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2021年7月31日 (土)

今週の読書は興味深い経済書をはじめとして計5冊!!!

今週の読書は、副業という今までになかった経済学的な観点からの研究所をはじめとして、新書に至るまで、大なり小なり経済的な観点を取り入れた本ばかり、以下の通りの計5冊です。なお、毎週お示ししておりますところ、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、今日取り上げたものを含めて7月で26冊、これらを合計して138冊になりました。来週、というか、この先8月の夏休みシーズンに入ります。大学教員になって、何がうれしいかというと夏休みがもっともうれしいわけで、昨年は赴任初年でがんばって短い学術論文を書いて紀要に投稿したんですが、今年はのんびりと過ごしたいと考えています。読書も気軽なものに切り替え、ペースも少し落とそうと予定しています。

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まず、川上淳之『「副業」の研究』(慶應義塾大学出版会) です。著者は、東洋大学の経済学研究者です。タイトルにある「副業」がどうしてカッコに入っているのか私には不明なんですが、通常、副業といえば本業に対応したサイドビジネスで、本書の指摘するように、追加的な所得を得る目的で、あるいは、趣味に近いものまで、いろいろとあり、特に最近では、政府の働き方改革のひとつの項目にすら取り入れられています。単に雇用者が別の仕事を持つ場合だけではなく、経営者が事業を多角化する場合も含めて、さまざまな分析が可能です。もちろん、私が定年まで働いていた公務員という職業は副業が許容されておらず、私も当然に副業の経験ないことから、実感としては副業について読後の現時点でもまだ理解がはかどらないものがあります。本書で展開しているように、特に、2章の労働経済学によるモデル分析とともに、どういう属性の人が副業をしているのかというのは、定量的な観点からは興味深いのですが、所得が低いなどの極めて想像しやすい結果が出ているだけだという気もします。それ以外に、第6章以降で副業が本業のパフォーマンスを高めるか、イノベーションへの影響があるかないか、あるいは、幸福度の観点からの副業の研究もいくつか見るべきものがあります。こういった心理学的な要因も今後は大いに注目されていいのではないかと感じました。中でも、印象に残ったのは、専門外の経営学の分野ながら、第6章で展開されている「越境的学習」と呼ばれるフレームワークを用いて、副業のスキル向上効果を検証している部分です。経営学で注目されているそうであり、通常の職場の外での経験が学習効果を持つという考えで、政府の働き方改革の議論の中で、副業が注目された要素のひとつもともいわれています。いわゆる learning by doing を進化させたようなスキルを高める効果を認める考え方であり、私の方で十分に理解したとはいえないかもしれませんが、とても興味深い研究です。今後、必要に応じて勉強を進めたいと思わせる内容でした。

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次に、鶴光太郎『AIの経済学』(日本評論社) です。著者は、官庁出身で現在は慶應義塾大学の研究者です。本書では、AIをインプットからアウトプットを予測するという観点から定義し、ディープラーニングによる暗黙知の領域の能力の獲得、資格表現された大勝への拡大などの特徴を備えていると指摘していま。その上で、AIがどのような経済的な影響を持っているかについて、労働市場、スキル形成、企業・産業、政策、あるいは、コロナとの関係などなど、基本的に、ポジティブな影響をケール・スタディにてさまざまな例を上げています。ジャーナリスト的なケース・スタディですので、当然、別の取材をすれば逆の例もあると思いますが、現時点までは成功例がもてはやされるんだろうと私は理解しています。ただ、AIの利用可能性という根本問題については、まったく考慮されていないように見受けられます。おそらく、今後、AIの利用可能性が大きく拡大し、私のような一般ピープルにでも手軽に低額で利用可能になる方向にあることは事実なんでしょうが、現時点での利用可能性には大きな格差があると考えるべきです。ですから、マイクロな市場におけるダイナミック・プライシングなんかでは、AIの利用可能性に差があって、企業がおそらく大部分の消費者余剰を吸い上げる形での価格付けを可能にし、AIの利用可能性の高い経済主体、例えば企業が、そうでない家計などから所得移転を受けるという格差を拡大する方向で利用される可能性が高いことは認識すべきです。教育や広い意味でのスキル形成などについても、ご同様に、個々人感での格差を拡大する方向に利用される可能性が極めて高いと考えられます。逆に、AIを格差縮小に利用できる例のあるんではないか、と私なんかは考えるんですが、そういった方向に本書は目が向いていません。私の専門外ながら、マルクス主義経済学なんかでは資本主義的な生産様式での固定資本利用の限界、で切って捨てそうな気がしないでもないんですが、もう少しエコノミストが知恵を出すべき観点だという気はします。

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次に、ニコラス・レマン『マイケル・ジェンセンとアメリカ中産階級の解体』(日経BP) です。著者は、『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『ニューヨーカー』などで活躍したジャーナリストです。英語の原題は Transaction Man であり、2019年の出版です。英語の原題も邦訳タイトルも、私にはよく理解できないのですが、本書では、良き社会を形作るために、いかに経済を組織化するか、というテーマで書かれています。もっとも、実際には20世紀初頭からの米国経済の歴史書として読むことが私のオススメです。そして、いくつかの時代ごとに xx Man などを典型的な章別タイトルにしつつ、それとの関連深い歴史上の人物を章ごとに取り上げています。第1章の組織人間はアドルフ・バーリ、第2章の組織の時代はピーター・ドラッカー、第3章の取引人間はマイケル・ジャンセンであり、第3章のタイトルだけでなく本書の英語の原題となっています。第4章と第5章の取引の時代がアラン・グリーンスパンとジョン・マック、第6章のネットワーク人間がリード・ホフマン、といった具合です。最初のバーリは政府に経済的な権限を集中して経済運営を改善することであり、独占的な大企業を適切に規制して、中小企業の利益を守ることと分析されています。この段階では消費者はまだ現れません。刑事足掻的にはスミス的な完全競争市場の時代といえます。その次に、GMなどを典型とする大企業が成立してドラッカー的な経営システムにより生産性を向上させ、ジェンセンらから生まれたエージェンシー理論が企業の利害関係、すなわち、プリンシパルたる株主の利益をいかにエージェントである経営者に伝えるかが分析されます。そして、レーガン-サッチャー期に製造業から金融業に経済の重心が移り、米国の中央銀行であるFEDのグリーンスパン、あるいは、投資銀行の経営者が経済の表舞台に立つようになります。そして、最後は現在進行中のネットワーク社会の成立となります。デジタルをキーワードにしてもいいかもしれません。この時代を代表させているホフマンはLinkedInの創業者です。製造業のいわゆるメインストリームから金融業、そしてネットワーク産業へと米国経済の中心が移行するに従って、企業だけではなく消費者などがいかに経済行動を変容させていったか、という点を著者はていねいに追っています。ただし、そこはジャーナリストですので、エコノミストのようにバックグラウンドに何らかの経済モデルを想定することなくファクトを並べているだけ、という批判はあり得ます。

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次に、藤井彰夫『シン・日本経済入門』(日経文庫) です。著者は、日経新聞のジャーナリストです。出版は日経文庫なんですが、大きさからして新書の扱いかという気がします。ということで、第1章で、クロノロジカルでなく平成から令和の日本経済を振り返った後、デジタル経済、地球温暖化対策、人口減少と少子高齢化、金融財政政策、グローバル経済と日本経済そのものを中心に日本を取り巻く経済社会環境まで含めて議論を展開しています。私は、エコノミストとして、平成経済、特に、バブル崩壊後の日本経済は圧倒的に需要不足が問題であり、その需要不足は人口減少に起因するわけではない、と考えていますが、やや私の考えとは違うラインで議論が進められている気がします。特に、私は何らかの係数が構造的に一定に近いという議論が混乱を招いている気がします。典型例は、人口規模が経済にどのように影響を及ぼすかについては、時々で異なる議論があるわけで、マルサス的な窮乏化論もあれば、現在のような人口減少が需要減退を引き起こすという議論もありえます。GDPの付加価値と二酸化炭素排出に一定の比率があるように見えることから、地球環境問題の解決には「脱成長」が必要と考えるエコノミストも少なくなく、そのために、晩期マルクスを「発見」した『人新世の「資本論」』なんて本が話題になったりしました。デフレ脱却のために貨幣数量説に基づいてマーシャルのkの安定性に依拠して貨幣供給を増加させれば物価上昇が生じるとの日銀の異次元緩和は今のところ不発に終わっています。ここに上げたあたりは、議論が雑な気がしますが、本書でもご同様であり、新書という手軽なメディアですから許容されるとはいえ、ここまで需要サイドを無視した議論の展開は、少し疑問が残ります。

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最後に、本間正人『経理から見た日本陸軍』(文春新書) です。著者は、防衛装備庁に長らく勤務した経験を持つ研究者です。タイトル通りの内容で、「予算がなければ戦争ができない」という明白なテーゼを検証しています。エコノミストの私から見れば、高橋財政によって国債の日銀引受から財源を作り出して、その一定の部分が軍備に回ったわけですし、私が勤務していた官庁なんぞとは違って、軍隊には極めて多額の予算が投入されていたのであろうことは軽く想像できます。私の使っていたノートPCに比べて、戦車や戦闘機や軍艦はメチャクチャに高いんだろうという気がします。しかも、そういった装備品については、外部の企業から買ってきた部分も少なくないんでしょうが、兵器廠というのがあるわけですから軍隊内部で製造していた部分もあって、その原価計算の詳細なども興味あるところです。もちろん、装備品といった固定資産的な部分だけでなく、本書では、一般の興味も引きそうなお給料とか、食事とか、酒保と呼ばれる売店での価格とかも豊富に収録しています。ただし、海軍に比較して作戦展開のやや狭い陸軍が対象なので、その点からすれば、もっと広い地域で展開する海軍の経理も知りたかった気がしないでもありません。最後に、私の目を引いたのは、やっぱり、お給料の格差です。現在では米国の経営者と新入社員の格差が数百倍などと報じられていますが、陸軍においては徴兵されて衣食住を支給されるとはいえ、初年兵のお給料はスズメの涙であり、高級将校とは100倍近い差があった、というのはまあ、そんなもんかという気がします。戦地で実力を行使して、無理やりに物資を調達した場合も少なくないんでしょうが、経済学に則って市場で調達したケースもいっぱいあるわけで、まあ、軍隊や戦争というテーマには私は違和感覚えなくもありませんが、市場や経理の側面から軍隊を観察するのもアリかという気も同時にします。少し前に話題になり映画化もされた『武士の家計簿』みたいなところもあります。

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