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2021年12月 1日 (水)

業績回復に一服感見られる7-9月期の法人企業統計の先行きをどう考えるか?

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は+4.6%増の323兆5651億円、経常利益も+35.1%増の16兆7508億円、特に製造業は+71%増だったりします。そして、設備投資は+1.2%増の10兆9,276億円を記録しています。ただし、季節調整済みの系列で見ると、軒並み前期比マイナスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資については前期比▲2.6%減の10兆4857億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

7-9月の設備投資1.2%増、2期連続プラス 法人企業統計
財務省が1日発表した7~9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比1.2%増の10兆9276億円だった。プラスは2期連続。新型コロナウイルス禍による先行きの不透明感から、前年同期に企業が投資に慎重になった反動が出た。
前年同期比伸び率は4~6月期の5.3%から鈍化し、金額もコロナ感染拡大前の2019年7~9月期の水準(12兆826億円)は下回った。
業種別では製造業が0.9%増えた。金属製品は昨年からの反動増で71.7%増で、最も上昇に寄与した。ボイラーなど汎用機械は生産能力の増強に伴い91.5%増えた。非製造業は1.4%増。宿泊や飲食などサービス業が先送りしていた店舗の設備増強などをして24.2%増えた。電力など電気業は19.2%増だった。
全産業の経常利益は35.1%増の16兆7508億円で3期連続のプラスだった。製造業では通信機器や車載向け電子部品が伸びた情報通信機械や、半導体向け部材の需要が増えた化学が利益を押し上げた。非製造業では卸売業・小売業やサービス業が増えた。
売上高は4.6%増の323兆5651億円で2期連続の増加だった。輸送需要が膨らんだ運輸業・郵便業などで増えた一方、コロナ感染拡大による緊急事態宣言が9月末まで出ていた影響で小売業などがマイナスとなった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。今日のブログの最後のパラで取り上げているように、内閣府の景気動向指数研究会において2020年5月ないし4~6月期が第16循環の景気の谷に暫定的に設定されています。

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ということで、法人企業統計の結果を短く表現すると、企業活動や企業業績の回復は一服している、ということになろうかと思います。加えて、この一服感は7~9月期に関しては非製造業だけでなく、製造業でも広がっている点が特徴として上げられます。すなわち、4~6月期までは、世界の景気回復の恩恵を受ける製造業と首都圏や関西圏をはじめとする緊急事態宣言などの影響が強い非製造業の違いが大きかったのですが、製造業における半導体の部品供給制約などで自動車が減産に入ったため、製造業でも停滞感が出ているようです。引用した記事の季節調整していない原系列の前年同期比の計数とはかなり印象が異なりますが、いずれも季節調整済みの系列やその前期比で見て、売上高は製造業が▲1.1%減に対して、非製造業が▲0.1%減、ともに前期比マイナスを記録し、経常利益も製造業が▲8.2%減、非製造業も▲6.8%減となっています。ですから、製造業と非製造業を合算した全産業レベルで見て、経常利益水準は1~3月期に続いて、4~6月期も20兆円を超えていましたが、7~9月期には19.2兆円と、やや減少しています。ただし、減少したとはいえ、まだまだ利益水準はかなり高いと考えるべきあり、経常利益では景気後退局面入りする前の水準に企業活動水準は復活している点は見落とすべきではありません。さらに、設備投資も今年2021年1~3月期に続いて、4~6月期も2四半期連続の前期比プラスでしたが、7~9月期にはマイナスに転じています。これは、季節調整していない原系列の統計で評価した引用記事とはかなり印象が異なります。ただ、売上高・利益、あるいは、設備投資など、いずれの指標でも企業活動の水準の回復は一服しているように見えますが、先行きについては、自動車の部品供給制約も徐々に緩和するでしょうし、何よりも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大はかなりの程度に抑制されて、9月いっぱいで緊急事態宣言も解除されていますから、基本的には、製造業・非製造業ともに企業活動は回復軌道に戻るものと私は期待しています。もちろん、オミクロン株の脅威については十分な警戒が必要であることは当然です。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金も伸び悩みが続いています。労働分配率が大きく低下していることから、賃金に回しているわけではなく、キャッシュフローほどには設備投資も伸びていない中、利益剰余金の伸び悩みはやや不思議な現象だと私は受け止めています。なお、本日の法人企業統計を受けて、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に下方修正されるであろうと考えています。2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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最後に、昨日11月30日に内閣府において景気動向指数研究会が開催され、「第16循環の景気の谷については、2020年5月と暫定的に設定」されています。上のグラフは景気動向指数のCI先行指数と一致指数を少し長期にプロットしています。

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