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2022年1月29日 (土)

今週の読書は話題の経済書やミステリをはじめとして計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通りです。純粋な経済所ではないにしても、経済書と呼ぶにふさわしい本をはじめとして、ベテラン作家のミステリ、純文学にエンタメ小説、さらに、昭和史に関する新書まで計5冊です。カトリーン・マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』はかなりいいセンでフェミニスト経済学を展開しています。ただし、批判の対象とすべきは、合理的な経済人ではなく、市場価格でしか評価しない古典派から現在にかけての経済学のあり方だと私は考えます。有栖川有栖『捜査線上の夕映え』はベテランのミステリ作家による重厚なミステリで、コロナを反映した点でも特筆されるべきです。吉田修一『ミス・サンシャイン』は、私の大好きな作者によるラブストーリーであり、年齢の差なんて関係ない恋心を実に巧みに表現しています。芸能3部作を形成すべき2作目と考えています。近藤史恵『たまごの旅人』も、私の好きな作者のエンタメ小説で、女性の旅行添乗員が主人公です。最後に、半藤一利『歴史探偵 開戦から終戦まで』は文藝春秋の編集者による昭和史エッセイの未収録編を取りまとめています。
それから、今年2022年に入ってからの新刊書読書は、本日の5冊を含めて計17冊となっています。ただ、反省しているのは、昨年のベスト経済書にも選ばれている『監視資本主義』が相変わらず積ん読状態になっている点で、定期試験の採点が終わって、入試のお手伝いが済めば、出来るだけ早く読みたいと考えています。

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まず、カトリーン・マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』(河出書房新社) です。著者は、スェーデン出身の英国在住ジャーナリストです。表紙画像にも見える通り、英語の原題は Who Cooked Adam Smith's Dinner? であり、2012年にスェーデンで出版され、2015年に英国の高級紙『ガーディアン』のBook of the Yearに選出されています。ということで、タイトルなどからも容易に想像されるように、フェミニスト経済学を展開しています。すなわち、アダム・スミスが古典的な経済学を確立したエコノミストとして歴史に名を残している一方で、そのスミスを家庭的に支えた、すなわち、本書のタイトルになっているように食事を準備し、あるいは、洗濯や掃除などをはじめとする家事労働によってスミスをサポートしたであろう、おそらくは、女性の貢献が無視されているのではないか、という主張です。私が考えるに、極めて当然です。しかし、誠に残念ながら、経済学的に攻める方向を間違えています。すなわち、本書では、こういったフェミニスト経済学の観点から女性の家事労働などの貢献が経済学的に評価されないのは、ホモ・エコノミカス的な合理的経済人の前提を取っているからであると考えているようですが、違います。市場で、貨幣表示でしか評価されない点が問題であると私は考えています。別の表現をすれば、『人新世の「資本論」』で名を馳せた斎藤幸平流にいえば、コモンズ、あるいは、パブリックとプライベートのうちで、プライベートに属して市場に出回る部分しか評価されない点が問題と考えるべきです。コモンズの活動が評価されないわけで、別の表現をすれば、宇沢弘文龍にいえば、シャドウ・プライスの部分が市場に現れないがゆえに何の評価もされない、という問題です。ここに、資本主義の限界があると考えるべきです。私は深く本書に共感しますが、それは合理的経済人を否定したいがためではなく、市場取引されない経済活動を正当に評価したいためです。女性が担っている家事労働をはじめとする市場取引されない経済活動です。それが、フェミニスト経済学を含む大きな意味での「正しい経済学」のあり方だと、私は考えています。

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次に、有栖川有栖『捜査線上の夕映え』(文藝春秋) です。著者は、関西在住のミステリ作家であり、京大ミス研出身の綾辻行人や法月綸太郎などと同じ世代のベテランです。館シリーズの最終第10巻がなかなか出ない綾辻行人や法月綸太郎と違って、最近時点でもコンスタントに秀作ミステリを発表しています。ということで、エラリー・クイーンと同じで著者がその名のままに作中に現れるシリーズなんですが、学生版と違って作家版です。ですから、名探偵は火村英生ということになりますが、その被村が「名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」(p.281)と発言したりします。殺人事件そのものは単純で、元ホストが鈍器で殴り殺された上にスーツケースに詰め込まれた姿で発見され、かなり腐乱が進んでいて犯行日時の特定が難しい、というものです。そして、作品の最初の方から「ジョーカー」の存在が多くの関係者から推定され、しかし、そのジョーカーは人なのか、モノなのか、出来事なのか、ハッキリしません。私は最初は「コロナ」なのかも、と思ってしまいました。というのも、ミステリ最新刊でもめずらしくコロナの時代を舞台にしているからです。すなわち、2020年の残暑のころから2週間ほどのタイムスパンですので、みんながマスクを付けて登場しているようで、ソーシャル・ディスタンシングにも気を配られています。結局、ジョーカーは人間であり、有栖のいう「誰よりも早く事件を解決」するのはジョーカーのようです。しかし、ジョーカーは真相をかなり明確に把握しながらも動きを見せません。第5症の真相への旅で有栖と火村が旅行する先から、真犯人はどんなに鈍感な読者にも理解できるように出来ていますが、なぜそうなのか、そして、防犯カメラに写ることなく被害者のマンションに侵入した人物が使ったトリックとか、そういった細部に渡っての検証が読ませどころです。そして、真相を把握したジョーカーが不動のままだった理由の解明も興味深いところです。倒叙ミステリではないので、明確な犯人が提示されるわけではありませんが、最後の最後に名探偵が犯人を名指しするわけでもなく、タマネギの皮を剥くように徐々に犯人や犯行の動機や細部が明らかにされていくわけですので、私の好きなタイプのミステリです。流石に、円熟の境地に達した作者の作品だと感じられ、謎解きそのものは決して秀逸とは思いませんが、動機の意外性やマンション侵入の手口、さらに、ジョーカーの心理まで含めて、なかなかによく出来たミステリだと評価できます。ミステリのファンであれば読んでおくべき作品です。唯一の違和感は、特に今年は厳冬とされる時期に読んだにしては、残暑の季節の物語である、という点ですが、まあ、これは仕方ないと考えるべきなのでしょう。今朝の8時前のNHKローカル放送で、本書の舞台になっている香川広島の石切り場などを紹介していました。ご参考まで。

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次に、吉田修一『ミス・サンシャイン』(文藝春秋) です。著者は芥川賞作家であり、純文学もエンタメも、という意味での二刀流をこなす人気作家です。長崎出身で、私がこの作者の作品で最も評価する『横道世之介』などと同じで、主人公、というか、タイトルのミス・サンシャインである昭和の日本を代表する大女優も長崎の出身という設定です。物語は、大学院生が指導教授の勧めで、その昭和の日本を代表する大女優の身の回り品を整理して、指導教授の評価や鑑定を経て、必要に応じて映画関係の博物館などに歴史的な記念物として寄贈するための仕分けのアルバイトをする、という形で進みます。その仕訳や評価は大女優ご本人とそのマネージャーの3人で進められます。そして、その大学院生のアルバイトの裏側で彼の恋物語も進んで破局もします。そして、最後はアルバイト大学院生が女優に恋するというラブストーリーに転化します。そうです、この作品はラブストーリなのです。実在の大女優である原節子にも言及されますが、この作品の主人公である女優は、いわゆるアプレ女優、肉体派の女優として、カンヌ映画祭のグランプリを受賞し、米国のアカデミー賞にもノミネートされます。そして、実に、肉体派女優として出演した映画作品が艶かしく造形されています。吉田修一の作家としての独壇場です。抜群の想像力であると舌を巻きました。私は、ここ数年のラブストーリーとしては、平野興一郎の『マチネの後に』を大いに評価していますし、それとはかなり趣の異なるラブストーリですが、この作品も紛れもないラブストーリであることは確かです。また、この作者の作品で直近に読んだのは『国宝』であり、2019年2月2日に読書感想文をポストしていて、その作品では歌舞伎の世界を描き出しています。そして、この『ミス・サンシャイン』では映画です。次は音楽か何かで、芸能3部作が出来上がりそうな気がします。あるいは、不勉強な私が知らないだけで、ひょっとしたら、もうどこかで連載が始まっていたりするんでしょうか。『国宝』と同じように、ややトリッキーな面があり、素晴らしく出来のいい文学作品とは思いませんが、私のように、この作者のファンであるならば押さえておきたい作品です。その意味では、とてもオススメです。

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次に、近藤史恵『たまごの旅人』(実業之日本社) です。著者は、ミステリをはじめとするエンタメ作家であり、プロのサイクリストを主人公とする「サクリファイス」のシリーズを私は愛読しており、ほかにも、レストランを舞台にした「タルトタタン」のシリーズ、元警察犬のシャルロッテの活躍を描くシリーズなど、とても好きな作家の1人です。この作品では、旅好きが高じて派遣ながらツアー・コンダクタになった女性を主人公にして、風光明媚な景色や食事などの紀行文とともに旅行者の心理を描いています。この作品は5章から成っていて、アイスランド、スロベニア+クロアチア、パリ、西安、そして、最後はこれもコロナの時代になったことから、旅行の添乗員の仕事がなくなって、沖縄のコールセンターのアルバイト住込み3か月、です。わたしはいままで添乗員のいるような豪華な旅行をしたことがなく、仕事の公務出張であれば現地の大使館や総領事館からアテンドがあるものの、それ以外では、ほぼほぼ自分で勝手に航空便もホテルも手配して、現地でも勝手に行動する、という形でした。まあ、役所の中でも国際派でしたし、海外勤務も2回あって計6年を超えます。海外勤務ですから、添乗員のようにアチコチ行くわけではなく、3年ほど現地に腰を据えてそこで仕事するわけですので、かなり趣が異なります。ただ、本書でも典型的な日本人の一面として登場す年配の男性の造形にも見られるように、海外勤務した場合、基本無関心、もしくは関心が薄かったbeforeと違って、勤務後のafterでは、勤務した国が大好きになる場合と、逆に、嫌いになる場合があります。前者の割合が高い国がほとんどなのですが、後者の割合も無視できないバアがあります。この作品では、訪問地というよりも、日本人旅行者の観察に主眼が置かれている気もしますが、本書では出てこないながら、日本では「旅の恥はかき捨て」という言葉があり、ある意味で、旅先ではホンネが出ます。そのあたりは実にたくみに描き出されています。作者の力量を感じます。

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最後に、半藤一利『歴史探偵 開戦から終戦まで』(文春新書) です。著者は、『文藝春秋』や『週刊文春』などの編集者として活躍し、昭和史の碩学としても著名な方で、この「歴史探偵」のシリーズ、すなわち、著者の未収録の昭和史に関するエッセイとして、シリーズ3巻目となります。今回は、タイトル通りに太平洋戦争の開戦から終戦までをスコープとしています。逆に言えば、本書でも明記されているように、満州事変や日中戦争は除外されています。ということで、本書は4章構成となっていますが、一番の読ませどころは冒頭の日本海軍提督に見るリーダーシップ論ではないでしょうか。残りのドイツ論などは付け足しのように見えて仕方ありません。リーダーシプとしては、決断力の有無と責任を取るかどうかの有無で、いわば2x2の4ケースを考えて、それを可能な範囲で日本海軍の提督に当てはめようと試みています。私は不勉強にして、山本五十六以外はほとんど知らない、というか、名前を聞いたこともないような人物が並んでいるので、何とも評価のしようがありませんでしたが、雰囲気としては理解しました。最後に、当時のドイツに関してはヒトラー抜きには考えられないのですが、最近時点で立憲民主党系の重鎮が維新の会のリーダーをヒトラーになぞらえて批判した問題がいくつかのメディアで取り上げられているところ、私は世界の常識に従って、ヒトラーを礼賛することは極めて不適切であるのに対して、ヒトラーになぞらえて批判をするのは「ゴドウィンの法則」からすれば、いわゆる「ゴドウィン点」に達したということであり、論争が十分長引いた、ということなのだろうと理解しています。SNSを含むメディアで「ゴドウィンの法則」に言及した論評を目にしないのがやや不思議です。

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