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2021年4月24日 (土)

今週の読書は経済書と新書で計5冊!!!

今週の読書は、足元経済を概観してシンクタンクが取りまとめた入門経済書に加えて、やや的はずれなデータ分析のスキル本、さらに、教育分野を対象にした新書、また、最後に、松山英樹の優勝で注目を集めたマスターズについての新書まで、幅広く読んで以下の5冊です。小説をレビューしていないんですが、40年ほど前に出版されたジェフリー・アーチャーの『ロスノフスキー家の娘』を読みましたので、Facebookでシェアしておきました。来週からはゴールデンウィークが近づいてきますので、近くの図書館から小説を少し借りてきています。

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次に、熊谷亮丸・大和総研『世界経済の新常識2021』(日経BP) です。著者は、大和総研(DIR)のエコノミスト一同ということになるんだろうと思います。執筆者プロファイルは巻末にあります。構成としては、米国、欧州、中国、新興国の4国・地域を章別に取り上げ、さらに、横割りでSDGsを5章で、サプライチェーンを6章で取り上げ、残る3章、すなわち、7~9章は日本経済に焦点を当てています。このシリーズは6年目らしいのですが、私は初めて手にしました。中身は、当たり前の分析ばかりでそれほど新規の分接結果が示されているわけではなく、常識的にそつなく取りまとめてあるという印象です。いくつか、特にオススメの分析としては、新興国の章では、オックスフォード大学の厳格度指数(Stringency Index)を応用した分析が面白かったのですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大の時期がビミョーに異なるので、大雑把に2020年4~6月期がGDP成長率が底だったとはいっても、どこまで正確な分析になっているかという懸念は残ります。また、SDGsについては、さすがに、企業活動に必要不可欠な要素となってきている現状を垣間見ることが出来ました。それほどの目新しさはありませんが、p.175にあるSDGsとESGとCSRの関係については整理がよく出来ている気がします。そのうちに、授業で引用したいと思います。サプライチェーンに関してはグローバルな展開が急ピッチで進み、新興国や途上国の中でもグrーバル・サプライチェーンに積極的に組み入れられる方が成長が高くなっていた、というのは事実としても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、こういったサプライチェーンの再構築が進む可能性があり、どこまで中国の生産をASEANなどのアジアでできるかが問題なのですが、本書の分析では少なくとも数年から数十年の時間がかかると結論しています。でも、中国はもっと早かった気がするのは私だけでしょうか。昨年終了したアベノミクスについては、かなり私と似通った評価がなされているような気がします。ただ、p.210の成績表で財政だけが×になっているのは、要するに財政赤字が拡大したということなのでしょうが、財政赤字なしには景気や雇用がダメだった可能性は考えられていないようです。また、日本経済だけの課題ではありませんが、デジタル化やインターネット経済の進展に伴って、不平等が拡大している現状があります。特に、アベノミクスは分配が置き去りでしたので、所得の不平等を是正するためにも分配の分析がもっと欲しかった気がします。

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次に、松本健太郎『データから真実を読み解くスキル』(日経BP) です。著者は、データサイエンティストということです。本書は「日経ビジネス電子版」で2019年に始まった連載を単行本化していて、目的は「データ分析のお作法を学ぶ」という、とても上から目線の目的となっています。私はデータ分析には何らかの目的があり、データをデータとして把握するというのもOKなんだと思うのですが、多くのデータ分析の目的は、何らかの実体とか実像とかいう直接には観察不能なものがあって、それを集合的に把握するためなのではないか、と考えています。加えて、データは数量で表される指標とは限りません。ミステリ小説の中で名探偵が「犯人を特定するにはデータが不足している」というのを読んだことがある人も多いのではないでしょうか。ですから、データそのものを考えるのには少しムリがあるような気がしています。私の専門分野に引きつけていえば、本書で例示されているように、景気を判断するのにもGDPとか、有効求人倍率とかの単一の指標で判断できるハズもないと思います。それが出来ないからといって指標を批判するのも的外れですし、どうも、ほかにも的外れな点が多く含まれています。タイトルも、データから真実を読み解くのも結構ですが、真実を得るためにいかにデータを活用するか、という視点が本書からは読み取れません。ですから、本書を一昨日の木曜日の午前中に読み終えて、やや評価は低いなと感じつつアマゾンのレビューを見ると、やっぱり、私と同じように感じた人が多いのか、5ツ星が満点で平均して2ツ星の評価でした。4ツ星と5ツ星のレビュアーはまったくなく、すべてのレビューは星3ツ以下でした。最初のレビュアーのタイトルが「読む必要なし」だったのには、読み終えたばかりの私も思わず苦笑させられました。もちろん、「日経ビジネス電子版」の連載ですでに見たので重複を嫌がって、という読者もいそうですが、いずれにせよ、評価の低い内容です。データ・ドリブンな経済社会といわれていますが、やや趣旨を取り違えて便乗したのかもしれません。単に、データを加工するだけで何かが得られるというわけではなく、もちろん、一般に知られていないデータを発見したり、加工したりするテクニックが重要なのではなく、キチンとした目的意識を持って、何を得たいからどういったデータが必要なのか、を考える姿勢が重要だと思います。ですから、最近は、web調査でかなり精度のいいデータが手に入りますので、独自のアンケートを設計してほかにないデータを入手する、という方法もあります。たぶん、金銭的な負担は大きいような気がしますが、早稲田大学の修士論文を見ていて、大学院生ですらwebの独自アンケート調査を使ってデータを取っているのにびっくりした経験もあります。あまりおすすめできない残念な読書でした。私ならアマゾンで星1ツのレビューとするかもしれません。

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次に、小松光/ジェルミー・ラプリー『日本の教育はダメじゃない』(ちくま新書) です。著者は、ともに、大学の教育学の研究者です。本書の対象は高校までであり、私が飽食する大学教育はスコープ外なのですが、私自身の実感として、日本の教育は、もちろん、学校教育をはじめとして、塾などの学外学習、あるいは、一般的な意味での家庭学習も含めて、かなり高レベルにあって、日本人の認知能力はかなり高い、と考えていますので、まったく私の感覚が裏付けられた気がします。まず、本書は2部構成になっており、第Ⅰ部で日本の教育に関する通説、特に、否定的な評価を下している14の通説を批判しています。そして、第Ⅱ部では将来に向けて4つの提案がなされています。最初の通説批判は国際機関などのデータとして、経済開発協力機構(OECD)のPISA(学習到達度調査)とPIAAC(国際数学・理科教育動向調査)、それに、TIMSS(国際成人力調査)のデータを駆使していますが、特に小難しい計量手法を取っているわけではなく、先進各国やアジア諸国と日本の結果を並べて評価しているだけですので、一般向きといえます。批判の対象となっている14の通説を列挙すると、知識がない、創造力がない、問題解決ができない、学力格差が大きい、大人の学力が低い、昔に比べて学力が低下している、の6点が第1章で国際比較データから検証されており、日本は学力が高いとの結論を得ています。そして、第2章では、勉強のしすぎ、高い学力は塾通いのおかげ、授業が古臭い、勉強に興味がない、自分に自信が持てない、学校が楽しくない、いじめ・不登校・自殺が多い、不健康、の8点が検証されており、特段、代償が大きいわけではない、と結論しています。第Ⅱ部第3章では将来に向けた積極的な提案として、現実を見ない教育政策をやめよう、「安定した不安」を持ち続けよう(保護者向け)、レベルの高さに気づこう(学校の先生・教育行政向け)、もっと世界に発信を(教育研究者・メディア関係者向け)の4点を主張しています。もしも、あくまでも、もしも、ですが、お手軽に立ち読みで済ませようと考える向きにはp.65の①から⑥に本書の前半のエッセンスが凝縮されています。今週の読書感想文では、別のどこかの本でアマゾンのレビューを参照しましたが、本書の場合、レビューの平均が5ツ星の満点で4.5のスコアを弾き出しており、星5ツの満点とレビューしたレビュアーが65%に上ります。私も教員の端くれとして本書はオススメに値すると考えています。

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次に、坪内祐三『最後の人語天声』(文春文庫) です。著者は、編集者、エッセイストとして知られています。昨年2020年初頭に亡くなっています。生年は私と同じ1958年です。本書は、同じ文春新書のシリーズで、『人語天声』、『人語天声2』の続刊であり、月刊誌『文藝春秋』の巻末に掲載されていた名物コラムを収録しています。私は年位1回か2回くらいしか月刊誌の『文藝春秋』は読まない上に、前2巻は未読なので、全体を通じたコラムの感想にはなり得ませんが、本書から受けた印象として、繰り返しになりますが、まったく同年生まれながら、東京の文化に長らく接していて、趣味や教養の方向としてはやや老成したところがあり、団塊の世代並みの素養を感じました。すなわち、スポーツ観戦でしたら、私のような野球ではなく大相撲ですし、映画やエッセイの素養も十分で、神保町の古本街、あるいは、ご出身校である早大周辺の地理なども、京都出身の私などとはかなり違って精通していることが伺われます。ただし、宇宙や生物などの自然科学方面にはそれほど興味ないようにも見受けられます。加えて、歌舞伎などの古典芸能についてもほとんど取り上げられていません。映画ばっかりという気もします。出版関係もホームグラウンドですから詳しく、私は今『2016年の週刊文春』を図書館に予約していて、もうすぐ回ってきそうなのですが、「週刊文春」の取材や週刊誌ジャーナリズムに対する考え方なども大向こうを唸らせるものがあります。文化だけでなく経済社会的な話題も決して少なくなく、コンビニで賞味期限切れの商品はレジが反応しないなんて、私は知りませんでした。ただ、こういった話題を「フードロス」というキーワードで表現して欲しかった気もします。ただ、元号を災害と結びつけようという試みには感心しませんでした。これも、キーワードとなる気候変動、地球温暖化、などと適切に結びつけて雑感が語られている方が私の目には快かったのではないか、という気がします。もちろん、そういったキーワードなしで月刊誌巻尾のエッセイを続けていたわけですから、とても興味深い視点と判りやすい語り口が大いに楽しめます。

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最後に、本條強『マスターズ』(ちくま新書) です。著者は、ゴルフに関するジャーナリストです。ちょうど、松山英樹が日本人として初めて優勝した直後に私は本書を読みましたので、それなりに感じるものがありました。経済学を教える身として、松山英樹のマスターズで売上げが伸びているかもしれない、なんて考えたりもしました。ただ、私は海外勤務していた折にはゴルフもしましたが、日本に帰国してからはサッパリで、そもそも、チリやインドネシア在住の時にも、しばしばゴルフコースに出ていたにもかかわらず、ゴルフの腕前はほとんど上達しませんでした。ですから、ゴルフというスポーツそのものにもそれほど詳しくもありません。松山選手のマスターズ優勝というのは、そんな私にも何らかの刺激を与えてくれるものでした。ということで、毎年、マスターズの開催されるオーガスタ・ナショナルのゴルフコースというハードウェアと、そこでのプレーというソフトウェアの両方をバランスよく解説してくれています。オーガスタ・ナショナルは広く知られたように、球聖ボビー・ジョーンズが当時のグランドスラムを成し遂げて引退した結果取り組んだコースです。当然のように、セント・アンドルーズを模範として設計されているのですが、さぞや難しいチャンピオンコースと思いきや、設計思想はそうではなく、バンカーで苦しむゴルファーを見たくない、とか、みんなで楽しくゴルフするというコンセプトから、バンカーは少なく、フェアウェイとグリーンは広く、などなど、アベレージ・ゴルファーでもそれなりに楽しめる作りになっているらしいです。もちろん、私のようなアベレージ・ゴルファーよりもかなり腕前の落ちるプレーヤーはダメなんでしょう。ジャーナリストの著者らしく、コースだけでなくロッカールームやクラブハウスなども詳細に取り上げています。そして、プレー、というか、優勝者をはじめとする上位のゴルファーについては、もっと詳細に紹介しています。アーノルド・パーマーやジャック・ニクラウスといった20世紀なかばのスターから、最後のスターであったタイガー・ウッズまで、そして、最近時点では、例えば「帝王」と呼ばれるようなゴルファーはなく、混戦模様となっている点なども明らかにされています。まあ、強力に君臨する絶対的な王者がいなかったからこそ、松山英樹が優勝するチャンスが広がった、という見方もできるかもしれません。私のようなゴルフのシロートにも楽しめる良書です。

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