« 2021年4月 | トップページ | 2021年6月 »

2021年5月31日 (月)

増産続く鉱工業生産指数(IIP)と緊急事態宣言で停滞する商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から4月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.5%の増産でした。商業動態統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+12.0%増の12兆2000億円、季節調整済み指数では前月から▲4.5%の減少を記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の鉱工業生産、1年7カ月ぶり高水準 設備投資など需要増
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比2.5%上昇の99.6だった。新型コロナ感染拡大前の水準を上回り、消費増税直前の2019年9月(102.4)以来の高水準だった。企業の生産用設備需要の増加などがけん引した。一方、世界的な半導体不足の影響を受けて自動車工業は低下した。
上昇は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中心値(4.1%上昇)には届かなかった。経済産業省は「内外での設備投資の回復やIT(情報技術)需要は継続している」として、基調判断は「生産は持ち直している」で据え置いた。
業種別では全15業種中、海外向け需要が堅調だった一般用蒸気タービン、ポンプなどを含む汎用・業務用機械工業(16.1%上昇)、国内での5G(次世代通信規格)関連投資が寄与した基地局通信装置を含む電気・情報通信機械工業(10.9%上昇)、半導体製造装置を含む生産用機械工業(7.8%上昇)など12業種が上昇した。一方、低下は自動車工業など3業種だった。
出荷指数は2.6%上昇の97.3と2カ月連続で上昇した。電気・情報通信機械工業、生産用機械工業など11業種が上昇した。
在庫指数は0.1%低下の94.7と2カ月ぶりに低下した。在庫率指数は1.8%低下の108.0と、19年5月以来の低水準だった。経産省は「『意図せざる在庫減局面』に引き続き該当し、このまま『在庫積み増し局面』に向かう方向にあると分析している」とした。
製造工業生産予測調査では、5月は1.7%低下、6月は5.0%の上昇を見込む。同予測は実際より上方に出る傾向があり、経産省が上方バイアスを補正した先行きの試算(5月)は2.5%低下だった。輸送機械工業が低下予測となっている。「半導体不足による影響や変異タイプの新型コロナ拡大による内外経済の下振れリスクに引き続き注視していく必要がある」としている。
4月の小売販売額12%増、コンビニなどで伸び
経済産業省が31日発表した4月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比12.0%増の12兆2000億円だった。増加は2カ月連続で、百貨店やコンビニエンスストアが前年同月を上回った。
2020年4月は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が1回目の緊急事態宣言を出した時期に重なり、外出自粛に伴い小売業販売額は記録的な落ち込みだったため、前年同月比の比較ではその反動が大きい。
百貨店は2.5倍の3536億円で衣料品が伸びた。コンビニは8.2%増で9618億円だった。21年4月も下旬から東京など4都府県に3度目の緊急事態宣言が出たが、小売業販売額はコロナ前の19年4月の水準(12兆350億円)を上回った。
季節調整済みの前月比でみると4.5%減だった。経産省は小売業販売の基調判断を前月の「持ち直しの動きがみられる」から「横ばい傾向」に引き下げた。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+4.3%の増産との見込みで、レンジの下限が+2.5%でしたので、実績値の+2.5%はギリギリの線かという気がします。最大の要因は、引用した記事にもある通り、半導体の供給制約の影響による自動車工業の減産で、前月から▲0.8%の減産となり、自動車を除く輸送機械でも▲4.6%の減産となっています。もっとも、自動車工業以外では、汎用・業務用機械工業が+16.1%の増産のほか、電気・情報通信機械工業+10.9%、生産用機械工業+7.8%、電子部品・デバイス工業+5.8%と、我が国のリーディング産業は軒並み回復を示しています。加えて、この期待はずれの低い伸び率でも生産指数は99.6に達し、上のグラフに見る通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前に記録した2020年1月の99.1を上回りました。国内でのCOVID-19ワクチン接種が進まないところに、海外、特に米国ではかなり経済活動も国民生活も正常化され、輸出に支えられて生産活動が回復を示している姿が明らかです。ですから、上のグラフの下のパネルでも、緑色の耐久消費財の出荷が低迷している一方で、青の資本財出荷は順調に伸びているように見えます。なお、先行きについて製造工業生産予測指数を見ると、5月▲1.7%の減産の後、6月は+5.0%の増となっています。信頼性の低い指標ながら、均してみれば増加基調が続くようです。これも含めて、先行きは自動車や輸送機械向けの半導体供給制約にも依存しますが、COVID-19ワクチンの内外格差は私はまだしばらく続くと見ており、生産は回復基調を維持する可能性が高いと考えています。

photo

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は、第1次の緊急事態宣言だった昨年2020年4月と比べると、さすがに2ケタ増ですが、3月からの前月比を季節調整済みの系列で見ると減少しており、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直しの動き」から「横ばい傾向」に明確に1ノッチ下方修正しています。小売販売額を季節調整済みの系列の前月比でもっと詳しく見ると、半導体供給制約で生産も減少した自動車小売業が▲11.2%と大きな減少を記録したのに加え、織物・衣服・身の回り品小売業も▲16.8%減、などとなっており、逆に、前月から伸びているのは価格上昇に起因する燃料小売業のほかは、飲食料品小売業だけです。輸出への依存を強める生産と比較して、緊急事態宣言の継続やワクチン接種の遅れなどから消費の停滞が際立っています。

photo

鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計に加えて、本日、内閣府から5月の消費者態度指数も公表されています。前月から▲0.6ポイント低下し 34.1となっています。3回目の緊急事態宣言が消費者マインドに影を落としていることはいうまでもありません。ワクチン接種の遅れも影響を及ぼしている可能性も排除できません。上の消費者態度指数のグラフでは、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。このグラフも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

| | コメント (0)

2021年5月30日 (日)

目薬のパッケージが地味!!!

photo

私はアレルギー持ちで、目薬を日常的に使っています。いろいろと試しましたが、ここ数年はサンテFXネオを使用しています。私の症状と体質にあっているような気がします。2~3週間に1本12ccを使い切ります。サンテFXネオは時折コラボ製品を出していて、以前は進撃の巨人とのコラボ製品を使っていたこともあります。1年ほど前、まだ、東京にいたころにガンダムとのコラボのパッケージを使ったサンテFXネオをいくつか買い求めていましたが、本日、使い切って従来パッケージ製品に切り替えました。やっぱ、地味という気がします。

| | コメント (0)

終盤辛くも逃げ切ってデーゲームは負け無しのタイガース!!!

photo

  RHE
阪  神021220200 9150
西  武032000300 8113

序盤から乱打戦でしたが、最後は辛くも逃げ切って、デーゲームは負けなしのタイガースでした。
先発はルーキー村上頌樹投手でしたが、さすがに西武打線からプロの洗礼を浴び、3回途中5失点で降板でした。でも、村上投手をリリーフして5回まで抑えた及川投手がプロ初勝利です。打線は、下位打線の7番糸井選手と8番梅野捕手がともにホームランを打って3打点の活躍でした。

次の関西ダービーは、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

2021年5月29日 (土)

猛虎打線が西武投手陣に抑え込まれて完封負け!!!

photo

  RHE
阪  神000000000 040
西  武010000000 160

猛虎打線が沈黙して西武に完封負けでした。
先発伊東将志投手は6回途中までで1失点としっかし試合を作りましたが、結果的には、2階の山川選手のバックスクリーン弾に沈みました。しかし、敗因は打線です。初回のチャンスを逃してから、ズルズルと4安打のゼロ行進でした。7回の満塁機を代打糸井選手の三振で逃し、8-9回も先頭打者をフォアボールで出しながら、後続がサッパリでした。明日もルーキー村上頌樹投手の先発です。打線の大いなる奮起を期待します。強く期待します。

明日こそは、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

今週の読書は主流派経済学の専門書をはじめとして計5冊!!!

今週の読書は、主流はど真ん中の財政均衡・緊縮財政に関する学術書、陰謀論をタイトルにしながらユダヤしか取り上げていない一般大衆書のほか、小説を単行本と文庫で2冊、さらに、新書を1冊と計5冊です。おそらく、5月の新刊書読書はこれで打ち止めですから、今年に入っての新刊書だけの読書で、1~3月期が56冊、4月に18冊、そして、足元の5月も18冊と、計92冊となっています。Facebookなどでシェアしている旧刊書を除いた新刊書だけで年200冊ペースと予想、目標ではなく、あくまで予想していますが、そんなもんだろうと思います。

photo

まず、法政大学比較経済研究所/小黒一正[編]『人口動態変化と財政・社会保障の制度設計』(日本評論社) です。編者は、財務省の公務員から今は法政大学の研究者に転じています。本書は、3部構成となっていて、第1部が民主主義と財政制度、第2部が社会保障制度改革、第3部が高齢者の貯蓄行動と介護、となっています。いわゆる左派系の財政均衡学派の論文を収録しています。米国では、共和党が財政収支についてはソフトな対応で、左派の民主党のほうが財政均衡を志向すると考えられていて、この財政均衡を志向するのが主流派経済学といえます。なぜこういうことをいうかというと、私は大学では基本的に講義などでは主流派経済学を教えます、と説明しているからです。逆に、ゼミなどの私自身のエコノミストとしての色を出しやすい少人数授業などでは、もちろん、教育ではなく研究では自分の信ずるところに従って進めるんですが、必ずしも東大や京大や一橋大などに比肩するわけでもない経済学部では、就職や何やを考えると私の好みの経済学ではなく、政府で応用されている主流派経済学を教えておく方がいいだろうし、官庁エコノミスト出身の私の講義には主流派経済学を応用した授業を望む学生諸君が集まるんではなかろうか、と考えているからです。ですから、時折、私自身の主張とはかけ離れたこういった財政均衡や緊縮財政を志向する主流派経済学の論文集なんかにも目を通しておく必要があるわけです。ひと通り見知った分野ですので、財政均衡や緊縮財政を志向する主流派経済学の論考が並べられているというだけで、一応、それなりに新しく開拓された分野も収録されているとはいえ、特に、大きな感銘を受けた開けではありません。いくつかの章に分割されて論じられているのですが、興味深かったのは、財政均衡や緊縮財政の主流派から見た実際の財政政策の評価です。もはや前世紀ながら、橋本内閣財政構造改革法はわずかに1年で放棄された非現実的な方向性を打ち出した緊縮財政法なんですが、本書では具体的な数値目標を盛り込んだ野心的な試みと評価されています。何よりも、おもしろかったのが、2009年政権交代後の民主党政権の評価であり、本書では極めて高く評価されています。現実には、国民の支持を失って早々に再度の政権交代を迎えたにもかかわらず、財政均衡や緊縮財政を目指す向きには評判はいいようです。民主党政権を引き継いだ第2次安倍政権はのほうぞな財政拡張で低評価だったりします。私は統計局の課長として、民主党政権下での「事業仕分け」なんかに苦しんだ経験があって、なかなか民主党政権での緊縮財政は客観的に評価し難いのですが、まあ、想像できる範囲の評価だという気もします。社会保障に関する本書の議論にも、国民生活を支えるという視点はまったく感じられず、やや極端な表現ながら、財政収支さえ帳尻があっていれば国民生活はそっちのけ、という気すらします。一部に、コロナ語の経済学にインスパイアされる部分もなくはないわけですが、時にはこういったカギカッコ付きの「主流派経済学」の最新に議論も押さえておかねばならないわけで、官庁エコノミスト出身の大学教員のツラいところです。

photo

次に、内藤陽介『みんな大好き陰謀論』(ビジネス社) です。著者は、郵便学者というそうです。本書では、タイトルの大きさにそぐわず、実はユダヤだけを取り上げています。従って、というか、何というか、つい最近の5月末に第2部として同じ作者の『誰もが知りたいQアノンの正体』という本が同じ出版社から出ています。ということで、章別に、BREXITと称される英国のEU離脱はロスチャイルドの陰謀であるとか、米国の中央銀行であるFRBはユダヤが握っているとか、共産主義はユダヤの思想とか、ソ連はユダヤ人が作った!とか、コミンテルンに関するユダヤの陰謀とかを否定していきます。ハッキリいって、否定の論法もかなりあやふやなものですが、まあ、常識的な結論です。特に、主要人物がユダヤ人ではない、という否定の仕方が圧倒的ですから、どうしても、ユダヤの影響についてはどうなの、と質問したくなります。特に、最近停戦なったガザ紛争でのイスラエルのやり方を見ていると、そして、それを支援するかのごとき米国外交を報道で接するにつけ、本書で取り上げているようなイベントにはユダヤが積極的に関わっていないとしても、やっぱり、それなりに背系でユダヤの影響力は無視できないんではないか、と考える向きも少なくないような気がします。というのは、ハーバード大学ケネディ・スクールのチェノウェス教授らの研究成果 Why Civil Resistance Works によれば、3.5%ルールというのがあって、人口の3.5%が参加した運動は成功する確率が88.89%に達するらしいです。ですから、米国においてホンの2~3%しか総人口に占める比率のないユダヤ人とか、イスラム教徒でも、何らかの影響力は行使できる可能性があります。もちろん、私は本書で取り上げられているようなイベントや組織でユダヤ人の影響が見られると主張するつもりは毛頭ありません。そして、本書で残念なのは、そもそも、どうしてみんなが陰謀論を好きなのか、という点をまったく考えていないことです。経済界でも陰謀論めいた、あるいは都市伝説めいた俗説はいっぱいあって、例えば、アラブのお王様とロックフェラーが石油価格を決めているとか、途上国で安い賃金で働く外国人が先進国の雇用を奪っているとかで、極めつけは、国家財政の収支は均衡させるべきである、というものです。まあ、最後のは陰謀論ではないように見えますが、税金を引き上げたり、政府サービスをケチッたりする口実に使われていて、やや陰謀論めいた作用を持っていると私は考えています。いずれにせよ、世の中には直接的な陰謀論でないにしても、謬見・謬論のたぐいはいっぱい流布されており、ユダヤに限定せずとも世間一般の常識で見破れる俗説は、こういった本を読んでも読まなくても、常識というものを涵養する必要性がある、ということなのだろうと思います。もっと、小ネタの陰謀論をいっぱい収録していれば、さらに面白かったんではないか、という気がします。私はQアノンの続編は読まないんではないかと思います。

photo

次に、辻真先『たかが殺人じゃないか』(東京創元社) です。著者は、米寿を超えて年齢的には最長老ともいえるミステリ作家です。「このミス」、「週刊文春」、「ハヤカワ・ミステリマガジン」など、いろんなミステリ本のランキングで2020年の1位に上げられた名作です。舞台は昭和24年の名古屋であり、同じ作者の前作『深夜の博覧会』は昭和12年の東京上野とやっぱり名古屋を舞台にしており、登場人物は12年後という点を含めて連続性があります。主人公の高校3年生はさすがに前作には登場しないものの、前作で10代だった探偵役の那珂一兵や高校の先生の別宮操は20代半ばになっています。ミステリとしての謎解きは、一応、それなりに解決を見ていますし、「読者への挑戦状」ならぬ「読者への質問状」があったりしますが、ひとつだけ、私は2番めの殺人事件で死体をバラバラにした合理的理由、というか、必然性が理解できませんでした。ミステリとしてはそれなりの出来というしかなく、いろんなところで1位とか上位にランキングされているのは、ミステリとしてではなく、むしr、終戦直後の風俗面の描き方が上手だからではないか、という気がします。旧制中学・高等女学校から新制の義務教育の中学と新たに高校が設置され、男女共学が始まり、しかも、民主主義の導入による民主教育とか、教員の私には当時の高校生活の描写も興味深いものがあります。また、高校の推理小説研究会と映画研究会の部員が主たる登場人物ですから、もっと文化的な香り高いミステリ論や映画論の話題が多く取り上げられていて、さらに、米軍占領下の社会生活についても、いかにもそれらしく描写されています。殺人事件で殺されるのは、終戦までナショナリストで「鬼畜米英」や「1億総玉砕」なんぞを叫んでいた俗物ながら、戦後は手のひらを返して民主主義や平和を説くようになって、それなりに社会的な地位を占める人物です。そして、殺人の背景としては復讐劇のようなものがあります。ミステリとしてのトリックとともに、いろんな読ませどころがあります。最後に、タイトルはたった1人を殺す殺人という意味であり、当然ながら、大量の人を殺す戦争と比較しています。前作の『深夜の博覧会』と合わせて読むとさらにおもしろく読めますが、単体のミステリ作品としても十分な出来だという気がします。

photo

次に、尾脇秀和『氏名の誕生』(ちくま新書) です。著者は、日本近代史を専門としていて、たぶんポスドクの研究者です。私は同じ著者の『刀の明治維新』(2018年10月7日の読書感想文)や『壱人両名』(2019年6月15日の読書感想文)を読んでいます。時代のスコープとしては、江戸期から明治を経た近代日本の氏名を跡づけています。ということで、現在では氏名や姓名などは、養子になったり、結婚したりといった人生のターニングポイントでしか変更されず、基本的に、同じ名前を生涯使い続けることになりますが、その昔は、豊臣秀吉として死んだ武将について例とすれば、木下藤吉郎という名前の時もありましたし、木下から羽柴になったこともあるのは、知っている人も少なくないと思います。ですから、今でいうところの姓も名も人生の中で変更されることがあったというのは知っている人もいようかと思います。さらに、私の記憶は遠く高校生の頃の日本史の教科書か、参考書なのですが、日米和親条約に署名した時の将軍徳川家茂は「源家茂」となっています。武家だけでなく、公家筋でも、和歌の冷泉家文書の時雨亭文庫の冷泉家のご当主は、通常、藤原と署名したりします。ということで、現代の我々が認識している名前とか、氏名とか、姓名は必ずしも江戸期や明治維新のころとは同じではなかったわけで、もちろん、それ以前はもっと違ったのかもしれませんが、取りあえず、近代史専門の研究者が江戸期から現代までの日本人の名前について、特に、かなり厳密に名前と姓名と氏名を区別して、タイトルに有るように現代の氏名に至ったのかを歴史的に跡づけています。すなわち、職名、例えば、大岡越前守とかの職名がそのまま名前になっていた時代もありますし、そのころに、大岡忠相の忠相は名前とは認識されずに名乗とされていて、借金の借用証などの契約書では使わなかった、とか、先ほどの武家の源とか平とか、あるいは、公家の藤原とか菅原とかは、姓ではなく本姓とされて、本姓と名乗を結合して姓名として使っていた、とかです。ですから、先ほどの日米和親条約の源家斉は姓名であって、氏名ではありません。そして、時代を下がって明治維新後は、ひとまず、すべての武士は公務員になったわけで、本姓を氏に、加えて、職名を名前に使うと重複が激しく、ですから、この本姓と職名は避けられるようになり、普通の氏と昔は名乗と考えられていたものを結合して氏名が誕生し、加えて、頻繁に指名を変更するのは事務手続きからして煩雑極まりないわけですので、養子や結婚のようなケースを別にすれば、原則として生涯同じ氏名を使い続ける、という精度が出来上がった、ということです。ほかに、明治初期には女性が結婚した際には必ずしも男性の氏に合わせる必要はなかったとか、いろいろと、仲間内で披露すれば教養豊かと見なされそうな歴史的な知識が詰まっています。

photo

最後に、望月麻衣『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』(文春文庫) です。著者は、京都在住のラノベ作家で、私は一時『京都寺町三条のホームズ』を熱心に読んでいたのですが、途中でヤメにしたまま中断しています。なお、前作『満月珈琲店の星詠み』は昨年2020年11月21日付けの読書感想文で取り上げています。本作とは単に「~」以降がないだけで、やや紛らわしい気もします。ということで、トレーラーカフェで営業している満月喫茶店は前作と共通ながら、前作では鴨川の川原とか、京都で営業していましたが、本作では東京に飛びます。客のオーダーを聞かないでお店で考慮の上出したりするのはいっしょです。三毛猫のマスター、シンガプーラのウーラノス、白と黒のハチ割れのサートゥルヌス、シャムのマーキュリー、メインクーンのジュピター、ペルシャ猫のヴィーナス、アビシニアンのマーズ、黒猫のルナが人間の姿で働くというファンタジーです。本書の冒頭に月占星図や占いの詳しい解説があります。興味ある読者はじっくり読めますし、私のように適当に読み飛ばしている読者は適当に読み飛ばすことができます。「ハリー・ポッター」のシリーズなんかでは星を読むのはケンタウルスなんですが、本書では星を詠むわけで、それはネコの役割なのかもしれません。ただ、実際に、本書や前作を読んでいると、ネコたちは星を詠んでいるのではなく、やっぱり、あくまで読んでいるような気もします。それはともかく、大きく深刻ではないにしても、ちょっとした悩みのある一般ピープルをネコたちが、スイーツと飲み物を出してトレーラーカフェでもてなし、占星術でいろんな示唆を与えることにより、悩みから開放されるわけではないものの、癒やしを与えているような気がします。占星術とともに、飲み食いにこだわりのない私にはでてくるスイーツや飲み物についても、なかなか理解がはかどらないのですが、なんとなく心が軽くなるファンタジックなラノベです。イメージが湧きにくいという私のような読者のために、なぜか、出版社のサイトではなく、アマゾンのサイトに、ネコたちやスイーツと飲み物を描いた、実に、適切なイラストが置かれています。ご参考まで。

| | コメント (0)

2021年5月28日 (金)

9回土壇場に飛び出した佐藤輝明選手の決勝スリーランで西武に逆転勝ち!!!

photo

  RHE
阪  神011002105 10112
西  武000022300 7120

土壇場9回に飛び出した佐藤輝明選手の決勝スリーランで西武に逆転勝ちでした。9回は一気に5点ですから、劇的な勝利でした。
先発青柳投手は6回途中までで4失点とピリッとせず、7回に登板した馬場投手も3失点と、7回終了時点で7-5でしたから、配色濃厚でしたが、9回に大逆転劇が待っていました。すなわち、3番マルテ内野手のタイムリーと4番大山キャプテンのタイムリーで追いつき、最後はゴールデンルーキーの佐藤選手の豪快なスリーランで打撃戦にケリをつけ、9回ウラはスアレス投手が3三振でピシャリと締めました。佐藤選手はホームラン3本の大当たりでした。齋藤友貴哉投手はプロ初勝利を上げ、阪神は30勝一番乗りとなりました。

明日もこの勢いで、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

失業率が上昇し有効求人倍率が低下した4月の雇用統計をどう見るか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも4月の統計です。失業率は前月から+0.2%ポイント上昇して2.8%、有効求人倍率も前月から▲0.01ポイント下回って1.09倍と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)へ対応する緊急事態宣言のため、いずれも前月統計からは悪化したものの、徐々に下げ止まりないし改善を示している印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の失業率2.8%、0.2ポイント悪化 有効求人倍率1.09倍
政府が28日発表した雇用関連統計によると、4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月から0.2ポイント上昇した。4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍となり、前月から0.01ポイント低下した。低下は2カ月ぶりで小幅だった。
新型コロナウイルスの感染再拡大で4月25日から東京や大阪などに3回目の緊急事態宣言が適用された。宣言は6月20日まで延長される見通しで、雇用の下押し要因となっている。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業などから何件の求人があるかを示す。4月は企業からの有効求人は前の月から1.4%増え、働く意欲のある有効求職者数は2.6%増えた。求職者の伸びが求人を上回り、2カ月ぶりに悪化した。
雇用の先行指標となる新規求人数(原数値)は前年同月比で15.2%増えた。増加に転じるのは19年12月以来。昨年4月、1回目の緊急事態宣言で大きく落ち込んだ反動が出た。2年前と比べるとなお2割減でコロナ前水準への回復にはほど遠い。
産業別では、教育・学習支援業(43.6%増)や製造業(32.8%増)は大きく増える一方、宿泊・飲食サービス業(2.9%増)はなお厳しい情勢が続く。
地域によるばらつきも大きい。就業地別の有効求人倍率は、最高の福井県が1.84倍、最低の沖縄県は0.78倍だった。コロナの感染が再拡大する都市部では、東京都や大阪府で1倍を割り込んでいる。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

photo

日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.7%だった一方で、有効求人倍率は1.10倍でしたので、これらの予想ほどには改善が進んでいない印象です。しかしながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言のために、方向性としては下げ止まりから改善に向かう動きがやや停滞しているのは事実ながら、失業率はまだ2%台ですし、有効求人倍率も1倍を越えているわけですから、雇用はかなり底堅い、と私は認識しています。
ですから、雇用統計に関して3点指摘すれば、第1に、COVID-19のネガティブなマクロ経済への影響があるにせよ、雇用だけは減少過程に入った人口動態に起因した人手不足の影響が見られる可能性があります。第2に、人手不足の観点も含めて、非正規雇用もさることながら、特に、正規雇用への需要が底堅いことは注目すべきです。例えば、正社員への有効求人倍率とパートとを比べると、もちろん、まだパートに対する求人倍率の方が高いとはいえ、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期にはパートの方が+0.6ポイントほど高かったにもかかわらず、足元の2021年4月で+0.2ポイントくらいまで差が縮小してきています。繰り返しになりますが、まだパート求人倍率の方が高いとはいえ、相対的に正規雇用に少しずつシフトしてきている可能性が示唆されています。第3に、昨年4月からの反動の側面もありますが、いわゆる休業者が今年2021年4月には大きく減少しています。昨年2020年4月は第1次の緊急事態宣言のため、休業者が前年同月と比べて+420万人と大きく増加し、失業率データに対する信頼性の問題が浮上しましたが、逆に、今年2021年4月には▲398万人の減少があり、4月失業率が前月より+0.2%ポイント上昇しているとはいえ、休業者を含めた実態はそれほど悪化していない可能性も読み取れます。

| | コメント (0)

2021年5月27日 (木)

阪神打線がロッテに打ち負ける!!!

photo

  RHE
ロ ッ テ100013010 691
阪  神021010000 481

阪神打線が打ち負けてロッテに逆転負けでした。
先発アルカンタラ投手は、まあ、こんなものかもしれません。ロハス選手とともに、期待が大きかっただけに失望感がなくもありませんが、韓国リーグで活躍できても、阪神でものになったのはサンズ選手だけのような気がします。いずれにせよ、今日は打線勝負でロッテに打ち負けました。佐々木朗希投手に初勝利を献上です。今夜のアルカンタラ投手のまぐれ当たりのタイムリーを別にすれば、各試合で3点しか取れていません。投げる方も勝ち試合に登場するリリーフ陣が、一昨夜の岩崎投手、昨夜のスアレス投手、今夜の馬場投手と、キッチリと失点しています。ベンチワークを見ても、矢野監督はロハス選手を引っ込めた一方で、甲子園のファンを意識した井口監督の鳥谷起用なんて余裕綽々の采配をされても1勝2敗で負け越しです。セ・リーグ1位とパ・リーグ3位とはいえ、実力の差は歴然でした。それにしても、鳥谷選手にはロッテのユニフォームは似合いません。特に、帽子に違和感ありました。

次の西武戦は、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

明日金曜日の5月28日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。まず、いつものグラフは以下の通りです。

photo

アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、ジワジワと停滞感を増していて、4月にはとうとう前年同月比で+0.7%増まで上昇幅が縮小しています。他方、派遣スタッフの方は昨年2020年5月以降のデータが跳ねています。上のグラフの通り、今年2021年4月にはとうとう前年同月比で+7.6%増に達しています。派遣スタッフの時給の方は、どうやらCOVID-19に伴う正社員の代替需要のような気がします。ただし、正確には現時点で判断するのはややムリで、何があったのかは私には判りかねます。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は繰り返しになりますが、4月には+0.7%増の伸びまで縮小し、人手不足がメディアで盛んに報じられていた一昨年2019年暮れのコロナ前の+3%を超える伸び率から比べるとかなり低下してきています。三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より+0.7%、+8円増加の1,083円を記録しています。職種別では「事務系」(+32円、+2.8%)、「販売・サービス系」(+14円、+1.3%)、「フード系」(+9円、+0.9%)、「専門職系」(+10円、+0.8%)、「製造・物流・清掃系」(+8円、+0.7%)と幅広い職種で増加を示し、「営業系」(▲13円、▲1.0%)だけが減少となっています。「営業系」が減少なのは、テレフォンアポインターが大きなマイナスを記録しているからです。地域別でも、首都圏・関西では前年同月比プラスだったものの、東海ではマイナスを記録しています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、4月は+122円増加、+7.6%増の1,729円に達しています。職種別では、「IT・技術系」(+125円、+6.1%)が突出して伸びが大きく、「クリエイティブ系」(+61円、+3.4%)、「医療介護・教育系」(+50円、+3.4%)、「営業・販売・サービス系」(+42円、+3.0%)、「オフィスワーク系」(+16円、+1.1%)と、すべての職種で前年同月比プラスを記録しています。地域別でも関東・東海・関西のすべての地域でプラスとなっています。

派遣スタッフの時給が伸びを高めているのに対して、アルバイト・パートの時給上昇率はジワジワと停滞し始めています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響は昨年2020年5月ころに底を打ったように見えることから、雇用については典型的には失業率などで景気動向に遅行するケースが少なくないとはいえ、意外と底堅いという印象です。

| | コメント (0)

2021年5月26日 (水)

終盤辛くも逃げ切ってロッテと1勝1敗!!!

photo

  RHE
ロ ッ テ000000011 251
阪  神00201000x 351

中盤までのリードをクローザーが守ってロッテに勝利でした。
先発の秋山投手は立ち上がりから素晴らしいピッチングでロッテ打線を抑え込んでいましたが、8回に失点して最終回はクローザーのスアレス投手に託します。しかし、昨夜の岩崎投手、岩貞投手といい、今夜のスアレス投手も、どうも、勝ちパターンのリリーフ陣もゼロで抑えられるのはセ・リーグ球団に限定なのか、5月にして早くも疲れが溜まっているのか、どうもピリッとしません。打線は相変わらずで、大山選手が復帰してようやくロハス選手をスタメンから外すことが出来ても、3点を取るのが関の山という感じなのでしょうか?

明日はカード勝ち越し目指して、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

上昇幅を拡大する4月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%まで上昇幅を拡大しし、変動の大きな国際運輸を除く平均も+0.9%の上昇を示しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言が首都圏などで今でも続いていますが、昨年の4~5月が経済活動の底でしたが、その反動が現れています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業向けサービス価格、前年比1.0%上昇 1年前の反動で
日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.9と前年同月に比べ1.0%上昇した。プラスは2カ月連続となった。1年前の4月は新型コロナウイルスの感染拡大で初の緊急事態宣言が発出された時期で、広告や一部の不動産などの価格が落ち込んでいた。今年4月はこの反動が出た。
前年同月は各種キャンペーンの中止で、テレビをはじめとした広告の価格が下落した。不動産でも店舗賃貸の価格が落ち込んだ。今年4月はこれらの反動で前年に比べ価格が上昇した。
日銀は足元について「3回目の緊急事態宣言が発令されているが、対象地域が限られており、2020年4月ほどの厳しさはみられていない」と分析している。
企業向けサービス価格指数は前月比では0.4%下落した。広告で21年3月、期末に向けた企業による積極的な出稿姿勢で価格が上昇した反動が出た。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは65品目、下落は51品目だった。

いつもながらよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていましたが、今年2021年2月統計では保合いになり、3月統計でとうとうプラスに転じました。直近で利用可能な4月統計でもプラスを維持し、上昇幅を拡大しています。ただ、昨年2020年4~5月が第1次の緊急事態宣言の中で経済活動の水準がほぼ底だったため、その反動で今年は前年同月比上昇率が上がっている、という面も否定できません。少し詳しく、SPPIの大類別に基づく前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率への寄与度で見ると、テレビ広告、インターネット広告、新聞広告などの広告が前年同月比+11.7%、寄与度+0.52%と大きな部分を占めています。景気に敏感な項目ながら、前年からの反動も含んでいます。また、不動産が上昇率+3.7%、寄与度+0.35%、運輸・郵便が上昇率+0.7%、寄与度+0.11%などとなっています。不動産については、前年の賃貸料の落ち込みからの反動が見られ、運輸・郵便では国際商品市況における石油価格の上昇を反映しているものと考えられます。前年からの反動という要素が無視できませんから、上のグラフに見られるように、季節調整していない原系列の統計ながら、前月比は▲0.4%の下落となっています。繰り返しになりますが、景気に敏感な広告は前年同月比では+11.7%の上昇ながら、前月比では▲7.3%の下落となっていたりします。今もって、東京都や関西圏などでは緊急事態宣言が解除できずにいるわけで、COVID-19の経済的な影響はワクチン接種が進まない限り改善しない、と覚悟するべきです。物価ももちろん同じです。

| | コメント (0)

2021年5月25日 (火)

勝ちパターンのリリーフ陣が終盤に打ち込まれて万事休す!!!

photo

  RHE
ロ ッ テ100000130 5121
阪  神003000000 371

頼みのリリーフ陣が崩れてロッテに逆転負けでした。
先発の西投手は初回に失点し、さらに、終盤に入って7回にも阪神で2000本安打を達成した代打鳥谷選手にもタイムリーを打たれて7回で降板した後、勝ちパターンの岩崎投手が逆転ツーランを浴び、そのままズルズルと逆転負けでした。打撃陣は外国人選手のホームランによる3点だけでしたが、3点では全盛期を過ぎた西投手には十分な援護点とはならないのでしょう。4回以降は散発2安打に抑え込まれました。ロッテはさすがにパ・リーグAクラスの実力ですが、巨人はパ・リーグ2位につけている楽天に逆転勝ちしています。まあ、これも全盛期を過ぎた鳥谷選手のタイムリーを見られたのはよかったです。

明日は、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

東大グループ藤田・仲田「五輪開催の感染への影響: 定量分析」はどのように報じられたか?

東京大学経済学部の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師のグループが、東京オリンピックによる新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大のシミュレーション結果を「五輪開催の感染への影響: 定量分析」と題して明らかに知って、昨日5月24日付けで修正版も出ています。5月上旬にこの2人が総理大臣官邸に呼ばれたとの報道もあって、いくつかのメディアで報じられています。なお、このグループの研究成果は「日本でのCovid-19と経済活動」というサイトに公開されています。6月中旬に緊急事態宣言が解除された後のシミュレーション結果のグラフを「五輪開催の感染への影響: 定量分析」p.17 から引用すると以下の通りです。変異株の影響は含まれていない、緊急事態宣言は6月中旬解除、などの前提が置かれていますが、その他の入国者数やワクチン接種などの設定について詳しくは「五輪開催の感染への影響: 定量分析」を見て下さい。

photo

もちろん、サイトで注意を促されているように、「変異株の感染力を含め、今後の見通しを左右する様々な要素には大きな不確実性が存在」するわけですし、そもそも、悲しいかな、私はこの結果を評価するだけの専門性を欠いています。しょうがないので、メディアでどのように報じられているかを以下のように取りまとめてみました。

もちろん、大手メディアが報じているのですから、報道はかなり正確です。ただ、どのような角度から報じられているのは興味あるところです。すなわち、上からオリンピックに否定的と私が考える順です。何と、NHKがもっとも否定的と私は受け止めており、人流10%増で感染者3倍、というのは、たぶん、その通りなんだろうと思います。ただ、資料が差し替えられている可能性が高く、私が見たスライドには人流10%増のシミュレーション結果は発見できませんでした。朝日新聞と産経新聞はともに客観的な内容であり、特に、朝日新聞はもっとも客観的な報道であり、入国者よりも都内の人流の増加が感染拡大に影響する、という点を強調しています。産経新聞も基本的な事実関係は同じなのですが、人流を無視して単に入国の影響が限定的と報じています。私にいわせれば、不正確とまではいわないにしても、日経新聞がもっとも偏向していて、単に感染像は限定的と報じています。

繰り返しになりますが、私は最新版ということで、5月24日に差し替えられた[修正版]から引用していて、グラフには人流の増加のケースが2%と6%しかなく、NHKが報じているような人流10%増の結果は含まれていません。まあ、私は確認できませんが、差替えの際に10%ケースを削除したのであれば、これはこれでミスリードを誘おうとの意図があるんではないか、と研究グループの方が情報操作的な印象を持たれる可能性も否定できません。

| | コメント (0)

2021年5月24日 (月)

週休3日制はどのように評価されるべきか?

ケインズの著作のひとつに、「我が孫たちの経済的可能性」"Economic Possibilities for our Grandchildren" というのがあります。1930年ですから、90年前に書かれています。その中に、「1日3時間労働」というのがあり、ちびっと違うんですが、5月21日付けの東洋経済オンラインで「『週休3日制』の当面の経済効果を計測してみた」という記事を見かけました。今年2021年4月13日の経済財政諮問会議にて、民間議員から提出された「ヒューマン・ニューディールの実現に向けて」という資料でも言及されていて、少しだけ話題になった記憶があります。
結論として、余暇時間の増加による消費の増加が月+0.9万円、他方、労働時間が減少して何らかのルールで所得もそれに合わせて減少する場合が考えられ、(1) 休日の増加分だけ所定内給与が減少するケース、(2) 休日が増える代わりに労働日の所定内労働時間が増えて残業時間が減るケース、の平均で所得が▲15%減少、1か月当たりで▲5.1万円の減少と試算されています。さらに、これに加えて、家計が休日像に合わせて貯蓄を取り崩して消費に回す余裕が月+5万円あるという試算も示されていて、▲5.1万円の所得減のうち5万円が貯蓄取崩しで穴埋めされるものの、結局、▲0.1万円は消費の減少になる可能性が高い、との結論を得ています。

経済効果はあるいはそうかもしれませんが、週休3日制はかなり大きなスピルオーバーが見込めると考えるのは私だけでしょうか。それとも、あくまで市場価格で判断するのでしょうか。

| | コメント (0)

2021年5月23日 (日)

梅雨の中休みの5月23日本日の雑感 - 年齢の境界について考える!!!

今日は梅雨の中休みのいいお天気で気温も上がりました。
ということで、京都府は緊急事態宣言でお店はそれほど開いていない上に、広島カープの選手にコロナ陽性が大量に出て、阪神タイガースとの試合が中止されて、読書以外はヒマな週末、5月23日本日の雑感です。自転車から年齢の境界について考えています。
このところ、週末ごとに雨だったので、久しぶりに自転車にも乗りましたが、近くの図書館往復だけでした。でも、よくよく考えれば、東京在住だったころはほぼほぼ図書館に通うためにマウンテンバイクを転がしていたわけで、まあ、私にとっての自転車の本来用途ともいえます。特に、東京は広いですから在住以外の区立図書館を3~4か所回るだけで相当な距離を走ることになります。
少し前のオンライン会議で投票する際、私はどうもうまく操作できなくて「このシステムは年寄りには難しい」と文句をいったら、「ポケモンのマンホールを見るために、京都から大津まで自転車を飛ばすんだから、年寄ではなかろう」とたしなめられました。前々から感じている年齢の境界があって、大人と子供の境界は高校生、中年と年寄りの境界は60代、という気がしています。すなわち、高校生は、ケース・バイ・ケースで、都合よく大人にカウントされたり子供にカウントされたりします。「まだ子供なんだから」といわれて親の忠告を受け入れざるを得なかったり、「もう大人なんだから」といって責任を押し付けられたりするわけです。誠に残念ながら、高校生の場合はそれで被害を受けることの方が多そうな気がします。私のような60代の場合は、境界条件を逆手に取って自分の主張を押し通したり、逆に、適当に言い訳にしたりするわけです。「もう年寄りなんだからムリ」といって逃げてみたり、「まだ若いんだからちゃんと出来る」と主張してムリに挑戦したりするわけです。

来週5月いっぱいで、今年上期の授業がほぼ半分終了します。思っていたよりも忙しいので、定年退職後の年寄りには教師は酷な仕事だったかと考えないでもありませんが、もう少しがんばります。

| | コメント (0)

2021年5月22日 (土)

今週の読書は経済書や教養書など計4冊!!!

今週の読書は、日本経済学会の春季と秋季の退会発表論文からよりすぐった最新経済学の論文集をはじめとして、教養書、小説、新書と計4冊、以下の通りです。なお、今年に入ってからの新刊書読書は1~3月に56冊、4月に18冊、そして、5月に入って今日までに取り上げた13冊と、計87冊となっています。これに加えて、Facebookでシェアした旧刊書などを含めれば、半年足らずで100冊くらいのペースではないかと想像しています。今年の予想、目標ではなくあくまで予想は、新刊書で年200冊くらいのペースの読書だったりします。今はまだフルタイムで働いていますが、本格的に隠居したら年300冊くらいのペースの読書を目指します。もう指折り数えてあと数年です。

photo

最初に、宇井貴志ほか[編]『現代経済学の潮流 2020』(東洋経済) です。編者は日本経済学会の役員ではないか、という気がします。よく判りません。というのは、本書は2019年度の春季と秋季に開催された大会で報告された論文からピックアップしてあり、学会の公式刊行物だそうです。ですから、完全な学術論文であり、一般ビジネスパーソン向けではありません。4本の論文とパネル・ディスカッションのプロシーディングを収録しています。第1章は地方と中央の政府間の財政関係について、浩瀚なサーベイをしています。特に、国内というよりも国際的な租税協力に関して、OECDのBPESについての主要な議論がほどよく取りまとめられています。第2章は日本ではライフ・サイクル仮説が他国以上に明らかに成立しており、逆にいえば、遺産動機は希薄であり、とても利己的な貯蓄行動といえると結論しています。同時に、公債に関するリカード中立命題は成立せず、それだけに、ケインズ的な財政政策が有効である可能性が示唆されています。第3章では、企業内で意思決定をする際の情報伝達について理論的な研究、例えば、分権型と集権型などについて展開しています。第4章では、働き方改革の定量的な経済分析を行い、ダイバーシティなどが企業収益率にどのような影響を及ぼすかを実証しています。最後のパネル・ディスカッションでは企業内でのエコノミストの活動・活躍について、サイバーエージェントやZOZOの実例の報告を含めて議論しています。私は特に最後のパネル・ディスカッションが参考になりました。ここで議論されているのは、おそらく、博士号を持ったエコノミストであり、どこまで企業内での養成が可能かどうか、本書の議論ではできる可能性が示唆されていますが、私には疑問です。というのは、日本企業のひとつの特徴として、リカレント教育なんかではなく、OJTによる企業内のスキルアップを伝統的に重視していることなんですが、ハッキリいって、企業内OJTで出来ることは限られています。今までは、その程度のスキルで十分だったのかもしれませんが、グローバルな競争が激化し、生産技術が高度化するに従って、スキルの獲得にはコストがかかるようになります。ですから、社内エコノミストも例外ではなく、それなりの訓練を社外で受ける必要があるような気がします。米国の場合など、例えば、Googleのチーフエコノミストのハル・ヴァリアン教授などは、明らかに外部から招聘されているわけですが、日本の場合、金融機関やシンクタンクで働くエコノミストも、大卒一括採用の後で社外でのトレーニングを受けている場合が多いのではないでしょうか。例えば、私が官庁エコノミストをしていたころに、銀行などの金融機関から出向して、いっしょに計量経済モデルを回していたこともありますし、ほかにも、白書なんかを取りまとめる部署にシンクタンクなどからの出向者お受け入れていた場合も見てきました。実は、日本企業でエコノミストが経済学を生かした仕事をするケースは、少し前までほとんどなかったんですが、今後、エコノミスト的な仕事が必要とされるとすれば、生産ライン的なOJTだけで社内エコノミストを養成するだけでなく、ホントに必要なケースは社外でのトレーニングが必要になりそうな気がします。

photo

次に、森本あんり『不寛容論』(新潮選書) です。著者は、神学・宗教学の研究者です。本書では、特に宗教諸色の強い米国を題材に、タイトル通りの寛容論・不寛容論を展開しています。もちろん、寛容・不寛容と強くリンクするコンセプトとして、良心とか、正義の問題も取り上げています。特に、17世紀における北米植民地のロジャー・ウィリアムズという人物に焦点を当てて、北米植民地で英国国王の特許状が現地民の土地所有との関係でどこまで有効かと行った議論も含まれています。ですから、寛容・不寛容について宗教的な観点からの捉え方を本書ではしていますが、私はこの点には疑問を持っています。というのは、最初に提示されている通り、寛容とは一面で「嫌いだが仕方ない」、逆に、不寛容とは「嫌いだからダメだ」ということであり、直ちに、宗教的な寛容・不寛容とは関係がないからです。ただ、逆から見て、本書でも容認しているように、実利の観点からの寛容・不寛容はあり得るわけで、そうすると、寛容・不寛容ではなく許容の問題になります。しばしば、エコノミストが依拠するようなベンサム的な功利主義の観点からすれば、99損しても100得すればOK、ということで、我が国の言葉でいえば「肉を切らせて骨を断つ」ということです。相手の骨を切るチャンスがあるのであれば、自分の肉を切らせるコストは容認する、というわけです。自分自身がまったく評価しないにもかかわらず、それを容認することが「寛容」であり、逆に、自分が評価しないものは受け入れず排除する、というのが「不寛容」です。ある面からいえばガマン強さにも関係します。イヤなのに、どこまでガマンできるか、許容できるか、切れずに済ませられるか、ということです。ですから、切れやすい人は、当然に、不寛容であるということになります。日本語でいえば「懐が深い」ということになります。寛容とは、包容力のことでもあるわけです。でも、まあ、映画の世界ではありますが「男の優しさは全部下心なんですって」というのもあるわけで、まったく表裏のない人には寛容とか不寛容は関係なさそうな気もしますし、むしろ、表面を取り繕った寛容よりも、ある意味で、正直な不寛容のほうが清々しさを感じる場合もありそうな気がします。少し宗教=キリスト教との関係で私の理解がはかどらない部分もありましたが、エコノミストである私自身は寛容・不寛容と良心の問題は、宗教的・哲学的というより、もっと実務的な損得の観点から見ているような気がします。

photo

次に、宇佐美まこと『羊は安らかに草を食み』(祥伝社) です。著者は、それなりに売れているホラー作家・ミステリ作家です。出版社による本書の特設サイトも開設されています。ということで、本書は、認知症を患った80代半ばの女性の半生をたどる物語です。特に、10歳過ぎで経験した当時の満州からの終戦に伴う日本への引上げ体験の過酷さには、到底戦後世代の私なんかの及びもつかないものがあります。舞台は旅する3人の老女、それぞれ異なるバックグラウンドを持った70代後半から80代半ばまでの3人の老女の旅の大津、松山、佐世保から離島の五島列島となります。そして、いくつかの章の後半部分には、認知症を患った80代半ばの老女の終戦時における満州からの引揚げの過酷な体験が挿入されます。ですから、ある意味で、読者は神の視点を持つことになります。そして、最後には、満州からいっしょに帰国した仲間の女性と分かち合った大きな秘密が明かされ、もちろん、フィクションの小説のことですからハッピーエンドで終わります。やや出来すぎの嫌いすらあります。私のようなひねくれた読者からすれば、最後のソリューションはご都合主義とも受け取れます。しかし、それはそれとしても、戦後80年近くを経過し、それでもまだ戦争を記憶に留める世代も少なくない中で、戦争と軍隊というものの罪深さを改めて確認させる小説であり、近代日本の歴史を思い起こさせる重い小説でした。あまりにも重すぎて途中からは実感も失い、まるでSF映画を見ているような感じで、感情移入すら忘れる部分も少なくありませんでしたが、もちろん、小説としてのデフフォルメはなされているとしても、現実の歴史からそう大きくは離れていない気もしますし、単に、満州からの過酷な引揚げ物語というだけでなく、戦後の国民生活も含めて、考えさせるところの大きい小説です。渡しの場合は、母親が1930年生まれで終戦時に10歳であり、ほぼほぼ、この小説の86歳の認知症の老女に重なる部分があります。その母親の生命力の大きさにも思いが至りましたし、単に個人的な物語だけでなく、近代日本という国家のあり方にも思いを馳せることが出来ました。その意味で、いろんな読み方のできる小説だと追う気がします。ただ、重いテーマの小説です。ひたすら重いです。その点は重々認識して読み進むことが必要です。私はいつも通りの読書をしてしまいましたが、もう少し覚悟を持って読み始めた方がよかったかもしれません。

photo

最後に、松本佐保『アメリカを動かす宗教ナショナリズム』(ちくま新書) です。著者は、国際政治史の研究者です。本書では、米国のトランプ政権を支えた福音派をはじめとする米国の宗教活動体を主に分析しています。すなわち、2016年の米国大統領選挙でトランプ大統領を支持したのはラストベルトに住む職を失った白人、特にやや下層の白人である、との分析が主流でしたが、そのトランプを支持した白人は宗教的には福音派などであり、ニクソン政権を支持したサイレント・マジョリティのように、行き過ぎたポリコレに対する批判が出たのではないか、という趣旨だと私は受け止めました。パットナム教授の『アメリカの恩寵』にもあるように。米国民というのはピューリタンが建国したという歴史的な経緯もあるのでしょうが、日本や欧州ななよりもすぐれて宗教的に敬虔です。ある意味で、イスラム教徒的な宗教的敬虔さというものを持っています。これは、パットナム教授やm本書で指摘されるまでもなく、その通りです。そして、その宗教的な情熱が米国政治を動かしている面も否定できません。例えば、本書で指摘しているように、現在のバイデン大統領は、ケネディ元大統領についで米国政治史上2人目のカトリック教徒なわけですが、こういった大統領の宗教的なバックグラウンドが注目される国はそう多くありません。しかし、他方で、宗教が政治に何らパワーを持たない国というのも考えられません。例えば、欧州ではキリスト教政党がそれなりの地位を占めていますし、政権に参加しているキリスト教政党も少なくありません。宗教的に無宗教に近いと考えられている我が国にしても、実は、宗教政党が与党の一角を占めています。ですから、宗教が政治に及ぼす力といっても、そこは程度問題であり、ゼロから100の間にあるわけで、米国の宗教パワーの力は欧州や日本より大きいとはいえ、宗教だけが米国政治を決めているわけではないことは誰しも理解していることでしょう。米国では、ホンの2~3パーセントしか占めていないイスラム教やユダヤ教の政治力というのは、例えば、我が国の浄土宗仏教の政治力とは比べものにならないことは私も認識していますが、だからといって、宗教的な観点で政治的な決定がなされるわけでもないと思います。やはり、米国に限らず欧州でも、あるいは、もちろん、日本でも政治的に共感を集めるのは、"It's the economy, stupid!" ではないのでしょうか?

| | コメント (0)

2021年5月21日 (金)

携帯電話料金のマイナス寄与で下落の続く消費者物価指数(CPI)の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲0.1%の下落と、9か月連続の下落を示しつつも、下落幅は徐々に縮小しています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.3%とプラス幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4月全国消費者物価、0.1%下落 携帯通信料が26.5%下落
総務省が21日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.5と前年同月比0.1%下落した。下落は9カ月連続。携帯大手各社の値下げにより、携帯通信料が26.5%下落したことが主な押し下げ要因となった。一方、原油相場の上昇基調を反映してエネルギーは上昇に転じたが、携帯通信料の下落は補えなかった。
NTT(9432)傘下のNTTドコモのオンライン専用プラン「アハモ」など、3月から4月にかけ携帯大手各社が割安な新料金プランを開始した。携帯通信料の下落率は、比較可能な2001年以降で最大となり、総合指数を0.50ポイント押し下げた。
エネルギー価格は前年同月比で0.7%上昇した。上昇は20年1月以来、1年3カ月ぶりとなる。内訳は、ガソリンが13.5%上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する電気代や都市ガス代もマイナス幅が縮小した。
宿泊料は前年同月比3.1%上昇した。上昇は19年12月以来となる。総務省の担当者は「昨年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく落ち込んだ反動が出ているだけで、旅行者は増えていない」と話し、需要増による料金上昇ではないとの見方を示した。
在宅勤務の長期化を背景に、ルームエアコンなど家庭用耐久財は3.0%上昇した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.2%下落と、4カ月ぶりに下落した。生鮮食品を含む総合は0.4%下落と、7カ月連続で下落した。天候が良く、トマトやレタスなど生鮮野菜が10.5%下落した。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.2%の下落でしたので、ほぼジャストミートしました。CPIの下落が続いていることについては、一昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果が昨年10月統計で剥落したり、幼児教育費や高等教育費も3月でそのマイナス効果が終了したものの、政策要因に近い価格動向として、政権からの要請に基づく携帯電話料金の引下げが無視できません。すなっわち、通信料(携帯電話)の上昇率は▲26.5%と大きく下落しており、総合への寄与度も▲0.50%となっています。他方で、エネルギーの対前年同月比上昇率は3月統計まではマイナスだったんですが、本日公表の4月統計ではとうとうプラスに転じて、総合指数への寄与度は+0.39%に達しています。ですから、この携帯電話通信料の強引な引下げがなければ、そろそろコアCPI上昇率はゼロないしプラスになっていてもおかしくないわけです。

最後に、先行き物価動向については、国際商品市況の石油価格の動きなどに従って、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率もゼロ近傍で推移するのではないか、と私は考えています。言葉を変えていえば、日銀のインフレ目標+2%の達成はまだ先のことだという気がします。

| | コメント (0)

2021年5月20日 (木)

米中への輸出が大きく増加した貿易統計と持ち直しの動きに足踏み続く機械受注!!!

本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計では季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+38.0%増の7兆1811億円、輸入額も+12.8%増の6兆9258億円、差引き貿易収支は+2553億円の黒字を計上しています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+3.7%増の7981億円を記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の輸出38%増、米国向け自動車で大幅な伸び
財務省が20日発表した4月の貿易統計速報によると、輸出額は7兆1811億円と前年同月から38.0%増えた。米国向けの自動車や中国向けの半導体などの製造装置が大幅に伸びた。伸び率は2010年以来の水準だった。新型コロナウイルスの感染拡大で20年4月に輸出が落ち込んでいた反動もあり、金額は4月として過去最大だった。
輸出総額はほぼ全ての地域向けで伸び、2カ月連続の増加となった。20年4月は新型コロナが世界的に広がり5兆2000億円程度まで減少していた。感染拡大の影響を受ける前の19年4月と比べても7.8%伸びた。
中でも米国向けは45.1%増の1兆2761億円。自動車が2倍以上に増え、自動車部品の伸びも目立った。3月に1.9兆ドルの経済対策が決まり現金給付など家計支援が始まった効果が表れたとみられる。2年前と比べると1割減の水準だった。
中国向けは1兆5834億円と前年同月比で33.9%増加した。2年前と比べても3割弱の伸び率だった。中国は新型コロナのまん延を抑えつつ経済が回復しているのを受けて、半導体製造装置や自動車の輸出が大幅に伸びた。
アジア向けは前年同月比32.7%増の4兆1562億円となった。欧州連合(EU)向けは前年同月比39.6%増の6761億円だった。
輸入は6兆9257億円で12.8%増えた。原油は前年同月比で38.9%伸びたものの、2年前と比べると2割減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は2553億円の黒字だった。
3月の機械受注、前月比3.7%増 市場予想は6.2%増
内閣府が20日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.7%増の7981億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は6.2%増だった。
うち製造業は0.1%減、非製造業は9.5%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は2.0%減だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
同時に発表した1~3月期の四半期ベースでは前期比5.3%減だった。4~6月期の見通しは前期比2.5%増だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べましたので長くなってしまいました。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は約+1500億円の黒字でしたので、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。引用した記事にもありますが、季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見て、米中の景気回復により輸出額が++38.0%増で、うち、数量が+28.4%増を記録していますが、なにぶん、昨年4月がコロナ・ショックの底であって、輸出額が▲21.9%減でしたから、いくぶんなりとも、その反動という面は否定できません。繰り返しになりますが、輸出数量は世界向けで+28.4%増でしたが、特に、米国向けが37.8%増、中国向けも29.3%増となっており、EU向けでさえ+12.7%増です。ですから、日本以外の先進各国や中国では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んで、経済が正常化する段階にあるといえますから、日本からの輸出の伸びも大きいわけです。例えば、世界向けの輸出数量はコロナ・ショック前の2019年12月には107.33であり、しばらくこの水準には達しませんでしたが、今年2021年3月には114.14に達し、4月も108.1を記録しています。ですから、我が国輸出はほぼほぼコロナ・ショック前の水準を回復しているわけで、逆に、これからの先行きは今までと同じペースで伸びを拡大していくというよりは、増勢が鈍化する可能性が高いと考えるべきです。その意味で、やはり、海外頼みの経済回復には限界があり、ワクチン接種を進めて内需の拡大を目指すべきなのですが、まったくワクチン接種が進んでいないのが現状です。貿易に限らず、もちろん、生産や消費も含めて、これから先の経済活動の回復は、かなり大きな部分がワクチン接種にかかっていると考えられます。

photo

続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、貿易統計のグラフと同じで、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+6.0%増でしたので、実績の+3.7%増という結果はやや物足りない気もします。従って、というか、何というか、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いています。加えて、足元の4~6月期についても+2.5%増ですから、引き続き、機械受注は先行き横ばいないし緩やかな増加にとどまる見込みです。

| | コメント (0)

2021年5月19日 (水)

高卒2年目の西純矢投手が初登板初先発初勝利!!!

  RHE
ヤクルト000000010 132
阪  神00001011x 380

高卒2年目の西純矢投手が初登板で初先発の上に初勝利でした。久々に、8回の岩崎投手が失点したのが気がかりながら、それ以外は文句なしの投手リレーでした。
先発の西純矢投手は、立ち上がりからフォアボールが多くて不安定ながらも、5回を投げ切って無失点はもとより、被安打ゼロにヤクルト打線を抑え込みました。6-7回は馬場投手がナイスピッチングで続き、8回岩崎投手、9回スアレス投手につなぎました。打線は梅雨に入って湿りがちですが、5回ウラには西純也投手へ勝ち投手の権利をプレゼントする近本選手のソロ、終盤8回に勝負強いサンズ選手のソロが飛び出しています。3点あれば勝利の確率が高くなるのですから立派なものです。
それにしても、巨人があれだけコロナ陽性を出した広島にボロ負けするとは...

明日も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

AERAdot. のサイトに見るオリンピック開催反対論やいかに?

photo

私は基本的に東京オリンピック・パラリンピックは中止すべきと考えていますが、最近のAERAdot. のサイトには、中止や延期など否定的な記事があふれています。リストアップだけしておきたいと思います。なお、オリンピックとは直接の関係ないのですが、上の画像もAERAdot. のサイトから引用しています。

なんとも痛ましい限りで、東京オリンピック中止署名も着々と集まっているようで、今日の午後に私が見た範囲では数十万人に達しています。根拠なき私の直感ながら、愛知県知事のリコール署名よりは信頼が置けそうな気もします。

| | コメント (0)

2021年5月18日 (火)

マイナス成長を記録した1-3月期GDP統計速報1次QEから何が読み取れるか?

本日、内閣府から今年2021年1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.3%、年率では▲5.1%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言の影響で大きなマイナスとなっています。ワクチン接種もまったく進んでおらず、先行きは不透明感を増すばかりです。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期GDP、年率5.1%減 緊急事態宣言で消費低迷
内閣府が18日発表した2021年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.3%減、年率換算では5.1%減だった。マイナスは3四半期ぶり。緊急事態宣言の再発令による外出自粛で個人消費が大きく減少した。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比1.2%減、年率換算で4.6%減だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比1.6%減、年率では6.3%減だった。名目でも3四半期ぶりマイナスとなった。
実質GDPの内訳は、内需が1.1%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のマイナスだった。
項目別に見ると、個人消費は1.4%減と、3四半期ぶりにマイナスだった。経済活動の制限で外食や宿泊などサービス関連の消費が低迷した。
設備投資は1.4%減で、2四半期ぶりにマイナスとなった。民間在庫の寄与度は0.3%のプラスだった。
住宅投資は1.1%増と、2四半期連続でプラスだった。公共投資は1.1%のマイナスだった。
輸出は中国などアジア向けが回復し、2.3%増となった。輸入は企業の生産活動の伸びを背景に4.0%増だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.2%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%のマイナスだった。
同時に発表した20年度のGDPは実質で前年度比4.6%減、生活実感に近い名目で4.0%減だった。1955年の調査開始以来で最大の落ち込みとなった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/1-32020/4-62020/7-92020/10-122021/1-3
国内総生産GDP▲0.5▲8.1+5.3+2.8▲1.3
民間消費▲0.8▲8.3+5.1+2.2▲1.4
民間住宅▲3.7+0.6▲5.7+0.1+1.1
民間設備+1.3▲6.1▲2.1+4.3▲1.4
民間在庫 *(+0.2)(+0.1)(▲0.2)(▲0.5)(+0.3)
公的需要+0.1+0.5+2.4+1.6▲1.6
内需寄与度 *(▲0.2)(▲5.2)(+2.6)(+1.8)(▲1.1)
外需(純輸出)寄与度 *(▲0.3)(▲2.8)(+2.6)(+1.0)(▲0.2)
輸出▲4.7▲17.5+7.3+11.7+2.3
輸入▲3.0▲0.7▲8.2+4.8+4.0
国内総所得 (GDI)▲0.5▲7.1+5.3+2.8▲2.1
国民総所得 (GNI)▲0.3▲7.2+5.0+3.1▲2.0
名目GDP▲0.5▲7.8+5.5+2.4▲1.6
雇用者報酬 (実質)+0.2▲3.5+0.6+0.8+2.2
GDPデフレータ+1.0+1.4+1.2+0.2▲0.2
国内需要デフレータ+0.8▲0.1+0.2▲0.6▲0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち灰色の在庫以外がほぼすべてマイナス寄与を示しており、特に、赤の消費が大きくなっています。

photo

先週火曜日のこの私のブログでも1次QE予想を取り上げましたが、私は前期比▲1%、年率で▲4%くらいの数字を予想していました。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは年率で▲4.6%のマイナス成長でしたから、大きなサプライズはないとはいえ、やや下振れした印象を持つエコノミストも少なくない気がします。需要項目別に見ても、なぜか、住宅投資だけはプラスになったものの、消費も設備投資も輸出も、内需も外需も、ほぼすべての需要項目がマイナス寄与しています。在庫がプラス寄与しているのは、売れ残りが出たからであって、後ろ向きの在庫の積み上がりと考えるべきです。加えて、現在の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大やワクチン接種の状況から見て先行きも不透明です。すなわち、ニッセイ基礎研では4~6月期のプラス成長を予測する一方で、第一生命経済研はゼロ近傍、また、みずほリサーチ&テクノロジーズはマイナス成長の可能性高いと評価し、大和総研は6月末までの緊急事態宣言延長を見込んでいることから2四半期連続で4~6月期もマイナス成長と予想していたりします。私も基本的に4~6月期もマイナス成長であろうと見込んでいますが、ひとつだけ特異な指標があって当惑していることも事実です。というのも、雇用者報酬が1~3月期に跳ね上がっています。下のグラフの通りです。今年2021年1~3月期の雇用者報酬は年率化された実質額で283.1兆円となっていて、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期の282.3兆円、また、昨年2020年1~3月期の283.0兆円を上回っています。理由は現時点で不明ながら、雇用者報酬が跳ね上がっているのは、ひょっとしたら、消費に何らかの影響を及ぼす可能性があります。もっとも、おそらく、ワクチン接種は現政権下ではまったく進まないでしょうから、所得の上昇をマインドが打ち消す可能性は十分あります。

photo

| | コメント (0)

2021年5月17日 (月)

急に上昇率が高まった企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から4月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+3.6%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数3.6%上昇 6年7カ月ぶり高水準
日銀が17日発表した4月の企業物価指数(2015年平均=100)は103.0と、前年同月比で3.6%上昇した。14年9月以来、6年7カ月ぶりの伸び率だった。石油製品や化学製品などの値上がりを反映した。前月比では0.7%上昇し、5カ月連続のプラスとなった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。足元の資源高を受け、原油などを原料とする製品や、非鉄金属が中心となって価格を押し上げた。前年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で価格が大きく落ち込んだ反動もあった。
円ベースでの輸出物価は前年同月比8.2%上昇、前月比では1.5%上昇した。円ベースでの輸入物価は前年同月比で15.1%上昇、前月比で2.4%上昇した。輸入では海上運賃の上昇が反映された品目もあった。
公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは339品目、下落したのは289品目だった。

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

photo

このところ、順調に足元で物価が下げ止まりつつあると私はと評価していますが、まさに、その通りの展開と受け止めています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+3%少々の上昇で、レンジの上限でも+3.3%でしたから、かなり上振れたといえます。資源価格の上昇に起因するとはいえ、私は少し前から順調に物価上昇率が拡大していると受け止めています。国内物価について品目別で前年同月比を詳しく見ると、石油・石炭製品が+39.3%、非鉄金属が+35.2%、化学製品+7.7%、鉄鋼と木材・木製品がそれぞれ+4.7%などとなっています。季節調整していない原系列の統計ながら、前月比も+0.7%の上昇を示しており、品目別でも、石油・石炭製品、化学製品、非鉄金属の寄与が大きく、国際商品市況における石油ほかの1次産品価格の上昇とともに、中国をはじめとする新興国における景気回復が背景にあるものと考えるべきです。例えば、輸入物価のうち国内通貨建ての原油価格は昨年2020年3月から12か月連続で前年同月比マイナスを記録していたのですが、今年2021年3月には+7.6%、直近で統計が利用なこうな4月には何と+72.9%と跳ね上がっています。ですから、価格水準としてはそれほど高くはないものの、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)ショックで低迷していた資源価格が元に戻りつつあると考えるべきです。内需などの需要サイドからの物価押上げではなく、資源価格によるコストプッシュの色彩が強いものの、まあ、それはそれで、デフレから本格的に脱却できればいいような気がしないでもありません。

| | コメント (0)

2021年5月16日 (日)

終盤リリーフ陣がピシャリと抑えてジャイアンツを振り切る!!!

  RHE
阪  神002400000 691
読  売020003000 581

勝ちパターンのリリーフ陣がピシャリと抑えて巨人に勝利でした。8回の岩崎投手のマウンドさばきも素晴らしかったですが、特に、最後のスアレス投手はまったく打たれそうな気がしませんでした。ジャイアンツのベンチも打てそうな気がしなかったんではないでしょうか?
先発のアルカンタラ投手は、まずまずピッチングで、6回5失点ながらリードを保ってリリーフ陣につなぎました。球威もさることながら、コントロールもよかった気がします。NHKのBS1でテレビ観戦だったんですが、タイガースOBの藤川球児さんの解説が抜群でした。そのうちに、阪神の監督でも...

次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

近畿・東海も梅雨入り!!!

photo

昨日は、九州北部から中国・四国地方まで梅雨入りしましたが、今日は、近畿・東海地方も梅雨入りです。近畿では平年の6月10日より21日も早く、統計史上最も早い梅雨入りだそうです。なお、上の画像はウェザーニュースのサイトから引用しています。

私はこの土日で合わせて50キロほど自転車で走ったんですが、そろそろ、梅雨入りで雨の日が増えれば自転車もお休みになるかもしれません。

| | コメント (0)

2021年5月15日 (土)

佐藤輝選手の打棒だけではジャイアンツには勝てません!!!

  RHE
阪  神102000000 390
読  売11003000x 5100

佐藤輝選手のバットだけでは巨人には勝てませんでした。
先発の伊藤投手は、さすがに、大きな期待をかけるのにはまだムリがあります。攻撃陣で得点を重ねて援護する必要がありますが、佐藤輝選手の前後を打つ3人の外国人選手がヒット1本、5三振では得点につながりません。巨人のスモーク選手が逆転スリーランをかっ飛ばしたのとは対象的でした。アレさえなければ、といったところかもしれません。

明日は何とか、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

今週の読書は社会保障論などの経済書をはじめ計5冊!!!

今週の読書は、社会保障や女性視点のマーケティングに関する経済経営書、あるいは、最近でも総務省の接待疑惑などで炸裂した「文春砲」を取り上げたジャーナリズムのドキュメンタリーをはじめ、新書も含んで計5冊です。以下に取り上げたほかに、数年前に出版された福永文夫『日本占領史』(中央新書)も読んだのですが、新刊書ではないのでFacebookでシェアしておきました。今年に入ってからの新刊書読書は1~3月に56冊、4月に18冊、そして、5月に今日取り上げた9冊と、計83冊となっています。

photo

まず、香取照幸『民主主義のための社会保障』(東洋経済) です。著者は、総理大臣官邸勤務も長く、厚生労働省の官僚から、退官後の現在は上智大学の研究者に転じています。現在の菅内閣のキャッチフレーズのひとつに「自助、共助、公助」がこの順番、というのがありますが、本書は真っ向からこれを否定しています。すなわち、憲法で定める文化的な生活、とまでいわないにしても、その昔の孟子の「恒産ありて恒心あり」にもあるように、キチンとした生活が保証されることが民主主義の基礎である、という思想が流れています。その昔は、「土建国家」という言葉があり、国民から集めた税金をインフラ整備などの土木事業、公共投資によって土建業などを通じて国民に還元しようというルートが主をなしており、不平等な還元に見えるために、その財源となる税に対する拒否感の源泉ともなっていました。他方で、西欧先進国などにおいては「福祉国家」が標榜され、税金を社会保障によって国民に還元するルートが取られています。本書では、そこまでの普遍的な国民還元策が議論されているわけではありませんが、私の目から見て、そこまでの踏み込んだ議論がこの先必要になる可能性が十分あると考えるべきです。ほかにも、社会保障に関する議論はついつい制度論に傾きがちなのですが、もっと本質的な議論が必要であると感じました。例えば、経済学では有名なモディリアーニ=ミラーの法則があり、資金調達は債券や株式による直接金融と銀行借入れとは無差別、というのがありますが、もちろん、税制などの歪みがないという前提ながら、社会保障、特に、年金制度については積立方式と賦課方式の差はなく、すなわち、無差別であり、いうれにせよ、現役世代から引退世代への所得の移転であることに変わりはないとか、健康寿命をいくら伸ばしてみたところで、終末ケアに必要な費用は変わらない、とか、「基本のキ」のような部分がキチンと押さえられています。その一方で、社会保障と財政収支のサステイナビリティの議論では、現代貨幣理論(MMT)の考えにも、チラリと触れていたりしますし、いくつかの目配りも配慮されています。ただ、本書の主要な部分である第4部の民主主義との関連では、確かに経済の重要性はいうまでもありませんし、分厚い中間層も必要なんでしょうが、日本経済の現状と技術の問題については、私は少し疑問を覚えました。すなわち、その昔にあった誤解のように、大雑把な雰囲気で「高付加価値産業」とみなされている産業を重視するのは私には疑問です。周辺アジア各国をはじめとする世界経済の中の我が国産業の位置づけを明確に考えた上で、比較優位にある産業を主とした世界経済の中での分業体制を志向すべきです。なんか、漠然とした高付加価値産業志向でIT産業やハイテクな最先端技術を用いた産業、あるいは、闇雲に金融業を持ち上げるのではなく、ホントに地に足のついた産業・経済を議論する段階に来ている気がします。その一方で、私は、世界的な外交や政治の局面で、欧州がアフリカを、北米が中南米を、それぞれの利益を代弁する役割を果たしている中で、アジア、特に東南アジアの地域的な関心を世界で代弁するのは日本であると私は考えています。その意味で、あくまでその意味では、日本は大国であることをやめるべきではありません。

photo

次に、日野佳恵子『女性たちが見ている10年後の消費社会』(同文舘出版) です。著者は、主として女性の意見を企業に具申するマーケティング・サービス会社の起業者です。ということで、本書のテーマは「女性視点マーケティング」です。特に、我が国の場合、西欧近代でジェンダーとしての女性の財産保有がほぼ否定され、経済活動がジェンダーとしても男性の役割となった一方で、日本では前近代におけるジェンダーの役割分担、すなわち、女性もそれなりに財産を持って、家の中で、特に、家業で占めるべき位置がある、そのため、女性が経済に果たす役割は近代西欧よりもずっと重要である、という点を裏打ちしてくれた気がします。本書では、女性は世帯消費の8割を決め、9割に口を出す、と指摘されています。我が家ではもっと比率が高いかもしれません。ただ、男女で大きな違いないにもかかわらず本書でやや過大に評価されていると私が感じたのは流行です。私は流行については男女で大きな差はないと考えています。例えば、統計局で消費統計を担当していたころ、もちろん、消費は所得とマインドで決まるとはいえ、基礎的な経済や所得とは必ずしも関係のない流行に左右される部分がかなり大きいと考えていました。基礎的な消費は無視できないものの、また、長期に基礎的なトレンドを決めるのは所得や経済的な諸条件であるとはいえ、短期に変動するのは流行に左右される部分ではないか、ということです。その意味で、ここ数年で女性消費の中で私の大きな気づきを感じたのは、国連のSGDsに関する女性の関心の高さです。経済週刊誌だけではなく、女性向けの月刊誌などの雑誌媒体でSDGsが特集として取り上げられています。その昔のMDGsは政府向けの色彩が強かった一方で、SDGsについては企業活動への影響力も強く、一般消費者の行動も大いに関係します。本書でも、男女でSDGsに関して認識としては男性の方が高いものの、実際の消費活動ではより女性の消費行動に影響を及ぼしている、と指摘しています。その意味で、本書ではファッション重視から機能性重視へのトレンドを取り上げていますが、同様の解釈がなされるべきです。本筋ではないかもしれませんが、やや個人的な経験ながら、私の知る女性でやたらと「かわいい」を連発する人がいます。そのうちに、わたしについても「かわいい」といい出したので、「かっこいい」にしてくれと指摘すると、ジェンダー・バイアスであると反論されました。男=かっこいい、女=かわいい、と感じたようです。私はシニアがかっこいいで、ジュニアがかわいいという年齢バイアスであると再反論しました。本書では、女性が発する「かわいい」は赤ちゃんを連想させる要素に対して発せられると指摘しています。私の年齢バイアスに近い見方だと受け止めました。個人的な見方は別にして、最後に、本ょ氏ではその目的からしてどうしようもないのですが、男女の差を強調しすぎているキライもあります。男性の目的脳と女性の共感脳というのは、私はやや違和感を覚えました。ほかにもありますが、全体として、コンサルらしく一般受けるするいろんな論点が詰め込まれている興味深いマーケティング本でした。

photo

次に、柳澤健『2016年の週刊文春』(光文社) です。著者は、ノンフィクション・ライター、ジャーナリストであり、『週刊文春』の編集者の経験もあります。『週刊文春』の編集長としては、もっとも名が売れているのは、先ごろ亡くなった半藤一利だと思うのですが、本書では、花田紀凱と新谷学の2人の『週刊文春』編集長を軸に、菊池寛による文藝春秋社の成り立ちから説き起こして、最後に、タイトルである2016年とその後まで、延々と文藝春秋社と『週刊文春』の現場での取材や編集作業、あるいは、取材と編集に携わった人間模様を収録しています。繰り返しになりますが、菊池寛によす文藝春秋社の創設という歴史的な事実から始まり、途中から、おそらく、実体験が加わるあたりから著者の1人称による語りになります。そして、そうなった後でも、3人称と1人称による文体がゴチャゴチャだったりしますので、やや読みにくくもあるのですが、まあ、盛り込まれた内容が500ページを超えるボリュームに比例して、とても盛りだくさんなので、仕方ないのかもしれません。『週間文春』は文字通りに週刊誌なのですが、会社としての文藝春秋社の看板雑誌は、もちろん、より歴史の長い月刊誌の『文藝春秋』であり、芥川賞が全文掲載されたりもします。そして、月間『文藝春秋』がそれなりのクオリティ・マガジンとして一定のポジションを占めている一方で、『週刊文春』は、私なんぞの俗物からは、ほかとよく似た週刊誌の扱いではなかろうかという気がします。というのも、日本では新聞や地上波テレビに対して、週刊誌一般のメディアとしての信頼度が低いという意味です。例えば、欧米では私が毎週見ている The Economist をはじめとして、Time とか、いわゆるクオリティ・ペーパがいくらでもありますが、日本では、一般週刊誌がこのクラスのクオリティ・ペーパーとみなされることは少ないように思います。経済週刊誌であれば、私も『エコノミスト』、『東洋経済』、『ダイヤモンド』などのクオリティは高いと評価しますが、一般週刊誌、本書で名前を上げられているような『文春』、『現代』、『ポスト』などは新聞よりも評価が低いような気がします。でも、本書で指摘しているように、2016年にはベッキーや甘利大臣のスキャンダルを明らかにして社会的な影響も小さくありませんでしたし、今年に入ってからでも、総務省の接待問題とか、それまで言を左右にしていた政治家や官僚が『週刊文春』のスクープがあった後で、大きく発言を修正したりという例は私ですらいっぱいみました。それだけの影響力を『週刊文春』は持っているというわけです。その内幕をいくぶんなりとも明らかにするのが本書なのだろうと思います。ただし、私の勝手なゲスの勘ぐりかもしれませんが、ホントにディープな部分は本書ですら明らかにされていない可能性があるんではないか、と思わないでもありません。

photo

次に、佐藤千登勢『フランクリン・ローズヴェルト』(中公新書) です。著者は、筑波大学の歴史の研究者です。歴史の研究者ですから、経済学でも政治学でもありません。その点は念頭に置いて読み進むこともアリだと思います。テーマというか、タイトルとなっているのは、20世紀前半にもっとも印象的な存在であった米国大統領であり、1930年代の大恐慌から1945年まで続いた戦争という危機の時代の米国の舵取りを成功させたリーダーです。米国大統領を務めたローズヴェルト家出身者はもう1人いて、セオドア・ローズヴェルトです。もちろん、セオドアとフランクリンは同族であり、ともにオランダからの裕福な移民一家に生まれています。ただ、ローズヴェルトには住んでいた地名に従って2系統あって、セオドアはオイスターベイ系、フランクリンはハイド・パーク系だそうで、フランクリンの妻となったエレノアはオイスタベイ系の出身だそうです。まあ、このあたりは適当に飛ばして読んでも差し支えなさそうな気がします。フランクリン・ローズヴェルト大統領の場合、世界的な大不況と第2次世界対戦の2つの危機に直面した大統領であり、本書の最後の方でも指摘されている通り、独立戦争を勝ち抜いた初代ワシントン大統領、奴隷解放とその後の南北戦争を指導したリンカーン大統領とともに、米国市場でビッグスリーに上げられ、歴史に残る大統領であることはいうまでもありません。ただ、この3人の中では大不況への対応として、不徹底なニュー・ディールにより、結局、不況からの本格的な脱出のためには戦争を待つしかなかった、という点は差し引いて、ローズヴェルト大統領はワシントン大統領やリンカーン大統領の後塵を拝する、という議論はその通りかもしれません。

photo

最後に、宝島社皇室取材班『天皇家の家計簿』(宝島新書) です。天皇家や宮家の経済的な基盤となる皇室費と宮内庁費を各種資料から明らかにしようと試みています。もちろん、宮内庁や天皇家・宮家に直接取材するわけには行きませんから、間接的に公表資料から追っています。主として、野党の国会銀の国会質問に対する宮内庁の回答や、同じように、質問主意書に対する政府の回答をていねいに集めています。最近では、こういったものはデジタルのドキュメントで入手可能なんでしょうから、検索なんかも役立つのであろうと勝手に想像しています。繰り返しになりますが、皇室費と宮内庁費のうちの前者の皇室費には3カテゴリーがあり、内廷費、皇室費、宮廷費となります。内廷費は天皇や上皇などの天皇一家の家計費であり、皇室費は天皇一家を覗く宮家の皇族方のか経費であり、ともに公金として宮内庁が管理するものではありません。しかし、宮廷費は公務活動に必要な経費であり、公金として宮内庁が管理するそうです。まあ、内廷費と皇室費は、いわば、カギカッコ付きの「国家公務員」としての天皇家や宮家の生活費といえます。額も厳密に決まっています。ですから、公務員のお給料といっしょで渡し切りとなるわけです。どう使うかは「お気の召すまま」ということです。ただ、日本国の象徴たる天皇、その天皇の親族として、これもカギカッコ付きの「品位」を維持するに足る額となっています。眞子さまがそう大した収入や財産のなさそうな小室さんと結婚する障害がこの「品位」ではないかという気もします。私は、基本的に、天皇制には賛成しかねる部分が大きく、できれば、こういった天皇一族や宮家の「品位」を維持するのに公金を支出するのはヤメにしたいとすら考えるのですが、自分でも少数派であることは自覚しています。しかし、反対であるだけに、その実態を知っておきたいのは事実です。

| | コメント (0)

2021年5月14日 (金)

先発青柳投手の好投で巨人に投げ勝って4連勝!!!

  RHE
阪  神000200000 270
読  売001000000 160

先制点は許したものの、先発青柳投手のナイスピッチングで巨人を振り切って4連勝でした。
青柳投手は3回に先制こそ許しますが後続を抑え、その後の4回にすぐに「得点圏の鬼」梅野捕手のタイムリーで逆転し、終盤は盤石のリリーフ陣で逃げ切りました。出来ることならば、もう少し援護点が欲しいところですが、ロハスJr.選手はいつごろ覚醒するんでしょうか。それともロサリオ二世になるんでしょうか?

明日も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

IEAリポート Renewable Energy Market Update 2021 における再生可能エネルギーの現状やいかに?

今週火曜日の5月11日に国際エネルギー機関(IEA)から Renewable Energy Market Update 2021 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。

photo

上のグラフは、リポート冒頭のハイライトから Average annual net renewable capacity additions, 2011-2022 を引用しています。ハイライトの中の唯一の図表です。ハイライトは10項目なら成っていますが、その最初の項目は "In 2020, annual renewable capacity additions increased 45% to almost 280 GW - the highest year-on year increase since 1999." であり、まさにこのグラフを説明しています。

photo

他方、我が国の再エネについて調べると、資源エネルギー庁のパンフレット「日本のエネルギー 2020」のp.13から 主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較 を引用して、上の通りです。原子力の比率が極めて高いフランスを除いて、欧州主要国の再エネ比率は水力を別にしても20%を超えており、我が国の10%そこそことはかなり差があります。再エネと水力を合わせた比率としては、欧州主要国はほぼ30%を超えている一方で、我が国では20%にも達しません。要するに、再エネ導入に関しても先進国の中で我が国はとても遅れている、といわざるを得ません。

我が家で購読している本日付けの朝日新聞では、「再生エネ比率を倍増」と題する記事が1面にありました。「エネルギー基本計画」において、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの割合を30%台後半とする可能性が報じられています。しっかりした裏付けのある政策をお願いしたいものです。

| | コメント (0)

2021年5月13日 (木)

終盤8回のサンズ選手の決勝ソロで中日に勝利!!!

  RHE
中  日010000000 160
阪  神00000011x 280

ラッキーセブンに近本選手のタイムリーで代走熊谷選手の足を生かして同点に追いついた後、サンズ選手の決勝ソロで中日に逆転勝ちでした。
2回に中日木下選手にソロホームランを打たれて中日に先制された後も、秋山投手の粘りのピッチングが続き、終盤に逆転での勝利でした。久しぶりに観客が入って、もっと盛り上がる場面が欲しかった気がしますが、新外国人のロハスJr.に当たりが出ず、やや苦しい試合運びとなりました。でも、リリーフ勝負なら阪神に分がありそうな気がします

明日からの巨人戦も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

緊急事態宣言で大きく悪化し基調判断が引き下げられれた景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲9.9ポイント低下の39.1を示し、先行き判断DIも▲8.1ポイント低下して41.7を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+2兆6501億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり悪化
内閣府が13日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は39.1で、前の月に比べて9.9ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は41.7で、8.1ポイント低下した。低下は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
内閣府は基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」に変更した。
3月の経常収支、2兆6501億円の黒字 81カ月連続黒字
財務省が13日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6501億円の黒字だった。黒字は81カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2兆7646億円の黒字だった。
貿易収支は9831億円の黒字、第1次所得収支は2兆452億円の黒字だった。
同時に発表した2020年度の経常収支は18兆2038億円の黒字だった。前年度に比べて、黒字幅が縮小した。

2つの統計を取り上げましたので、やや長くなりましたが、いつもの通り、よく取りまとめられた記事だという気がします。次いで、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

photo

4月統計の現状判断DIについて、前月差の動向を少し詳しく見ると、合計で▲9.9ポイントの落ち込みだったのですが、家計動向関連が特に▲11.9ポイントと大きく低下した一方で、企業動向関連は▲5.0ポイントにとどまっています。家計動向の中でも、飲食関連が▲20.5ポイントと激しく落ち、これに続いて、小売関連が▲13.1ポイントを記録しています。企業動向関連の▲5.0ポイント低下は製造業と非製造業に分かれますが、非製造業が▲6.2ポイントに対して、製造業は▲3.8ポイントとなっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック対応の緊急事態宣言による落ち込みであることは明らかであり、いくぶんなりとも輸出で需要ショックを和らげることが出来る製造業はまだマシなんでしょうが、営業活動を大きく制限される上に保障が限定された分野では大きなダメージを受けているということになります。現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに、ここまで大きく低下したんですから、統計作成官庁である内閣府では、先月までの「持ち直している」から「持ち直しに弱さがみられる」と半ノッチだけ基調判断を引き下げています。緊急事態宣言もいつ解除できるのか、まったく先が見えませんし、この先もマインドはかなり悪化する可能性があります。

photo

次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、先月2月統計で小幅に赤字に転じていますが、これは中華圏の春節による影響ではないかと考えられます。COVID-19のために、インバウンド消費はもうどうしようもありませんが、それ以外の財貨とサービスの輸出入は米国などでワクチン接種が進んで、かなりカッコつきながら「正常化」の方向にあるように私は感じています。先進国でのワクチン普及と米国の大型の財政政策に支えられた経常黒字であるといえます。他方で、こういった米国をはじめとする先進各国の経済政策と比べて、我が国の政策の不毛を感じます。ワクチン接種を含めて、政府はやるべきことをやってほしいと思うのは、私だけではないと考えます。

| | コメント (0)

2021年5月12日 (水)

基調判断が「改善」に上方修正された3月統計の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の景気動向指数公表されています。CI先行指数が前月から+4.3ポイント上昇して103.2を示し、CI一致指数も前月から3.2ポイント上昇して93.1を記録しています。統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

3月の景気一致指数、3.2ポイント上昇 市場予想3.0ポイント上昇
内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比3.2ポイント上昇の93.1となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は3.0ポイント上昇だった。数カ月後の景気を示す先行指数は4.3ポイント上昇の103.2だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「上方への局面変化」から「改善」に変更した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。

短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

photo

ということで、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「上方への局面変化」から「改善」に上方改定しています。基準として上げられているのは、3か月後方移動平均が3か月連続して上昇していて、当月の前月差の符号がプラスですから、これを満たしたことになります。もちろん、シンクタンクの予想を昨日付けのこのブログで取り上げましたが、来週公表予定の1~3月期GDP速報1次QEがマイナス成長と見込まれているだけに、やや機械的な判断という批判が出るかもしれません。まあ、判断基準がとても透明性高いので仕方ありません。
3月統計について特にCI一致指数を詳しく見ると、商業販売額(小売業)(前年同月比)、輸出数量指数、労働投入量指数(調査産業計)などの寄与が大きくなっています。また、4月については、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対応した緊急事態宣言が4月25日からという遅い時期でしたし、景気動向指数と連動性の高い鉱工業生産指数(IIP)の製造工業生産予測指数は4月もプラスとなっていることから、引き続き、「改善」となる可能性が高いと私は考えています。しかし、足元の5月については緊急事態宣言の影響が全面的に及ぶこともあり、またそれだけに、製造工業生産予測指数がマイナスに転じると予想されていることもあって、CI先行指数がプラスとはいえ、やや停滞感が出る可能性は否定できません。

| | コメント (0)

2021年5月11日 (火)

先発西投手がツーラン2発を浴びて中日と引き分け!!!

  RHE
中  日020200000 460
阪  神100200100 480

先発西投手がピリッとせず、中日と引き分けでした。
1回にマルテ選手のタイムリーで先制しますが、すぐに逆転され、7回になんとか追いついたものの、そこまででした。明日は観客が入って、もっと盛り上がるんでしょうか? でも、新外国人のロハスJr.に当たりが出るまでガマンなんでしょうか?

明日は、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

来週公表の1-3月期1次QEは緊急事態宣言によりマイナス成長か?

必要な統計がほぼ出そろって、ちょうど1週間先の来週火曜日の5月18日に1~3月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。東京都と関西圏の京阪神で緊急事態宣言が続いていますが、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。緊急事態宣言が出たり解除されたり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、ワクチン接種の行方とともに、極めて不透明となっており、そういった影響も気にかかるところです。従って、というか何というか、ほぼすべてのシンクタンクが明示的に足元の4~6月期以降の動向をリポートに盛り込んでいたりします。特に、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズは詳しく、とても長い引用になってしまいました。逆に、先行きについて、ほとんど取り上げていないのは、テーブルの下の方の三菱系2機関だけでした。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲1.2%
(▲4.8%)
4~6月期を展望すると、3度目の緊急事態宣言発令を受けて、飲食店の営業時間短縮や大型商業施設も含む休業、イベントの収容人数の制限などが要請され、外出自粛も強まっていることから、GWにかけてサービス消費が一段と悪化するほか、財消費への悪影響も懸念。緊急事態宣言が予定通り解除されれば、5月下旬以降は再び経済活動が持ち直しに転じるため、2四半期ぶりのプラス成長となる見込み。もっとも、ワクチン接種の普及に時間がかかるなか、感染への不安と、それに伴い外出を控える動きは根強く、1~3月期の落ち込みを取り戻すまでには至らない見通し。
大和総研▲1.3%
(▲5.1%)
4-6月期の日本経済は、3回目の緊急事態宣言の発出を受けて2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まっている。その後は感染状況やワクチン接種の進展などに大きく左右されるが、一定の感染症対策が実施される中で緩やかな回復基調が続くとみている。
個人消費は、3回目の宣言発出でサービス消費を中心に落ち込み、4-6月期は2四半期連続の減少が見込まれる。4-6月期中に宣言が全面解除されたとしても、4回目、5回目が発出される可能性は否定できない。変異株が全国的に流行して感染力が高まれば、感染拡大防止と両立できる経済活動の水準が以前よりも低くなり、経済活動が再開されると感染爆発が発生しやすくなるからだ。引き続き感染状況が消費の行方を左右する状況が続くだろう。
住宅投資は4-6月期以降増加基調に転じると見込まれる。ただし金融庁によるアパートローンの監視強化や相続税対策の需要の一巡、消費増税などにより、住宅投資の基調はコロナショック前から弱かったことを踏まえると、回復ペースは緩やかなものに留まるとみられる。
設備投資は緩やかな増加傾向が続くとみられる。米中向けを中心とする輸出の増加を背景に、製造業の設備投資意欲は高まるとみられる。他方、国内では宣言の延長や対象区域の拡大が懸念される中、宿泊業や飲食サービス業等の設備投資は低迷するとみられるが、全体への影響は軽微だろう。
公共投資は振れを伴いながらも緩やかな増加が続くとみている。前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の対象期間は 2020 年度で終了したものの、建設業の人手不足などを背景に執行が遅れており、未執行分が2021年度に繰り越されると考えられる。また、2020年末に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」に盛り込まれた国土強靱化の推進も公共投資の追い風となろう。
輸出は増加傾向が続くと見込む。大規模な追加経済対策が実施されている米国向けや、高水準のインフラ投資が見込まれる中国向けの輸出が全体を牽引するだろう。ただし、世界的な半導体不足を背景とする国内の自動車減産の影響が重石となる可能性には留意が必要だ。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲1.8%
(▲6.9%)
さらに、4~6月期は2期連続のマイナス成長となる可能性が高まっている。
足元の新型コロナウイルスの感染動向をみると、近畿、関東を中心に感染が急拡大しているほか、中部、九州・沖縄も増加傾向が続いている。2度目の緊急事態宣言が3月21日に首都圏で解除されてからわずか1カ月で、日本は感染拡大の第4波に入ってしまった。感染力が強い変異株の感染拡大が背景であり、厚生労働省によれば、全国の変異株スクリーニング検査数に占める変異株陽性件数の比率は4月中旬時点で56%に高まっている。
こうした中、政府は4月25日に東京、京都、大阪、兵庫の4都府県を対象として3度目の緊急事態宣言を発令した(発令期間は4月25日から5月11日の17日間)。今回の緊急事態宣言では、飲食店への休業要請(酒類・カラオケを提供する飲食店が対象)に初めて踏み切ったほか、酒類を提供しない飲食店に対しても夜20時までの営業時間短縮要請が実施されている。前回2021年1月の第2次緊急事態宣言で見送られた商業・娯楽施設に対する休業要請も盛り込まれた。休業要請の範囲という点では過去の緊急事態宣言よりも厳しい内容となっており、発令地域における人出は一時的に昨春の第1次緊急事態宣言並みに減少する可能性があるだろう。
さらに、変異株の感染力の強さを踏まえれば、前回の緊急事態宣言と同様に、今回も発令期間が延長される可能性が高いとみている。中部圏や沖縄県といった地域でも変異株の感染拡大が観察されているため、今後感染者数が急増して医療体制がひっ迫するリスクがあり、発令対象地域が広がる可能性もある。
こうした状況を踏まえれば、4~6月期の対人サービス消費は、1~3月期からさらに一段と落ち込む公算が大きいだろう。
さらに、ルネサス社・那珂工場の火災による車載向け半導体の供給途絶を受けた自動車の減産が下押し要因となる。影響の大きさは(完成車メーカーの半導体在庫保有量などに依存するため)不透明な面が強いが、ルネサス社の出荷が正常水準に回復するには数か月かかるとみられ、5~6月の自動車生産が下押しされる可能性が高い。自動車の輸出・国内販売が減少することで、4~6月期の日本経済が大幅に下押しされる懸念がある(仮に国内生産が50~60万台程度減少した場合、他産業への波及効果も考慮すれば、4~6月期のGDPを1%以上押し下げる計算となる)。
ニッセイ基礎研▲0.9%
(▲3.6%)
4/25 から 4都府県を対象に発令された緊急事態宣言は、経済活動の制限が前回よりも厳しく、一日当たりの下押し圧力は前回の宣言時よりも大きくなるだろう。現時点では、緊急事態宣言の期間が5/11までと短いことから、4-6月期はプラス成長になるとみているが、緊急事態宣言の期間が延長された場合、対象地域や規制の範囲が広がった場合には、2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まるだろう。
第一生命経済研▲1.2%
(▲4.9%)
4-6月期についても景気の停滞は続くだろう。4月25日に4都府県を対象として緊急事態宣言が発令された。今回の緊急事態宣言は、大型商業施設に休業要請が出されるなど、前回(1~3月)に比べて活動制限度合いが強く、経済への悪影響も大きい。期間が延長される可能性も相応にあり、個人消費は大きな打撃を受けるだろう。1-3月期に続き、4-6月期もマイナス成長となる可能性は十分あるとみている。
伊藤忠総研▲1.1%
(▲4.3%)
続く 2021年4~6月期も、輸出は米国の景気回復が加わり増勢を維持するものの、3回目の緊急事態宣言を迫ったコロナ感染第4波の影響により個人消費の減少が続き、設備投資も反動落ちが懸念されるため、実質GDP成長率は2四半期連続の前期比マイナスとなる可能性がある。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.2%
(▲4.7%)
5月18日に内閣府から公表される 2021年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比-1.2%(年率換算-4.7%)と 3四半期ぶりにマイナスに転じる見込みである。大都市圏を中心として、1月に2回目の緊急事態宣言の発出を背景に個人消費が落ち込んだことが影響した。もっとも、年明け直後にいったん落ち込んだ経済活動は、感染拡大のピークアウトと緊急事態宣言の解除を受けて年度末にかけて持ち直しており、1回目の緊急事態宣言時の前期比-8.3%と比べるとマイナス幅は小幅にとどまるなど、深刻な落ち込みに至っていない。このため、景気は一時的に低迷したものの、二番底に至ることは回避されたと考えられる。
三菱総研▲1.4%
(▲5.3%)
2021年1-3月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲1.4%(年率▲5.3%)と3四半期ぶりのマイナス成長を予測する。2回目の緊急事態宣言発令により、外出関連消費が落ち込んだ。

見渡してみて、ほぼ、前期比で▲1%強のマイナス成長というのが平均的な見方かもしれません。ただ、私は思ったよりも海外需要が好調で、▲1%程度のマイナスを個人的には考えています。ひょっとしたら、上のテーブルで唯一▲1%より強気な予想を出しているニッセイ基礎研の▲0.9%くらいかもしれないと考えていて、逆のもっとも大きなマイナス成長▲1.8%のみずほリサーチ&テクノロジーズよりも、ニッセイ基礎研の▲0.9%の方が可能性が大きいとすら感じています。繰り返しになりますが、その理由は海外経済要因であり、米国なんかはワクチン接種がかなり進んで年央には経済活動が正常化されるとする予測すらあります。要するに、何から何まで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)への対応が遅れていて、経済へのダメージも大きいのが日本である、ということなんでしょう。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

photo

| | コメント (0)

2021年5月10日 (月)

旅行所得への新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響の国際比較やいかに?

前々から使ってみようと考えていたのですが、HowMuch.net - Understanding Money というサイトがあります。まあ、Our World in Data のお金限定バージョンといったところかもしれません。授業の忙しい月曜日は、軽い話題で済ませておきたいと思います。4月30日付けの記事 "Visualizing the Negative Economic Impact of COVID-19 on Tourism" から画像を引用すると以下の通りです。


photo

色分けが旅行所得の減少割合、大きさが旅行所得の大きさです。減少割合でソートされているようで、もっともダメージ大きいのがスペインで、2020年は2019年の▲80%以上のダウンです。それに続くのが▲70%以上の減少で、タイ、日本、ロシア、英国の順で並んでいます。その次のグループが▲60%以上のダメージで中国以下の6か国がいて、フランス以下は▲50%未満となっています。

実は、このサイトの最新情報は "Visualizing the State of Government Debt Around the World (Update, 2021)" となっており、日本がど真ん中の▲257%とトップを快走しています。財政赤字にこだわって緊縮財政に陥るのは誤った経済政策だと私は考えていますので、この最新記事はパスします。

| | コメント (0)

2021年5月 9日 (日)

馬場投手のナイスリリーフと糸井選手のツーランで横浜に連勝!!!

  RHE
阪  神000030000 361
横  浜100000100 280

馬場投手のナイスリリーフと糸井選手のツーランで横浜に連勝でした。
初回に失点したとはいえ、5連勝中の先発ガンケル投手を3回でスパッと交代させたのは、何らかのアクシデントがあったのではないかと想像しますが、馬場投手が3イニングをしっかりと抑え、打線も5回のワンチャンスをモノにして逆転に成功しました。7回の岩貞投手が失点したとはいえ、得点差以上に安定した試合運びだった気がします。ただ、昨日今日と勝ったとはいえ、もう少し得点が欲しいところかもしれません。

甲子園に戻って中日戦も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

Swatch 電池切れ!!!

photo

photo

愛用の Swatch が電池切れです。私は日常的に腕時計を愛用しており、何と、すべてスイス製です。平日はOMEGAで、スピードマスターとコンステレーションの2本立てです。他方、昨日のように週末に自転車で走る時はSwatchです。Swatchは、まあ、いろいろと持っています。実は、スイス製で、しかも、この2ブランドだけだったりします。電池が切れたのは、在チリ大使館に勤務していた時に買った感じの文字盤のSwatchです。もう30年近く前に買ったので、何度もベルトは買い替えています。
数年前からSwatchではショップに持ち込めば電池交換はその場で無料でやってくれます。しかし、しかし、なんですが、東京にはいっぱいあったSwatchショップが京都には四条通りにある藤井大丸にしかありません。しかも、しかも、で今は緊急事態宣言下でSwatchショップは閉店しています。東京であれば、渋谷・新宿・池袋の各ターミナルにはSwatchショップがそれぞれ2~3店あるような気がするのですが、そこは地域間格差なんだろうと諦めました。もちろん、自分で電池を買って交換できるのでしょうが、最近はやったこともなく、そのうちに、授業のない平日に藤井大丸のSwatchショップに持ち込もうと考えています。

| | コメント (0)

2021年5月 8日 (土)

ドラ1ドラ2のルーキーの活躍で横浜に完勝!!!

  RHE
阪  神000130000 481
横  浜000100000 170

昨夜は大敗したものの、今日はデーゲームということもあり、ルーキー伊藤投手のナイスピッチングで横浜に完勝でした。
8回1失点で3連勝を上げた伊藤投手だけでなく、昨夜に続いて4番サードに座った佐藤選手もタイムリー2本の2打点と気を吐きました。それにしても、デーゲームに強い阪神です。何かあるんでしょうか?

明日も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

琵琶湖畔まで出向いてポケふたギャラドスを見に行く!!!

昨日は冷たい雨だったんですが、今日の土曜日は安定した晴天のいいお天気になり、自転車を飛ばしました。5月3日には京都市内だったんですが、今日は琵琶湖畔の大津まで行ってポケふたを回ってきました。順に以下の通りです。

  1. ギャラドス (滋賀県大津市由美浜)
  2. ギャラドスと赤ギャラドス (滋賀県大津市島の関)

photo

photo

photo

photo

photo

上から順に、まず、ポケふたとは関係もなく、五月人形とシルバープレートです。我が家は今では老夫婦2人の暮らしですが、男の子2人がいますので五月人形です。左手前のシルバープレートは、実は、カミさんと私は昨年11月が25回目の結婚記念日でしたので、銀婚式記念のシルバープレートです。2人の名前と結婚した日付なんぞが刻印されています。次は、京都府と滋賀県の県境の標識です。今日は、宇治川から瀬田川の川沿いに大津に入りましたので、ものすごい山道でした。そして、3枚めがお目当てのギャラドスです。もう1枚はギャラドスと私の黄色い自転車です。このギャラドスは、大雑把にいって、近江大橋の西詰にいます。ですから、4枚目の写真のバックは琵琶湖であり、右上に見えるのが琵琶湖に架かる近江大橋です。そこから、琵琶湖畔沿いに北西に走ると、プリンス・ホテルを越えて、琵琶湖ホテルの湖畔寄りにギャラドスと赤ギャラドスがいます。最後の写真です。でも、2枚だけとはいえ、ギャラドスばっかりというのはいかがなものでしょうか。コイキングは好き嫌いがあるとしても、琵琶湖にちなんだ水ポケモンは、ゼニガメとか、ポッチャマとか、いっぱいいるような気がします。ポケモン・ファンのつぶやきです。
繰り返しになりますが、今日は、宇治橋から平等院の前を通って、宇治川から瀬田川に沿って琵琶湖を目指しました。私のような地元民には「府道3号」と呼ばれています。自動車の通行も少なく、私のような情けないクロスバイクよりも、ロードバイクが圧倒的に多く、私も何台か抜かれますが、すれ違う際に陽気に挨拶を交わして琵琶湖を目指します。しかし、このルートには2点問題があり、ひとつはほとんど退避エリアもなく、ひたすら前進あるのみで疲れます。と同時に、途中何キロも民家もお店もありませんから、何かあったら途方に暮れそうです。パンクが一番怖くて、ロードバイクでツーリング慣れしている人ならチューブとエアポンプを持って出かけたりするんでしょうが、私は何の準備もしていません。加えて、自転車だけでなく、私自身が足をつったりする可能性も考えられなくもありません。もうひとつは、私は高所恐怖症なもので、府道3号は宇治川の左岸を走っていますから、左端を走る自転車では川沿いを行くことになり、ガードレールのないところなんかでは、やや恐怖を感じてしまいました。私は高いところが怖いので、東京にいたころに銀座から晴海通りを通ってお台場に出るときには、かちどき橋まではいいのですが、お台場に入るところにある晴海大橋などは怖かったので、豊洲を大回りしていたりしました。ですから、帰り道は国道1号を帰って来ました。大津駅あたりから山科までラクチンでした。でも、平日なら自動車の通行もいっぱいなのだという気がします。

実は、知り合いから近江大橋でギャラドスを発見できないとお知らせがあり、今日出かけてみました。ちゃんといて安心しました。京都と大津でポケふたを見て回りましたので、次はいよいよ関西で最後の斑鳩です。

| | コメント (0)

今週の読書は経済書なしで地政学や民俗学の専門書など計4冊!!!

今週の読書は、経済書や経営書はなしで、サイバー空間に着目した地政学、あるいは、餅という食べ物に着目した民俗学、のそれぞれの専門書は読んだものの、専門分野の経済やビジネスなどの読書はありません。それに、やや物足りなかった新書とミステリ小説の文庫を合わせて計4冊です。今年に入ってからの新刊書読書は1~3月に56冊、4月に18冊、そして、5月に今日取り上げた4冊と、計78冊となっています。なお、新刊書ならざる読書は、中山七里『連続殺人鬼カエル男』と『連続殺人鬼カエル男ふたたび』、ベルンハルト・シュリンク『朗読者』などを読んだのですが、ともに、Facebookのグループの人がシェアしたのに触発されての読書でしたので、重ねて私からFacebookでシェアすることはしませんでした。ついでながら、所属学会の編集になる『時代はさらに資本論』は、まだまったく手もつけられていません。

photo

最初に、土屋大洋『サイバーグレートゲーム』(千倉書房) です。著者は、慶應義塾大学の研究者です。19世紀から中央アジアをめぐるロシアと英国の覇権争いは「グレートゲーム」と呼ばれていますが、そのサイバー・バージョンこそが現代のグレートゲームだと考える著者の考えが表されています。本書の中身としては、サイバー攻撃、また、サイバーセキュリティに関して、選挙とフェイクニュース、サプライチェーン、インテリジェンス、外交、防衛などについての問題を取り上げています。少しびっくりしたんですが、こういった地政学の解説書では、インテリジェンスや外交・防衛が主眼となっているんだろうと私は考えていましたが、それらより前にサプライチェーンという経済の課題が論じられています。ファーウェイや中国企業を対象にした米国の厳しい取扱い、制裁を含めた中国企業の問題があると考えられます。加えて、サイバー攻撃の基礎となる技術面の攻防は軍事的な要素よりも、むしろ、経済的な要素の方が大きいのかもしれません。経済はさておき、本来のセキュリティについて考えると、サイバー攻撃の場合、従来の武力攻撃と違って、誰が攻撃しているのかが決して明白でないという大きな特徴があります。そして、おそらく、攻撃された側も攻撃主体を特定しても明らかにしないケースが少なくないものと思います。それを本書では、アトリビューションと呼んで、予期のしにくいアンティシペーションと対にして論じています。私は決して賛同しませんが、核兵器や通常戦力による攻撃に関しては、先制攻撃を受けたとしても報復力を温存できれば、特に核兵器の場合、抑止力となります。しかし、サイバー攻撃の場合は攻撃者の特定(アトリビューション)ができないならば、報復も難しくなってしまう場面も考えられますから、十分な抑止力を確保できない場合があります。特に、日本はインテリジェンスを始めとしてサイバー攻撃に対応能力がどこまであるか、極めて疑問が大きいことなどから、最後の章では日本に関する議論を展開しています。中でも、2012年のロンドン・オリンピックでは2億件のサイバ攻撃があったといわれており、今年、もしも東京オリンピックを開催するとすれば、ケタ違いの攻撃を受ける可能性を指摘しています。私も専門外ですので、不明な点がいっぱいあり、ついつい、ゴールデンウィークでのんびりしている期間の読書でしたので、マンガ『ケロロ軍曹』であれば、例の陰険で性格の悪そうなクルル曹長の担当する分野ではなかろうか、という目で読み進んでしまいました。

photo

次に、安室知『餅と日本人』(吉川弘文館) です。著者は、民俗学の研究者です。民俗学の先達として、柳田国男と坪井洋文を引きつつ、タイトル通りに、お餅について民俗学的な観点から考察を進めています。フィールドワークとしては、埼玉県三郷市と長野県の分析結果が示されています。すなわち、餅は通常生活のケではなく、ハレの場に供される食べ物であり、同様に、お祝いなどの際に「赤飯を炊く」という表現がある赤飯とは違って、特にお正月の年神との関係が強調されています。鏡餅なんかが典型となります。逆に、赤飯は社会性がやや低くて家族内、ないし、個人的な祝い事に供される、ということのようです。私の記憶でも、私が高校生くらいまで、ばあさんが年末に餅つきをして、親戚一同に配って回っていたのを思い出します。そして、どうして年末に餅つきをするかといえば、お正月にはお餅を雑煮にして食べるわけで、その雑煮についても地域的なバリエーションを研究しています。雑煮はかなり強く家風を反映し、アンケート結果によれば、居住地に従って作るのが過半を占めているほか、夫の出身地に従うと妻の出身地に従うが、それぞれ10%ほどです。我が家では今年の正月が京都に戻ってから最初の正月だったのですが、白味噌に丸餅、和人参と大根の紅白に男だけ頭芋入り、となります。最後の補論では、トンカツ入りの雑煮、なんてバリエーションも紹介されています。加えて、第2部では餅なし正月が論じられています。しかも、ネガな禁秘として餅なし、という観点ではなく、むしろ、ポジないもやめんを積極的に餅の代わりに供する、という視点を強調しています。餅から話題が離れますが、私の知る限り、京都なのか、関西なのかは判りませんが、「にらみ鯛」という縁起物があります。食事のたびに膳に上げるものの、正月3が日の間は箸を付けず、1月4日になって焼き直したり温めたりして食べる風習です。私の家は典型的なワーキングクラスでしたので、尾頭付きの鯛なんぞは、めったにお目にかかれませんでしたが、お金持ちの家ではこういった風習もあります。コチラはネガな禁秘といえます。最後に、たぶん、京都言葉だと思うのですが、お餅のことを「あも」と呼びます。豆腐の「おかべ」などとともに、女房言葉ともいわれます。今年に入って叶匠壽庵に梅の花を見に行ってお土産に「あも」を買って帰ったのを思い出します。

photo

次に、松波晴人『ビジネスマンのための「行動観察」入門』(講談社現代新書) です。著者は、大阪ガスの行動観察研究所で行動観察を実践しています。行動観察とは、基本的に許可を得て行動を観察し、著者によれば、付加価値の提案と生産性の向上を目的としているようです。私が誤解していたのは、基本的に許可を得て、あるいは、上司の命令で、観察される対象が観察されていることを認識しているとは、思ってもみませんでした。というのは、本書の冒頭にもあるように、インタビューなどであれば、いわゆる選挙のブラッドリー効果のように世間的に受けのいい回答をしながら、実は秘密投票の場ではインタビューと異なる行動を取る、というのがあり得て、そうであれば、行動観察も観察されていることを認識した上での観察なら同じではないか、同じとはいわないまでも、少なからぬ行動バイアスがかかるような気がするからです。加えて、最後の方に、工場労働者を観察して得られた科学的管理のテイラー・システムをビジネスマンのもっとソフトな行動に応用したものだと考えるのですが、そのあたりの違いは著者もご認識されていないようです。ですから、結局、本書全体が著者の会社のビジネスがいかに素晴らしいか、という宣伝に終止しているような気がします。要するに、行動観察のやり方を、特に、観察対象が観察されていることを認識していない中での行動観察のやり方を明らかにするよりも、その行動観察の結果がいかに素晴らしくて、売上の増加をもたらしたか、に力点が置かれています。やや失望感を禁じえませんでした。その上、もう少しテイラー・システムのように定量化出来る部分がありそうな気がするのですが、その点でもやや踏み込み不足な気がします。特に、営業マンの行動観察については、観察結果はそれなりに得られたものの、まったくの分析不足でベスト・プラクティスの普及には大きな課題が残っています。私が考えるに、ほかの科学的な分析も多かれ少なかれ同じような要素はありますが、こういった行動観察の場合2つの方向があります。すなわち、不明な点があるので解それを明するケース、もうひとつは、感覚的に理解ないし解明されているが、定量的に確認するケースです。おそらく、営業マンの実践パターンについては、後者のケースが少なくないのですが、それが定量的に把握されないのは致命的です。私がよくやる判りにくいゴルフの練習に当てはめると、ドライバーをスイングして250ヤードほどかっ飛ばしてフェアウェイセンターに置く、というのではアドバイスにはならないのです。その結果を得られるようにするために、何が必要化を、例えば、ヘッドアップしないとか、脇を締めるとか、キチンとした因果関係ないし相関関係を特定して、良好な結果をもたらす要因を分析する必要があります。その点で、本書はいささか物足りない読書でした。

photo

最後に、ジェフリー・ディーヴァー『オクトーバー・リスト』(文春文庫) です。著者は、米国のミステリ作家で、私が紹介するまでもありません。ラストのどんでん返しに特徴を持っています。ということで、本書の大きな特徴は時間をクロノロジカルにさかのぼって記述されていることです。最初は、数年前に読んだ七月隆文の京都本『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を思い起こしてしまったのですが、やや違いました。なお、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は2016年6月25日に読書感想文をポストしています。どう違うかというと、本書ではホントに出来事、というか、イベントをさかのぼって記述していて、時間がさかのぼる異世界を描き出す『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のようなSFではありません。まあ、ミステリ作家ですから、少なくとも謎解きにSF的な知識を応用するのはノックスの十戒に反しているような気もします。ただ、最後にどんでん返しのあるディーヴァーの作品ですから、おそらく、米国などでは許されている警察のおとり捜査であろうということは、私も十分に理解して、というか、予想していました。だたし、ディーヴァーの作品ですので、どんでん返しが2回あるわけで、もうひとつのどんでん返しについては予想もつかずに、最後の第1章まで進んでしまいました。ただ、出版社のうたい文句にあるように、白と黒とが章ごとに目まぐるしく入れ替わる、というのは流石に宣伝文句として割り引いて受け止めた方がいいと思います。苦労して書いていることは一目瞭然で、私の方でももっとじっくりと読み込む必要があるのかもしれませんが、さすげに、それほど複雑なストーリー展開ではありませんし、サラッと読む私のような読書法では矛盾点を発見することもできませんし、それほど叙述に騙されるということもありません。叙述でミスリードするのであれば、綾辻行人のほうが上手を行くような気がします。もちろん、日本人には馴染みのない名前の叙述、例えば、ギャビーとガブリエラが同一人物であることなどは、そういった名前に馴染みのない日本人には不得手かもしれませんが、海外生活を経験した日本人も少なくありませんし、それほど、騙される人が多いとも思えません。最終的な感想として、まあ、努力賞といったところかもしれません。がんばって、それなりの努力のあとはうかがわれるものの、もう少し、といったところかもしれません。少なくとも、手放しで新機軸を盛り込んだ傑作とはいいかねます。

| | コメント (0)

2021年5月 7日 (金)

やや停滞を示す4月の米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録しているものの、本日公表の4月統計では+266千人増にとどまってしまいました。失業率は前月の6.0%から4月には6.1%にわずかに上昇しています。まず、長くなりますが、USA Tooday のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の12パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added just 266K jobs in April, unemployment rose to 6.1% even as states eased restrictions, vaccinations rose
Employers added a disappointing 266,000 jobs in April even as the number of new COVID-19 cases stayed low, more states lifted constraints and vaccinations accelerated.
The gains fell well short of projections in a recovery that's expected to gather force through the summer, with a million or more jobs added each month.
The unemployment rate rose from 6% to 6.1% as a large increase in the labor force -- the number of Americans working or looking for jobs -- more than offset solid employment gains, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 995,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey. Instead, gains for February and March were revised down by a total 78,000, with March's blockbuster 916,000 additions downgraded to 770,000.
Leisure and hospitality, which includes restaurants and bars -- the industry hit hardest by payroll losses -- continued to recover, adding 331,000 jobs. But other sectors had weak showings. Professional and business services lost 79,000 jobs as staffing agencies cut 111,000 positions. Transportation and warehousing, which boomed as Americans largely stayed home during the pandemic, cut 74,000 jobs. Retail lost 15,000 jobs; manufacturing shed 18,000; and construction employment was unchanged after a massive gain the prior month.
The public sector added 48,000 jobs. More schools are reopening for in-person classes, bolstering employment in local public education education, which added 31,000 jobs. That's also allowing more parents to return to the workforce.
Job growth is expected to boom in coming months. Oxford Economics reckons a record 8 million or so jobs will be added this year.
New COVID cases held steady at a low level through April while increasing vaccinations led more states to lift capacity limits at restaurants and other businesses. About one-third of the U.S. population has been fully vaccinated, according to the Centers for Disease Control and Prevention. That has prompted eateries and other outlets to recall more furloughed workers or ramp up hiring.
But after falling steadily throughout the health crisis, the number of Americans on temporary layoff rose by 88,000 to 2.1 million last month, suggesting some businesses continued to furlough workers even as others rehired staffers. About 21% of unemployed workers said they were on temporary layoff, largely unchanged from the previous month. That means many workers could still be brought back to their old jobs.
The ranks of Americans permanently laid off rose by 97,000 to 3.5 million and represents a longer-lasting scar for the economy.
Hiring is still expected to pick up sharply this spring and summer. States are reopening just as households are benefiting from massive income gains that have juiced spending. Americans are flush with two rounds of government stimulus checks -- totaling $2,000 for each individual - disbursed since December and enhanced unemployment benefits as part of $2.8 trillion in COVID relief.
But many employers say the jobless benefits - including a $300 federal supplement - are contributing to their biggest problem: a shortage of workers despite unemployment that remains historically high. The crunch could have been a factor in holding down April's job gains.

とてつもなく長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

photo

引用した記事の4パラめにもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+995千人増と、+100万人近い雇用増が予想されていましたので、+266千人増はかなり物足りなお数字と受け止められています。他方で、失業率は今年2021年1月には6.3%まで低下した後、2月6.2%、3月6.0%、4月も6.1%と、着実に低下しているものの、やや下げ止まっている感もあります。マクロの雇用の改善が進んだところで、労働市場のミスマッチが生じている可能性があります。すなわち、リモートワークの普及などの構造的な変化が生じていることから、労働市場でもそういった人材の需要が高まる一方で、労働供給の方はそれほど短期には調整できない可能性もある、ということです。しかし、それでも、マクロの雇用の回復には、やはり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいる要因が大きいと考えるべきです。繰り返し、何度も緊急事態宣言を頻発している我が国とは大きく違います。GDP統計にも着実な米国経済の回復が現れており、1~3月期は前期比年率で+6.4%成長でした。我が国の1~3月期GDP統計速報1次QEはさ来週の5発18日に公表予定なもので、私も1次QE予想を取りまとめているところですが、ほとんどのシンクタンクがマイナス成長を予測しており、ワクチン接種と機動的な財政政策を展開して力強い景気回復を実現している米国バイデン政権との違いが大きくなっています。

| | コメント (0)

自慢のリリーフ陣が終盤に大きく崩れて横浜に大敗!!!

  RHE
阪  神001101300 6121
横  浜00040251x 12140

一昨日のヤクルト戦に続いて、リリーフ陣が終盤に崩れて横浜に大敗でした。
一昨日は、セットアッパーの岩崎投手が同点に追いつかれて逃げ切りに失敗し、今夜は、同点の終盤7回に勝ちパターン入りを期待されている小林投手が大きく崩れてしまいました。私のようなシロートから見ても、それほど酷使されていて疲れが溜まっているというわけではありませんから、要は、力不足ということなのかもしれません。打撃陣は、ふたたび、ルーキー佐藤選手が4番サードに座り、ホームランをかっ飛ばしましたし、6番ライトに入った今季初スタメンの糸井選手もソロホームランを打ちましたし、6点を上げて、こんなもんだろうという気がします。さて、リリーフ陣の立て直しをどうするか、藤浪投手の一軍復帰をどうするか、同時に解決できるような気もします。

明日は、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

2021年5月 6日 (木)

ワシントン・ポスト紙に見る日本批判記事やいかに?

世間では、IOCバッハ会長のことを「ぼったくり男爵」と呼んだワシントン・ポスト紙の批判記事がキャリーされていますが、ほかにもあります。リストだけ上げておきます。

上のコラムでは、"Japan, which is still planning to host the Tokyo Olympics this July, finds itself in a truly awkward position - trailing Colombia, Latvia and Turkey in the global vaccination race." で始まり、1.6%しかワクチン接種が済んでいない現状を明らかにするとともに、経済面でも、"As infection rates jump anew, Japan's 20-year battle against deflation is in grave peril." と指摘しています。下のコラムでは、繰り返しになりますが、IOCバッハ会長のことを "Baron Von Ripper-off " と呼び、オリンピックを進める目的については、"At this point, money is the chief reason anyone is even considering going forward with a Summer Games." と主張しています。ボロクソですな。

取りあえず、キャリーしたメディアの記事を見るだけでなく、原典に当たるという私のやり方でしたが、その原典がそもそもメディアの記事でしたので説得力はないかもしれません。

| | コメント (0)

2021年5月 5日 (水)

終盤に岩崎投手が失点してヤクルトと引き分け!!!

  RHE
阪  神002000000 251
ヤクルト000010010 290

昨日と違ってロースコアの試合ながら、終盤にセットアッパーの岩崎投手が失点してヤクルトと引き分けでした。
3回にマルテ選手のタイムリーで先制し、先発青柳投手は6回1失点のQSだったんですが、なかなか打線がヤクルト投手陣を打ち崩せなかった上に、勝利の方程式による逃げ切りならず、8回に追いつかれてしまいました。今季初の引き分けでした。まあ、こんな試合もありますし、対ヤクルト無敗は続いていたりします。ただ、途中交代した4番大山選手がやや心配です。

つぎの横浜戦もも、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

2021年5月 4日 (火)

神宮球場での打合いを終盤のホームラン攻勢で制して4連勝!!!

  RHE
阪  神001012124 11151
ヤクルト000130010 593

狭い神宮球場の特徴をよく捉え、打撃戦を終盤のホームラン攻勢で制して4連勝でした。
両チームとも先発投手がピリッとせず、守りのエラーもあって中盤から点の取り合いとなりましたが、6回の陽川選手の同点タイムリーの後、終盤7回から阪神の長打攻勢が始まります。マルテ選手の勝ち越しソロ、ルーキー中野内野手のツーラン、最終回9回は4番に復帰した大山内野手のスリーベースの後、サンズ選手のツーラン、最後は、これまたルーキー佐藤選手のソロと、15安打で11得点を上げてヤクルトを突き放しました。開幕以来、ヤクルトには今季負けなしの6連勝です。

明日も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

2021年5月 3日 (月)

自転車で京都のポケふた5か所を回る!!!

一昨日の5月1日からゴールデンウィークに入ったものの、一昨日昨日とここ2日ほど天気が不安定だったので遠出を控えていたのですが、今日は安定した晴天のいいお天気になり自転車を飛ばしました。1か月あまり前の3月末に京都市内にポケふたと呼ばれるポケモンをあしらったマンホールが出現したことは、すでに4月4日付けで取り上げたところですが、今日はその5か所のポケふたを自転車で回ってきました。大雑把にJR京都駅を起点として、私が回った順に以下の通りです。

  1. ワニノコ・マリルリ (京都府京都市下京区観喜寺町)
  2. チコリータ・ダーテング (京都府京都市右京区西京極新明町)
  3. ホウオウ (京都府京都市右京区嵯峨中ノ島町)
  4. ヒノアラシ・ヒヒダルマ (京都府京都市左京区岡崎最勝寺町)
  5. ピィ・ププリン・ピチュー (京都府京都市東山区円山町)

photo

photo

photo

photo

photo

photo

photo

photo

上から順に、まず、京都から伸びる嵯峨野線(山陰線)の最初の駅である梅小路京都西駅の南側に広がる梅小路公園にいるワニノコ・マリルリです。ウロウロと私が探していると、駅をお掃除していたおじいさんが教えてくれました。感謝です。次に、五条通りを西に取って、西京極総合運動公園に入ったところにいるチコリータ・ダーテングです。これはすぐに見つかりました。それから、五条通りから四条通りに移って、松尾大社の手前から桂川沿いの堤防の上にある自転車と歩行者向けの遊歩道のようなコースを北西に取って、嵐山渡月橋南詰にいるホウオウです。ポケふたに加えて、私と自転車も入っています。黄色いフレームの自転車に、ヘルメットも黄色です。普通の自転車用ヘルメットというよりも、子供がローラースケートをするときなんかに着用するツルリとしたヘルメットを愛用しています。ご同好のポケふた愛好者の方が撮ってくれました。「京都市内の5か所は全部見た」とのことでした。その次は、ホウオウだけです。今度は、逆に四条通りから二条通りを東に向かって、平安神宮にいるヒノアラシ・ヒヒダルマです。二条通り沿いの交番の婦警さんが「八つ橋やさんの前にいる」、と教えてくれました。その次は、ヒノアラシ・ヒヒダルマとともに自転車なんですが、後方に見えるのは冷泉通りの北側に広がる平安神宮です。平安神宮から東山通りを南に向かって、八坂神社を越えたところ、大谷祖廟との間の道を東に入るとピィ・ププリン・ピチューがいます。最後は、私の自転車とともに撮った写真です。関西のポケふたは京都のほか、大津と斑鳩だけで、大阪や兵庫や和歌山にはいません。さて、次は大津か斑鳩か?

ということで、大雑把に京都駅を起点にして、自転車ならば3時間ほどで回れるんではないでしょうか。ですから、京都駅からならせいぜいが20キロから25キロの走行だという気がします。我が家は京都駅からかなり南にありますが、それでも、50キロにはまったく達しません。たぶん、40キロにもならない感じです。でも、一昨年に定年退職した60歳過ぎの身にはややきつくてヘバッてしまいました。京都に引越してから、「そのうち、ビワイチ」といい続けているのですが、ビワイチは100キロをはるかに超えます。時間をかけてチビチビと走るか、しっかりと鍛え直す必要があるかもしれません。

| | コメント (0)

2021年5月 2日 (日)

4番に座った佐藤選手のグランドスラムで広島に連勝!!!

  RHE
広  島001110000 392
阪  神00104200x 781

休養の大山選手に代わって4番に座った佐藤選手のグランドスラムで広島に連勝でした。
先発ガンケル投手があまりピリッとせずポロポロと失点する中、5回の逆転満塁ホームランは大きく流れを変えました。さらに、続く6回にも2点を上げて、ほぼほぼ試合が決まりました。デーゲームには強い阪神です。朝日放送系のスカイAでのテレビ観戦だったのですが、軽く10回を越えて佐藤選手のホームランのリプレイを見せつけられました。私としては、無観客ながらがんばって応援していたタイガースガールズの踊りをもっと見たかった気がします。

明後日のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

| | コメント (0)

2021年5月 1日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計6冊!!!

今週の読書は、時期が近づいてきたから、というわけではないものの、お中元に関するマーケティング論、また、衆議院調査部の役割を歴代主要内閣別に見た本、話題の小説を2冊に、さらに、認知と決定に関するブルーバックスも2冊の計6冊、以下の通りです。なお、今年に入ってからの読書は、新刊書読書としてブログにポストした分に限定して、1~3月に56冊、4月は今日の分までで18冊、計74冊となっています。ほかに、40年ほど前の出版のジェフリー・アーチャー『ロスノフスキー家の娘』上下(新潮文庫)の感想文をFacebookでシェアしておきました。ゴールデンウィークは行くところもないので、読書と自転車で過ごしたいと思います。そのうちの読書については、私の所属学会のひとつである基礎経済科学研究所の編集になる『時代はさらに資本論』という本をもらっています。基本的に私の専門性ない分野なのですが、『人新世の「資本論」』も読んで批判的に取り上げたこともありますので、ムリのない範囲で少し紐解いてみようかと考えています。

photo

まず、島永嵩子『「お中元」の文化とマーケティング』(同文館出版) です。著者は、神戸大学の研究者です。本書は、著者の20年前の博士学位請求論文を元にしている部分、チャプターがあり、やや時代にアップトゥーデイトでない部分も散見されますが、極めて大雑把にいって、夏のお中元に関する文化をいかにマーケティングでさらに掘り起こすか、という論文です。「お中元」だけが日本特有の視点で掘り起こされる一方で、「お歳暮」はどうなった、といぶかる向きがあるかもしれませんが、年末の贈答という習慣であれば、クリスマスの贈り物が一般に世界で見られ、ここは「お歳暮」が日本独特という文化ではないという見方には私も再生します。第2章で取り上げられていますが、贈答品と自家消費品は、やっぱり、差があると考えるべきなんでしょう。さらに詳しく、儀礼的・義務的な贈答品と自発的な贈答品も少し違う気がします。その上で、「お中元」に限らないものと考えるべきですが、贈答品は、特に、その儀礼度や義務度が上がればスーパーではなく百貨店の比重が高くなるものといえます。ですから、第3章では百貨店に関する研究がサーベイされていて、第4章では百貨店の代表として三越のPR誌から見た中元文化が分析されています。今でいう商品券に当たる商品切手が登場し、現金と同じで汎用性高く、もっとも推奨されていますが、20世紀の明治末年から大正期にかけて、三越らしい服飾品から始まって、石鹸やマッチに至るまで、価格帯別の掲載品がp.81のテーブルに取り上げられており、第4省の結論にあるように、明治期から大正期にかけてはまだ明確には確立されていなかった中元ギフト市場が百貨店によって大いなる誘導が行われたという見方は、私もその通りだという気がします。こういったマーケティング活動を通じて庶民の間に中元贈答文化が広まったのは歴史的な事実なんだろうと思います。ただ、一般的なマーケティング論にある初期のアダプターや遅れたアダプターなどの分類ではなく、本書の著者は、何と、グラムシのヘゲモニー論を援用し、消費者の言説を支配的な位置にある消費者、折衝的な位置、対抗的な位置の3分類を取っており、少しびっくりしました。イタリア共産党の革命家のヘゲモニー論がマーケティングに応用されているとは知りませんでした。ただ、いつもの観点ながら、経済学と違って経営学の場合、景気循環などの客観的な景気の状況よりもマーケティングのほうが重要と見なさんばかりの分析は少し違う気がします。例えば、p.99の広告商品価格の25%トリム平均値を戦後直後の1949年から21世紀初頭の2008年までプロットしたグラフを見るにつけ、1980年代後半のバブル経済期とその後のバブル経済崩壊後から1990年代広範にデフレに入った時期とで、経済状況を勘案せずに価格を同列に論ずるのは、かなりムリがある気がします。でも、繰り返しになりますが、年末ではなく年央に贈答品をやり取りする「お中元」という日本独特の文化のマーケティング論的な視点からの解説は、それなりに面白かった気がします。ほとんど数学的な要素を含まない本なので、一般ビジネスパースンにも判りやすいのではないか、と受け止めました。

photo

次に、平野貞夫『衆議院事務局』(白秋社) です。著者は、大学院卒業後に衆議院事務局に就職して、議長秘書や委員部部長などを経て退官してから参議院議員となり、自民党所属から新生党、新進党、さらに自由党の結党に参加し、最終的に、民主党に合流して引退しているようです。本書では、タイトル通りに衆議院事務局の仕事を単に裏方として議長を支えるだけでなく、憲法に則った国会運営を守るという立場を強調しています。昭和から平成にかけて、具体的には章別に、佐藤栄作内閣「健保国会」、田中角栄内閣「靖国神社法案」、三木武夫内閣「ロッキード事件」、中曽根康弘内閣「死んだふり解散」、竹下登内閣「リクルート事件」、海部俊樹内閣「湾岸戦争」、宮沢喜一内閣「PKO協力法案」と内閣ごとに大きな論争を呼び、それゆえに、国会運営も混乱を来していた舞台裏を明らかにしています。著者がながらく衆議院事務局の職務として前尾繁三郎議長秘書を務めていたことから、その当時の国会運営が詳細に取り上げられています。もちろん、著者の当時の国会運営がそれなりに常識に則ったものであるのに対して、先の安倍内閣や現在の菅内閣の下での国会運営が、まさに、一強時代と呼ばれるように強引を極めているのは、著者が最終的に民主党に属していたからだけではなさそうな気がします。でも、こういった水面下での舞台裏の事情もそれなりに重要性あるんでしょうが、本書にはまったく主権者である国民は現れません。メディアの記者はごく少数現れて政治家の間のメッセンジャーをしたりはしますが、節目の政治情勢がどのように報じられたか、あるいは、報道に対して国民世論がどのような反応を見せたのかは、まったく本書では触れられていません。私はここに大きな疑問を感じます。もちろん、国民の意見を反映するのは選挙を通じた政権交代なんでしょうが、選挙だけではなくメディアの報道を通じて、国民が何らかの反応を示す場合も少なくありません。特に安保法制以来、安倍内閣以来のここ数年の政権は、野党勢力だけでなく国民世論もまったく無視した政策運営を続けており、野党だけが反対勢力なのではありません。決して野党の見方だけでなく国民を視野に入れて、現政権の強引すぎる国会運営に対して批判を続けていかないと、ますます政権の暴走を許すだけになってしまいそうな気が私はしています。逆からいって、現在の政権の暴走を止めるのは野党勢力の責任もさることながら、最終的には何らかの国民のパワーなのではないか、と私は考えています。

photo

次に、アネッテ・ヘス『レストラン「ドイツ亭」』(河出書房新社) です。著者は、ドイツの脚本家であり、この作品は著者の初めての小説だそうです。ドイツ語の原題は Deutsches Haus であり、2018年の出版です。アウシュビッツ裁判を主題にしており、その昔のベルンハルト・シュリンク『朗読者』を思わせます。我が国に当てはめれば、小説ではなく映像作品ですが、「私は貝になりたい」に通ずるものがあります。重いテーマであることは確かです。ということで、主人公は1939年生まれのドイツ人女性であり、小説の舞台が1963年のフランクフルトですので、小説の中では20代半ばということになります。やや下町っぽい地域のレストラン経営者の娘であり、会社経営のお金持ちとの婚約が整うあたりから始まります。このお金持ちとの出会いは主人公の職業と大きな関係があり、ポーランド語の通訳をしていて仕事で見初められたという設定です。なぜか、このフィアンセの父親、先代の社長は共産主義者だったりします。そして、舞台となる1963年にアウシュビッツ裁判が始まります。ドイツの戦犯の国際法廷はニュルンベルク裁判であり、戦勝国がドイツ人戦犯を裁いています。日本でいえば東京裁判になります。そして、本作品の大きなテーマであるアウシュビッツ裁判はドイツ人がアウシュビッツのナチを裁いています。このタイプの裁判は日本には歴史的になかったというべきで、実感を持って読み進むのが難しかったのも事実です。誌人工は、フィアンセや父親の反対意見を押し切ってポーランド人の証人、すなわち、アウシュビッツからの生還者の通訳を務めます。そして、アウシュビッツに旅行したりもします。そうしているうちに、自分の父親がアウシュビッツでコックをしていた記憶を取り戻して愕然とします。両親はアウシュビッツでナチの側にいて、ある意味で、ユダヤ人虐殺に間接的ながら、あるいは、意図しないまでも、加担していたとの思いに駆られます。他方で、アウシュビッツ裁判の初期には被告となっていたナチの加害者について同情的な意見が少なくなかった国内世論も、段々とナチの残虐行為が明らかになるにつれて、加害者としてのナチに対する嫌悪感が広がっていきます。ドイツ人はアウシュビッツ裁判でナチの過去の残虐行為を正当に裁き、過去と向き合ってナチの残党を克服した国である一方で、同じ敗戦国の日本をかえりみずにはおれません。確かに、いつまでも謝罪を要求し続けたり、国際法に反して日本に対する賠償を許容する判決が出たりと、いくつかネトウヨ連中の気に障る点があることも事実ですが、他方で、A級戦犯が総理大臣まで上り詰める国であることも事実です。私にはこの日独の違いをもたらす要因が不明なのですが、この作品を読んで考えるのも一考かもしれません。小説ですから、裁判の結果などを別にすればフィクションなのでしょうが、とても真に迫った緊迫感ある作品です。

photo

次に、西條奈加『心淋し川』(集英社) です。著者は、ファンタジー系から始まって、今は主として時代小説を中心に活躍する小説家であり、この作品はご存じ第164回直木賞受賞作です。私は時代小説は好きな方なのですが、記憶に間違いがなければ、この作家の作品は初めて読んだのではないかと思います。私がよく読む好きなタイプの時代小説というのは、『たそがれ清兵衛』や「居眠り磐音」のシリーズが典型なのですが、世襲の主君は幕府の介入を別途すれば、まったく安定な主君であるのに対して、家老以下の家臣がその安定的な主君を頭にいただきつつも政権争いを繰り広げ、場合によっては武士の表芸である剣術で決着をつける、というものです。本書についてはその類型には当てはまりません。ただ、さすがにとてもいい感触の読書でした。時代小説としてタイプは違うものの、登場人物のキャラはとてもよく描き出されており、最後の短編に至るまでのプロットもよく出来ています。江戸期の表舞台に立つ武士と違った町家の町人、それも、決して恵まれた境遇にあるわけではない下層の町人の屈折した心情もよく捉えられています。ということで、「心」という字を「うら」と読ませていて、この時代小説の舞台は江戸期の千駄木から根津にかけての心町であり、そこは淀んだ川に吹き溜まりのように建ち並ぶ長屋でいっぱいです。基本的に短編集なのですが、共通して茂十という大家=差配が登場します。何者かは、最後の短編「灰の男」で明らかになります。この最後の短編以外の収録短編は、タイトルと同じ「心淋し川」、「閨仏」、「はじめましょ」、「冬虫夏草」、「明けぬ里」となります。6つの短編は、貧しい心町に住む人々について、その屈折した心情や逼塞した生活とともに、個別バラバラに描いているように見えるのですが、実は最後の「灰の男」にすべてが集約されて、前の5編では名前が登場するだけで脇役を演じてきた差配の茂十が一気に中心人物になります。以下ネタバレです。未読の方はご注意下さい。心町に住み着いた楡爺は、ほぼ完全に、当時の用語でいえば耄碌しているのですが、茂十の嫡男を捕物の際に殺害した野盗である地虫の次郎吉である、と茂十は確信し、八丁堀の役人を隠居して心町の長屋の差配を務めて楡爺を見張っているわけです。しかし、楡爺こと次郎吉は捕物の中で次郎吉の倅を茂十の嫡男に殺されており、その仇をとって茂十の嫡男を殺害したことが茂十にも理解され、ともに、茂十と楡爺こと次郎吉は2人ともに倅を殺された仇を持つ者同士、というオチになります。

photo

photo

最後に、鈴木宏昭『認知バイアス』川越敏司『「意思決定」の科学』(ブルーバックス) です。著者は、どちらも大学の研究者なんですが、教育学・心理学と経済学という専門の違いはあります。でも、ともに、トベルスキー=カーネマンの経済心理学、プロスペクト理論などを応用している部分があり、私はとても興味を持ちました。今週、私は留学生向けに5人ほどの教員がジョイントした大学院の授業の担当が回ってきて、貧困指標について長崎大学のころに書いた紀要論文を基に授業をしており、その冒頭で経済政策決定に関するいくつかのバイアスのお話をしています。特に、経済政策に限定しないのですが、少なくとも認知のバイアスと決定のバイアスがあります。これは一般にも理解しやすいのではないでしょうか。そして、前者の認知のバイアスがそのものズバリで『認知バイアス』から、後者の決定のバイアスは『「意思決定」の科学』で取り上げられています。例えば、確証バイアスというものがあり、ある人の服装について、何度か赤い服を来ているところを見かけると、その人が赤い服が好きだという確証バイアスが形成され、赤い服を着たその人の印象が強く残ってしまうわけです。そして、あまりあり得ないシテュエイションながら、洋服をプレゼントする際に赤い服を選ぶという決定を下しかねないわけです。通常、経済政策なんかの実務について考えると、EBPM=Evidence Based Policy Making (Management) が重視され、キチンとした根拠に基づく政策決定が必要なわけで、この決定の仕組みは、お硬い経済政策なんぞだけではなく、野球選手の選択についても『マネーボール』なんかで議論が展開されているところです。そして、多くのエコノミストは認知バイアスを避けるために、自分自身の観察結果ではなく統計を利用します。これは理解できるところでしょう。そして、決定のバイアスを避けるためには何らかの評価関数が必要となります。ただ、『「意思決定」の科学』の冒頭に明記してあるように、評価はその基本とする公理(axiom)に従って、公理の数だけ真理があるという困った現実があります。私の紀要論文も14の公理に従って6ある貧困指標を特徴つけていたりします。ですから、取りあえず、認知の問題は統計や何らかのアンケート調査などで、誤差は含むものの、個人的な認知バイアスはムリとしても社会や経済で考えるならば解決できなくもない一方で、決定に関しては公理を選択するという決定もありますので、私にはなんとも悩ましいところです。ですから、行動経済学というのは私には不可解な分野なのですが、逆に、実験経済学というのはデータを収集するだけでなく、マクロ経済のコンポーネントである企業や家計あるいは個人の行動や決定の基本となっている評価関数を知る上で有益ではないか、と考えなくもありません。

| | コメント (0)

« 2021年4月 | トップページ | 2021年6月 »