内閣府による今週の指標「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」やいかに?
先週金曜日の1月15日に、内閣府から『今週の指標』として、「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」が公表されています。まだ、年末年始の帰省旅行などのデータは含まれていませんが、昨年2020年4~6月期の緊急事態宣言の期間の分析もなされており、現在の首都圏や近畿圏などの緊急事態宣言に関する示唆を受け取る向きもいそうな気がします。いくつか、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフは、リポートから 国内旅行消費額 (目的別) を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期はもちろん、その後の夏休みを含む旅行のハイシーズンである7~9月期になっても旅行需要は低迷を継続しています。私は、緊急事態宣言が出た際には、解除されると元の生活が戻ってくるのかと期待しないでもなかったのですが、決して、緊急事態宣言前と同じ生活が戻ったわけではありません。旅行については大きく変容をしたわけであり、このあたりは、とても弁証法的な時間の進行だと感じています。
続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、目的別の前年比 を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期と、その後の夏休みを含む7~9月期のそれぞれの前年同月比を比較しています。2020年4~6月期から7~9月期にかけて、いくぶんなりとも減少幅が縮小しているわけですが、ビジネス目的の「出張・業務」はそれほどの回復は見せていない一方で、「帰省・知人訪問等」、さらには「観光・レクリエーション」と娯楽度や自由度が高くなるほど、減少幅も小さければ、回復度合いも大きい、という結果が示されています。感染拡大という急所は大きく外したものの、旅行需要拡大の観点からは、GoToトラベルは評価される可能性があります。
続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、同一都道府県内への宿泊旅行の割合 を引用しています。パンデミック前の2019年は押し並べて20%を少し下回る水準で推移していましたが、2020年に入って大きく割合が上昇しているのが見て取れます。グラフは引用しませんが、これに伴って、宿泊数も減少を示し、1泊旅行の割合が増加しているようです。従って、マクロの旅行需要の減少とともに、旅行形態として「少人数化」、「短期化」、「近距離化」などが進んだ可能性が示唆されている、と結論しています。
繰り返しになりますが、夏休みを含む7~9月期には、緊急事態宣言も明けましたし、旅行の娯楽度や自由度やが高いほど旅行需要は回復した、とのGoToトラベルの一定の効果を示唆する分析結果ではありますが、感染拡大という社会的コストを無視した議論であるといわざるを得ません。感染症については外部経済があまりにも大きく、市場で観察される私的なベネフィット-コストだけではなく、スピルオーバーも含めた社会的なベネフィット-コストの分析が必要です。従って、この点は大きく外しています。
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