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2021年7月 3日 (土)

2021年7月3日: 今週の読書は重厚な経済書のほか計5冊!!!

今週の読書は、経済書のほかに新書と文庫も含めて計5冊を読みました。それから、毎週アップデートしていますところ、今年に入ってからの読書は、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月で56冊、今日取り上げたのは厳密には6月に読んでいたりもするんでしょうが、取り上げた日付で整理して7月で5冊、これらを合計して117冊になりました。ほかに、新刊書ではない読書はFacebookでシェアしていたりします。なお、来週の読書予定は、かなりの部分がすでに手元にあるのですが、バロー教授の『宗教の経済学』、宮川教授の『コロナショックの経済学』ほか、とうとう最終第10巻が回って来たラノベの『神様の御用人』、さらに、時間があれば新書も読もうかと考えています。

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まず、櫻川昌哉『バブルの経済理論』(日本経済新聞出版) です。著者は、慶應義塾大学の研究者であり、私も何度かお会いしたことがありますが、どちらかといえば、私とよく似た専門分野の研究者のご令室さまとお仕事をしたことの方が印象に残っています。それはともかく、本書では、金融理論、特に、低金利の経済学、すなわち、ピケティ教授が 'r>g' で端的に表現したように、実物経済の成長率よりも金融経済の利子率の方が高いので、労働所得に依存する一般市民と金利生活者の間で格差が広がっていく、というのと真逆の世界、 'g>r' の低金利下でバブルが発生することを論証し、さらに、その理論的基礎からバブルへの対応、加えて、合理的なバブルまで論じようと試みています。もちろん、金融だけでなく経済全体のバブル、さらに、経済だけでなく社会現象としてのバブルまで進めば、500ページ近い本書といえども、論じ尽くせるものではありませんが、かなりの程度に、少なくとも途中まではいいセン行っていると思います。明治はしていませんが、ノーベル経済学賞を受賞したティロル教授の「バブル」理論に基づいて、まさに、不換紙幣がバブルであり、当然国債もバブルであるという視点から、利子率が成長率を下回る動学的効率性が失われている経済では財政がサステイナブルとなり、それを基礎としてバブルが生じることを論じています。加えて、理論面だけでなく、実証的に我が国の1980年代後半のバブル経済と米国のリーマン証券破綻前までのサブプライム・バブルを比較したり、北欧などの小国のバブルまで幅広く議論を展開しています。私は理論的な面で、あるいは、本書で扱っているような簡単で実用的な実証面も含めて、金利と成長率の比較など、かなりの程度に正確な議論が展開されている気がします。ただし、10章のバブルの制御のあたりから議論が本筋を逸脱し始め、低金利と長期停滞が続いている現在の経済こそがバブルであって、最後は、バブルが贈与経済に擬せられて本書を締めくくっています。出だしはかなり球筋が良かったのですが、途中でスライスをし始めて、最後は、OBゾーンに入らないまでも深いラフに飛び込んだ印象です。例がよろしくなくて申し訳ありません。理論手に、バブルに火がついてから金利を上げることは、逆にバブルを煽る結果になりかねない点あたりからの議論が、やや雑な気がします。ですから、長期停滞から抜け出すためには金利引き上げが必要、と結論されても合意するエコノミストは少ないだろうと私は考えます。私自身は、キチンとした論証はしていませんが、財政支出の拡大により需給ギャップを埋めることが必要と考えています。もちろん、一読するに値する労作です。その点は間違いありません。

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次に、上林陽治『非正規公務員のリアル』(日本評論社) です。著者は、地方自治に関する研究機関の研究員だそうで、これまでも、非正規公務員の悲惨な状況に関する著書を何冊か出版しています。本書でも、いろんな実例を引いて、その上で、会計年度任用職員制度について批判をしています。公務員といえば、安定した職業であり、それほど高給ではないにしても就業条件が恵まれている、しかも、親方日の丸で倒産や廃業などの心配もない、と相場が決まっていますが、実は、特に地方の役所では非正規公務員が無視できない比率を占めて、不安定な低給与で仕事している実情があります。というのも、本書でも指摘しているように、公務員、特に私がそうだったようなキャリアの国家公務員というのは、広く知られているように、いわゆるゼネラリストであり、官民癒着の防止の観点からも定期的な人事異動がある一方で、専門性が高くて同じ職場に居続けるような専門職のような公務員は、特に地方公務の場に多いわけですが、非常勤、あるいは、非正規の公務員で運営されています。本書でも、社会保障のケースワーカーやいろんな相談窓口の相談員が上げられています。それ以外にも、総定員法のために正規で採用されない臨時教員も少なくありません。その上に、学校や公務の職場では仕事量の増加が著しく、人が増えないのに仕事だけは増えていくのが実情です。従って、そういった職場では非正規公務員で回していくことになります。広く知られているように、公務員の採用には試験があり、私はもちろん試験に合格していますし、その上に、その昔の国家公務員Ⅰ種経済職の試験委員として公務員試験を作成したりもしていました。まあ、公務員試験を作っていた公務員は極めて限られていますが、正規職員である公務員は大多数が試験に合格しているわけです。他方で、非正規公務員は試験合格者はほとんどいません。公立図書館で非正規に雇われて司書をしている人は司書資格を持っているようですが、通常のオフィスで働いて事務に従事している非正規職員は試験を受けていません。本書ではこの点はまったく指摘されていませんが、場合によっては正規公務員と非正規公務員の差を説明する場合に援用されたりしています。私はこの点にも反論して欲しかった気がします。いずれにせよ、同一賃金同一労働がまったく無視され、一般的な企業に適用される雇用関係法が適用されず、雇用者の保護が図られていませんから、逆に悲惨な場合も少くありません。私は国家公務員の場合しか知りませんが、地方公務員はもっと激しく格差が大きいという本書の指摘もあり得ることだという気がしています。公務員だけでなく、正規と非正規の格差の解消のため、同一労働同一賃金など、必要な政策を取る義務が政府や地方公共団体にはあります。

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次に、高橋進『生物多様性を問いなおす』(ちくま新書) です。著者は、環境省のOBです。国連のSDGsの中でも、地球環境問題としては気候変動、いわゆる地球温暖化がクローズアップされていますが、同時に生物多様性についてもかなり深刻な状況であることは確かです。本書でも、明示されていませんが、ダイアモンド教授の言葉を引いて、飛行機の多数のリベットのひとつが抜け落ちることの影響などの観点から、生物多様性をとても重視しています。同時に、外来種についても議論していて、いろんな実例を引いています。私は二酸化炭素排出の問題については、紀要論文で環境クズネッツ曲線の推計をしたこともあり、少し勉強していたつもりなのですが、生物多様性については大学の授業で環境にサラリと言及するくらいで、もう一度調べ直すつもりで読んでみました。というのも、地球の生物の歴史の中で、今まで5回の生物の大量絶滅があり、白亜紀末に恐竜が絶滅したのはよく知られています。そして、外来種の侵入も同じなのですが、現状で生物多様性をキープしていくのがいいのか、それとも、少し時代を戻すくらいに生物多様性を取り戻すべきなのか、取り戻すとすれば、いつの時点がもっとも望ましいのか、という点が私には不明です。本書を読んだ後でもまだ理解できていません。地球温暖化については、一定の数値目標があって、工業化が大きく進展する産業革命以前と比べて、2℃以下の上昇に抑える、ということで合意があります。しかし、生物多様性については気温のように単純な数字で把握できるわけではなく、レッドブックが有名ですが、マイクロに個別の絶滅危惧種の指定があるだけで、マクロの数値目標のようなものが設定できるのか、あるいは、計測の方法論が確立されているのか、といった基礎的な疑問が解けません。本書では、前近代の大航海時代などにおけるプラント・ハンターから始まって、植民地経営の一種であったプランテーション、あるいは、キリスト教的な人類中心の視点がよくないとか、いろいろと議論されていますが、やっぱり、何らかの目標がなく、単に生物多様性を維持するというだけでは、議論も進まないような気がしてなりません。そういった具体的な議論を進められるような啓蒙書のようなものが必要です。

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次に、近藤史恵『インフルエンス』(文春文庫) です。著者は、ミステリ作家であり、私は「サクリファイス」のシリーズはじめ、いくつか愛読しています。また、本書については、2021年3月から橋本環奈・葵わかな・吉川愛の出演でWOWOWにおいてドラマ化されています。なお、2017年に単行本として出版されているのですが、私は今年2021年1月出版の文庫本で読んでいます。本格的なストーリーは、主人公の中学時代から始まり、小学校低学年のころに友人だった同じ団地の少女、あるいは、中学校に東京から転校してきた少女、この3人を軸に、タイトル通りに影響を及ぼし合い、お互いに排除して欲しい人物を殺す、という物語です。物語はメタ構造になっていて、主人公が著者に話すストーリーを小説化する、という形を取っているのですが、実は著者も3人の少女が通う同じ中学校の同じ学年であった、という事実が明らかになり、しかも、少女のころから40歳を超えるころまで、極めて長期に渡るストーリーで、その間に関係が途切れた期間もかなり長い場合があり、加えて、大阪で始まったお話が長期に渡る期間で東京、というか、首都圏を舞台にしたりと、決して、読みこなすのが難しいわけではありませんが、錯綜した時間的地理的な状況を把握するのもひと苦労な気がします。もちろん、人の取り違え、あるいは、偽装などもありますし、殺人犯が実は別の加害者である、といった場合あり、何とも、解きほぐすのがタイヘンです。中学校のスクール・カーストから始まって、高校・大学、そして、最終的には職業上の成功などまで、いろいろと衝撃の事実とともに真実が明らかにされ、最後の最後に、著者が気づいてしまう形で新事実も明らかにされます。今までのお話は何だったのか、という新たな謎だったりします。私はこの作者の「サクリファイス」の自転車のシリーズが好きなのですが、どちらもやや重い内容かもしれません。

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最後に、あさのあつこほか『1日10分のぜいたく』(双葉文庫) です。表紙画像に見えるように、NHK国際放送のラジオ番組で世界17言語に翻訳して朗読された小説を集めています。このシリーズは3冊めで、以前に『1日10分のしあわせ』と『1日10分のごほうび』が出版されています。8話の短編を収録しているアンソロジーです。あさのあつこ「みどり色の記憶」、いしいしんじ「果物屋のたつ子さん/神主の白木さん」、小川糸「バーバのかき氷」、小池真理子「テンと月」、沢木耕太郎「ピアノのある場所」、重松清「おまじない」、髙田郁「ムシヤシナイ」、山内マリコ「ああ幻の東京五輪 世田谷区」、「団地への招待 板橋区」、「日本インド化計画 江戸川区」、「東京の誕生 東京都」といった作品が収録されています。そう数えればいいのか、やや迷います。ということで、いろんな作家の短編が収録されているわけですが、それなりに定評ある作者であり、作品の質はかなり高いと私は受け止めました。ただ、私の誤解かもしれませんが、最後の山内マリコの作品は必ずセックスが出て来ると誤解していたので、NHKで大丈夫か、という心配はありましたが、私の誤解でした。山内マリコの小説はネコもセックスするという印象だったのですが、そうでない小説もいっぱいあって、私が読んでいないだけなのでしょう。すべてに、質の高い短編であり、それでも、決して重かったりするわけでもなく、ちょっとした時間つぶしには最適です。ただし、200ページ足らずですので、潰すのも1時間ほどで読み終わってしまうという恨みは残ります。

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