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2021年9月25日 (土)

今週の読書はデータのまやかしに関する専門書とミステリも2冊ずつあって計6冊!!!

今週の読書は、データのまやかしに関する専門書、まあ、経済書と私はみなしていますが、同じ方向を向いた本が2冊、東野圭吾のガリレオ・シリーズ最新刊に加えて、新書や文庫本など計6冊です。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、本日取り上げた6冊を含めて7~9月で65冊、これらを合計して177冊になりました。9月については、明日からも9月ではありますが、本日から先は10月カウントということにしようと考えています。今年2021年の新刊書読書はほぼほぼ確実に200冊を超えるものと予想しています。なお、来週から授業が始まりますので、読書の方は少し後回しになるかもしれません。

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まず、カール T. バーグストローム & ジェヴィン D. ウエスト『デタラメ』(日本経済新聞出版) とピーター・シュライバー『統計データの落とし穴』(ニュートンプレス) です。です。著者は、まず、『デタラメ』の方は、ともに米国ワシントン大学の研究者であり、専門は必ずしも同じではないのですが、データ関係に強い分野を研究しています。そして、『統計データの落とし穴』の方は、カナダのカルガリー市の都市計画官だそうです。いずれも、統計やデータに惑わされないようにという目的で書かれた教養書であり、冒頭のグッドハートの法則から始めているという共通点があります。グッドハートの法則とは、「指標が目的になると、その指標は機能しなくなる」というものなんですが、私はこれには懐疑的です。すなわち、経済分野においてはGDP、あるいは、その成長率、また、物価指数、または、その増加率であるインフレ率、失業率などなどの代表的なマクロ経済の指標については、まさにそれを目標とする政策運営がなされていて、今のところ、批判が少なくないとはいえ、こういった経済指標が機能しなくなっているとはとても思えないからです。私のこのブログもそうですが、シンクタンクや金融機関の調査部なんかで、こういった経済指標の解説を一所懸命にやっている人はいっぱいいます。ただ、もちろん、『デタラメ』で指摘しているように、相関関係を因果関係であるかのように誤解させかねない表現を用いたり、ランダムなサンプルではなく特定の目的に合致するようなサンプル構成のバイアスがあったりするのは事実ですし、『統計データの落とし穴』で取り上げているように、モロのデータ改竄が横行しているという事実も見逃せません。ただ、いずれにしても、こういったデータに関するリテラシーを高める必要があるのは、基本的に、経済学を学ぶ必要と同じで、データに、あるいは、データを扱う人に騙されないようにするためです。経済学については古くからロビンソン教授の名言 "The purpose of studying economics is not to acquire a set of ready-made answers to economic questions, but to learn how to avoid being deceived by economists." が妥当しますし、データ・サイエンスについても同様な気がします。ともかく、何を知りたくて、それを直接知ることが出来ないから、何を代理変数(PROXY)にして計測するのか、そして、その結果をどのように解釈すべきなのか。決定論的か、あるいは、確率変数なのか。本書でも、"Garbage In, Garbage Out" というのは出て来ますが、ホントに正しい結果を得ようとすれば、正しいデータを入れて、正しく処理=プロセスしなければなりません。インプットするデータが正しくなかったり、あるいは、処理=プロセスが正しくなかったりすれば、正しい結果は得られません。その上、我々一般国民を欺いて、騙して、引っかけて、どういう表現でもいいですが、エコノミストからすれば、本来の選好に歪みを生じさせて選択させようとする輩がやたらと多いのも事実です。さらに、時折、というかかなり頻繁に、我々自身が「本来の選好」というものを見失っていることも事実だったりします。でも、そこまで行くと不可知論に陥ってしまいそうですから、あくまで、本来の正しい選好というものがあるという前提で、それを歪めようという試みに世の中は満ちていて、それを排除する必要も高まっていることも事実です。ですから、こういったデータについての教養書も必要とされるゆえんです。

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次に、東野圭吾『透明な螺旋』(文藝春秋) です。著者は、国内でも有数の売れているミステリ作家ではないかと思います。本作品は、著者の代表作であるガリレオ・シリーズの最新作で、書き下ろしの長編です。とはいっても、実は、ミステリとしての肝である謎解きとしては、それほど大したことはありません。結婚前の同棲段階ながら、DV男が殺されるという犯罪なのですが、犯人や手口は、まあ、何と申しましょうかで、実は、本作品のメインではないのかもしれません。では、何が本作品のメインかというと、ガリレオこと、湯川教授の家族を含めた実像、ということなのかもしれません。というのは、出版社のサイトでは、「シリーズ第10弾」はまあいいとしても、「今、明かされる『ガリレオの真実』」という謳い文句が踊っています。大学の同級生だった草薙係長が湯川教授を訪ねて行くのは、横須賀にある湯川教授の両親の住む実家っだったりします。ただし、別に、湯川教授の実の母親がいたりもします。そして、その実の母親がDV男の被害を受けていた女性をかばっての逃避行に同行し、湯川教授から警察情報を得ていたりします。その上で、私はこの著者の法律遵守の精神や倫理観が極めて固くて、例えば、伊坂幸太郎なんかと比べて、やや面白みに欠けるような印象を持っていましたが、この作品では、湯川教授が偽りの証言を教唆したりしています。ガリレオ・シリーズの従来路線から、かなりの印象の違いを生じているわけですが、私は賛否両論あるような気がします。当然、謎めいたガリレオこと、湯川教授の実像、というか、出版社の謳い文句からすれば「ガリレオの真実」に迫りたいという読者の要望は、私は十分理解できます。しかし、他方で、個人としての湯川教授に関する情報は必要最小限で十分であり、名門大学の理系の教授職にあって、警視庁の刑事の大学の同級生、そして、何よりも合理的な思考を最優先する合理主義者、ここまで判っていれば、後は謎のままに残されていいという意見もあり得ます。私はどちらかといわなくても、圧倒的に後者です。ガリレオこと、湯川教授の家族や私生活はそれほど興味なく、ホームズのように時折コカインをキメていたりすれば話は別ですが、表現は悪いかもしれませんが、ゴルゴ13のように出生や育ちは謎のままであっても何ら問題ない、というか、その方が謎めいていて大いに結構、という気がします。さて、本作品以降のシリーズがどのように進むのか、とても興味ありながら、ちょっとスライスしたカナ、というのが私の印象です。私のように、ガリレオ・シリーズを愛読・完読している読者はいいのですが、それ以外の読者にはそれほどオススメできません。

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次に、鈴木宣弘『農業消滅』(平凡社新書) です。著者は、農水官僚から学界に転じた農業経済学の研究者です。本書では、基本的に、我が国の農政が失敗したために食料自給率が低下し、食料安全保障の観点からも好ましくない、という内容なんですが、日本の農政がどうして失敗だったのかの大きな要因として、対米従属下の米国企業への配慮、というか米国企業の利益増進に屈服したことが取り上げられていて、日本の政治が大きく歪められている対米従属のもっとも重大な影響が出ているのが農政である点は私も賛成です。本来、日本人の安心・安全のためになされている食品に関する規制についても、米国企業の要求を幅広く受け入れる形で歪められている点が明らかにされています。特に、欧州が米国の要求に屈しないのに比べて、日本の対米従属の姿が浮き彫りにされています。ただ、私がもっとも重要と考えたのが農家に対する補助のあり方です。この点については対米従属から少し離れますが、欧米先進国の農政がかなり手厚い農家保護を実施ている一方で、我が国ではほとんど農家保護がなされておらず、農政の失政がもっともよく現れている点だと私は認識しています。農家への所得保障などとともに、貿易自由化が自動車をはじめとする工業製品の輸出促進に偏重している一方で、農産物の保護が置き去りにされ、農家経営とともに国民の健康や安全が軽視されています。やや陰謀論的な趣きは感じられますが、説得力ある議論が展開されています。

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次に、小原嘉明『本能』(中公新書) です。著者は、東京農工大学名誉教授の進化生物学の研究者です。本書では、学習して獲得された能力に対する本能について論じています。すなわち、草食動物は生まれた途端に足で立って歩いたり、走ったりすることが出来ますし、鳥のヒナは親に教わらなくても飛ぶことが出来ますし、こういった生まれてすぐの赤ちゃんの行動から、私のような専門外の人間でも本能が感じられます。特に、本書の著者は進化生物学者ですから、雄と雌の生殖活動や子育てなんかにも目が行き届いています。というか、そちらが主たる内容になっています。例えば、雄と雌の生殖については、弱い雄もそれなりの知恵を働かせて子孫を残す行動に出たりしますし、力の強い雄が弱い雄を圧倒して駆逐するわけではない点は、なるほどと思わせる説得力がありました。婚外生殖についても、雌が婚外生殖を行っても子孫の数には大きな変化ないのに対して、雄が婚外生殖を行うと子孫の増加につながる可能性が大きくなる、など、人間社会でも通用しそうな観点が提供されています。もっとも、「人間サマ」ほど高度に発達してしまうと、そこまで「本能的」な進化生物学的観点から行動しているわけではないと私は考えますので、不倫を正当化しようとは思いません。その点から、第8章最終章の人間の本能の章は面白く読めました。

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最後に、M.W. クレイヴン『ストーンサークルの殺人』(ハヤカワ・ミステリ文庫) です。著者は、英国のミステリ作家であり、本書は著者の第3作目にして、ワシントン・ポーを主人公とするシリーズ第1作であり、2019年の英国推理作家協会最優秀長編章(ゴールド・ダガー)受賞作品です。英語の原題は The Puppet Show であり、2018年の出版です。邦訳タイトルの通り、ストーン・サークルで連続殺人があり、その中に死体にワシントン・ポーの名を刻んだものが含まれていたことから、休職中のポー刑事が捜査に駆り出されます。ワシントン・ポーは国家犯罪対策庁(NCA)の重大犯罪対策課(SCAS)に所属する刑事であり、情報の漏洩に関してミスがあって停職中でした。ポーの捜査は、天才分析官のティリー・ブラッドショーとペアを組んで始められ、当然ながら、真犯人を突き止めるのですが、その昔の児童保護施設におけるおぞましい人身売買などの過去につながって、全容が解き明かされます。それほど読後感はいいわけではありませんし、特に、謎解きに感心するわけではありませんが、推理小説としてはとても上質なものを感じられると思います。文庫本で600ページ近い大作ですので、細かい点までよく留意された秀作です。

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