大きく改善した10月の景気ウォッチャーと輸出の停滞続く9月の経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+13.4ポイント上昇の55.5と大きく改善し、先行き判断DIも+0.9ポイント上昇の57.5を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列で1兆337億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を手短に、読売新聞と日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
10月「街角景気」の現状、2か月連続で改善...宣言解除受け
内閣府が9日発表した10月の景気ウォッチャー調査によると、景気に敏感な小売店主らに聞いた「街角景気」の現状を3か月前と比べた判断指数(DI、季節調整値)は前月比13.4ポイント高い55.5で、2か月連続で改善した。緊急事態宣言の解除などを受け、水準は2014年1月(55.7)以来の高さとなった。
2~3か月先の景気の見通しを示す先行き判断指数は前月比0.9ポイント上昇の57.5となり、2か月連続で改善した。
9月の経常収支、1兆337億円の黒字
財務省が9日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆337億円の黒字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆601億円の黒字だった。
貿易収支は2299億円の赤字、第1次所得収支は1兆7532億円の黒字だった
短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。
ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIが大きくジャンプし、先行き判断DIも小幅に改善しました。すべての要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響の緩和であり、ひとつは新規感染者数の減少により、予定通りに、9月末をもって緊急事態宣言が解除され、しかも、まん延防止等重点措置も講じられることなく、完全解除となりましたから、マインド的には大きなインパクトあったと考えるべきです。現状判断DIの前月差で見て、先月9月統計の+7.4ポイント上昇に続いて、今月の10月統計も+13.4ポイントの改善ですから、それ自体として大きな上昇なんですが、3つのカテゴリーに分けると、家計動向関連が+15.4ポイント上昇したのに対して、企業動向関連は+8.6ポイントにとどまっています。もちろん、半導体などの自動車部品の供給制約による生産の停滞も含めての結果と考えるべきです。家計動向関連の中でも、飲食関連+31.2ポイント、サービス関連+20.6ポイント、小売関連+12.5ポイント、などとなっています。このため、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を9月の「持ち直しの動きがみられる」に、から10月統計では「緩やかに持ち直している」と、ビミョーに上方修正しています。ただし、いつもの私の考えですが、経済の先行き見通しは完全にCOVID-19次第となりました。季節が進んで気温が下がって乾燥するので、COVID-19に限らずコロナ・ウイルスの感染は拡大する方向ですし、またまた、新たな変異株が新規感染者を増加させて緊急事態宣言が出たりすると、元の木阿弥になりかねません。少なくとも、安倍政権と菅政権は検査体制を含めて医療体制の整備にはほとんど関心を示しませんでしたから、感染拡大に従って緊急事態宣言が出て、感染減少に伴って緊急事態宣言が解除される、古いタイプの Stop and Go 政策の繰り返しでしたが、現在の岸田内閣には、PCR検査の拡充も含めて、何とか抜本的な医療体制整備を図ってほしいと私は考えています。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事では、輸出が大幅増としていますが、昨年2020年は全体として新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済への影響が大きかった時期ですので、今年2021年中は前年同月比で見れば、輸出入とも増加を示している結果となっています。特に、輸出の実勢はそれほど伸びているわけではありません。すなわち、世界経済が順調に拡大している需要面での輸出への好影響は見られるものの、供給面では、間接的ながら新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響があり、東南アジアにおける半導体などの供給が滞っているために世界的なサプライチェーンが混乱を見せ、生産が減少して輸出への悪影響が出ています。他方で、輸入は国内景気が伸び悩む中で、国際商品市況における石油価格の値上がりから増加を示している、ということになります。
| 固定リンク
コメント