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2021年2月28日 (日)

「レポート 2030: グリーン・リカバリーと2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」やいかに?

2050年カーボン・ニュートラルを目指した日本版のグリーン・ニューディール≅グリー・リカバリーを提言するリポート「レポート 2030: グリーン・リカバリーと2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」が2月25日に明らかにされています。取りまとめに当たったのは「未来のためのエネルギー転換研究グループ」であり、数名の研究者から構成されています。2月25日には、サイトもオープンされ、ウェビナーも開催されています。なお、未来のためのエネルギー転換研究グループのメンバーはサイトで明らかにされています。

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上の画像は、リポートの要約の冒頭に置かれているINFOGRAPHICSです。縮小しているので見にくいかもしれませんが、現時点の2021年の左下からロードマップが伸びていて、右上の2050年カーボン・ニュートラルにつながっています。グリー・リカバリーとは私は聞き慣れない表現だったんですが、グリーン・ニューディールとほぼ同じ意味で使われているようです。原子力発電は2030年にはすでにゼロとし、2050年には再可能エネルギーが100%を占めます。当然です。累積の投資額は2030年までに202兆円、2050年までに340兆円に上り、雇用創出数は2030年までに2544万人に達します。なお、エコノミストとして気になる財源については、2030年までの総額約202兆円(年平均約20兆円)の投資資金のうち、パフォーマンス型の支援制度(FITのような制度)や省エネ規制、環境税のようなインセンティブ制度や公的融資制度などを整備すれば、大部分(年平均約15兆円)については民間企業や家計が自己資金や借り入れでまかなうことができ、必ずしも巨額の公的資金を投じる必要はなく、51兆円(年平均5兆円)程度がエネルギー供給インフラ等に対する財政支出となる、と試算しています。公的資金の取り扱いに関しては、3つのオプションが示されています。
データをはじめとする資料や参考文献まで含めると100ページを超えるリポートであり、エコノミストの私から見れば専門外の部分も多々あって、なかなかすべてを正確に評価することもできませんが、とても気にかかるリポートであることは事実です。しかし、理由は不明ながら、ほとんどメディアでは報じられていません。ぜひとも、多くの方に知って欲しいと私は考えています。

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2021年2月27日 (土)

今週の読書は経済書のほか文庫本の小説とややペースダウンして計3冊!!!

今週の読書は、エプシュタイン教授の現代貨幣理論(MMT)への批判的な解説書とともに、文庫本の小説2冊と、ややペースダウンしています。税金の確定申告の時期に入り、少し小説を読んでリラックスしたいと考えないでもありません。

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まず、ジェラルド A. エプシュタイン『MMTは何が間違いなのか?』(東洋経済) です。著者は、マサチューセッツ大学アマースト校の経済学の研究者であり、ポスト・ケインジアンの非主流派に属しているらしいです。本書の英語の原題は What’s Wrong with Modern Money Theory? であり、2019年の出版です。ということで、タイトルこそ勇ましくて、正面切ってMMTを批判しているように見えますが、最終章第8章の冒頭にあるように、著者は政策目標の多くをMMT派と共有しているように見えます。加えて、私は、基本的に、自分自身を主流はエコノミストと位置づけていますが、政策目標についてはよく似通っているつもりです。ただ、本書の著者は主流はエコノミストは、米国では民主党リベラルの均衡予算≅緊縮財政、物価安定、中央銀行の独立などのいわゆる新古典派経済学とみなしていて、むしろ、増税回避の観点から共和党は緊縮財政とは親和性ない、とみなしています。そして、著者が批判してようとしているのはMMT派経済学の否定ではなく、むしろ補足的な役割のような気すらします。結論として、私が重要と考える本書のポイントは、MMTが前提とする変動相場制について、ハードカレンシーを持たない途上国へのMMT派的な政策の適用が難しい、従って、MMT派の制作がかなり適用できるのはむしろ米国という基軸通貨国である、という点と、もうひとつは、これは私も同じで、政策適用の現実性、すなわち、MMT派経済政策をフルで適用すると需要超過からインフレになるんではないか、という恐れです。ミンスキー理解などの理論的な指摘もありますが、私は、この最後の財政政策だけで需要管理が適切にできるか、という疑問がもっとも大きいと考えます。現実に、多くの先進国では需要管理は金融政策に委ねられており、財政政策はファインチューニングには向かないと考えられています。むしろ、課税政策を特定の財の消費抑制に当てたり、歳出・歳入ともに格差是正に割り当てたり、という形です。というのは、本書では取り上げられていませんが、私が授業なんかで大きく強調するのは、金融政策はかなりの程度にユニバーサルである一方で、財政政策はそうではありません。すなわち、日本の場合を例にすると、九州で高速道路を建設しても関西の私の便益はそれほど大きくない可能性がありますし、保育所を建設しても一部の高齢者には迷惑施設と見なされる可能性も排除できません。ですから、金利やマネーサプライを市場を通じて操作するのは、全国一律で地域差はなく、年齢海藻屋職業別などの偏りも少ない一方で、財政政策は地域性や年齢や職業・所得階層別に細かな効果の差が生じ得ます。その意味で、マクロ経済安定化政策には私は金融政策が向いているような気がしてなりません。加えて、本書の観点では、詳しくは触れられていないものの、MMT派政策のひとつの目玉であるジョブ・ギャランティー・プログラム(JGP)はむしろ需要超過のバイアスがかかる可能性があると指摘しています。私自身は、MMT派政策を日本に適用する限り、それほどインフレの可能性が大きいとは考えませんが、米国ならそうかもしれません。いずれにせよ、私はMMT派が理論的なバックグラウンドにあるモデルの提示に失敗している現状では、何とも評価できかねるものの、実際の政策適用については、インフレの可能性については保留するとしても、金融政策よりも財政政策でマクロ安定化を図るほうが好ましいとはとても思えません。その意味で、私はまだリフレ派なんだろうと、自分自身で評価しています。加えて、本書で何度か指摘されているように、MMT派は租税回避の政策提言から富裕層、というか、超富裕層のウォール街の金融業者やシリコンバレーのGAFA経営者などの支持を取り付けています。これも、私は、ホントにそれでいいのか、と疑問に思わざるを得ません。これも、私をMMT派から少し距離を取らせている一因です。最後に本書に立ち返れば、貨幣と信用の区別なんて、ほとんど意味のない観点を持ち出してきたりして、ややMMT派経済学に対する無理解があったりして、ちょっとピンとこない点もいくつかあります。繰り返しになりますが、MMT派の背景となるモデルが不明である現時点では、私はマクロ経済安定化政策としての財政政策の適用可能性が最大の論点となると考えています。念のため。

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次に、浅田次郎『地下鉄(メトロ)に乗って 新装版』(講談社文庫) です。作者は、幅広くご活躍の小説家であり、本書はもともと1990年代半ばに単行本として出版され、本作品で吉川英治文学新人賞を受賞し、ついでながら、1997年『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞しています。この2作品はどちらも映画化されており、『地下鉄に乗って』は堤真一主演となっています。なお、本書は単行本の後、文庫本化され、さらに、昨年2020年10月に新装版が出版されていて、私はその新装版を借りて読みました。たぶん、確認はしていませんが、中身は同じだと思います。高倉健主演で映画化された『鉄道員』は、完全なファンタジーというよりも、主人公が幻想を見るという解釈も可能なのですが、コチラの『地下鉄に乗って』はタイムスリップですので、完全なファンタジーです。戦後闇市から大企業を育て上げた立志伝中の財界人の3人の倅のうち、次男を主人公とし、この主人公が愛人とともにタイムスリップを繰り返し、高校生のころに自殺した長男の自殺を食い止めようと試みつつ、父親が満州に出征するところ、同じく父親が闇市で精力的に活動するところ、などなど、さまざまな場面を目撃し、最後は驚愕の事実に遭遇する、というストーリーです。私のように、地下鉄で通勤する人間にはそれなりに興味を持って読めました。

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最後に、佐伯泰英『幼なじみ』(講談社文庫) です。著者は、スペインの闘牛の小説などを手がけつつも、ソチラはまったく売れず、時代小説で名の売れた小説家です。この作品は、長らく双葉文庫から出版されていた「居眠り磐音」シリーズが講談社文庫に移籍し、そのスピンオフ作品の5作目にして最終作です。なお、同じく「居眠り磐音」シリーズから、磐音のせがれの空也を主人公とする「空也十番勝負」もスピンオフしているんですが、当初予定の10作に満たずにすでに終了していますので、この作品がスピンオフも含めた「居眠り磐音」シリーズの最終作ということになります。スピンオフですので、主人公は坂崎磐音ではなく、鰻処宮戸川に奉公する幸吉と縫箔師を目指し江三郎親方に弟子入りしたおそめの2人です。小さいころから、磐音の媒酌により祝言に至るまで、本編では明らかにされていなかったトピックも交えつつ、幸吉中心の第1部と遅め中心の第2部に分けて語られています。おそらく、シリーズは武者修行を終えた空也がお江戸の神保小路の道場に戻って、この先も続くんでしょうね。私は引き続き買うのではなく、図書館で借りて読み続けるような気がします。

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2021年2月26日 (金)

増産を示した鉱工業生産指数(IIP)と減少した商業販売統計の違いやいかに?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+4.2%の増産でした。商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲2.4%減の12兆970億円、季節調整済み指数では前月から▲0.5%の低下を記録しています。消費の代理変数である小売販売額は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波の感染拡大による影響、さらに、それに対応した緊急事態宣言の影響と考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の鉱工業生産、4.2%上昇 2月予測は2.1%上昇
経済産業省が26日発表した1月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比4.2%上昇の97.7だった。上昇は3カ月ぶり。生産の基調判断は「持ち直している」に据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比4.0%上昇だった。
出荷指数は3.2%上昇の95.8で、在庫指数は0.2%低下の95.1。在庫率指数は6.3%低下の106.5だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では、2月が2.1%上昇、3月は6.1%低下を見込んでいる。
1月の小売販売額、2.4%減
経済産業省が26日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.4%減の12兆970億円だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が5.8%減の1兆6275億円だった。既存店ベースでは7.2%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は4.4%減の9290億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+4.0%の増産との見込みでしたので、ほぼほぼジャストミートしています。ただ、産業別に季節調整済みの系列の前月との比較で詳しく見ると、汎用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業が前月から2ケタ増を示したほか、電気・情報通信機械工業や生産用機械工業なども増産に寄与しています。他方、自動車工業を除く輸送機械工業と石油・石炭製品工業が減少しています。大雑把にいって、昨年2020年11~12月と2か月連続の原産の反動の要素がありますが、それにしても、指数水準は2020年10月の95.2を大きく上回る97.7ですから、昨年2020年5月を底とした生産の回復傾向が継続していると私は考えています。ひとつの根拠は製造工業生産予測指数であり、2月はさらに+2.1%の増産を見込んでいます。予測誤差のバイアスを取り除いた試算値でも▲0.4%の減産ですから、ほぼ横ばいと考えられます。ですから、統計作成官庁である経済産業省が基調判断を「持ち直している」に据え置いたのは、これらの実績統計を見る限り、当然とわたしは受け止めています。しかし、留保は必要で、もうひとつの可能性として、中華圏の春節休暇が2月中旬に当たっているため、その直前の1月に駆込み輸出が発生した可能性も否定できません。もしそうであれば、2月の生産は横ばいどころか、大きな減産となる可能性も否定できません。加えて、いずれにせよ、昨年2020年暮れあたりから日本も含めて、世界的に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波のパンデミックが始まっており、特に、日本のようなワクチン接種後進国では隔離を含めたソーシャル・ディスタンシングで対応せねばなりませんから、生産の先行きがそれほど明るいとは、私にはとても思えません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、鉱工業生産指数(IIP)と同じで、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。ということで、季節調整していない原系列の統計の前年同月比では2か月連続で、季節調整した系列の前月比でも3か月連続で、いずれでも小売販売額はマイナスを記録し、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「弱含み傾向」に据え置いています。2点だけ、強調しておきたいと思います。第1に、小売販売額は基本的に物販だけでサービス消費が含まれていない点です。COVID-19の経済的な影響については、基本的に、物販よりも外食とか宿泊などの対人接触型のサービスに大きく現れます。繰り返しになりますが、日本のようなワクチン接種後進国ではCOVID-19パンデミック防止のためにはソーシャル・ディスタンシングで対応せねばなりませんから、そうなります。ですから、消費の代理変数とはいえ、サービスを含めた消費全体では物販を主とする小売販売額の商業販売統計よりもさらに大きなマイナスとなっている可能性があります。総務省統計局の家計調査にもっと信頼性あれば、ソチラも見たい気がします。第2に、生産が昨年2020年5月を底に回復を示している一方で、小売販売額は季節調整済みの系列で見て、3か月連続で前月比マイナスを続けているわけですから、まったく内需中心の回復からほど遠く、輸出頼みの景気回復になっている可能性があります。3月に入れば、総合的な経済指標であるGDP統計2次QEが内閣府から公表される予定となっていますが、まだ昨年2020年10~12月期の統計です。足元の今年2021年1~3月期のGDP統計の公表は5月まで待たねばならないとはいえ、我が国の景気はかなり複雑な動きを示し始めていますので、確かな統計でキチンと判断すべきと考えます。

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2021年2月25日 (木)

ワクチン接種の遅れによる第3次の緊急事態宣言はあるのか?

先週金曜日の2月19日に、大和総研から「日本経済見通し: 2021年2月」と題するリポートが明らかにされています。実質GDP成長率の見通しは、2020年度▲5.0%、2021年度+3.8%、2022年度+2.3%と見込まれています。もちろん、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック次第であり、2021~22年度はワクチン接種の進展や米国経済見通しの改善もあって高めの成長を見込んでいるようです。ただ、私の興味を引いたのは、メイン・シナリオとともにワクチン接種が遅れる可能性を考慮したリスク・シナリオが示されていることです。

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上のグラフが、その2つのシワクチン接種のナリオと結果としての東京の新規感染者数のグラフであり大和総研のリポートから 図表7: ワクチン接種ペースが想定より遅い場合の感染状況や経済への影響 のグラフ引用しています。左側のパネルにあるように、メイン・シナリオでは、今年2021年6月最終週から全国で毎週160万人、東京で毎週16万人がワクチン接種を受け、2021年度末の2022年3月時点で国民の50%超がワクチンの2回接種を終えることを想定している一方で、リスク・シナリオではその半分のペースでしかワクチン接種が進まず、2021年度末で全国民の25%強にとどまるケースが想定されています。右側のパネルでは、そのメイン・シナリオとリスク・シナリオのそれぞれに対応する東京都ベースの新規感染者数が推計されています。ワクチン接種が遅れるリスク・シナリオでは来年2022年早々に第3次緊急事態宣言の可能性が示唆されています。ちなみに、リスク・シナリオでは感染者数はメイン・シナリオに比べて24万人ほど、また、死者数も1,000人ほど増加し、個人消費額は約▲2.3兆円減少する、と見込まれています。

私は一貫して、経済ではなく人命優先で、まず、COVID-19のパンデミック終息を最優先にすべきであり、遠回りに見えるかかもしれませんが、人命優先の方が経済の回復にも有効である可能性を指摘し続けています。しかし、「自助、共助、公助」を振りかざして、COVID-19パンデミックに対しても、あくまで個人の自己責任で対応することを現在の菅政権は目論みつつ、GoToキャンペーン政策というまったく矛盾した政策を続け、まだ、予算組替えにも応じないなど、現政権の危機対応能力はメチャクチャです。少なくとも、ワクチン接種は国民個々人の自己責任ではない点は、十分に認識されるべきです。

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2021年2月24日 (水)

大学院卒業の賃金プレミアムはあるのか?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の2月17日付けで、リクルートのワークス研のサイトで「やはりなかった博士の賃金プレミアム」と題するコラムが明らかにされています。ちょうど、大学院選抜に取り組んでいたころでしたので、私の目に止まってしまいました。ただ、私自身としては、その昔に役所の研究所で同僚だった九州大学の菅助教が少し前に書いた論文 "The Returns to Postgraduate Education" が日本の大学院教育のリターンに関する決定稿だと思っていましたので、それほどのサプライズはありませんでした。

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上のテーブルは、ワークス研のサイトから 博士の賃金リターン を引用しています。ミンサー型の賃金関数で分析しています。見れば明らかなように、博士号取得者は修士までの人と比較すると、全体で賃金が+0.6%高いものの統計的な有意性はない、という結果が得られています。そもそも、+0.6%というのは教育としてはとても低いリターンではなかろうかという気がします。理系ではマイナスですらあります。社会科学系と人文科学系では、私の推測ではサンプル数が決して十分ではないこともあって、これまた統計的な有意性は示されていません。医学・薬学系ではそれなりのパラメータの大きさで統計的にも有意ですが、逆に、特に医学系では修士で終わっている人のサンプル数が少なそうな気がします。要するに、修士課程修了者が博士の学位を取得する賃金上の誘引が小さい可能性が示唆されています。
九州大学菅助教の論文へのリンクは以下の通りです。コチラは修士号の学位のリターンを推計していますが、ミンサー型の賃金関数のように単純なOLSではなく、理系文系の専攻や国公私立の設置を考慮するために、操作変数法での推計を行っています。やっぱり、統計的に有意な結果は得られていません。修士学位の取得も賃金上で有利になるとは限らない、というわけです。従って、"Japanese males obtain a master's degree not for higher wage, but for nonpecuniary benefits." と結論しています。

おそらく、大学院教育のリターンがそれほどではない、というこういった結果は直感的に広く認識されている可能性が高く、私の勤務するような経済学専攻の私学には、日本人学生はそれほど多く応募してきません。どうしても、途上国からの受入れが増えることになります。もちろん、それはそれで意義あることだと私は受け止めています。

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2021年2月23日 (火)

今年2021年の桜の開花予想やいかに?

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とても旧聞に属する話題ながら、2週間前の2月10日に日本気象協会から今年2021桜開花予想(第2回)が明らかにされています。上の画像の通りです。見れば明らかですが、関西代表の大阪では3月25日と、平年の3月28日より少し早くなっています。東京も、今年2021年は3月21日と平年の3月26日よりも早まっているようです。温暖化の影響かどうかは判りません。というのは、昨年は大阪も東京も桜の開花はさらに早かったからです。どうでもいいことながら、花粉飛散とか桜開花のこういった情報を見ている限りでは、東京は大阪に先んじているような気がします。
まあ、いずれにせよ、一昨日のブログで取り上げたように、関西私大の合格発表はほぼ終了しています。「サクラサク」の新入生の顔を早く見たいものです。

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2021年2月22日 (月)

マイナス幅を拡大した1月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は▲0.5%の下落でした。変動の大きな国際運輸を除くと▲0.4%の下落と、いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言の影響でマイナス幅を拡大させています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
1月の企業向けサービス価格、前月比0.6%下落 緊急事態宣言の再発令で
日銀が22日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.1と、前年同月比で0.5%下落した。また、前月比では0.6%下落し、前月比の下落は20年5月以来8カ月ぶりとなった。
新型コロナウイルスの感染再拡大を受けた二度目の緊急事態宣言の発令により、宿泊サービスの需要が減少。価格の下押し圧力となった。
テレビ広告は前月、広告予算を消化する動きで堅調だったが、新型コロナの再拡大で企業の出稿需要が減った。
2月以降も新型コロナの影響が続く中、日銀は「価格の下落圧力が強まるかどうかについて、不確実性が高い」との姿勢を示した。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは55品目、下落は55品目だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。
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上のグラフで見ても、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていて、それでもまだ、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価上昇率よりは、人手不足の影響などから高い上昇率を示しています。しかしながら、引用した記事にもある通り、宿泊サービスが昨年2020年12月の前年同月比▲28.2%下落から、1月統計では▲37.9%下落とマイナス幅を大きくしています。先週公表された消費者物価指数(CPI)では、GoToトラベル事業の停止に伴って、1月統計で宿泊料のマイナス幅が大きく縮小して、CPIの下落幅の縮小にもそれなりに寄与していたんですが、総務省統計局のCPIと日銀のSPPIで大きな不整合となっています。GoToトラベル事業は、観光を目的とした旅行に限定されており、昨年2020年11月からはビジネス出張には適用されなくなりましたから、こういった違いを生じています。ですから、SPPIの宿泊サービスの大きな下落は、GoToトラベルによるものではなく、需要の減少に起因しています。加えて、景気に敏感な広告も同じです。すなわち、昨年2020年12月の▲1.5%下落から、1月統計では▲3.8%に下げ幅を拡大しています。テレビ広告、新聞広告、インターネット広告と枕を並べて下落幅を拡大しています。これも需要不足の経済状況を反映していると考えるべきです。大類別による寄与度で見ると、宿泊サービスは諸サービスに含まれ、労働者派遣サービスや土木建築サービスがまだプラスですから、大類別としてはプラスの寄与を示していますが、広告の寄与は▲0.18%ですし、不動産も▲0.11%、運輸・郵便も▲0.10%、などが大きなマイナス寄与といえます。物価目標に近づく気配すらありません。 物価にせよ、何にせよ、まったくもって経済指標はすべからく新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック次第なのかもしれません。

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2021年2月21日 (日)

大学入試の合格発表を終えてツイッターは合格報告の花盛り!!!

今日はとても暖かな気候でした。私は半袖Tシャツにスウェットのパーカを着て、何も羽織らずに出かけていたりしました。でも、まだまだ、ウルトxラxト・ダウン(某社登録商標)を着込んでいるお年寄りもいっぱいでした。
ということで、先日、定例日でないタイミングの臨時の教授会で大学入試の合格判定を終え、私の大学でも合格発表があったようです。ええ、私は受験生ではなく採点する方ですので、ハッキリいって、よく知りません。でも、漏れ聞くところによれば、合格発表は2月17日だったらしいです。それで、ツイッターは合格報告の花盛りになっています。
私は、まさに、「貧乏暇なし」というごとく、今週は週半ばまで大忙しにしていて、明日も出勤予定なのですが、合格発表のあった木曜に残業をして遅くに帰宅し、少しワインを飲んでくつろいでいました。ツイッターで、ミョーに大学の合格報告が多いな、と思いながら、画面をスワイプしつつ眺めていました。すると、「#春から」のあとに、大学名とか、本学特有のアルファベット3文字のキャンパス名をあしらったハッシュタグを多数見かけて、酔っ払っていたこともあって、ついついうれしくなってしまい、適当にリツイートしたり、コメントツイートしてしまいました。でも、どうも経済学部の合格報告が少ない、と感じてしまいました。まあ、巨大私学だから仕方ないのかもしれませんが、そういえば、我が母校の京大も私のころは経済学部は学年シェア1割に満たなかった、約2500人中200人だった、と思い出してしまいました。

まあ、酒の勢いで多数リツイートして、
がんばれ新入生!

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2021年2月20日 (土)

なかなかペースダウンできずに今週の読書も経済・経営書をはじめとして計4冊!!!

今週の読書は、モビリティ経済に関する経済・経営書2冊に加えて、マルクス主義の新しい見方を示した話題の新書、さらに、例の女性蔑視発言に触発されて女性差別に関する新書まで、いろいろと読んで以下の計4冊です。残念ながら、今週は小説はありませんが、来週は何冊か読む予定です。

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まず、深尾三四郎 & クリス・バリンジャー『モビリティ・エコノミクス』(日本経済新聞出版) です。著者2人はよくわからないのですが、モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアティブ(MOBI)の理事と共同創設者らしいです。本書のタイトルというよりも、むしろ、副題である「ブロックチェーンが拓く新たな経済圏」の方が中身をよく表している気がします。すなわち、自動車会社、というか、モビリティ産業の視点が十分ある一方で、ブロック・チェーンやより広い意味での分散台帳技術(DLT)が、さまざまな製造や流通上のブレイクスルーを準備している現状を紹介しようと試みています。冒頭では、取引コストの上昇とEVの価格低下から、自動車産業が規模の不経済に陥っていて、本書が示す解決方法は、現在の車両生産の自動車産業からデータを資源とするモビリティ産業への移行ということになります。すなわち、車両走行時に収集したデータを収益源とすることです。ですから、例えば、最後の方の両著者の対談では、EVのテスラにどうして世界が注目するかといえば、製品価値や技術ではなく、テスラがデータ企業とみなされているからである、と解説しています。要するに、トヨタなんかもこの方向を目指すべきである、ということになります。そして、その基礎となる技術がブロック・チェーンという位置づけです。ただし、本書のタイトルになっているモビリティ産業だけではなく、より幅広い産業で応用可能な技術である点も強調されています。モビリティ産業としては、電気自動車(EV)が走る蓄電池として社会的なインフラを構成する可能性を指摘し、そのためにはブロック・チェーンによる詳細な管理が必要、という指摘がなされています。ですから、インフラという観点から、単に技術面だけでなく、コミュニティについても本書では論じています。すなわち、ノーベル経済学賞を受賞したオストロム女史の研究成果、人間中心のコモンズ管理を引いて、いわゆるハーディン的な「コモンズの悲劇」を避けるサステイナブルな互酬の精神にも触れています。ただし、1点だけ、大学に再就職する前に役所でシェアリング・エコノミーを研究して、それなりの研究成果も得ている私としては、ブロック・チェーンによりシェアリング・エコノミーとコモンズの接点が得られるとは到底思えません。シェアリング・エコノミー、特に日本語の民泊でスペースを貸そうとしているのは、純粋な利潤追求の観点しかないと私は見ています。ただ、そういったコモンズの管理からアジア的なスマート・シティへ視点を広げるのは十分理解できる部分と考えます。繰り返しになりますが、自動車産業やモビリティ産業だけでなく、ブロック・チェーン技術を用いた幅広い産業の進化に関するなかなか興味深い読書でした。他方で、ブロック・チェーンで処理されるビッグデータについても、もう少し解説が欲しかった気もします。モビリティ産業の生み出すデータはどのように活用され、利益を生み出すのでしょうか?

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次に、デロイト・トーマツ・コンサルティング『続・モビリティー革命2030』(日経BP) です。著者のデロイト・トーマツ・コンサルティングはいわずと知れた会計事務所を基とするコンサルティング会社であり、10人を超える日本人スタッフが執筆に当たっているようです。なお、「続」のない方の『モビリティー革命2030』も同じ出版社から出ていて、私のこのブログでは2016年12月24日付けの読書感想文で取り上げています。ということで、『モビリティ・エコノミクス』よりも、より自動車産業に密着したコンサル本です。いずれにせよ、コストアップの割には製品価格の上昇が抑えられ、さらに、環境対応をはじめとしてコロナ禍もあって、自動車産業の先行きが不透明化する中で、産業としての生き残りについてコンサル的に考えを巡らせています。まず、環境をはじめとするESG投資が当然のように見なされるようになり、CO2のゼロエミッションなどの技術的なブレイクスルーが必要とされる中で、特に、私のようなシロートでも、我が国の自動車産業では川下のディーラーや川上の部品サプライヤーも含めたひざ詰めによる開発のすり合わせが、コロナ禍でどのように変化するのか、という疑問があります。加えて、MaaSによるサービス産業化がいわれて久しく、UBERはタクシーに近いサービスですので少し違うとしても、自動車のシェアリングが進む中で、モノとしての自動車の未来がとても不透明になっています。さらにさらにで、我が国でもJALやANAなどの航空産業はコロナ禍で需要が大きく減退し、輸送サービスとしても、輸送手段の自動車の販売も、新たなニューノーマルに着地するまで、どのような方向に進むのかは私ごときにはまったく判りません。ただ、本書ではラチ外のような気もしますが、自動車産業は我が国産業の中でも極めて重要なポジションを占めており、その先行きについては注目せざるを得ません。例えば、我が国産業構造は自動車産業のモノカルチャーとまではいいませんが、MaaSによって自動車交通があまりに効率的に再構成されて、その結果として、自家用車が公共交通機関に近くなれば、ひょっとしたら、自動車販売台数に影響を及ぼす可能性もあります。ただ、それにしては、産業としての重要性を無視しているとはいえ、本書の方向性はやや物足りないものがあり、海外展開とか、系列再編とか、あまりにもありきたりです。前の「続」のない方の『モビリティー革命2030』でも同じ評価を下しましたが、「迫力不足で物足りない」読書でした。

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次に、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書) です。著者は、大阪市立大学の研究者です。限られた範囲かもしれませんが、それなりに話題の書だと思います。我が家で購読している朝穂新聞に大きな広告が出ているのを見たことがあります。少なくとも出だしはとてもよかったです。外部化とか、外部経済を思わせるような用語を多用し、要するに、私が従来から主張しているように、資本主義が立脚している市場価格による資源配分が、実は、かなりの程度に外部性などによって歪んだ価格により資源配分がなされているような雰囲気を醸し出していました。第2章の気候ケインズ主義もまあ、許容範囲といえますし、第3章の資本主義を否定しないという意味で、改良主義的脱成長を批判するのもいいでしょう。しかし、第4章で未出版マルクス文書の発掘から、「晩期マルクス」に着目するあたりから話がスライスします。その後は、コモンの考え方なんかはいいとしても、史的唯物論の生産力増大の否定と脱成長なんかは、今までのマルクス主義観から大きく外れている点は著者本人も自覚しているようで、私からすればかなりOBに近いゾーンに落ちたような気がします。私は、繰り返しになりますが、資本主義社会とは市場による資源配分であり、それは価格をシグナルとしています。そして、モデルにおける価格はかなり非現実的な仮定から、現実にはあり得ないような前提が満たされる場合に、価格は効率的な資源配分を可能にします。しかし、現実には独占や外部経済により価格は大きく歪められており、ホントに社会的に正しい価格が市場で実現することはほとんどありません。エッセンシャル・ワーカーの賃金とブルシット・ジョブへの報酬が典型的です。その点は、著者が哲学の研究者であることを割り引いても、やや無理解に過ぎる気がします。その上で、私は、本書の著者の見方からすれば旧来マルクス主義なのかもしれませんが、生産力がほぼほぼ一直線に拡大する中で、商品の希少性が失われて社会主義ないし共産主義に到達するルートを無視することはできないと考えています。本書でも、ハーバー・ボッシュ法による廉価な化学肥料の大量生産が可能となり、『資本論』の指摘が当たらなかった点は認めていますし、従って、技術革新のパワーはマルクスの『資本論』でも見通せなかったことは明らかです。加えて、私が疑問に思うのは、「晩期マルクス」がどう考えていたかに、あまりに重点を置きすぎている気がします。有り体にいえば、マルクスがどういおうと、正しいことは正しいですし、間違っていることは間違っているわけです。まるで宗教の教祖の言葉を忠実になぞるようなことをするのではなく、時々の経済社会を正確に分析して把握した上で、その進むべき方向を科学的に明らかにする必要があるように思います。最後の最後に、本書では共産主義ではなく、「コミュニズム」という用語を多用しています。私の知る『ゴータ綱領批判』にある「必要に応じて」と定義される共産主義とは、異なるモノが想定されているのかもしれません。

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最後に、中村敏子『女性差別はどう作られてきたか』(集英社新書) です。著者は、北海学園大学名誉教授の政治学の研究者です。女性差別の歴史について、第1部でイングランド、第2部で日本に、それぞれスポットを当てて、それなりに歴史的に解明しようと試みています。例の、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長(当時)の女性蔑視発言が話題になり、私の読書の手がこの本にも伸びた、というわけです。ということで、大きな枠組としてはケイト・ペイトマンのモデルが用いられています。家父長制の例でいえば、p.15にあるように、伝統的家父長制、古典的家父長制、近代的家父長制というカンジです。古典古代のアリストテレスから始まって、イングランドにおける女性差別の歴史、すなわち、ホッブズやロックの社会契約に基づいて女性の地位が低下してゆく経緯が明らかにされます。私は専門外ながら、ロックは女性君主を認めていて、それなりの男女平等論者ではなかったのか、と思っていたのですが、むしろ、無秩序な「自然状態」を考えるホッブズの方が男女平等に近い、という評価のように読めます。そして、産業革命によりミドル・クラス、すなわち、マルクス主義的に表現すればブルジョワジーが誕生し、男が外で経済活動という公的な役割を受け持つ一方で、女性は家庭を取り仕切る主婦という私的な役割が与えられることになります。それが最近まで続くわけなんでしょうが、ここでイングランドの歴史はブチ切れています。他方、日本では公と私という分類ではなく、江戸時代から家庭内の役割分担があり、家の原理である地位に基づく権限、という考え方があって、イングランドよりもある意味で男女平等だった、と評価しています。むしろ、明治維新以降の海外の民法を参照する際に、男性が生物的属性により権力を持つ、という思想が導入された、と指摘します。日本的な男女観では、福沢諭吉を引いて、かなりの平等観を示しています。さらに、日本的な家の中の役割分担は高度成長期まで残り、男性が外で稼ぐ一方で、女性は一家の財布の紐を握るという、「欧米の主婦に比べて居心地のいい立場にいた」(p.168)と指摘しています。我が家もそうです。ただ、私が決定的に物足りなく感じるのは、大きく欠落した部分がある点です。すなわち、結論として、著者は、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数などに見る我が国の男女不平等は、欧米的な基準の見方であって間違っている、と主張したいのか、というとそうでもないようです。では、ジェンダー・ギャップ指数のような日本の女性差別があるとして、そうならば、明治期に欧米から民法を導入する前の日本に比べて、現時点では、ひどい男女不平等社会になってしまったのはなぜなのか、あるいは、欧米と日本が逆転したのはなぜなのか、という点が欠落しています。どうも、オススメできない女性差別論の読書でした。

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2021年2月19日 (金)

1月統計の消費者物価指数(CPI)上昇率は石油価格の下落などにより6か月連続のマイナス!!!

本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲0.6%の下落と、6か月連続の下落を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.1%とプラスに転じました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者物価0.6%下落 電気・ガス代が押し下げ
総務省が19日発表した1月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.4と前年同月比0.6%下がった。下落は6カ月連続。電気代やガス代などエネルギー関連の項目が全体を押し下げた。宿泊料を割り引く政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の停止でCPIの下げ幅は前月の1.0%より縮んだ。
エネルギー関連の項目は軒並み低下が続いた。電気代が8.2%、都市ガス代は10.7%、ガソリンは9.5%下がった。原油価格は足元で上がっているが、電気代などはまだ20年の原油安を反映して低迷している。
「Go To トラベル」の停止で宿泊料の下落率は前月の33.5%から2.1%に縮んだ。
一方、家電製品は上昇が目立った。空気清浄機が21.5%、電子レンジは12.2%、ルームエアコンは7.2%上がった。新型コロナウイルス禍により「在宅が増えて家電は全般的に買い替えが進んでいる」(総務省の担当者)という。
生鮮食品に加えてエネルギー関連の項目も除いた総合指数は0.1%高い102.0となった。上昇は6カ月ぶりとなる。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.7%の下落でしたので、ジャストミートではないとしても、大きなサプライズはありませんでした。CPIの下落が続いていることについては、一昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果の剥落もさることながら、エネルギーや政策要因の幼児向け教育あるいは高等教育の無償化などに伴う部分が小さくありません。すなわち、CPIヘッドラインの前年同月比の下落▲0.6%への寄与で見て、国際商品市況における石油価格の変動に伴ってエネルギーが▲0.68%の寄与があり、1月統計よりもマイナス幅が▲0.04%拡大しています。これだけで総合CPIの下落を超えてしまいます。我が勤務先ながら、大学授業料(私立)はさすがにウェイト小さく▲0.04%の寄与にとどまるものの、エネルギーと大学授業料(私立)の合計寄与度でヘッドラインCPIの下落幅である▲0.6%を超えます。まあ、何と申しましょうかで、逆に、引用した記事にもあるように、GoToトラベル事業の停止で、宿泊料のマイナス幅も大きく縮小しています。すなわち、昨年2020年12月には▲33.5%の下落で、ヘッドラインCPIに対する寄与度が▲0.40%あったんですが、本日公表の1月統計では▲2.1%の下落で寄与度も▲0.02%まで縮小しています。まあ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を考えれば、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、これらを総合的に考えると、エネルギーと生鮮食品を除くコアコアCPI上昇率がプラスに転じていることもあり、日銀金融政策の力不足を否定するものではありませんが、こういった国際要因や政策要因もあるわけですから、日銀だけに物価目標が達成されない責任を問うにはやや厳し過ぎるような気がするのは、私だけではないと思います。

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2021年2月18日 (木)

文部科学省「新型コロナウイルスの影響を受けた学生への支援状況等に関する調査」やいかに?

一昨日、2月16日に文部科学省から「新型コロナウイルスの影響を受けた学生への支援状況等に関する調査」の結果が公表されています。昨年2020年4~12月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で全国の国公私立の大学や短大、高等専門学校を中退した学生は1367人に上ることが明らかにされています。まず、共同通信のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

コロナ中退1367人に
大学生ら、昨年4~12月

2020年4~12月に新型コロナウイルス流行の影響で全国の国公私立の大学や短大、高等専門学校を中退した学生は1367人に上ることが16日、文部科学省の調査で分かった。同11、12月に334人増えた。学生全体に占める割合は0.05%。理由は「経済的困窮」や「学生生活不適応や修学意欲低下」などだった。
文科省によると、新型コロナによって休学したのは4434人で、学生全体の0.15%。学部1年生に限ると、中退は470人で、休学が859人だった。
新型コロナ以外の事情も含めた中退者は全体で2万8647人となり、前年同時期よりも減少した。

とても簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下の画像は、文部科学省の記者発表資料から中途退学者の状況の図表引用しています。

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なお、上の退学者と同じようなフォーマットで休学者についても資料が公表されています。見れば明らかな通り、昨年2020年4~12月の中途退学者は28,647人と、前年同時期の36,016人からは減少していますが、COVID-19の影響とされる人数は1,367人に上っています。図表の引用はしていませんが、同じ時期の休学者については65,670人、うちCOVID-19の影響を受けた休学者は4,434人に上っています。私は何度かこのブログでも主張しましたが、義務教育ではないものの、貧困からの脱却のためには大学教育が大きな役割を果たす可能性があると考えています。しかし、COVID-19の影響もさることながら、相当数の学生諸君が中退せねばならないようですから、何とか救済して欲しいと強く願っています。これも何度も繰り返していますが、感染症を拡大するだけに終わったGoToトラベル事業の予算を学生諸君の救済に回すことはできないものでしょうか?

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2021年2月17日 (水)

赤字を記録した貿易統計と予想外の伸びを示した機械受注の先行きをどう見るか?

本日、財務省から1月の貿易統計が、また、内閣府から昨年2020年12月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計を見ると、季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+6.4%増の5兆7798億円、輸入額は逆に▲9.5%減の6兆1037億円、差引き貿易収支は▲3239億円の赤字を計上しています。また、機械受注の方を見ると、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+5.2%増の8,996億円と、まだまだ受注額は低水準ながら、3か月連続でプラスの伸びを記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

輸出、1月6.4%増 中国向けが増加
貿易収支は7カ月ぶり赤字

財務省が17日発表した1月の貿易統計速報によると、輸出額は5兆7798億円と前年同月から6.4%増えた。中国向けが増加し、2カ月連続のプラスだった。輸入額は落ち込み幅が縮小し、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7カ月ぶりに赤字となった。
中国向けの輸出は1兆2326億円と37.5%増え、約10年ぶりの伸び幅となった。中国全土で工場が停止する春節(旧正月)は輸出が大きく減少する。2020年は1月、21年は2月に春節があり、時期のずれが前年同月比でみた増加につながった。
半導体などを製造する装置の輸出が韓国向けに急増したことも加わり、輸出はアジア全体でみても19.4%増の3兆3657億円と堅調だった。
新型コロナウイルスの感染が再拡大した米国向けの輸出は4.8%減の1兆14億円。落ち込み幅は20年12月の0.7%から再び拡大した。自動車輸出が減少に転じ、航空機や原動機も大幅に減った。欧州連合(EU)向けも1.6%減の5322億円と低調だった。
全体の輸入額は9.5%減の6兆1036億円。20年5月から二桁減が続いていたが、下げ幅が縮小した。原油の輸入は国内の経済停滞を反映して41.9%減と落ち込みが続いているが、液化天然ガス(LNG)は減少幅が小さくなった。貿易収支は3238億円の赤字となった。
20年12月の機械受注、前月比5.2%増 民間予測は6.6%減
内閣府が17日発表した2020年12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比5.2%増の8996億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は6.6%減だった。
うち製造業は12.2%増、非製造業は4.3%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は11.8%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」へと変更した。
同時に発表した20年10~12月期の四半期ベースでは前期比16.8%増だった。1~3月期の見通しは前期比8.5%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

長くなりましたが、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は▲6050億円の赤字でしたので、やや市場予想よりも小幅とはいえ、赤字は赤字ですから、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。ただし、上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整済みの系列では昨年2020年7月から半年超に渡って貿易黒字を計上しています。広く報じられている通り、貿易をはじめとする我が国の経済活動も新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けましたが、本日公表の貿易統計についても、かなりの程度に回復を見せています。中国向けは、引用した記事にもあるように、中華圏の春節の時期のズレにより大きく伸びた一方で、ワクチン接種が始まったとはいえ、まだCOVID-19のパンデミックが続く欧米向けは輸出が伸び悩んでいます。従って、まだまだ先行きの貿易動向にはCOVID-19に起因する不透明感が強く、すでに欧米先進国では広くワクチン接種が始まっている一方で、我が国ではまだ医療関係者への接種が始まろうとしている遅れた段階であり、まだ、東京や大阪、あるいは、私の住んでいる京都も含めて緊急事態宣言は解除されていません。加えて、今年2021年の春節は2月12日から始まっており、中華圏の経済動向、ひいては、我が国の貿易にも大きな影響を及ぼすと考えるべきですが、昨年2020年のCOVID-19パンデミックから1年を経過して、中華圏、特に中国の春節の過ごし方がどのように変化したかについて、現状では情報が少なく、なんとも計り知れない部分が残されています。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、貿易統計のグラフと同じで、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。まず、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前月比で▲6.6%減、レンジの上限でも▲0.6%減でしたから、+5.2%増という結果はかなりのサプライズでした。製造業では、11月統計の前月比▲2.4%減を軽くカバーする+12.2%増でしたし、船舶と電力を除く非製造業でも4か月連続の前月比プラスで、12月統計では+4.3%でした。これらを合計したコア機械受注でも、10月統計から3か月連続の前月比プラスで、10~12月期は6期ぶりの前期比プラスで+16.8%増を記録しています。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」へと変更しています。半ノッチの上方修正という気がします。ただし、先行きが安定してプラスを期待できるかといえば、私はそう考えていません。すなわち、今年2021年1~3月期は前期比で▲8.5%減が見込まれていますし、12月統計が大きなサプライズとしても、世界的なCOVID-19パンデミックの動向も含めて、設備投資や機械受注の先行きはまだまだ不透明で、それほど楽観できるはずもありません。

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2021年2月16日 (火)

米国ニューヨーク連銀のブログに見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による労働市場の不平等の拡大やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、米国ニューヨーク連銀のブログである Liberty Street Economics のサイトで、ちょうど1週間前の2月9日に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がもたらした労働市場における不平等について、COVID-19 and Labor Market Outcomes と題して3回の特集が組まれています。ソースは以下の通りです。

何度か、私がこのブログで強調したように、COVID-19の経済的帰結のもっとも重要なポイントのひとつは不平等や格差の拡大です。ニューヨーク連銀のエコノミストも基本的に私と同じ視点に立っているように受け止めています。いくつかグラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、最初のポストである Some Workers Have Been Hit Much Harder than Others by the Pandemic から判りやすいグラフを2点結合して引用すると上の通りです。タイトルは、上が Steeper Job Losses Seen for Lower-Wage Workers であり、下が Higher-Wage Workers Are More Likely to Work Remotely となっています。とても判りやすいと思います。上のパネルから、年収85千ドルを超える高収入の労働者はほとんど職を失わなかった一方で、30千ドル未満の低所得労働者はCOVID-19パンデミック前の2月を起点として、大きく職を失った上に、昨年いっぱいの期間ではその回復も遅れています。下のパネルから、同じ賃金階級で見て、高賃金労働者ほどリモートで仕事ができることが明らかに示されています。

次に、2番めのポストである Understanding the Racial and Income Gap in Commuting for Work Following COVID-19 からは、これほど判りやすいグラフがなかったものですから、グラフの引用はしません。2番めのポストでは、米国の郡 county ごとに通勤の問題に注目しています。そして、結論として、低所得の黒人やヒスパニック系が多数を占めるコミュニティにおいては、在宅勤務への切換えができず、その分、COVID-19への脆弱性が高かった可能性を示唆しています。

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最後のポストである Black and White Differences in the Labor Market Recovery from COVID-19 から Labor Force Exit from Unemployment Remains Elevated for Blak Workers と題するグラフを引用すると上の通りです。このポストでは、就業から失業への移行に加えて、正規雇用と非正規雇用=臨時雇用の間の移行、さらに、失業者の労働市場からの退出、などについての分析結果を示しています。上のグラフから、黒人は白人に比べて失業してそのまま労働市場から退出するケースが多いことが示されています。いい働き口がないからと推測されます。

私は学生諸君への授業でも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済的帰結として、不平等の拡大を上げていて、とても深刻に受け止めています。授業の最後には、学生諸君に対して、たとえCOVID-19に耐性ある職業に就けたとしても、決して、格差や不平等で苦しんでいる人たちへの思いやりを忘れないよう、強く訴えておきました。

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2021年2月15日 (月)

高めの成長率となった2020年10-12月期GDP統計1次QEから何を読み取るべきか?

本日、内閣府から昨年2020年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+3.0%、年率では+12.7%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きなマイナスとなった4~6月期から、7~9月期に続いて2期連続のプラス成長とリバウンドを見せています。しかし、COVID-19パンデミック前の一昨年2019年10~12月期の548.8兆円にまだ届かない542.7兆円の水準ですし、何よりも、今年2021年に入ってCOVID-19感染拡大第3波により、東京や大阪などに2度めの緊急事態宣言が出された影響もあって、エコノミストの間では1~3月期はマイナス成長が確実とみなされています。その意味で、まだまだ、本格的な回復には時間がかかり、不透明さも払拭されていない気がします。ワクチン接種の開始がどこまで先行きの期待に影響するか、気にかかるところです。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

GDP実質年率12.7%増、10-12月 20年は4.8%減
内閣府が15日発表した2020年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質の季節調整値で7~9月期から3.0%、年率換算で12.7%増えた。2期連続のプラス成長だが、GDPの水準は新型コロナウイルスの感染拡大前に届かない。20年通年は4.8%減と11年ぶりのマイナス成長となった。
10~12月期の成長率は比較可能な94年4~6月以降で2番目の大きさ。年率22.7%増と記録的だった7~9月期に比べると縮んだもののなお大きい。内需が2.0%分、外需が1.0%分押し上げた。
GDPの過半を占める個人消費が前期比2.2%増えた。自動車や携帯電話の販売が堅調だったほか、政府の需要喚起策「Go To」キャンペーンなどにより外食も好調だった。内需のもう一つの柱である設備投資は4.5%増と、3期ぶりにプラスに転じた。半導体製造装置など生産用機械が増えた。
内閣府が事前にまとめた民間エコノミストの予測平均(前期比年率10.2%増)を上回る伸びとなった。設備投資や個人消費など内需の寄与が予測を大きく上回り、全体を押し上げた。
20年通年の減少幅はリーマン・ショックの影響で5.7%減った09年に次ぐ過去2番目の大きさとなった。個人消費が5.9%減と、比較可能な95年以降で最大のマイナス幅だった。
10~12月期GDPの実額は年額換算で542兆円とコロナ前のピークだった19年7~9月期(559兆円)より約3%低い。政府が緊急事態宣言を発動した1~3月期に再びマイナスに転じる可能性があり、コロナ前への回復はさらに遠のく。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2019/10-122020/1-32020/4-62020/7-92020/10-12
国内総生産GDP▲1.8▲0.6▲8.3+5.3+3.0
民間消費▲3.4▲0.2▲7.2+2.6+2.0
民間住宅▲1.9▲3.7+0.5▲5.7+0.1
民間設備▲4.5+1.4▲5.9▲2.4+4.5
民間在庫 *(▲0.1)(+0.1)(+0.1)(▲0.2)(▲0.4)
公的需要+0.6▲0.2+0.6+2.4+1.8
内需寄与度 *(▲2.5)(▲0.2)(▲5.2)(+2.6)(+2.0)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.6)(▲0.4)(▲3.1)(+2.6)(+1.0)
輸出+0.2▲5.3▲17.2+7.4+11.1
輸入▲3.2▲3.1+1.3▲8.2+4.1
国内総所得 (GDI)▲1.8▲0.5▲7.3+5.2+3.0
国民総所得 (GNI)▲2.0▲0.2▲7.4+5.0+3.2
名目GDP▲1.2▲0.5▲8.0+5.5+2.5
雇用者報酬 (実質)▲0.2+0.3▲3.6+0.6+0.8
GDPデフレータ+1.5+0.9+1.4+1.2+0.2
国内需要デフレータ+1.0+0.8▲0.0+0.2▲0.6

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2020年10~12月期の最新データでは、前期比成長率が7~9月期に続いてプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と黒の純輸出が特に大きなプラス寄与を記録しています。

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先週金曜日のこの私のブログでも1次QE予想を取り上げましたが、私は年率+10%を少し下回る+7%~+8%くらいの成長率を予想していました。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは年率で+9.4%成長でしたし、レンジの上限でも+13.0%でしたから、ほぼほぼ上限に使い数字が実績として出て来たことになります。少し、私は驚きました。簡単な計算をすれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックによる緊急事態宣言が昨年2020年4月上旬に発せられ、4~6月期は前期から▲45.3兆円の減少となった一方で、7~9月期には+26.3兆円増、そして、本日公表の10~12月期には16.0兆円増ですから、2四半期の合計で+42.3兆円増となり、4~6月期に減少した▲46.3兆円の91%を取り戻したことになります。ただ、昨年2020年を通した年間統計に目を転じると▲4.8%となり、2008年9月のリーマン・ショック後の2009年の▲5.7%以来のマイナス成長でした。まあ、そうなんでしょうね。
の本経済はこのGDP統計を見る限り、なかなかに好調そうに見えなくもないですが、3点コメントしておきたいと思います。第1に、これは冒頭に書いた繰り返しですが、今年2021年年初からCOVID-19パンデミックの第3波の影響で緊急事態宣言が出ています。東京や大阪など、私が住んでいる京都も含めて、大都市圏では2月7日の当初予定を過ぎてもまだ解除されていません。従って、足元の1~3月期はマイナス成長となる可能性が高い、といわざるを得ません。ただし、昨年4月の最初の緊急事態宣言と比べて対象地域や行動制限が限定的であることから、昨年2020年4~6月期のような大きなマイナスではないと考えられます。ですから、第2に、足元の経済を見るにつけ、昨年2020年10~12月期のやや大きめの成長率は、いわば、国民の健康や安全を犠牲にしてGoTo事業を展開したといえます。それがホントによかったのか、あるいは、国民の利益に沿っているのか、きちんと考えるべきです。何度でも繰り返しますが、ワクチン接種がまだ始まっていない現段階です、目先の経済を犠牲にしてでもCOVID-19終息の手段を講じることの方が、長い目で見て経済の回復にも資する可能性が高い、と私は考えています。第3に、本日公表のGDP統計だけが要因ではありませんが、東証平均株価が1990年8月以来の3万円を突破しています。終値は30,084.15円と報じられています。私は、基本的に、株価が低いよりは高い方がいいと考えていますし、ほかの資産価格についても同じです。前の安倍内閣の支持率は「株価連動型」と揶揄されたこともありますが、少なくともCOVID-19パンデミック以来、株価は日本経済の現状を示唆する指標ではなくなった可能性が高いのではないか、と私は考えています。まあ、株価が国民生活の現状は反映していないのは昔からです。ホントは、経済学の研究者として、ちゃんとフォーマルな定量分析が必要なわけですので、ここでは私の直感だけです。それでも、主張しておきたいと思います。

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2021年2月14日 (日)

チック・コリア死す!!!

チック・コリアが79歳で亡くなっています。ニューヨーク・タイムズのサイトから記事の最初のパラだけを引用すると以下の通りです。

Chick Corea, Jazz Keyboardist and Innovator, Dies at 79
Chick Corea, an architect of the jazz-rock fusion boom of the 1970s who spent more than a half century as one of the foremost pianists in jazz, died on Tuesday at his home in Tampa, Fla. He was 79.

昨年2020年10月25日付けのこのブログの記事で、「キース・ジャレットのピアノのない未来」と題して、同じニューヨーク・タイムズの記事から、「左半身に麻痺が残り、もはや公衆の前で演奏できない」 "My left side is still partially paralyzed. It is unlikely he will ever perform in public again." というインタビューを引用しています。そして、今度はチック・コリアが亡くなりました。この世代では、世界的なジャズピアノの巨匠といえば、キース・ジャレットとチック・コリアのほかは、ハービー・ハンコックということになるかと思いますが、残ったのはハンコックだけなのかもしれません。ということで、私の独断と偏見に基づいて評価するチック・コリアのベスト5のアルバムは以下の通りです。

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上から順に、以下の通りです。

  • Now He Sings, Now He Sobs, 1968
  • Return to Forever, 1972
  • Crystal Silence, 1972
  • Past, Present & Futures, 2001
  • Duet, 2008

ベスト5ということになれば入り切らなかったのですが、ホントは、Chick Corea Solo Piano - Standards と Originals も私は高く評価しています。他方で、一般的な評価の高い My Spanish Heart については、それほほどでもなかったりします。私の好みで、ピアノ・トリオのパフォーマンスが好きなんですが、トリオはもちろん、ソロでも、あるいは、エレクトリック・バンドも、マルチな才能を示した稀有なジャズピアニストだったと思います。私は仏教徒ですが、浄土真宗ですので「冥福」という言葉は使いません。

謹んで哀悼の意を表します。

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2021年2月13日 (土)

今週の読書は経済の学術書『日本経済の長期停滞』のほかは新書ばかりで計4冊!!!

今週の読書は、本格的な経済学の学術書のほかは新書ばかりで計4冊読みました。以下の通りです。なお、新書といえば、話題の『人新世の「資本論」』がそろそろ予約が回ってきそうで、私はマルクス主義経済学にはまったくシロートなんですが、それでも楽しみです。

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まず、小川一夫『日本経済の長期停滞』(日本経済新聞出版) です。著者は、大阪大学をホームグラウンドとしていた研究者ですが、すでに定年退職しているようです。本書は、2部構成となっており、第1部では供給サイドから、また、第2部では需要サイドから、それぞれ、タイトルである日本経済の長期停滞について分析しています。なお、決して、一般のビジネスパーソン向けの経済書や教養書ではありません。かなりレベルの高い学術書です。おそらく、学部学生のレベルを超えて大学院の教科書として採用してもおかしくない水準であると考えるべきです。ということで、第1部の供給サイドでは、企業の設備投資が停滞している原因として先行きの不透明さ、あるいは、悲観的な期待の役割が大きいとの結果が示されており、その期待形成には需要、とりわけ消費の伸びが低いことが大きな原因となっている、と指摘しています。逆からいって、巷間よくいわれるような生産性の伸びの鈍化は日本経済の長期停滞の要因としては否定されています。私のように適当な直感ではなく、本書で展開されている緻密な計量分析の結果として、供給サイドの生産性が日本経済の停滞の要因ではなく、需要、特に消費が停滞の大きな要因との分析結果を得ています。ここまではOKだという気がします。ただ、第2部の需要サイドに入って、その消費の停滞の原因として、年金の不足が原因として上げられています。第7章では家計調査のデータを基に、家計の消費行動について、その基礎となっている所得や資産・負債までスコープに入っていながら、そこから大きくスライスしてしまって、なぜか、第8章から家計が公的年金制度をどう見ているか、に分析を進めています。とても不可解です。消費を決めるのは、所得とマインドであり、その消費をダイレクトに決める要因の分析がなされて然るべきなのですが、消費の裏側で決まる貯蓄の決定要因の方に分析を進めてしまっています。おそらく、何らかの強い思い込みが基礎にあって、それに引きずられたのであろうと想像しますが、消費の低迷が設備投資の停滞の原因となり、日本経済が長期停滞に陥っているというのであれば、消費を正面から分析すべきです。そうすれば、年金なんて迂遠な原因ではなく、日々の生活費のもとになっている賃金・所得の要因が大きくクローズアップされると私は考えるのですが、その賃金・所得については分析対象とすらせず、なぜか、年金に分析を進めてしまっているのは、すでに結論を決めてからのあと付けの分析になっているような気がしてなりません。賃金・所得の要因と年金の要因の両方が分析された後の結論であればともかく、賃金・所得をパスした上で年金だけを分析対象にしたのは本書の大きな欠陥といわざるを得ません。ただ、夫婦ともに正規雇用であれば貯蓄取崩しに抵抗低いので、雇用面での政策の必要性だけはまあ、いいような気はします。年金については同意しかねます。私のような研究者には、読んでいて勉強になったことは確かです。途中までの生産性要因を否定して需要要因を分析し始めたところまではいいんでしょうが、途中から大きくスライスして、結論においてはOBゾーンに落ちてしまった気がします。クオリティの高い分析だけに、とても残念です。

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次に、野口悠紀雄『リープフロッグ』(文春新書) です。著者は、財務省出身のエコノミストであり、私なんぞよりもずっと名が売れていますので、紹介の必要もないと思います。リープフロッグとは、その名の通り、カエル跳びであり、経済的には遅れた状態から一気に歴史的な段階を経ずして先に進む、ということです。本書冒頭では中国の例を引いています。すなわち、通信においては、固定電話に必要な基地局とかをパスして、固定電話の段階をすっ飛ばして携帯電話に進んだり、あるいは、金融においては、銀行網を構築した上で決済システムを形成するという段階をすっ飛ばして、いきなり、現金流通が不十分なままの段階でキャッシュレス決済の段階に進んだり、といった点が指摘されています。我が日本では、通信も金融も歴史的に欧米先進国がたどった段階を経つつ、いわゆるキャッチアップを果たしていますが、中国やほかのいくつかの新興国などでは、日本を含む先進国のたどった経済発展段階をすっ飛ばしたリープフロッグで進んでいる場合が少なくありません。そういった歴史を、近代少し前の大航海時代のポルトガルから始まって、ラテンアメリカに大きな植民地を築いたスペイン、さらに、短いオランダの覇権を経て、英国、そして、20世紀に入って第1次世界対戦後の米国と、まあ、リープフロッグで説明できる範囲は限られているような気もするものの、経済分野に限定せずに覇権国家の変遷を歴史的に、かつ、経済的な基礎を持ってあと付けています。その上で、キャッチアップならざるリープフロッグによって、我が国経済が世界のトップに躍り出る可能性について考えています。結論として、とてもありきたりで月並みなのですが、既得権をいかに乗り越えるか、という課題があることが示唆されています。しかし、最後に私の付足しながら、これら覇権国の交代模様を見ていると、トゥキディデスの罠よろしく、ホントに戦争で決着をつけたのはアテネとスパルタ以降ではスペインと英国ぐらいのもので、米国から中国にもしも覇権が移行するとしても、武力による決着ではないような気がします。

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次に、中野敏男『ヴェーバー入門』(ちくま新書) です。著者は、東京外語大学などに在籍した研究者であり、当然ながら、ヴェーバー社会学が専門です。ヴェーバー社会学を理解社会学と位置づけ、いくつかのヴェーバーの代表的な成果、すなわち、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、『経済と社会』などから、少しだけ宗教社会学までスコープを広げつつ、入門書として取りまとめています。私は『プロ倫』くらいしか読んだことはありませんが、本書でも指摘されているように、大塚教授のような目的論的関連の因果関連への組みかえ、という視点しかありませんでした。本書で批判しているように、資本主義の起源論なわけです。もちろん、資本主義の精神がプロテスタンティズム、特にカルバン派の倫理にとても良くフィットしたのは当然ながら、それら市民階級の専制に寄与したという視点はまったく持ち合わせていませんし、本書を読み終えた後でもまだ疑わしく感じています。というのは、私はマルクス主義的な史的唯物論が世界の歴史にはよく当てはまり、それ故に正しいと考えていますから、経済的な土台の上に上部構造が乗っかっている、というのは、とてもよく現実を説明していると考えており、ヴェーバー的なその経済的土台と上部構造の関係だけに還元できない文化・思想領域における相対的に独立した展開は、歴史的に無視できる範囲と考えています。欧州中世の宗教戦争、もちろん、カトリックとプロテスタントとの争いの中に、こういった視点を見出そうとする向きもあるようですが、ルターがそもそも反対したのは免罪符の販売という宗教的というよりは経済的な行為に対してですし、その昔のキリスト教はいうまでもなく、21世紀の現在における新興宗教はほぼほぼ経済の原理に従って動いていると私は考えています。最後に、とても興味本位な読み方ながら、p.171に『宗教ゲマインシャフト』の構成について、ヴェバーの妻マリアンネの手になる編集に対して、本書の著者が考える構成が示されています。私くらいのシロートがどうこういう見識は持ち合わせていませんが、よく知られたようにマルクスの『資本論』は第1館飲みがマルクス本人による編集であり、第2巻と第3巻はエンゲルスによる編集です。少なくとも私の恩師は、第3巻の最終章が三大階級で終わっているので、エンゲルスの編集は正しい、と考えていたように私は受け止めていえるんですが、アノ当時はこういった形でパーツを書き散らしておいて、最後に編集するというスタイルだったのだろうか、とついつい考えてしまいました。

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最後に、坂井孝一『源氏将軍断絶』(PHP新書) です。著者は、創価大学の研究者であり、専門は日本中世史だそうです。本書では、源頼朝が開いた本格的な初めての武士政権である鎌倉幕府について、2代目の頼家と3代目の実朝が指導者としての資質に欠け、あるいは、京の公家のように蹴鞠や和歌に目が行った惰弱な性格で、源氏将軍が途絶えて、摂家将軍から親王将軍と名目的な将軍を北条執権体制が補佐する、といいつつ、実は、北条家が実質的な支配を強める、と中学校や高校の歴史では習っています。私もまったくの専門外ですので、そのような考えを持っていたりします。それに対して、本書では、蹴鞠や和歌などは京の朝廷や公家との交渉に当たるに必須の嗜みであり、決して「惰弱批判」は当たらず、実朝は武士であるとともに、治天の君である後鳥羽院の従姉妹を御台所に迎えた公家でもあることから、そもそも、実朝が自分の後任将軍に親王を要請し、後鳥羽院も実朝が後見する親王将軍の可能性を肯定していた、という視点を提供しています。逆に、実朝が暗殺されたがゆえに、後継将軍は親王ではなく摂関家から出す、ということしか認められなかったのではないか、と指摘しています。後鳥羽院が深く信頼する実朝が後見するから、京と鎌倉の二重政権になる恐れなく、親王を鎌倉に将軍として送り出すことが可能と後鳥羽院が考えたわけで、実朝なき鎌倉に親王将軍は許可できなかった、という見立てです。実朝が後継たる嫡子を得られなかったにもかかわらず、妾を取らなかったことも補強材料とみなされています。ただ、それにしては、もう少し後になれば親王将軍がでているわけですから、やや疑問が残らないわけではありません。いずれにせよ、古典古代の奈良時代や平安時代から中世をつなぐ重要なポイントにある鎌倉期については、私はまったくのシロートですが、というか、日本史一般にシロートなんですが、シロートなりにも興味を引き立てられる歴史書でした。

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2021年2月12日 (金)

昨年2020年10-12月期のGDP統計1次QEの予想やいかに?

先月末の鉱工業生産指数(IIP)や雇用統計など、必要な統計がほぼ出そろって、来週月曜日の2月15日に昨年2020年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第3波の感染拡大が始まっていましたが、まだ、その影響は大きく現れたわけではないと考えられており、結果はどうなるのでしょうか。ということで、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。1月に緊急事態宣言が出ていますので、その影響も気にかかるところです。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+2.3%
(+9.5%)
2021年1~3月期は、緊急事態宣言の再発令を受けて、営業時間の短縮や収容人数の制限、外出自粛などの措置が講じられたことによりサービス消費が大きく下振れ、3四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。
大和総研+1.5%
(+6.3%)
1-3月期の日本経済は、緊急事態宣言の再発出を受けて小幅なマイナス成長が見込まれる。今後の感染状況によっては景気が二番底に陥るリスクがある。
個人消費は、緊急事態宣言の再発出を受けてサービス消費を中心に落ち込み、1-3月期はマイナスに転じると見込まれる。ただし、今回の緊急事態宣言は対象区域が絞られ、前回よりも対象を絞って経済活動を緩やかに抑制する内容であるため、1カ月当たりの消費抑制額は前回宣言時の3割程度に留まるとみている。しかし、感染拡大に歯止めがかからず宣言が延長され、対象区域が拡大された上で措置が厳格化されれば、個人消費は2020年4-6月期の水準を下回る可能性がある。
住宅投資は1-3月期以降増加に転じると見込まれるものの、雇用・所得環境の改善の鈍さや先行きに対する不透明感の強さなどが住宅購入意欲を減退させ、弱い動きが続くとみられる。人口減少・高齢化や金融庁によるアパートローンの監視強化、相続税対策の需要の一巡、消費増税などにより、民間住宅投資の基調がコロナショック前から弱かったことも一因として挙げられる。
設備投資は、1-3月期は弱い動きになるとみられるものの、4-6月期以降は増加傾向が続くとみられる。財消費や輸出の回復、それに伴う設備稼働率の上昇が追い風となろう。ただし、非製造業の一部の業種を中心に先行き不透明感が高まる中、企業は能力増強投資などを一部先送りするとみられる。そのため、増加ペースは緩やかなものに留まろう。
公共投資は緩やかな増加が続くとみている。前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の対象期間は 2020年度で終了するものの、建設業の人手不足などを背景に執行が遅れており、未執行分が2021年度に繰り越されると考えられる。また、2020年12月8日に閣議決定された追加の経済対策に盛り込まれた国土強靱化の推進も公共投資の追い風となろう。
輸出は増加傾向が続くとみられるものの、そのペースは鈍化しよう。地域別に見ると、2020年末に追加の経済対策(1人当たり最大600ドルの現金給付や失業保険の拡充)が成立した米国向けや、投資主導で力強い景気回復が続いている中国向けは堅調な推移が見込まれる。一方、欧州向けはロックダウン等の影響が重石になり、1-3月期は減少に転じるとみられる。
みずほ総研+2.4%
(+9.8%)
1~3月期は、11都府県を対象として緊急事態宣言が1月に発令されたことを受け、サービスを中心に個人消費が落ち込むことで、3四半期ぶりのマイナス成長になる見通しだ。
前回(昨春)に比べると、今回の緊急事態宣言による経済活動への制限は緩いものになっている。前回は飲食店への時短営業要請だけでなく、遊興施設や劇場、商業施設などにも休業が要請されたが、今回は飲食店に対する時短要請に的を絞った内容となっており、商業施設等に対しては休業要請ではなく時短の「働きかけ」にとどまる。また、昨春は解除までに7週間を要したが、今回は1カ月程度(2月7日まで)の想定でスタートしており、その間に感染収束のメドが立てば前回より短い期間で済むことになる。
しかし、昨春に比べて大幅に感染者数が増加した後の宣言であることに加えて、経済活動の制限内容が前回より弱いことを踏まえると、宣言解除までの期間は前回より長引く可能性が高い。新規感染者数は1月後半に減少傾向に転じたものの、病床使用率は高止まりしており、宣言を解除できる状態になるには3月末頃までかかるとみられる。
商業施設の営業が継続されるため財消費の落ち込み幅が小さいほか、生産活動が停滞せず輸出への影響が限定的であることから、昨春と比較すれば日本経済への全体的な影響は抑制されるとみられる。しかし、対人接触型のサービス消費(外食、宿泊、旅行・交通、娯楽)は大幅な減少が避けられないだろう。予備費の活用などにより飲食店など対人接触型サービス業種に対する重点的な支援を行う必要がある。
重症病床使用率は東京で100%を超えるなど、首都圏を中心に医療体制の逼迫は続いている。経済活動の回復と感染収束の両立は非常に困難な課題だが、現状においては感染収束を優先せざるを得ない。変異株の市中感染など感染再拡大のリスクが残存する中、政府には、一刻も早く特措法を改正するなど緊急事態宣言の実効性を高めることが求められる。
ニッセイ基礎研+2.1%
(+8.5%)
10-12月期は高成長となったものの、月次ベースでは新型コロナウイルス陽性者数の増加を受けた営業時間短縮要請などから年末にかけて持ち直しの動きが一服している。
当研究所が推計している月次GDPは2020年6月から前月比で増加を続けていたが、11月に前月比▲0.5%と6ヵ月ぶりに減少した後、12月は同▲2.0%と減少幅が拡大した。12月の水準は10-12月期よりも▲1.5%低い水準にあり、2021年1-3月期は低い発射台からのスタートとなる。さらに、2021年1月に緊急事態宣言が再発令されたことから、対面型サービス消費を中心に経済活動が再び落ち込むことは避けられず、2021年1-3月期は3四半期ぶりのマイナス成長となることが予想される。
第一生命経済研+2.5%
(+10.1%)
予測値が実現した場合、緊急事態宣言で激減した 20年4-6月期の落ち込み分の9割近くを回復することになる。また、新型コロナウイルス感染拡大前である19年10-12月期と比べても▲1.6%のところまで戻る見込みである。景気の持ち直しペースは当初想定されていたよりもかなり速く、水準としての回復も徐々に進んでいたことが確認される結果になるだろう。
もっとも、こうした持ち直しの動きはいったん途切れる可能性が高い。昨年末以降の感染者数急増と、年明けに発令された緊急事態宣言の影響により、サービス消費は大きな打撃を受けることが確実だ。昨年末以降、人出は明確に減少しており、飲食や旅行に限らず消費は抑制されることになるだろう。海外での感染者数拡大のなかでも輸出が底堅さを保つ可能性が高いことは好材料だが、消費の減少が足を引っ張ることで、1-3月期は再びマイナス成長に陥ることが確実な情勢である。
(1月29日付けリポートから)
伊藤忠総研+3.3%
(+14.1%)
2021年1~3月期は、緊急事態宣言の再発令を受けて12月から一段と水準を切り下げた個人消費が前期比で減少に転じ、欧米など海外景気の停滞により輸出は伸び悩むとみられる。設備投資や住宅投資も下げ止まった程度であり、実質GDP成長率は前期比でマイナスに転じる可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+2.2%
(+9.2%)
予測通りの結果となれば、コロナ禍の落ち込み(2020年1~3月期および4~6月期)の約8割を取り戻す計算となる。外需が好調で輸出が順調に増加したこと、政策効果もあって個人消費を中心として11月までは内需の持ち直しが続いていたことが成長率の押し上げに寄与した。しかし、感染拡大の第3波によって12月以降の経済活動が抑制されていることに加え、年明け後は一部地域での緊急事態宣言の再発出により需要がさらに冷え込んでいることから、景気の先行き不透明感は依然として払拭されていない。
三菱総研+1.4%
(+5.6%)
2020年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+1.4%(年率+5.6%)と回復は継続するものの、前期(季節調整済前期比+5.3%(年率+22.9%))の大幅なプラス成長からは減速を予想する。実質GDPの水準は、コロナ危機前(2019年10-12月期)より3%程度低い水準にとどまる見込み。

極めて大雑把に見て、昨年2020年10~12月期の経済成長率は年率+10%前後のプラス成長と見込まれているようです。その数字だけを見れば、そこそこ高成長ではあるのですが、昨年4~6月期に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックのための世界的なロックダウンの流れの中で、我が国でも第1回目の緊急事態宣言が出て経済活動が停滞し成長率も▲29.2%を記録した後、7~9月期には大きくリバウンドして+22.9%の後の10~12月期+10%前後の成長ですから、リバウンドの勢いは早くも鈍化しています。加えて、私が意識的に足元2021年1~3月期から先行きの景気動向をヘッドラインに取りまとめていますが、年末からのCOVID-19パンデミック第3波に対応して、諸外国ではロックダウンに入った国もあり、我が国でも年明けから第2回目の緊急事態宣言が出ていますので、1~3月期の成長率はふたたびマイナス成長に落ち込むことは避けられない見通しとなっています。ですから、景気や経済の先行き見通しについては、エコノミストの手を離れて、COVID-19の感染拡大次第と私は考えていますが、それにつけても、我が国ではワクチン接種が先進国の中でももっとも遅れているわけです。これでも来夏にオリンピックやパラリンピックを開催しようという意欲だけの観念論では、もうどうしようもすることができないわけで、私は東京オリンピック・パラリンピックは中止すべきであると考えています。
最後に、下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2021年2月11日 (木)

少子化の進展の中で大学の進むべき方向やいかに?

後期授業を終えて、定期試験は実施できなかったものの、リポートなどにより受講学生諸君の評価も終え、4月から始まる来年度のシラバスも書き終え、そろそろ、入試の業務も終えつつあります。高校生諸君の大学入試の採点もさることながら、大学院を希望する外国人留学生諸君の選抜もそれなりにタイヘンです。
大学のビジネスモデルとして、あくまで、エコノミスト的にビジネスモデルとして考えると、もしも、少子高齢化が進み、なおかつ、大学進学率がそろそろ頭打ちとなるとすれば、通常の高校から進学する学生諸君だけでなく、大学院への対応も必要とされるかもしれません。もちろん、大学については、収益性だなんだといわずに、本来の教育と研究を柱とする機関であることはいうまでもないものの、私立大学であれば、あるいは、ひょっとしたら、独立法人化された国立大学であっても、それなりのビジネスモデルを考えておく必要がありそうな気がしないでもありません。例えば、高度成長期のような長期雇用と年功賃金に支えられたOJTから、仕事を離れて大学院で学ぶリカレント教育とか、ODAによる奨学金などで学費を高く設定できる途上国留学生の受け入れとか、といった大学院の充実がひとつの選択肢ではないか、と考えないでもありません。

リカレント教育については、かなり旧聞に属する話題ですが、1月26日に内閣府から政策課題分析シリーズとして「リカレント教育による人的資本投資に関する分析」が公表されています。

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上のグラフは、内閣府のリポートから (図表2-3-4 転職を伴う収入の増加へのリカレント教育の影響) を引用しています。転職を伴うとすれば、OJTよりもOff-JTや自己啓発などが有効という結果が出ています。Off-JTにリカレント教育なんかが含まれているんだろうと思います。ただ、ややごまかしがあって、転職を伴わなければ、OJTはOff-JTよりも収入増加につながるという結果もリポートでは同時に明らかにしています。リカレント教育で1~2年、あるいはもっと職場を離れて大学院教育を受けるというのも、それなりの機会費用がかかるような気がしないでもありません。

途上国からの大学院生の受入れもひとつの選択肢です。JICA開発大学院連携のサイトを見ると、関西エリアでは京都大学とともに私の勤務する大学も経済学研究の連携大学院としてリストアップされています。ただし、同僚教員の見方によれば、さすがに、大学院生の受入れでは学部学生とボリューム的に圧倒的、ケタ違いに少なく、単価が10倍以上になるわけではないので、それほどの収益源にはならない、加えて、S/T比が学部学生に比べて小さく教員の負担も小さくない、ということのようです。確かにそうかもしれません。

まあ、まだ大学教員に復帰して1年にもならず、教育と研究については、それなりの見識を持って自分で考えながら進めている一方で、それ以外については、今は学部執行部からの指示に基づいて、アタフタと対応しているに過ぎませんから、大学のビジネスモデルなんてエラそうなことを考えるのは、まだまだ数年は早いのかもしれません。

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2021年2月10日 (水)

1月の企業物価(PPI)上昇率は前月比プラスなるも前年同月比で大きなマイナスが続く!!!

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.6%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前月比0.4%上昇 2カ月連続のプラス
日銀が10日発表した1月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.7と、前月比で0.4%上昇した。石油製品や化学製品の値上がりにより、前月比の上昇は2カ月連続となった。一方、前年同月比では1.6%の下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。原油市況が20年12月から21年1月にかけて、サウジアラビアの自主的な追加減産の表明や米バイデン政権による追加経済対策の期待を背景に上昇した。南アフリカで新型コロナウイルスの感染が拡大し、貴金属の供給懸念から触媒の相場が上昇したことも価格を押し上げた。
円ベースでの輸出物価は前年同月比1.0%下落、前月比では0.9%上昇した。円ベースでの輸入物価は前年同月比で8.2%下落、前月比で2.3%上昇した。
公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは285品目、下落したのは358品目だった。

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比が▲1.6%の下落でしたので、ジャストミートしました。加えて、日経新聞の記事のタイトル「前月比0.4%上昇 2カ月連続のプラス」については、季節調整済みの系列の統計ではありませんので怪しいとしても、昨年2020年11月の△2.3%、12月▲2.0%からジワジワと下げ幅が縮小しているのも事実です。もちろん、まだまだ大きなマイナスですから、一昨年2019年10月からの消費税率引上げ効果の剥落があるとはいえ、日銀の物価目標とは整合的ではないといわざるをえません。加えて、引用した記事にあるように、前月比プラスで+0.5%を記録しましたが、その大部分は国際商品市況における石油価格の上昇に連動していると考えるべきです。すなわち、前月比+0.4%に対する寄与度で見て、ガソリンをはじめとする石油・石炭製品の寄与が+0.24%、キシレンなどの化学製品が+0.11%となっていますので、ほぼほぼこの2類別で国内物価の前へ津比上昇率の9割を説明できてしまいます。ですから、物価の先行き見通しについて、それほど楽観的になれるハズもありません。

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2021年2月 9日 (火)

毎月勤労統計に見る賃金はまだ下がり続けるのか?

本日、厚生労働省から昨年2020年12月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、先月から久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲3.2%減の54万6607円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+2.5%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年12月の実質賃金、前年同月比1.9%減 冬の賞与減で
厚生労働省が9日発表した2020年12月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.9%減少した。冬の賞与や残業代の減少が響いた。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は、前年同月比3.2%減の54万6607円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.1%減、ボーナスなど特別に支払われた給与は5.4%減、残業代など所定外給与は8.9%減だった。
パートタイム労働者比率は0.25ポイント低下の31.54%だった。時間あたり給与は2.0%増の1204円だった。
同時に発表した20年の実質賃金は前年比1.2%減だった。減少率は、消費税を8%に増税した14年(2.8%減)以来の大きさとなった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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景気との連動性高い所定外労働時間は、わずかな差で1ト月違いながら、私がこのブログ向けに暫定的に仮置した2020年5月の景気の谷にほぼ整合的な形で反転しているのが、上のグラフから見て取れます。ただし、経済産業省の鉱工業生産指数が昨年2020年11~12月と2か月連続で減産している一方で、生産の派生需要である雇用の方の製造業所定外労働時間が逆に増加しているのはやや違和感あります。また、賃金もおおむね2020年5月で下げ止まったところなのですが、2020年11~12月には大きなマイナスを記録しています。引用した記事にある通り、いわゆるボーナスに相当する特別に支払われた給与や残業代など所定外給与の減少が響いているようです。統計がそもそもガタガタな上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックで給与統計は下げ続けており、国民生活はひどいことになっています。

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2021年2月 8日 (月)

3か月連続で低下した景気ウオッチャーと貿易黒字の続く経常収支!!!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2020年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲3.1ポイント低下の31.2を示した一方で、先行き判断DIは+3.8ポイント上昇の39.9を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆1656億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、米国や中国向けの自動車輸出などが回復している一方、輸入は原油を中心に前年同月から減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

街角景気3カ月連続悪化 1月、20年5月以来の低水準
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令で街角景気の二番底が鮮明になった。内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査によると、景気の現状判断指数(DI、季節調整値)は前月比3.1ポイント低い31.2だった。飲食関連の落ち込みなどで3カ月連続の悪化となり、17.0だった2020年5月以来の低水準に沈んだ。
調査期間は1月25~31日。政府はそれに先立つ7日に1都3県に緊急事態宣言を再発令し、13日に11都府県に広げた。小売関連が30.8と5.2ポイント、サービス関連が22.8と4.3ポイントそれぞれ下がった。12月に18.5ポイント下がった飲食関連は15.1と最も低い水準だった。
内閣府は街角景気の基調判断を「このところ弱まっている」とした。
2~3カ月先の景気に対するDIは3.8ポイント上がり39.9となった。
20年12月の経常収支、1兆1656億円の黒字 輸入減で貿易収支が増加
財務省が8日発表した2020年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1656億円の黒字だった。黒字は14年7月以降78カ月連続で、前年同月に比べ6207億円増加した。貿易収支の増加が寄与した。
貿易収支は9651億円の黒字で、前年同月に比べ8949億円増加した。原油などのエネルギー資源の輸入減を反映した。中国向けのプラスチックや非鉄金属の輸出が増えた。
第1次所得収支は6492億円の黒字と、前年同月に比べ2074億円増加した。日本企業の海外子会社からの配当金の受取が増えた。
同時に発表した20年の経常収支は17兆6976億円の黒字で、前年比で2兆8283億円減少した。新型コロナウイルス感染症の流行による訪日外国人の減少で、サービス収支が赤字に転じたことが影響した。債券利回りの低下による受取利子の減少で、第1次所得収支の黒字幅も縮小した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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よく知られているように、消費者マインド指標としては、本日公表の景気ウォッチャーとともに消費者態度指数があり、どちらもこのブログで取り上げているところながら、消費者態度指数はダイレクトに消費者世帯のマインドを調査しているのに対して、景気ウォッチャーは消費者マインドを反映しそうな事業者の供給サイドの指標となっています。ということで、先行き判断DIがわずかながら上昇した一方で、現状判断DIは10月の54.5を直近のピークとして、11月には前月差▲9.2ポイント低下、12月にも▲9.5ポイント低下、と続き、今年2021年1月も▲3.1ポイント低下して、3か月連続の低下で31.2まで下げてしまいました。このため、引用した記事にある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「このところ弱まっている」に変更しています。先月統計では「このところ弱さがみられる」でしたので、私は下方修正だと受け止めています。もちろん、悪化の大きな要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大であり、逆に、先行き判断DIは感染拡大が終息に向かうことを期待している可能性があるんだろうとしか考えられません。1月統計の現状判断DIを前月からの差で少し詳しく見ると、家計動向関連の▲4.1が企業動向関連の▲0.9と比べて、かなり大きな低下幅を示しています。COVID-19は企業部門よりも家計部門へのダメージの方が大きいとの街角の判断です。私はこれは正しいんだろうと受け止めています。繰り返しになりますが、先行きについては「景気の先行きに対する判断理由」でワクチンに言及する見方がとても多く、COVID-19終息期待があると想像されるものの、もう、エコノミストがコメントする領域ではなさそうな気すらしています。ただ1点だけ、先進国の中でもワクチン接種がここまで遅れているのは日本くらいで、政府の失政といわざるを得ません。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性がある一方で、第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えています。ただし、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の昨年2020年12月統計でも貿易黒字は高い水準を維持しています。ただし、輸出の増加というよりは、国内景気に連動した輸入の停滞に起因している面が強いと私は受け止めています。例えば、季節調整済みの系列の前月比で見て、12月の輸出は△2.0%減であるのに対して、輸入は+0.1%増となっています。いずれにせよ、欧州でCOVID-19第3波によりロックダウンが続いている国もあり、経常収支をはじめとして、あらゆる経済指標の先行きはCOVID-19次第と考えざるを得ません。

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2021年2月 7日 (日)

先週の読書は経済書や教養書中心に計6冊!!!

今週の読書は、一般向けといいつつもほぼ学術書に近い経済書、あるいは、トンデモ本に見えながらも至極まっとうな経済書、加えて、食に関する新書を2冊の計6冊、めずらしく、岩波書店が2冊入っていて、以下の通りです。

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まず、チャールズ・マンスキー『マンスキー データ分析と意思決定理論』(ダイヤモンド社) です。著者は、米国ノースウェスタン大学の研究者であり、部分識別と呼ばれる計量経済学の新手法を打ち出したエコノミストです。もう70歳を超えていますが、あと10年長生きするとノーベル経済学賞が回ってくるかもしれません。監訳者はマンスキー教授の下で学位を取得しているようです。英語の原題は Public Policy in an Uncertain World であり、2013年の出版です。本書は冒頭で、英語で本を書くということが述べられており、「英語で書く」ということは、インプリシットに「数式の展開はしない」ということなんだろうと私は受け止めています。本書は、その意味で、著者自身は研究者に向けた学術書ではなく、広く一般読者を意識した専門書内視鏡洋書を目指したつもりなのでしょうが、その意図は失敗しています。かなり学術書に近いと覚悟するべきです。少なくとも、それなりのレベルの大学の経済学部教授である私にすら難しいです。部分識別について議論を展開しているわけではありませんから、計量経済学の基礎的な知識は不要ですが、かなり論理的な議論について行くことを要求されます。ですから、経済学の基礎知識もさることながら、本格ミステリを読みこなすような論理性があった方がいいです。ということで、前置きが長くなりましたが、不確実な情報の下で、いかにして選択をするか、ということがメインテーマとなります。理論という語と同じ意味で使われている仮定+データから結論が導かれる、という議論から始まり、データが不足する場合に強い仮定をおいて、かなり強引に結論が導き出されるリスクを認識させられます。例えば、悉皆調査ならざるサンプル調査の統計などについても、本体は信頼区間をおいた区間推計が基本なのですが、ピンポイントで点推計をしている、といった批判であり、極めてごもっともです。従って、弱い仮定を置けば信頼区間次第では結論のレンジが大きくなり、逆に、信頼性の低い強い仮定を置けば結論はピンポイントに近くレンジは狭くなります。判りやすいので統計に例えれば、日本のGDPは約500兆円、といわれますが、かなり強い仮定をおいて点推計しているわけです。もしも、弱い仮定を置けば、例えば、100兆円から1000兆円の間、なんて結論が出る可能性もあります。でも、レンジが広すぎると政策決定をはじめとする何らかの選択をする際の参考にすらならない場合もあるわけです。もちろん、決定を下す際の評価関数についても、ベンサム的な期待厚生基準、厚生の最小値の中で一番マシな選択をするマキシミン基準、後悔が一番少ない選択をするミニマックス・リグレット基準の3つを仮定します。その上で、さまざまな実務上の選択を論じています。死刑の犯罪抑制効果、新薬の承認プロセス、税率と労働供給、犯罪者のプロファイリング、などなどです。いくつかの結論で印象的だったのは、ノーベル経済学賞も出て開発経済学でもてはやされているランダム化比較試験(RCT)の結論は希望的観測にしか過ぎない、とか、合理的期待の仮定は信頼できない、とかがあります。私が気にかかったのは、ノースウェスタン大学のからほど近いシカゴ大学の研究者が提唱したルーカス批判について、まったく触れられていない点です。合理的期待が成り立たないとすれば、何らかの政策変更で意思決定が違ったものになる可能性は許容されているのでしょうが、その点は私にはやや疑問でした。

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次に、西野智彦『日銀漂流』(岩波書店) です。著者は、時事通信やTBSテレビに所属したジャーナリストです。本書の年代的なスコープは、1998年の日銀の独立を少しさかのぼってその法制準備を進めていた1990年代半ばから始まります。その法制準備の段階も、私のような国家公務員として政府内部で働いていた官庁エコノミストですら知り得ないような事実まであって、それなりに興味深いんですが、やっぱり、日銀総裁の年代記で語られている日銀金融政策の裏側のようなストーリーだと思います。特に、独立した直後の速水総裁や現在の黒田総裁の前に白川総裁のような大外れを輩出した日銀内部の思考パターンや行動パターンがよく取材されていて、私のような門外漢にも理解できるようになっています。私は基本的に学習院大学ご出身の方の岩田副総裁、歴代の審議委員でいえば原田さんや現役の片岡くんなどと同じリフレ派だろうと思うんですが、さすがに、ここまで5年の総裁任期を超えてもまったく2%の物価目標にかすりもしないんですから、リフレ派の金融政策一本足打法には何らかの理論的あるいは実務的な欠陥があるのだろうと考えざるを得ません。その意味で、浜田先生がシムズ教授のペーパーに触発されて財政政策の有効性について宗旨替えしたのも理解できなくもありません。ただ、ここで明らかにされている中で重要なのは、速水総裁や白川総裁、あるいは、総裁の席になかった時の福井副総裁などについて、思考の中心が国民生活や金融政策の影響などではなく、あくまで日銀の独立性、特に大蔵省・財務省からの独立を勝ち取ることであって、国民生活や経済的な影響をそっちのけにする形で、いわば、権力闘争中心史観がまかり通っていた点は背筋が寒くなります。私は竹中平蔵教授については、その経済学的な主張はまったく理解できませんが、少なくとも、中央銀行の金融政策について、目的な政府で決めて、政策手段の独立性である、という点については、100%同意します。インフレ・ターゲットかどうかはともかくとして、物価安定を目標としている金融政策は国民生活や企業の経済活動に多大なる影響を及ぼすわけであり、民意から独立することは考えられません。そして、我が国では間接民主制を取っているわけで、少なくとも国権の最高機関である国会の意志から外れることはあり得ません。そして、まったく同じ意味で、執行機関である内閣の意思と中央銀行の目標がズレてることはあってはなりません。それを集団的に組織目標としている、というか、していた日銀という組織を恐ろしく思います。私は現在の菅内閣はまったくどうしよもなく無能で方向性が大きく間違っていると思いますし、もっと左派リベラルな経済政策に親近感を持つエコノミストですが、かつての民主党政権のころの記憶がまだ強く残っていて、左派政権が成立すると中央銀行の独立性を踏み違えて、旧来的な「日銀思考」の残るスタッフが、またまた「独立性」を錦の御旗に国民生活をどん底に陥れるような速水総裁・白川総裁のころの金融政策が復活する恐れが強いと懸念しています。その意味で、黒田総裁の次は雨宮総裁を待望しています。

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次に、田村秀男『脱中国、消費税減税で日本再興』(ワニブックス) です。著者は、日本経済新聞や産経新聞で活躍したジャーナリストです。ややキワモノ的な体裁の本なんですが、エコノミストの目から見て、本書の主張は、少なくとも、経済学的にはほぼほぼ正しいと思います。もちろん、中国との外交的な関係とか、政治体制的な主張は別にすれば、ということですが、経済や財政に関する主張は決してキワモノではありません。その本書の主張を考えると、まず第1に、日本経済の復活は政治に課せられた大きな責務であり、財政均衡なんて財務官僚のお題目を打破して、緊縮財政を放棄して積極財政を展開してデフレを脱却するのが重要な政治課題であり、経済学的にサポートするのがエコノミストの仕事ダルというのは、まったくその通りと私も考えます。財務官僚がいかなる意図を持って緊縮財政の推進を図っているのか、私にはまったく不明でありDNAに組み込まれている、としか考えられないんですが、経済学的には、少なくとも現在の日本経済の現状を考えれば、ほとんど意味のない主張と私は考えています。ただ、その理由は個人貯蓄が十分あるから、という本書の主張とは少しズレがありますが、緊縮財政を主張する意見などと比べれば、十分許容範囲といえます。消費税が天下の悪税であり、現在のコロナ禍の中で、税率引下げや、場合によっては、一時的に廃止する経済政策も選択肢というのもその通りです。英独をはじめとして、時限的措置も含めれば、先進国で消費成立を引き下げた例はめずらしくもありません。ただ、エコノミストとして、日本がここまでストックとしての公的債務残高を積み上げてきたにもかかわらず、それでもデフレから脱却できず、低成長を続けているのはどうしてなのか、というパズルは解いておきたい気がしますが、それでも、財政支出拡大によりデフレを脱却し、成長軌道を取り戻すことは十分可能だという議論はその通りだと思います。本書の議論で疑問あるのは、中国に関係する部分です。中国が世界的なコロナ・ショックの震源地であったにもかかわらず、涼しい顔でマスク外交やワクチン外交で途上国に攻勢をかけているのは事実でしょうし、天然資源などを狙った19世紀的な帝国主義的野心もある可能性は否定しません。米中の貿易戦争が圧倒的に中国の不利に作用しているのもその通りだと思います。ただ、地政学的なリスクという観点からすれば、どこまで中国がエゲツないことを考えているのか、という点では私には情報がありません。脱中国という日本の路線についても、対米従属からの脱却という観点からは、少し活用してみたい気がするのも確かです。まあ、そういった中国関連の見方は別にして、日本経済のデフレからの脱却、賃金上昇を通じた成長への回帰、などなど、決して見過ごすことのできない議論が本書では展開されています。

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次に、デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』(岩波書店) です。著者は、ニューヨーク生まれの文化人類学者・アクティヴィストであり、現在は英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究者です。私はこの著者の『負債論』を約4年前の2017年2月17日の読書感想文で取り上げています。英語の原題は Bullshit Job であり、2018年の出版です。ということで、やりがいがなくて、社会的にも無益ないし有害ですらある仕事を「ブルシット・ジョブ」と呼んでタイトルにしています。最終的な実用的適宜は本書のp.27で与えられています。第2章では、そのブルシット・ジョブをカテゴリー分けされていて、(1)取り巻き: だれかを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事、(2)脅し屋: 雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素をもち、そのことに意味が感じられない仕事、(3)尻ぬぐいの仕事: 組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事、(4)書類穴埋め人: 組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事、(5)タスクマスター: 他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブをつくりだす仕事、に分けていますが、いくつかの重複はあり得る、としています。その上で、マフィアの殺し屋なんかのモロに反社会的な仕事であってもブルシット・ジョブではないケースなども上げています。ということで、前半からは基本的にケーススタディになっていて、私のようなエコノミストが興味を示すスピルオーバーとか外部経済などについては6章から始まります。1月4日に東洋経済オンラインの記事「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由から引用して、本書に触れた部分なんかがそうです。ただ、本書の眼目は私のように外部性から考えたり、あるいは、東洋経済オンラインのような視点で、ホントに必要とされているエッセンシャルワーカーなどの待遇を議論したり、といったことではなく、むしろ、ブルシット・ジョブに従事している労働者本人が精神的な負担となったりして、よろしくない、という観点です。そして、そういった無駄な仕事を減らすことにより、労働者の労働時間をもっと短縮できないか、というのが重要視されています。ケインズの「我が孫たちの経済的可能性」で論じられた週3日労働に近い印象です。しかし、ここで私が考えておきたいのは、確かに労働時間の短縮は望ましいとはいえ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大のためのロックダウンなどで、改めて思い知ったのは、ブルシット・ジョブやそういったムダな仕事、あるいは、小池東京都知事が連呼したような「不要不急」のお出かけなんかで経済が支えられている、という事実です。よく、「無駄のない筋肉質の経済」なんて表現をしたりしますが、ホントに必要な財・サービスしか生産・供給しないとすれば、あるいは、労働時間が短縮できるかもしれませんが、それ以上に生活に遊びや潤いといったものがなくなりはしないか、と懸念する向きも少なくないような気がします。私もその1人です。本書の第6章にあるように、仕事の社会的価値と体化としての賃金が転倒しているのは、私も是正されるべきとは考えます。でも、COVID-19の感染拡大でやり玉に上げられたホストクラブとか、最近も国会議員のスキャンダルめいた報道で見かけた銀座のクラブでの接待とか、あるいは、ゲームもそうかもしれませんが、こういった社会的な価値に疑問があり、国民生活に大きな必要なく、なくても構わない部分も、それなりの効用を社会にもたらしているような気がするのは私だけでしょうか。

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次に、井出留美『食料危機』(PHP新書) です。著者は、よく判らないんですが、食品ロス問題に関するジャーナリストだそうです。ですから、いろんな専門家にインタビューしているにもかかわらず、食料危機を回避するための最大の方策が食品ロスの削減、という結論になってしまいます。まず、本書で指摘するように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックで食糧不安や飢餓が増えたのは誰にでも理解できる事実だろうと思います。そして、食料危機は、おそらく、需要の増加か、供給の減少か、流通の停滞か、食料価格と所得の乖離か、この4つの原因で生じるわけで、第2章では冒頭で食料が公平に分配されないのが食料危機の原因と指摘しているにもかかわらず、バッタや何やで、生産減少に目が行ったり、議論がいろいろと意味不明な蛇行を見せます。1943年のベンガル器機については価格と所得の関係であるとセン教授が指摘しているのはいいとしても、食品ロスが分配の問題にどこまで関係しているのかの分析はまったく見られません。最後まで、著者の思い込みで食品ロスで終始します。だったら、タイトルをそうすればいいのに、と私は思ってしまいました。私の目から見て、食料危機はまさに分配の問題から生じており、もっとも大きな原因は資本主義の根幹である市場による資源配分が食品については非効率であるからだと考えるべきです。もちろん、食品ロスが何の影響もないと主張するつもりはありませんが、エコノミストの目から見て、最大の問題は価格だけをシグナルとして食料を市場の資源配分に任せている点にあると考えるべきです。すなわち、動学的な視点も含めて、私的な価格である市場価格と社会的な価格の乖離が食料についてはかなり大きいと考えられます。FAO駐日連絡事務所のポリォ所長が何度も「食料システムの健全性」(p.126)を主張しているにもかかわらず、それを著者は食品ロスに矮小化しているわけです。一方で、p.172で行動経済学のナッジを持ち出しているのは、直感的な理解が少し進んだためなのかもしれません。また、第4章で取り上げられている中国の「光盤運動」はまさに、社会主義的、というか、権威主義的に市場を乗り越える形で食料の分配を政府が決めているわけで、もしも、この運動が食料危機の解決に有効であると考えるなら、市場により食料の資源配分を是正する方法を考えることが必要です。ということで、繰り返しになりますが、大きなタイトルながら、あまりに食品ロスに限定、矮小化した議論で私は困り果ててしまいました。

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最後に、金田章裕『和食の地理学』(平凡社新書) です。著者は、我が母校の京都大学の名誉教授の大御所であり、専門分野は歴史地理学や人文地理学だそうです。北陸のご出身で、当然ながら、京都生活も長い、ということで、私の興味範囲からしても京都周辺の食べ物についつい目が行ってしまいました。宇治茶とか、京都の漬物、すぐき菜、千枚漬け、しば漬けなどです。ただ、京野菜に関してはそれほど着目していないのが、やや不思議でした。千枚漬けの材料となる「聖護院カブ」くらいしか出てきません。京壬生菜、九条ネギ、賀茂ナス、エビイモ、堀川ごぼう、伏見とうがらし、それから、聖護院かぶとは少し違う聖護院だいこんなどなどです。私が生まれ育ったのが今も住んでいる京都南部の伏見から宇治にかけてですので、伏見のお酒と宇治のお茶についてはもう少し詳しく取り上げて欲しかった気がします。飲物ということで章を立てるくらいの扱いを勝手に希望しておきます。宇治橋通りの茶商で中村藤吉本店の写真がp.76に見えますが、何となく、あくまで、何となく、なんですが、私は上林が代表なんではないかと考えないでもありません。お茶に関しては、抹茶味のスイーツについて、飲むべきお茶として茶葉を製造しているにもかかわらず、スイーツになることを嫌っているかのごとき茶農家の意見が紹介されていて、私の目から少し鱗が落ちました。私の周囲でも、ばあさんはもちろん、私の母も季節になれば茶摘みのアルバイトにいそしんでいたのを記憶しています。小学生のころからの疑問で、本書にもあるように、お茶には日照時間が短いのがよくて、覆いをかけたりもするところ、静岡はミカンもお茶もどちらもある一方で、静岡と同じように日当たりのよさそうな和歌山にはミカンしかない、というのは不思議な気がします。宇治が近いので和歌山には地理的な不利があるのかもしれませんが、60歳を超えてもいまだに謎です。それから最後に、干し柿についてワインとのマリアージュをp.118で指摘していますが、干し柿の場合はお酒一般と合わせるのが京都の常識です。というのは、あまり正確には知りませんし科学的ではないかもしれないのですが、干し柿は悪酔いを防ぐと信じられているからです。私が大学生になって、正月の機会などに酒を飲む時、ばあさんが干し柿を持ってきて、そのように何度も繰り返したのを記憶しています。繰り返しになりますが、科学的根拠は専門外にて私にはよく判っていません。

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2021年2月 6日 (土)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大第3波でブレーキのかかった1月の米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は昨年2020年4月の大幅減の後、5月統計からはリバウンドしていましたが、感染拡大を受けて昨年2020年12月には減少に転じ、今年2021年1月もわずかに+49千人増にとどまりました。失業率も一気に悪化した昨年2020年4月からのリバウンドが続ていたところ、昨年2020年12月は前月と同じく横ばいの6.7%だったものの、今年2021年1月には6.3%に低下しました。いずれにせよ、COVID-19前の昨年2019年11~12月や今年2020年2月には失業率は3.5%だったわけですから、それらと比べるとまだかなり高い水準であることも確かです。いずれも季節調整済みの系列です。まず、やや長くなりますが、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の8パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 49,000 jobs in January amid COVID-19 surges as unemployment fell sharply to 6.3%
The U.S. economy added a modest 49,000 jobs in January as COVID-19 surges persisted but related business restrictions eased somewhat, kicking off a year that's expected to bring a pickup in hiring as more Americans are vaccinated.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 6.7% to 6.3%, mostly because of a big drop in the number of Americans working or looking for jobs, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 70,000 jobs were added last month.
Also disappointing: Total job gains for November and December were revised down by 159,000.
The lackluster report comes as President Joe Biden and congressional Democrats look to move quickly on a $1.9 trillion stimulus aimed at easing the economic pain Americans are suffering as a result of the pandemic. Early Friday, the Senate approved a budget resolution that will pave the way for the chamber to take up Biden's American Rescue Plan without the threat of a GOP filibuster.
The economy, meanwhile, resumed adding jobs last month after cutting positions in December for the first time since the depths of the pandemic in April. The nation has recovered more than half the 22.2 million jobs wiped out in the health crisis as restaurants, shops and other businesses shut down by the outbreak were allowed to reopen, and the outlets brought back many furloughed workers.
But the rehiring has been interrupted by a virus that has been spiking across most of the country this winter, triggering renewed restrictions on businesses, fewer visits by consumers and hundreds of thousands of layoffs. While many industries have stepped up hiring, restaurants, hotels and arts and entertainment venues have cut hundreds of thousands of jobs in recent months. Total U.S. payrolls are still about 10 million below their pre-pandemic level.
In January, the number of Americans on temporary layoff fell by 293,000 as restaurants, shops and businesses recalled some workers. About 27% of unemployed workers said they were on temporary layoff, down from 28% the previous month. That means many workers could still be brought back to their old jobs.

エラく長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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米国の失業率については、4月統計で14.7%と一気に悪化した後、5月13.3%、6月11.1%そして、7月10.2%まで2ケタが続いた後、8月には8.4%と10%を割り込み、9月7.9%、10月には6.9%となりましたが、11月には改善幅がわずかに0.2%ポイントまで縮小して6.7%を記録した後、12月の失業率は前月から横ばいの6.7%のままで、今年2021年1月になって6.3%まで低下を見せました。ただし、COVID-19パンデミック前の2020年1月には失業者数5,796千人、失業率3.5%に比べて、足元2021年1月統計の10,130千人、6.3%はまだ2倍近い水準といえます。加えて、非農業部門雇用者数の増加は12月統計では半年ぶりにストップし、前月差で見てマイナスに転じました。今年2021年1月もわずかに伸びは+49千人ですから、昨年暮れからCOVID-19の第3波の感染再拡大のために景気回復に大きくブレーキがかかった形です。もちろん、このCOVID-19の感染拡大は米国だけでなく、我が国でも同じことです。ただ、何度も繰り返しますが、米国でも、日本でも、景気を犠牲にしてでも感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。

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2021年2月 5日 (金)

2か月連続で下降した12月統計の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2020年12月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲1.2ポイント下降の94.9を、また、CI一致指数も前月から▲1.2ポイント下降の87.8を、それぞれ記録しています。昨年2020年5月を底に上昇を続けてきたCI一致指数は先月統計に続いて2か月連続の下降なんですが、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、5か月連続で「下げ止まり」に据え置かれています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

2020年12月の景気指数 1.2ポイント低下、2カ月連続下げ
内閣府が5日公表した2020年12月の景気動向指数(CI、2015年=100)の速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.2ポイント低い87.8となった。低下は2カ月連続で、下落幅は11月の0.4ポイントから拡大した。
一致指数は生産や雇用、商業販売額など10項目から算出する。12月には速報段階で集計済みの8項目のうち、卸売業の商業販売額を除く7項目が下がった。投資財や耐久消費財、鉱工業用生産財などの出荷指数が大きく低下し、全体を押し下げた。これまで持ち直しをけん引してきた生産や出荷に一服感がみられるという。
一致指数の動きから機械的に算出する景気の基調判断は「下げ止まり」で据え置いた。5カ月連続で「下げ止まり」となった。
数カ月先の景気の動きを表すとされる先行指数は7カ月ぶりに低下した。モノの出荷や消費者心理が悪化した。内閣府は「消費者心理は新型コロナウイルスの感染者数に敏感に反応する。12月の指数悪化は感染拡大による一時的なものとみているが、今後の動向にも注視する」としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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CI一致指数を個別系列の寄与度に従って少し詳しく見ておくと、ほぼ軒並みマイナスとなっていて、マイナス寄与の絶対値の大きい順に、投資財出荷指数(除輸送機械)▲0.48ポイント、耐久消費財出荷指数▲0.42ポイント、生産指数(鉱工業)▲0.21ポイント、などとなっています。他方、プラス寄与は商業販売額(卸売業)(前年同月比)+0.29ポイントだけとなっています。国内でもCOVID-19の感染拡大による非常事態宣言が続いており、景気の先行きが楽観視できるわけもありません。それなりのボリューム感も表現しているCIですが、一致指数はCOVID-19パンデミック前の2019年12月の水準が94.2、昨年2020年1月でも94.6です。この90台半ばの指数値は、実は、2019年10月の消費税率引上げにより、かなりの低下を見た後の統計なんですが、10~12月のCI一致指数でもまだ90を割っていて、今年2021年1月は感染拡大が進んでさらに低下することが明らかですから、まだまだ景気回復には時間がかかると覚悟すべきです。上のグラフでは、私のこのブログのローカルルールで、2020年5月を景気の底に暫定的に同定していますが、場合によっては2番底をつける可能性も十分あります。それでも、ここは景気を犠牲にしてでも感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。この点は、何度でも繰り返します。

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2021年2月 4日 (木)

どのような大学生がインターンシップへ参加しているのか?

10年振りに大学教員に戻って10か月ほぼ1年を終えました。今は、大学生諸君の定期試験に代わるリポートの採点を終え、高校生諸君の大学受験や外国人も含む大学院への合否判定が控えているものの、徐々に春休み体制に入りつつあります。春休みとは卒業式の季節でもあります。私はまだ卒業生のゼミを持っていないのですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大で採用人数が抑制されていることもあり、学生諸君の就職も気にかかるところです。ということで、昨日2月3日、リクルートのワークス研から学生の就職に関して、「全国就業実態パネル調査2020(JPSED2020)」を用いて、どのような大学生がインターンシップへ参加しているのか、についてのコラムが明らかにされています。

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上のグラフは、リクルート・ワークス研のサイトにあるグラフを3つ結合しています。上から順に、大学3年生と4年生の大学生のインターンシップ参加割合、大学生のインターンシップ期間別参加割合(複数回答)、大学生の居住地別インターンシップ参加割合、となっています。第1に、参加時点では、3年生では43.4%、4年生では36.4%がインターンシップに参加しており、特に3年生の参加割合が高くなっています。4年生の時点ではもう出遅れている、ということなのかもしれません。第2に、期間別では、学生の参加するインターンシップのほとんどは5日以内の短期間のものであり、中長期的なインターンシップへの参加割合は低い水準にとどまっています。第3に、地域別では、南関東および近畿といった大都市圏に住む学生のインターンシップへの参加割合の方がやや高くなっていることが判ります。まあ、インターン先がいっぱいあるんでしょうね。
インターンシップなんて、40年前の私の学生時代にはまったく影も形もなかったものですから、少し勉強したいと思います。私は学生を無賃で働かせる悪しき制度のような受け止めがあったんですが、このコラムでも紹介されている政府の文書では、主体的な職業選択や職業意識の育成を図ることができると考えているようで、関西圏にある私の勤務先の大学でもそれなりに積極的に取り組まれています。私も3回生の演習はまだ持っていないんですが、大学院修士課程のM1生がキャンパス近くの企業にインターンに行こうとしたところ、COVID-19の影響でインターンそのものを受け入れなくなってしまった、といっているのを聞きました。まあ、タダ働きさせられない程度に職場を見ておく、というカンジなんでしょうか?

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2021年2月 3日 (水)

新型コロナ破たんが1,000件に達する!!!

昨日2月2日、東京商工リサーチから「新型コロナ破たんが1,000件に達する」と題して「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満を含む)が2月2日、全国で累計1,000件(倒産929件、弁護士一任・準備中71件)に達した旨が明らかにされています。東京商工リサーチのサイトからグラフを引用すると以下の通りです。

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まず、東京商工リサーチのサイトから、月別の累計件数のグラフを引用すると上の通りです。まあ、何と申しましょうかで、毎月着実に増加して、とうとう累計で1,000件に達したわけです。また、これらのうち、正社員の従業員数が判明した926件の従業員数の合計は1万3,477人に上るとリポートされています。単純平均で1社当たり14~15人といったところです。

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次に、東京商工リサーチのサイトから、都道府県別破たん状況のグラフを引用すると上の通りです。当然ながら、東京都が247件に達し、全国の24.7%を占め突出しています。以下、大阪府94件、神奈川県55件、愛知県と兵庫県がそれぞれ46件と続いています。なお、2020年9月1日に、それまで唯一破たんがなかった高知県でも判明して、全国全都道府県で破たんが生じたことが確認されたそうです。

第3次補正予算に膨大に積んだGoToトラベルの事業費を何とかできないのでしょうか?

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2021年2月 2日 (火)

経団連加盟企業ですら7割の出勤削減は難しい!!!

先週金曜日の1月29日、経団連から「緊急事態宣言下におけるテレワーク等の実施状況調査」と題するリポートが明らかにされています。

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上のグラフは、経団連のリポートから、対象事業拠点の規模別の出勤者削減数 を引用しています。経団連のこの調査では、さすがに大企業をメンバーとする団体らしく、90%の企業がテレワークを原則実施シているとの結果に続いて、上のグラフが示されています。政府では緊急事態宣言下で出勤者の7割削減を目標にしていますが、経団連加盟のような大企業ですら65%削減との結果が示されています。しかも、エッセンシャルワーカーなどを除いて、がんばって膨らませた結果の数字です。上の棒グラフのうち、一番右側の1万人以上企業でようやく66万人中約48万人の削減ということで、削減率約73%が実現されているに過ぎません。こういったムチャな目標を掲げつつ、それでも、「自助、共助、公助」しかいわない現在の菅内閣の見識のなさに、私は愕然とする思いです。第3次補正予算に積んだGoToトラベルの事業費を何とかできないものでしょうか?

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2021年2月 1日 (月)

今日から始まるプロ野球のキャンプやいかに?

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球春!!!
いよいよ今日からプロ野球12球団がキャンプインです。上の主なキャンプ地は朝日新聞のサイトから引用しています。今年のキャンプはすべて無観客だそうですから、少し活気が感じられないかもしれませんが、我が阪神は期待の新規加入選手など大いに期待しています。ケガないようにして欲しいですが、意味あるケガはあり得ると私は考えています。というのも、私は阪神タイガースの最近の成績不振はキャンプの失敗に起因すると考えるからです。シーズンを見据えてしっかりと鍛え上げて下さい。

今年こそリーグ優勝と日本一目指して、
がんばれタイガース!

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