見送って新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックが拡大した際との機会費用との比較、あるいは、緊急事態宣言による感染拡大防止のスピルオーバー効果などへの言及は一切なしでした。経済学的には、おそらく、緊急事態宣言を見送った場合と発令した場合の限界計算をする必要があるのですが、前者の緊急事態宣言なしのケースを単純な静学的期待、すなわち、現状が継続するとしか考えていないように見受けられ、COVID-19の感染拡大による経済損失はほぼほぼゼロと仮定しているように私には見えます。何と申しましょうかで、少しくらいは、このままCOVID-19の感染拡大を緊急事態宣言見送りで放置した場合の経済損失にも言及するくらいの知恵はなかったんでしょうか。私は個人的に、東京オリンピック・パラリンピックが中止になる確率は決して無視できないと考えていますが、やっぱり、強行開催した際のCOVID-19の感染拡大による経済損失と比較考量するという思考はできないんでしょうね。まあ、極端に難易度は上がりますが、せめて一言言及するくらいの節度は欲しいものです。ちなみに、私がジャカルタのころにバリ島爆弾テロの経済損失を試算したペーパー "Preliminary Estimation of Impact of Bali Tragedy on Indonesian Economy" では、爆弾テロがなかった場合のベースラインをARIMAモデルと状態空間モデルで試算した上で爆弾テロのインパクトを産業連関表にて推計しています。まあ、数式をゴチャゴチャと展開した20ページあまりの学術論文とシンクタンクの数ページのリポートとの差は考慮すべきなんでしょうが、例えば、COVID-19感染拡大防止のスピルオーバー効果について「考慮していない」と言及するのはそう難しくないでしょうし、もう少しベースラインをきちんと明示したり、といった押さえるべきポイントは押さえて欲しい気がします。

経済学で限界革命により古典派経済学から新古典派が誕生したのは19世紀後半の1870年代です。すなわち、英国のジェヴォンズ、オーストリアのメンガー、スイスのワルラスの3人が、ほぼ同時かつ独立に限界効用理論を基礎にした経済学の体系を樹立したとされていて、約150年前の出来事なのですが、我が国シンクタンクの現状はまだこういった新古典派の成果は取り入れておらず、英国古典派的な経済学が幅を利かせているのかもしれません。

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2021年1月 4日 (月)

東洋経済オンライン「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由に見る市場価格の大きな歪み!!!

昨日1月3日付けの東洋経済オンラインで、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのグレーバー教授の著書『ブルシット・ジョブ』(岩波書店)を引いて、「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由に関する記事がポストされています。この本は、私もすでに図書館の予約を入れてあり、あと1ト月ほどで受け取れるんではないかと期待していますが、取りあえず、「根深い理由」の方はともかく、貢献度を計算できるもののうちもっとも社会的に価値のある労働者とか、社会的投資収益率分析に基づく職の外部経済効果とかについて、以下のような例示が示されています。webサイトの画面をキャプチャしています。

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上の画像の社会的に価値ある労働でマイナス記号の▲が付されているのは、当然ながら、マイナスの価値を生み出している「ブルシット・ジョブ」なわけです。下の画像で、社会的価値を破壊している上の3つの職業も同様です。そして、記事にも明記されていますが、これらの「ブルシット・ジョブ」の定量的な評価はグレーバー教授のオリジナルな研究成果ではなく、グレーバー教授の著書『ブルシット・ジョブ』に引用されている既存研究の成果です。まあ、ハッキリいえば、この東洋経済の記事は孫引きなわけで、オリジナルの研究は私の知る限り以下の通りです。

なお、後者の New Economics Foundation のリポート A Bit Rich はpfdのリンクを示しておきましたが、財団のBLOGサイトもあり、ソチラのほうが要領よく取りまとめてあって判りやすいかもしれません。
その昔に、宇沢教授が外部経済も含めて、シャドウ・プライスを駆使して自動車の社会的費用を計算した研究結果を、岩波新書から『自動車の社会的費用』として明らかにしていますが、それほどまでに市場の価格付けは不正確で歪んでいるという事実は、知っておいてソンはありません。特に、通常の市場財であればともかく、公共財的な性格を有する財、あるいは、人間労働の価格たる賃金はさらに市場価格の歪みが大きいと、直感的に理解出来るのではないでしょうか。マルクス主義経済学では別の表現をしますが、要するに、市場価格の賃金をそのまま受け入れるのは、私には大きなためらいがあります。ですから、市場原理主義的な右派エコノミストの市場信奉は、誠に残念ながら、それほど根拠ある科学かどうか、疑わしいと理解すべきです。

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2021年1月 3日 (日)

今さらながらに年末年始の読書案内???

もう、明日から通常通りのお仕事が始まろうというサラリーマンも多いことでしょうが、今さらながらに、学生諸君にお示しした年末年始の読書案内は以下の通りです。私は、一応、目を通しているんですが、書評的な紹介文は出版社のサイトから引用しています。以下の6冊はすべて新書です。うち、5番目の伊藤先生のご専門はマルクス主義経済学です。東大経済学部で宇野先生の後を引き継いだ大先生が、日本経済についてマルクス主義経済学の視点から解明を試みています。私の専門分野はマルクス主義経済学ではないんですが、学生諸君の中にはそういった専門分野のゼミに所属している場合もあることを考慮しました。

  1. 吉川洋『人口と日本経済: 長寿、イノベーション、経済成長』(中公新書)
    (出版社のサイトから) 人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか――。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。
  2. 伊藤周平『消費税増税と社会保障改革』(ちくま新書)
    (出版社のサイトから) 消費税増税で経済が急速に冷え込むさなか、新型コロナで私たちは痛めつけられた。そもそも消費税増税の理由は嘘ばかりで、社会保障は後退し続けているし、年金・医療・介護・子育てすべてにおいて、高負担低福祉状態にあり、疫病の流行で、その危機は一層深まった。いっぽう大企業の法人税や高額所得者への所得税は減税が強行される。日本の税制と社会保障はいまどうなっているのか。今後どうすれば建てなおすことができるか。
  3. 福田慎一『21世紀の長期停滞論: 日本の「実感なき景気回復」を探る』(平凡社新書)
    (出版社のサイトから) 21世紀型の長期停滞は、本来の実力より低いGDP水準に加え、「低インフレ」「低金利」状態が長期にわたって続くという特徴を持つ。
    日本では、アベノミクス以降、雇用関連など力強い経済指標は存在するが、賃金の上昇は限定的で、物価上昇の足取りも依然として重い。さらに、少子高齢化や財政赤字の拡大など懸念が増す一方である。
    日々高まる経済の現状への閉塞感から脱却するためにも、その原因を丁寧に検証し、根本的な解決策を探る。
  4. 坂本貴志『統計で考える働き方の未来: 高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)
    (出版社のサイトから) 年金はもらえるのか?貯金はもつのか? 「悠々自適な老後」はあるのか? それとも、生活していくために死ぬまで働かなければいけないのか? 現在、将来の生活や仕事に対し、多くの人が不安を抱いている。しかし、本当に未来をそんなに不安に思う必要などあるのだろうか?本書は、労働の実態、高齢化や格差など日本社会の現状、賃金や社会保障制度の変遷等を統計データから分析することで、これからの日本人の働き方を考える。働き方の未来像を知るのに必読の一冊。
  5. 伊藤誠『日本経済はなぜ衰退したのか: 再生への道を探る』(平凡社新書)
    (出版社のサイトから) いま日本経済は、資本主義市場経済の内部から生じた世界恐慌の打撃に苦しみ続けている。この低迷をどう打開すればいいのか? アベノミクスで本当によくなるのか? 直すべき課題を明らかにする。2008年のサブプライム金融危機は、新自由主義を推進してきたアメリカ経済の内部から生じた自己崩壊だった。この危機はユーロ圏へと連鎖反応を引き起こし、ソブリン危機による新たな世界経済危機へと連なっていく。本書では、日本の経済成長に大きな打撃を与えてきた近年の世界恐慌に分析と考察を加え、日本経済は、今後どうあるべきか、直すべき課題を明らかにしていく。
  6. 浜矩子『「共に生きる」ための経済学』(平凡社新書)
    (出版社のサイトから) 経済活動とはなにか、どうあるべきか――。その問いに著者は、人間による人間のための営みである以上、人間を幸せにできなければ、その名に値しないと述べる。そして、まともな経済活動のあり方と共に生きる社会のあり方は、ほぼぴったり二重写しになるというのである。第三次グローバル化時代に一国主義と排外主義が台頭する中で、異なるもの同士は、いかにして真の共生を築けばいいのか。エコノミストの観点から問題点をあぶり出し、その解決策を探る。

それから、新書以外で、ということで、以下の2冊を2019~2020年の話題の書として示しておきました。ここでも、ご参考まで。

学部生、特に1~2回生には少し難しい内容を含んでいそうな気がしますが、私が接した学生諸君の中には十分読みこなせそうな勉強熱心な学生もいるように感じています。年明けからは、2週間ほどで入試シーズンの春季休暇に入りますので、ややタイミングが遅くなりましたが、このブログでも取り上げておきたいと思います。

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2021年1月 2日 (土)

今年の干支をポケモンで表すと?

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今年の干支は丑です。
ポケモンなら、やっぱり、ミルタンクとケンタロスなんではないかと思い、上の画像をお示ししておきます。初詣すら出かけずに、のんびり過ごすお正月です。

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2021年1月 1日 (金)

我が家のおせち料理とお雑煮やいかに?

あけましておめでとうございます。

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今日は、正午前まで寝坊し、昼食の食卓の様子です。おせち料理は普通なのでしょうが、お雑煮は京都らしく白味噌、丸餅、頭芋です。ただし、頭芋は、昔ながらに、というか、なぜか、男だけです。

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2021年あけましておめでとうございます!!!

あけましておめでとうございます!!!

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新しい年2021年がつい先ほど数分前に明けました。
毎年元旦には、エコノミストの端くれとして、日本と世界の経済が上向き、国民生活が豊かになることを祈念しています。今年は、大学教員として学生諸君の学力が上がることも願っています。
昨年はコロナ禍の中にもかかわらず夫婦で関西へ引越しをして、大学教員の生活を始めました。結婚25年という銀婚式の年でした。これからは、還暦を超えてわずかに残る人生を学生院生諸君への教育と私自身の研究に出来る限り活かしたいと思っています。ついでになりますが、阪神タイガースのセリーグ優勝と日本一も記念しております。あくまで、これは「ついで」です。
また、先ほど終わった紅白歌合戦については、昨年2020年を代表する大ヒットだったYOASOBIの「夜に駆ける」や再生なった東京事変の椎名林檎の曲、あるいは、石川さゆりの「天城越え」もとてもよかったんですが、それでも「エール」出演の山崎育三郎がやたらとスローテンポで歌った「栄冠は君に輝く」が圧巻でした。

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