日銀「展望リポート」に見る経済見通しの先行きリスク要因は何か?
昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」が公表されています。2021~2023年度の政策委員の大勢見通しのテーブルを引用すると以下の通りです。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、 です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。
実質GDP | 消費者物価指数 (除く生鮮食品) | |||
2020年度 | −5.0 ~ −4.9 <−4.9> | −0.4 | ||
1月時点の見通し | −5.7 ~ −5.4 <−5.6> | −0.7 ~ −0.5 <−0.5> | ||
2021年度 | +3.6 ~ +4.4 <+4.0> | 0.0 ~ +0.2 <+0.1> | ||
1月時点の見通し | +3.3 ~ +4.0 <+3.9> | +0.3 ~ +0.5 <+0.5> | ||
2022年度 | +2.1 ~ +2.5 <+2.4> | +0.5 ~ +0.9 <+0.8> | ||
1月時点の見通し | +1.5 ~ +2.0 <+1.8> | +0.7 ~ +0.8 <+0.7> | ||
2023年度 | +1.2 ~ +1.5 <+1.3> | +0.7 ~ +1.0 <+1.0> |
見れば明らかな通り、足元の2021年度については成長率見通しを引き上げた一方で、物価見通しは下方改定されています。フィリップス曲線的には不整合な動きといえますが、この背景には、海外経済の順調な回復による外需主導の成長加速に加えて、携帯電話料金の引下げがあります。前回1月の「展望リポート」では各社のプランが出そろっていないことから、まだ織り込まれていませんでしたが、今回からは携帯電話料金の引下げも含めたことで物価見通しが下振れしたというわけです。また、「展望リポート 2021年4月」から、政策委員の経済・物価見通しとリスク評価のグラフを引用すると以下の通りであり、リスクはどちらかといえば、下方にある可能性が高い、と理解すべきです。
私自身も、先行き経済や物価の見通しについては、基本的に、日銀と同じ方向感覚を共有しており、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が終息すれば、所得と需要の好循環が復活する可能性が十分あると考えています。しかし、最大のリスクは政府要因です。すなわち、第1に、大前提となるコロナ終息なんですが、ワクチン手配をはじめとして、現内閣にコロナ終息の能力がまったくないことが上げられます。第2に、緊縮財政への傾向が垣間見えます。例えば、昨日4月26日に開催された経済財政諮問会議において、「経済・財政一体改革の進捗」と題する資料が内閣府から提出されており、最大の眼目は財政赤字のようです。今回のコロナ・ショックにより、財政赤字が拡大したのは事実ですが、私は少なくとも短期に財政バランスを回復する方向に政策を転換すべきではないと考えています。政府が増税や緊縮財政の政策を採用することが先行き経済の最大のリスクです。
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