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2021年7月 8日 (木)

ワクチン接種により景気ウォッチャーは改善したものの賞味期限は今月限りか?

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+9.5ポイント上昇の47.6、先行き判断DIも+4.8ポイント上昇の52.4を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆9797億円の大きな黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり改善
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は47.6で、前の月に比べて9.5ポイント上昇(改善)した。改善は3カ月ぶり。家計動向・企業動向・雇用が改善した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は52.4で、4.8ポイント上昇した。上昇は2カ月連続。家計動向・企業動向・雇用が改善した。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」から「持ち直している」に変更した。
5月の経常収支、1兆9797億円の黒字
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆9797億円の黒字だった。黒字は83カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆8203億円の黒字だった。
貿易収支は20億円の黒字、第1次所得収支は2兆4518億円の黒字だった。

短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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ということで、結論からすれば、この6月統計の景気ウォッチャーはまったく信用できません。というのは、私もこの景気ウォッチャーの改善はワクチン接種の進展に基づくと考えており、しかも、7月の都議会選挙が終わってからワクチン供給不安が一挙に吹き出し、一部に大いに滞っているからです。6月統計で大きく改善した分、7月統計ではワクチン接種の停滞や遅れの評価次第で大きく悪化する可能性すらあります。とくに、東京都に4回目の緊急事態宣言が出たわけですし、これがマインドを改善させる効果があるとはとても思えません。もちろん、東京オリンピック・パラリンピック次第という面もあり、イベント効果でポジティブな見方が表明される可能性も否定できませんし、その場合には悪化幅が小さくて済む可能性もありますが、逆に、オリンピック参加選手や観戦者などの間で大規模クラスタが発生したりすれば、一気にマインドは冷え込む可能性が高いと考えるべきです。秋までには必ずある総選挙を前に、街角のマインドがとても気にかかるところですが、いろいろな条件に左右され、先行きがどうなるかはまったく不明です。

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経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事では、輸出が大幅増としていますが、昨年2020年5~6月ころは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済への影響がもっとも大きかった時期ですので、前年同月比で見れば、輸出入とも大きな増加を示している結果となっているだけであり、最近時点でのトレンドではないと考えるべきです。ですから、季節調整済みの系列の前月比で見れば、輸出は4月+2.8%増の後、5月は+1.4%増と伸びが鈍っていますし、輸入も4月+11.2%増の後、5月はわずかに+0.1%増となっています。基本的に、記事内容が間違っているわけではなく、輸出は世界経済が順調に拡大している恩恵を享受していて、輸入は国内景気が伸び悩む中で国際商品市況における石油価格の値上がりから増加を示している、ということ。になるのは確かです。記事にもあるように、前年同月比で見た増加分にワクチンが寄与していることは明らかですが、季節調整済みの系列で考えれば、最近の報道を見るにつけ、ひょっとしたら、ワクチン供給がストップして輸入の伸びが鈍化している可能性も否定できません。まあ、私の直感では5月統計ではこの可能性は低い気がしますが、ゼロではないかもしれません。ですから、5月統計だけでなく一般論として極めて皮肉な現象ながら、我が国でワクチン接種が進まないことは二重の意味で貿易黒字に貢献しています。すなわち、第1にワクチン輸入のストップが輸入の伸びの鈍化につながり、第2に景気回復が先進各国から大きく遅れることにより輸出の増加と輸入の伸び悩みを招いています。しかし、ワクチン接種が進まないと本格的な景気回復がさらに遅れますし、このワクチン失政のために、何度でも繰り返し緊急事態宣言を出す羽目に陥る可能性が高いと覚悟すべきです。

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