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2021年9月17日 (金)

ご寄贈いただいた『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2021年前半』(論創社)を読む!!!

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『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2021年前半』(論創社) をご寄贈いただきました。何人かの執筆陣の中に同僚教員が入っていて、その方からのご寄贈です。もっとも、「定点観測」と銘打っていて、その第3弾なのですが、不勉強にして第1弾と第2弾を読んでいないものですから、中途半端な理解で終わっているような気もします。ただ、経済については、第1段と第2弾についても簡単に振り返り、というか、おさらいがありましたので、その分、やたらとページ数が長くなっているきらいはあるものの、その経済編について中心に感想文を残しておきたいと思います。といいつつ、まずは、収録されている分野執筆陣については以下の通りです。

  • [医療]「変異株の蔓延とワクチン接種の遅れ」斎藤環
  • [貧困]「貧困の現場から見えてきたもの 3」雨宮処凛
  • [ジェンダー]「コロナ禍とジェンター 3」上野千鶴子
  • [メディア]「危機の時代のジャーナリズム」大治朋子
  • [労働]「コロナ禍の労働現場 3」今野晴貴
  • [文学・論壇]「コロナと五輪と戦争のアナロジー」斎藤美奈子
  • [ネット社会]「職場で一人の女性が死んだ」CDB
  • [日本社会]「コロナ禍中脱力ニュース(2021年前半)」辛酸なめ子
  • [日本社会「続々・アベノマスク論」武田砂鉄
  • [哲学]「コロナ禍と哲学 3」仲正昌樹
  • [教育]「子どもと学生の生きづらさ」前川喜平
  • [アメリカ]「新型コロナ日記 イン アメリカ 3」町山智浩
  • [経済]「まだまだ進むコロナショックドクトリン」松尾匡
  • [東アジア]「コロナ禍と東アジア(ポスト)冷戦 3」丸川哲史
  • [日本社会]「甘ったるくてポエジーで楽観的な未来への視点を修正する」森達也
  • [ヘイト・差別]「コロナ禍のヘイトを考える 2」安田浩一
  • [おまけ]「論創社のコロナ日記」谷川茂

ということで、タイトルの最後に「3」とあったり、「続々」がついているものは。まさに、第3段ということなのでしょうから、不勉強な私は不十分な理解で終わっていますが、前2弾のおさらいのある経済編は「コロナショックドクトリン」をひとつのテーマにしていて、まさに、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を踏まえたタイトルになっています。このクライン女史のエッセイでは、ハリケーン「カトリーナ」の被害によるニュー・オーリンズの低所得者向け住宅や公立学校の一掃に関する取材から始まって、自然災害や政変など、経済学的には不連続と見なされる微分不可能点で政策が一変され、惨事に便乗して市場原理主義的な政策に変更される手法について論じていますが、これを新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに適用しているわけです。そして、零細企業淘汰の東京財団=アトキンソン路線を批判しつつ、大きな政府や反緊縮路線を目指す動きを紹介し、さらに、経済産業省が打ち出した「経済産業政策の新機軸 ~新たな産業政策への挑戦~」にも、批判的な観点を含めて言及しています。この経済産業省のリポートは、6月の産業構造審議会総会において公表されたものであり、明らかに「ガバメントリーチの拡張」を目指しています。リポートでは、中米欧の政策動向を同じラインにあるものと紹介したり、ロドリック教授やスティグリッツ教授などのアカデミアの議論も取り上げています。国内でも、例えば、ダイヤモンド・オンラインでも「コロナ禍の今、経済産業省が『大きな政府』に大転換した "切実な理由"」なんぞと、注目されたりもしています。
私は、半面で、産業政策的には、こういった保護主義的な産業政策や貿易政策、あるいは、食料安全保障も視野に入れた農業政策などが必要であり、そのために、大きな政府というか、財政拡大が求められており、同時に、需要を拡大させるような「高圧経済」を目指す政策、すなわち、需給ギャップを埋めるどころか、需給ギャップを需要超過に持っていくような政策が必要という点ではまったく同意します。ただ、残る半面では、格差についても目を向けて欲しい気がします。例えば、明日の読書感想文で取り上げる予定の山形浩生『経済のトリセツ』にもあるように、高所得層がすべてを自己能力や自助努力で高生産性を実現しているわけではなく、Googleに働く高所得者は、スタバの低賃金な非正規労働者が提供するコーヒーがなければ生産性が上がらない場合もあるわけですし、彼らの清潔なオフィス環境はエッセンシャルワーカーによって支えられている部分もあるわけです。そして、「自助、共助、公助」を掲げた政権は退陣するわけですし、公助を支えるのが大きな政府ではあっても、米国バイデン政権が企業や個人富裕層への増税を目指し、OECDで企業課税に関して base erosion and profit shifting (BEPS) の議論も活発になっていますので、反緊縮の財政支出拡大の一方で、歳入面を通じた分配にも目が届く政策の必要性がもっと認識されるべきであると考えています。

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