エネルギー価格の上昇とともに1年2か月振りのプラスに転じた消費者物価指数(CPI)の先行きをどう見るか?
本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は+0.1%の上昇と、1年2か月振りの上昇を示めしています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.2%と下落に転じています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
5月の全国消費者物価、1年2カ月ぶり上昇 エネルギー価格けん引
総務省が18日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.7と前年同月比0.1%上昇した。上昇は1年2カ月ぶり。原油相場の上昇基調を反映してエネルギー価格が大幅に上昇した。携帯大手各社の値下げによる携帯通信料の下落を補った。QUICKがまとめた市場予想の中央値も0.1%上昇だった。
エネルギー価格は前年同月比で4.2%上昇した。1年3カ月ぶりに上昇に転じた前月から2カ月連続で上昇した。内訳は、ガソリンが19.8%上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する電気代や都市ガス代もマイナス幅が縮小した。
火災・地震保険料は16.4%上昇したほか、巣ごもり需要が続きルームエアコンなど家庭用耐久財は2.3%上昇した。
NTT(9432)傘下のNTTドコモのオンライン専用プラン「アハモ」など、携帯大手各社が割安な新料金プランを開始した影響で携帯通信料は27.9%下落した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.2%下落と、2カ月連続で下落した。生鮮食品を含む総合は0.1%下落と、8カ月連続で下落した。天候が良かったことからトマトやレタス、キャベツなど生鮮野菜が7.4%下落した。生鮮果物も6.9%下落した。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは0.1%の上昇でしたので、ジャストミートしました。基本的には、エネルギー価格による押し上げの要因が強く、例えば、昨年の日経新聞の記事を見ると、2020年5月限月のWTI先物がマイナスを記録したと報じられたのが2020年4月下旬でしたから、まさに、こういったエネルギ価格低下からのリバウンドの効果が大きいと考えるべきです。従って、特に大きなコストプッシュ要因とは私は考えていません。すなわち、CPIのエネルギーの指数の水準で見て、2019年5月の104.0が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの2020年5月には98.6に低下し、そして、直近でCPI統計が利用可能な2021年5月には101.0に戻っただけですから。2021年5月のエネルギー価格の水準は2年前の2019年5月よりもまだ▲3%ほど低くなっていて、エネルギーの価格上昇が国民生活を圧迫するほどではないと私は見ています。ヘッドラインCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度で見て、エネルギーの寄与度は4月統計では+0.05%でしたが、5月には+0.31%となっています。エネルギー価格上昇の中の大部分がガソリンであり、ガソリンだけでCPI総合への寄与が+0.37%を占めています。むしろ、生鮮食品価格が落ち着きを取り戻しつつあることから、食品価格が4月統計の前年同月比▲1.2%下落に続いて、直近の5月統計でも▲0.9%を記録していますので、生鮮食品はコアCPIには含まれないながら、国民生活上の観点からは悪くない価格の動きだという気がします。また、このブログで繰り返し指摘しているところで、政策要因、というか、政府からの強い圧力により、通信料(携帯電話)が5月統計でも前年同月比で▲27.9%下落しており、ヘッドラインCPIに対して▲0.54%のマイナス寄与を示しています。この携帯電話通信料の要因がなければ、ヘッドラインCPIの上昇率も+0.5%ほどの上昇を示していると考えられますし、沖縄県を除いて6月20日までで緊急事態宣言が解除されることが決定されていますし、ようやく、ワクチン接種の広がりも見られますので、宿泊料を大きく低下さかねないGoToトラベルが再開されなければ、国内需要の高まりとともに物価も着実に上昇幅を拡大するものと私は期待しています。
| 固定リンク
コメント