7月統計の米国雇用統計はかなり強めの数字ながら慎重な見方も必要か?
日本時間の今夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録しており、本日公表の7月統計では+943千人増の大幅増を記録しています。同時に、失業率は前月の5.9%から7月には5.4%に大幅に低下しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の4パラだけ手短に引用すると以下の通りです。
Economy adds 943,000 jobs in July despite COVID surge, worker shortages as unemployment falls to 5.4%
U.S. hiring surged again last month as the economy continued to reopen, with employers adding 943,000 jobs despite a spike in COVID-19 cases as persistent worker shortages appeared to ease.
The unemployment rate, which is calculated from a separate survey of households, tumbled from 5.9% to 5.4%, the Labor Department said Friday.
The job gain, the largest since August 2020, topped the 900,000 projected by economists surveyed by Bloomberg.
So far, the U.S. has recovered 16.7 million, or 74%, of the 22.4 million jobs lost last spring, leaving the nation 5.7 million jobs below its pre-pandemic level.
まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。
引用した記事の3パラ目にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+900千人の雇用増が予想されていましたので、+943千人増はやや強めの数字と受け止められています。しかも、失業率も大きく低下しています。ただ、引用した記事の最後の4パラ目にあるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で失われた雇用22.4百万人のうち、74%の16.7百万人の雇用が取り戻せたところですから、まだ、パンデミック前の水準から比べて▲5.7百万人の雇用が減少しているわけですので、この先も雇用に置いては強い数字が続く可能性が十分ある、ということになります。もっとも、必ずしも楽観的な見通しばかりではありません。広く報じられている通り、新たなデルタ株の変異ウィルスの感染力はかなり強力なようですし、米国で再び感染が拡大しているのも事実です。加えて、ワクチン接種が遅れているアジアの生産が米国の景気拡大ペースに追いつかずに、新たな供給制約が生じる可能性も指摘されています。米国労働市場だけに着目すると、アイダホやモンタナなど、いくつかの州で失業給付に加算された上乗せ部分を6~7月に前倒しで打ち切る動きもあります。米国労働市場のモビリティは日本より格段に高いのですが、どこまで労働市場の調整に役立つか、今回ばかりは未知数です。
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