アジア開発銀行(ADB)「アジア開発見通し」Asian Development Outlook (ADO) 2021 やいかに?
本日、アジア開発銀行(ADB)から「アジア開発見通し」Asian Development Outlook (ADO) 2021 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。日本を除くアジア新興国・途上国の経済成長率は、昨年2020年に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響により▲0.2%のマイナス成長を記録した後、今年2021年+7.3%とリバウンドし、さらに、さ来年2022年も+5.3%と、COVID-19パンデミック前の一昨年2019年の+5.0%を上回る成長となるものと見込まれています。まず、アジア開発銀行のサイトから国別・地域別の成長率とインフレ率の総括表を引用すると以下の通りです。なお、この総括表はリポート p.xxii と同じだと思います。
大雑把にいって、2020年はCOVID-19の影響により、マイナス成長にはならないまでも、たとえプラス成長であったとしても、成長率が大きく鈍化した一方で、今年2021年は成長率がリバウンドし、来年2022年はパンデミック前の水準を回復する、という見通しです。ただ、観光業が大きな比重を占める太平洋の島嶼諸国はCOVID-19のダメージ大きく、2020年の成長率のマイナス幅が大きい上に、2021年もマイナス成長が続く国もいくつかあります。加えて、ミャンマーは広く報じられているクー・デタにより経済が停滞するのは当然でしょう。この間、インフレは安定的に推移すると見込まれています。
私が注目する懸念材料はインドです。上のテーブルに示されたアジア開発銀行の見通しでは、2020年に▲8.0%のマイナス成長の後、今年2021年は+11.0%と大きくリバウンドし、来年2022年も7.0%と順調な成長に回帰すると見込まれていますが、これも広く報じられているように、一部メディアが「インド型」と名付けるようなCOVID-19ウィルスの変異株が感染拡大を招く可能性が十分あります。ですから、私が知り得た範囲でも、USBの4月20日付けの Global Forecasts では、インドの成長率見通しが下方修正されています(p.3)。もっとも、下方修正されたとはいえ、2020年▲8.0%、2021年+10.0%、2022年+7.5%ですから、アジア開発銀行の「アジア開発見通し」Asian Development Outlook (ADO) 2021 と大きく異るところではありませんが、他方で、cnnのサイトには「インドの感染者、5億超の可能性も 実態は公式統計よりはるかに深刻」とする報道もあったりします。
最後に、分析編では、いつもの国別見通しのほか、(1) Asia remains resilient, amid divergent recovery paths、(2) Financing a green and inclusive recovery、と題する分析がなされており、アジアの回復は着実だが経路のばらつきが大きく、その要因はワクチン確保にあると指摘するとともに、環境に優しくSDGsに配慮し、さらに、多くの国民を包摂する回復を目指す点を強調しています。
目を国内に転じると、本日、経済産業省から3月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+5.2%増の13兆4980億円、季節調整済み指数では前月から+1.2%の上昇を記録しています。グラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。
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