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2021年10月21日 (木)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「原油価格の上昇が国内の物価動向に与える影響」のリポートを読み解く!!!

昨日10月20日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「原油価格の上昇が国内の物価動向に与える影響」と題するリポートが明らかにされています。石油価格は最近時点で1バレル80ドル程度まで上昇してきており、欧米先進国ではインフレ懸念が高まっています。もちろん、我が国でも石油価格のインパクトは小さくなく、このリポートでは石油価格の上昇が日本の消費者物価(CPI)に及ぼす影響が試算されています。簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから 図表1.原油価格の推移 を引用しています。見れば明らかな通り、石油価格は世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、2020年4月に1バレル当たり20ドルを下回る水準まで落ち込んでいます。その後、世界景気の持ち直しや石油輸出国機構(OPEC)とロシア等の非OPEC産油国で構成するOPECプラスによる協調減産を受けて持ち直し、2021年10月半ばの時点では1バレル当たり80ドル程度とCOVID-10パンデミック前の水準を上回って推移しています。どこまで上昇するのでしょうか?

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続いて、上のグラフはリポートから 図表3.消費者物価指数の推移 を引用しています。消費者物価指数(CPI)のうちの生鮮食品を除くコアCPI上昇率は、2021年8月統計では前年比横ばいにとどまっています。もっとも、エネルギーを除いた日銀版CPIコア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)では前年比▲0.5%とマイナス圏のままですから、石油価格の上昇を受けた+5.5%のエネルギー価格の上昇が消費者物価を下支えしている形になっています。

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続いて、上のグラフはリポートから 図表5.原油価格が1割上昇した場合の産出価格の上昇率 (個別業種) を引用しています。2015年基準の産業連関表から石油価格が10%上昇した際に、輸入コストの増加分がすべて価格に転嫁されると仮定すると、企業の産出価格は総平均で+0.4%程度の上昇となるとの試算結果を示し、その個別業種ごとに石油価格上昇の影響を上のグラフではプロットしています。当然、石油・石炭製品や電力・ガス・熱供給が大きな影響を受けます。そして、全体としての消費者物価指数(CPI)は+0.3%程度、石油価格の+10%上昇により押し上げられる、と試算しています。この弾性値をもって試算すると、ドバイ原油が過去最高の1バレル当たり124.5ドルまで上昇した場合、消費者物価指数(CPI)は2021年1~9月期対比で+2.9%程度押し上げられる、と結論しています。

このリポートの試算は、あくまで、産業連関分析が基本となっていて、瞬時にすべての価格転嫁がフルでなされる前提ですから、実際には、一定のタイムラグ、企業のコスト削減努力、流通段階での競争圧力、などなどにより物価上昇幅は圧縮される可能性が高いと考えるべきですが、いつも、私がこのブログで主張しているように、我が国の物価は金融政策よりも石油価格により敏感に反応する、という現実は忘れるべきではありません。

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