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2021年9月24日 (金)

前年比横ばいを記録した消費者物価指数(CPI)上昇率はこのまま上昇に転じるか?

本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て、前年から横ばいを記録しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.5%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、8月は横ばい 13カ月ぶり下げ止まり
総務省が24日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)によると、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は99.8と前年同月に比べて横ばいだった。前月まで12カ月連続でマイナスだったが、下げ止まった。携帯電話の通信料が下がったが、前年の観光需要喚起策「Go To トラベル」の反動で宿泊料が上昇した。
特殊な政策要因を除いた物価の上昇基調は弱く、デフレからの本格脱却は見通せない。
品目別にみると宿泊料は46.6%上がった。20年7月下旬にGo To トラベルが始まり、同8月以降、本格的に利用された。現在は一時停止しているため消費者の負担が増え、21年8月は反動で上昇した。巣ごもり需要によりルームエアコンも10.6%上がった。
エネルギー全体では5.5%上昇した。灯油は20.0%、ガソリンは16.9%上がった。電気代は0.9%上昇し、1年11カ月ぶりにプラスとなった。
携帯大手の格安プラン販売などにより、携帯電話の通信料は44.8%低下した。天候不良で20年は供給が不足し価格が上がっていた生鮮野菜も、その反動で21年8月は18.0%下がった。
総務省は7月発表分の指数から算出基準を5年ぶりに改定した。5月、6月分の速報値ではプラスと公表したが、新たな基準を遡って適用した結果、7月まで12カ月連続マイナスとなっていた。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは横ばいの予想でしたので、ジャストミートしています。国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、ガソリン・灯油などのエネルギー価格が前年同月比で+5.5%の上昇を見せて、ヘッドライン上昇率に対して+0.39%の寄与を示した一方で、政策要因に近い通信料(携帯電話)が大きなマイナス寄与を示しており、前年同月比▲44.8%の下落で、▲1.23%の寄与となっています。コアCPIの前年同月比は横ばいながら、ヘッドラインは▲0.4%の下落ですので、政府からの強い圧力で値下げを余儀なくされた携帯電話通信料がヘッドラインCPIを引き下げているわけですもちろん、家計からすれば携帯電話通信料の引き下げは好ましいのかもしれませんが、マクロ経済のデフレ脱却の観点から見れば、インフレ目標に向けた日銀金融政策の足を引っ張っている可能性はあります。
いずれにせよ、2020年=100への基準改定で、コアCPI上昇率は一時的にマイナスとなったものの、早くも8月統計では横ばいとなり、先行きの物価動向を考えると、国内外の景気回復とともに緩やかな上昇に転じていくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、最近時点では+5%超の前年同月比上昇率を示しています。物価は上昇基調にあると考えるべきです。もっとも、もうひとつの政策要因として、引用した記事にもやや違う形で言及されている「Go To トラベル」が、今後、またしてもデフレ脱却の障害になる可能性は指摘しておかねばなりません。

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