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2021年1月16日 (土)

今週の読書は通常通りの計4冊!!!

今週の読書は、経済書に教養書・専門書、さらに、学生諸君への参考のために新書まで含めて、以下の通りの計4冊です。

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まず、クラウス・シュワブ, & ティエリ・マルレ『グレート・リセット』(日経ナショナルジオグラフィック社) です。著者は、もうすぐ始まるダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)の会長とオンラインメディア『マンスリー・バロメーター』の代表です。英語の原タイトルは COVID-19: The Great Reset であり、2020年の出版です。本書では、タイトルから容易に想像されるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の後の世界について、それまでの世界がリセットされる、という印象で議論を進めています。視点は、マクロ、産業と企業、個人の3つなんですが、圧倒的なページ数がマクロに割かれています。そのマクロも、経済、社会的基盤、地政学、環境、テクノロジーとなっています。当然です。特に、資本主義のリセットが念頭に置かれている印象で、その目指す先はステークホルダー資本主義とされています。その昔に「勝ち組の集まり」と揶揄されたダボス会議の主催者とは思えないほどに、ネオリベな経済政策を反省し、リベラルな政策手段で格差を是正し、大きな政府が復活する可能性を論じています。特に印象的なのは、命と経済の間でトレードオフがあるのは別としても、命に圧倒的な比重を置いていて、命を犠牲にしてでも経済を守る姿勢を強く非難している点です。やや、私には意外でした。もっと、ポイントを絞った効率的な政策によって財政赤字が積み上がらないように、といった視点が飛び出す可能性を危惧していただけに、コロナがいろんなものの変容をもたらした、ということを実感させられました。少なくとも、現在の日本の菅内閣よりもずっと立派な視点だという気がします。いずれにせよ、世間一般で、リベラルな中道左派が描きそうな未来図ですから、特に、メディアで示されているメインストリームな未来像と大きな違いはないという気がします。おそらく、何が何でもオリンピックをやりたくて、「自助」を真っ先に持って来る日本の内閣の方が世界標準からして異常なんだろうという気がします。

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次に、ジャック・アタリ『命の経済』(プレジデント社) です。著者は、欧州を代表する有識者といえます。その昔のミッテラン社会党政権のブレーンだったわけですから、社会民主主義的な色彩の強い方向性が打ち出されています。フランス語の原題は L'Économie de la Vie であり、2020年の出版です。舷梯はされませんが、当然ながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)を中心とした議論が展開されています。感染対策として、中国が強く避難されるとともに、韓国が称賛されています。すなわち、中国の場合、事実誤認、というか、曲解や恣意的な解釈も含めて、初動に大きなミスがあり、そのため、権威主義国家らしく強権的なロックダウンに頼った感染拡大防止を図った一方で、韓国では検査・追跡・隔離といった科学的な手段が取られて感染拡大を防止した、と評価されています。その意味で、政府だけでなく企業や個人も含めて、「真実を語る」ことの重要性が何度も強調されています。ただし、その昔の「ジャパン・パッシング」よろしく、日本に関する評価、どころか、ほとんど記述すらありません。日本では、山中教授いうところの「ファクターX」があって、科学的方法論では解明しきれない要因により感染者数や死者数が抑制されてきたという説もあるようですから、科学的な一般化は難しいのかもしれません。でも、年末から年明けにかけて、ハッキリと欧州などと歩調を合わせる形で感染拡大が観察されますから、日本だけがファクターXによりCOVID-19の例外、というわけにいくハズもありません。国家や企業や国民のあり方について、スケールの大きな議論が展開されている一方で、決して難解ではなく、むしろ、心に響くような新鮮さを感じました。類書の中で、ここまでマスクの重要視を強調しているのは初めてでした。また、次のランシマン『民主主義の壊れ方』共関連して、「闘う民主主義」の5原則も興味深いものがありました。

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次に、デイヴィッド・ランシマン『民主主義の壊れ方』(白水社) です。著者は、英国ケンブリッジ大学の政治学教授であり、世界的な権威ある政治学の研究者だそうです。英語の原題は How Democracy Ends であり、2018年の出版です。どうでもいいことながら、同じ2018年の出版で How Democracies Die という学術書が米国ハーバード大学のレヴィツキー教授とジブラット教授により出版されていて、私はまったく読んでいませんし、専門外ながら、ソチラのほうが有名なんではないか、という気がしないでもありません。ということで、本書では、クーデタを始めとする暴力、災害などの大惨事、そして、テクノロジーの3つの観点から民主主義が終わる可能性について論じています。たぶん、米国トランプ政権の成立が本書のモティーフのひとつになっている気がしますが、最近の議事堂占拠なんて米国の暴力はスコープに入っているハズもありません。もう少し長い期間を考えていて、大惨事も不可抗力っぽい気がしますし、テクノロジーが主眼に据えられている印象で、例えば、「トランプは登場したが、いずれ退場していく。ザッカーバーグは居続ける。これが民主主義の未来である。」といったカンジです。デジタル技術は直接民主主義への道を開くと論ずる識者がいる一方で、本書のように民主主義を終わらせる可能性もあるということです。本書でも指摘されている通り、古典古代のギリシアにおける民主主義は終了を迎えました。原題の民主主義はヒトラーやファシズムといった暴力で覆されるとはとても思えませんが、新たに出現した民主主義への驚異はテクノロジーに限らず、いっぱいありそうな気がします。ですから、何もしないでノホホンとしていて民主主義が守れるとは限りませんし、アタリのように「闘う民主主義」を標榜しつつ、しっかりと自由と民主守護を守る姿勢が大事なのであろうと思います。いずれにせよ、哲人政治ならぬエピストクラシーと衆愚に陥るかもしれないデモクラシーと、どちらがいいかと問われれば難しい回答になります。最後に、センテンスが短い訳文は好感が持てるのですが、そもそも、章が長くて節とか、小見出しがいっさいなく、それなりに忍耐強くなければ読み進むのに苦労させられます。ご参考までのご注意でした。

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最後に、三浦佑之『読み解き古事記 神話篇』(朝日新書) です。著者は、古事記研究の碩学であり、三浦しをんの父親です。その昔の三浦しをんデビュー時は「三浦佑之の娘」と紹介されていた記憶もありますが、今ではどちらも同じくらいのウェイトか、あるいは、人によっては直木賞作家である三浦しをんの方をよく知っていたりするのかもしれません。ということで、古事記の神話編を歴史学というよりも、文学的かつ民俗学的に解釈した解説となっています。日本書紀と古事記には少し違いがあるようですが、私のような専門外の読者にはよく判りません。まあ、国作りの物語とか、出雲と伊勢の暗闘透とかはよく知られたところです。本書でもヤマタノオロチが出てきますし、因幡の白うさぎも登場します。中国で奇数が陽数とされるのに対して、日本では対になりやすい偶数が好まれ、三種の神器も、実は、剣と鏡は銅製であるのに対して、玉は翡翠製なので違うんではないか、という意見も表明されたりしています。そうかもしれません。常識的には知っているお話が多くて、ひとつだけ、神様のお名前が極めて何回、というか、現代日本人からすれば長ったらしいので覚えにくいんですが、それ以外は常識的な日本の教養人であれば、見知っていることと思います。でも、こういった碩学の本で改めて読み返すと有り難みがあるのはいうまでもありません。

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