緊急事態宣言で大きく悪化し基調判断が引き下げられれた景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲9.9ポイント低下の39.1を示し、先行き判断DIも▲8.1ポイント低下して41.7を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+2兆6501億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
4月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり悪化
内閣府が13日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は39.1で、前の月に比べて9.9ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は41.7で、8.1ポイント低下した。低下は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
内閣府は基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」に変更した。
3月の経常収支、2兆6501億円の黒字 81カ月連続黒字
財務省が13日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6501億円の黒字だった。黒字は81カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2兆7646億円の黒字だった。
貿易収支は9831億円の黒字、第1次所得収支は2兆452億円の黒字だった。
同時に発表した2020年度の経常収支は18兆2038億円の黒字だった。前年度に比べて、黒字幅が縮小した。
2つの統計を取り上げましたので、やや長くなりましたが、いつもの通り、よく取りまとめられた記事だという気がします。次いで、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。
4月統計の現状判断DIについて、前月差の動向を少し詳しく見ると、合計で▲9.9ポイントの落ち込みだったのですが、家計動向関連が特に▲11.9ポイントと大きく低下した一方で、企業動向関連は▲5.0ポイントにとどまっています。家計動向の中でも、飲食関連が▲20.5ポイントと激しく落ち、これに続いて、小売関連が▲13.1ポイントを記録しています。企業動向関連の▲5.0ポイント低下は製造業と非製造業に分かれますが、非製造業が▲6.2ポイントに対して、製造業は▲3.8ポイントとなっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック対応の緊急事態宣言による落ち込みであることは明らかであり、いくぶんなりとも輸出で需要ショックを和らげることが出来る製造業はまだマシなんでしょうが、営業活動を大きく制限される上に保障が限定された分野では大きなダメージを受けているということになります。現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに、ここまで大きく低下したんですから、統計作成官庁である内閣府では、先月までの「持ち直している」から「持ち直しに弱さがみられる」と半ノッチだけ基調判断を引き下げています。緊急事態宣言もいつ解除できるのか、まったく先が見えませんし、この先もマインドはかなり悪化する可能性があります。
次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性があります。季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、先月2月統計で小幅に赤字に転じていますが、これは中華圏の春節による影響ではないかと考えられます。COVID-19のために、インバウンド消費はもうどうしようもありませんが、それ以外の財貨とサービスの輸出入は米国などでワクチン接種が進んで、かなりカッコつきながら「正常化」の方向にあるように私は感じています。先進国でのワクチン普及と米国の大型の財政政策に支えられた経常黒字であるといえます。他方で、こういった米国をはじめとする先進各国の経済政策と比べて、我が国の政策の不毛を感じます。ワクチン接種を含めて、政府はやるべきことをやってほしいと思うのは、私だけではないと考えます。
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