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2021年6月29日 (火)

5月統計では商業販売統計も雇用統計も停滞色が強まる!!!

本日、経済産業省から商業販売統計と総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。商業動態統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+8.2%増の11兆9470億円、季節調整済み指数では前月から▲0.4%の減少を記録しています。失業率は前月からさらに+0.2%ポイント上昇して3.0%、有効求人倍率は前月から横ばいで1.09倍と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)へ対応する緊急事態宣言については、沖縄県を除いて解除されましたが、雇用の回復には時間がかかりそうです。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の小売販売額8.2%増、3カ月連続プラス
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比8.2%増の11兆9470億円だった。増加は3カ月連続で、百貨店やコンビニエンスストアが前年同月を上回った。
2020年5月は政府が1回目の緊急事態宣言を出し、外出自粛で小売業販売額は大きく落ち込んだ。今年5月も3回目の宣言が出ていたが、地域が限られたことなどから前年同月よりも販売額は増えた。19年5月と比べると5.3%減で販売額の水準はなお低い。
百貨店は前年同月比58.8%増の2768億円だった。衣料品が80.0%、飲食料品は34.0%の増加だった。コンビニは5.3%増の9734億円だった。スーパーは1兆2641億円と1.2%減った。
小売業販売額を季節調整済みの前月比でみると0.4%減となった。経産省は基調判断を「横ばい傾向」に据え置いた。
5月失業率3.0%、0.2ポイント悪化 有効求人倍率は横ばい
総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は3.0%と先月から0.2ポイント上昇した。2カ月連続の悪化となった。厚生労働省が同日発表した5月の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.09倍だった。4月下旬に発令された緊急事態宣言の影響もあり、雇用の回復にはなお時間がかかりそうだ。
完全失業率が3%になるのは2020年12月以来。完全失業者(原数値)は211万人で前年同月比13万人増で、16カ月連続で増えた。就業者数(同)は6667万人で同11万人増加した。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し企業などから何件の求人があるかを示す。5月の有効求人(季節調整値)は前の月から0.3%減となり、働く意欲のある有効求職者(同)は0.4%減少した。正社員の有効求人倍率は0.90倍で前の月を0.02ポイント上回った。
景気の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で7.7%増加した。ただ新型コロナ前の19年同月と比べると26.9%減った。特に「製造業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」などで求人の回復が弱い。
就業地別の有効求人倍率は、最高の福井県が1.81倍、最低の沖縄県が0.83倍だった。緊急事態宣言が続いていた東京都や大阪府では1倍を割り込んでいる。
有効求人倍率は18~19年にかけて高く、1.6倍を超える水準に達して人手不足も指摘された。新型コロナウイルスの影響で20年中は1.04倍まで下落。足元でも大幅な回復がみられない状況が続いている。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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統計のヘッドラインとなる小売販売額は、第1次の緊急事態宣言のさなかだった昨年2020年5月と比べると、さすがに2ケタ近い増加ですが、4~5月の前月比を季節調整済みの系列で見る2か月連続で減少しており、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「横ばい傾向」に先月4月統計から下方修正した後、5月も据え置いています。小売販売額を季節調整済みの系列の前月比でもっと詳しく見ると、半導体供給制約で生産も減少した自動車小売業が▲5.9%減と大きな減少を記録したのに加え、機械器具小売業が▲4.4%減、燃料小売業が▲4.0%減、織物・衣服・身の回り品小売業が▲1.0%減、などと軒並み前月から減少しており、逆に、前月から伸びているのは+0.5%増の飲食料品小売業だけです。輸出への依存を強めつつも回復の兆しが見られる生産と比較して、内需に基礎を置く消費については、まだ緊急事態宣言が解除されない沖縄県を除いて、首都圏や関西圏では6月20日に解除されたとはいえ統計にはまだ現れない緊急事態宣言の影響やワクチン接種の遅れなどから消費の停滞が際立っています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.9%だった一方で、有効求人倍率は1.08倍でしたので、これらの予想ほどには改善が進んでいない印象です。しかしながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言のために、方向性としては下げ止まりから改善に向かう動きがやや停滞しているのは事実ながら、失業率はまだ3%ですし、有効求人倍率も1倍を越えているわけですから、停滞が見られるとはいえ、雇用はかなり底堅いと私は認識しています。その要因としては、雇用だけは減少過程に入った人口動態に起因した人手不足の影響が見られる可能性が指摘できます。特に、正規雇用への需要が底堅いことは注目すべきです。例えば、正社員への有効求人倍率とパートとを比べると、もちろん、まだパートに対する求人倍率の方が高いとはいえ、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期にはパートの方が+0.6ポイントほど高かったのですが、足元の2021年4月で+0.2ポイントまで差が縮小してきています。繰り返しになりますが、まだパート求人倍率の方が高いとはいえ、相対的に正規雇用に少しずつシフトしてきている可能性が示唆されています。加えて、一時注目された休業者数も昨年2020年5月に+274万人増となった反動もあり、▲211万人減を記録しています。雇用から景気の回復が始まるのは日本的ではなく米国的ではありますが、決して悪いことではありません。

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