失業率が上昇し有効求人倍率が低下した4月の雇用統計をどう見るか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも4月の統計です。失業率は前月から+0.2%ポイント上昇して2.8%、有効求人倍率も前月から▲0.01ポイント下回って1.09倍と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)へ対応する緊急事態宣言のため、いずれも前月統計からは悪化したものの、徐々に下げ止まりないし改善を示している印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
4月の失業率2.8%、0.2ポイント悪化 有効求人倍率1.09倍
政府が28日発表した雇用関連統計によると、4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月から0.2ポイント上昇した。4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍となり、前月から0.01ポイント低下した。低下は2カ月ぶりで小幅だった。
新型コロナウイルスの感染再拡大で4月25日から東京や大阪などに3回目の緊急事態宣言が適用された。宣言は6月20日まで延長される見通しで、雇用の下押し要因となっている。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業などから何件の求人があるかを示す。4月は企業からの有効求人は前の月から1.4%増え、働く意欲のある有効求職者数は2.6%増えた。求職者の伸びが求人を上回り、2カ月ぶりに悪化した。
雇用の先行指標となる新規求人数(原数値)は前年同月比で15.2%増えた。増加に転じるのは19年12月以来。昨年4月、1回目の緊急事態宣言で大きく落ち込んだ反動が出た。2年前と比べるとなお2割減でコロナ前水準への回復にはほど遠い。
産業別では、教育・学習支援業(43.6%増)や製造業(32.8%増)は大きく増える一方、宿泊・飲食サービス業(2.9%増)はなお厳しい情勢が続く。
地域によるばらつきも大きい。就業地別の有効求人倍率は、最高の福井県が1.84倍、最低の沖縄県は0.78倍だった。コロナの感染が再拡大する都市部では、東京都や大阪府で1倍を割り込んでいる。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.7%だった一方で、有効求人倍率は1.10倍でしたので、これらの予想ほどには改善が進んでいない印象です。しかしながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言のために、方向性としては下げ止まりから改善に向かう動きがやや停滞しているのは事実ながら、失業率はまだ2%台ですし、有効求人倍率も1倍を越えているわけですから、雇用はかなり底堅い、と私は認識しています。
ですから、雇用統計に関して3点指摘すれば、第1に、COVID-19のネガティブなマクロ経済への影響があるにせよ、雇用だけは減少過程に入った人口動態に起因した人手不足の影響が見られる可能性があります。第2に、人手不足の観点も含めて、非正規雇用もさることながら、特に、正規雇用への需要が底堅いことは注目すべきです。例えば、正社員への有効求人倍率とパートとを比べると、もちろん、まだパートに対する求人倍率の方が高いとはいえ、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期にはパートの方が+0.6ポイントほど高かったにもかかわらず、足元の2021年4月で+0.2ポイントくらいまで差が縮小してきています。繰り返しになりますが、まだパート求人倍率の方が高いとはいえ、相対的に正規雇用に少しずつシフトしてきている可能性が示唆されています。第3に、昨年4月からの反動の側面もありますが、いわゆる休業者が今年2021年4月には大きく減少しています。昨年2020年4月は第1次の緊急事態宣言のため、休業者が前年同月と比べて+420万人と大きく増加し、失業率データに対する信頼性の問題が浮上しましたが、逆に、今年2021年4月には▲398万人の減少があり、4月失業率が前月より+0.2%ポイント上昇しているとはいえ、休業者を含めた実態はそれほど悪化していない可能性も読み取れます。
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