1-3月期GDP統計速報2次QEは1次QEから小幅な上昇修正か?
必要な統計がほぼ出そろって、来週火曜日の6月8日に1~3月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。東京都と関西圏の京阪神などの緊急事態宣言の影響が気にかかるところですが、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。緊急事態宣言が出たり解除されたり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、ワクチン接種の行方とともに、極めて不透明となっており、そういった影響も気にかかるところです。しかしながら、伝統的に2次QEは法人企業統計のオマケで予想されることも少なくなく、ほとんどのシンクタンクで先行きについては取り上げていません。先行きについて言及があるのは、みずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研の2機関だけでした。特に前者のみずほリサーチ&テクノロジーズについてはくわしく引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +3.0% (+12.7%) | n.a. |
日本総研 | ▲1.2% (▲4.5%) | 今般の法人企業統計などを織り込んで改定される1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資や公共投資の減少幅が縮小する見込み。 |
大和総研 | ▲1.2% (▲4.6%) | 2次速報では、年初に発出された緊急事態宣言の影響によって個人消費を中心に内需が落ち込んだ姿が改めて示されるだろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲0.9% (▲3.6%) | さらに、4~6月期は2期連続のマイナス成長になる可能性が高い。 4月以降、感染力が強い変異株の感染拡大を背景として、近畿・関東を中心に感染が急拡大するなど、第2次緊急事態宣言が3月21日に首都圏で解除されてからわずか1カ月で日本は感染拡大の第4波に入ってしまった。 こうした中、政府は4月25日に東京、京都、大阪、兵庫の4都府県を対象として第3次緊急事態宣言を発令したものの、感染拡大の十分な抑制には至らず、当初は5月11日までとされていた発令期間は5月末まで延長された。対象地域も5月12日から愛知・福岡、5月16日から北海道・岡山・広島、5月23日から沖縄が追加され、全10都道府県(全国に占めるGDPシェアは約5割)まで拡大した。 今回の第3次緊急事態宣言では、飲食店への休業要請(酒類・カラオケを提供する飲食店が対象)に初めて踏み切ったほか、酒類を提供しない飲食店に対しても夜20時までの営業時間短縮要請が実施された。第2次緊急事態宣言で見送られた商業・娯楽施設に対する休業要請も盛り込まれた。5月12日以降の緊急事態宣言延長に伴い、商業施設の休業要請は時短要請に緩和されたが、東京、大阪は独自に商業施設の休業要請を継続している状況だ。 このように、休業要請の範囲という点では第2次緊急事態宣言よりも厳しい内容となったものの、感染者数の十分な減少には至らず、病床使用率が高止まるなど医療体制もひっ迫した状況が続いた。それを受けて、政府は、緊急事態宣言の発令期間を6月20日まで再延長することを余儀なくされた。 こうした状況を踏まえると、4~6月期の個人消費は、1~3月期から一段と落ち込む公算が大きい。みずほリサーチ&テクノロジーズは、6月下旬までの緊急事態宣言の延長を想定した上で、今回の第3次緊急事態宣言の発令により4~6月期のGDPが0.5%程度押し下げられると試算している。 さらに、世界的な車載向け半導体の供給不足や、国内半導体工場の火災を受けた自動車の減産が下押し要因となる。影響の大きさは(完成車メーカーの半導体在庫保有量などに依存するため)不透明な面が強いが、自動車の輸出・国内販売が減少することで、4~6月期の日本経済は大幅に下押しされる公算が大きい。みずほリサーチ&テクノロジーズは、国内生産が50万台超減少すると想定し、他産業への波及効果も踏まえ、4~6月期のGDPを1.5%程度押し下げると試算している。 |
ニッセイ基礎研 | ▲1.2% (▲4.8%) | 6/8 公表予定の21年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲1.2%(前期比年率▲4.8%)となり、1 次速報の前期比▲1.3%(前期比年率▲5.1%)から若干上方修正されると予想する。 |
第一生命経済研 | ▲1.2% (▲4.7%) | 4-6月期についても、感染者数の再拡大と3度目の緊急事態宣言発令・延長を受け、サービス消費を中心として個人消費は一段の悪化が予想される。輸出が好調に推移していることや設備投資の増加が見込まれることといった要因が下支えになることから、2四半期連続のマイナス成長は回避されるとみるが、消費の落ち込みが響く形で4-6月期の景気も停滞感が強い状況が続くことが予想される。 |
伊藤忠総研 | ▲1.5% (▲6.0%) | 2021年1▲3月期GDP2次速報は、1次速報値の前期比▲1.3%(年率▲5.1%)から▲1.5%(年率▲6.0%)へ下方修正される見通し。2度目の緊急事態宣言に至ったコロナ感染第3波により、年明け後は内需が冷え込み景気が停滞した、という評価は変わらず。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲1.3% (▲5.0%) | 6月8日に内閣府から公表される2021年1▲3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-1.3%と1次速報値と同じ伸び率になる見込みである(年率換算では-5.1%から-5.0%に若干の上方修正)。 |
三菱総研 | ▲1.2% (▲4.9%) | 2021年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲1.2%(年率▲4.9%)と、1次速報値(同▲1.3%(年率▲5.1%))から小幅上方修正を予測する。 |
伊藤忠総研を除いて、1次QEから小幅な上方改定がほぼほぼ主流のように見えます。私もそう考えます。見方が分かれるのは、足元の4~6月期の予想であり、私は連続してマイナス成長と見ていますが、プラスに回帰するとの予想もいくつかあるように受け止めています。ビミョーなところかもしれません。経済予測というよりも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大やワクチン接種の進展に関する予測の方が重要な要因ではなかろうかという気がします。もはや、エコノミストの出る幕ではないのかもしれません。いずれにせよ、1~3月期2次QEについては多くのエコノミストの意見が一致しているように思えます。
下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。
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