4か月連続でプラスを記録した消費者物価指数(CPI)上昇率の先行きやいかに?
本日、総務省統計局から昨年2021年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+0.5%を記録しています。4か月連続のプラスです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.7%と下落しています。コチラは、2021年4月から9か月連続のマイナスです。逆に、エネルギーを含めたヘッドラインCPIは+0.8%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
21年12月の全国消費者物価、0.5%上昇 上昇は4カ月連続
総務省が21日発表した2021年12月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が100.0と前年同月比0.5%上昇した。上昇は4カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.6%上昇だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは99.1と、0.7%下落した。生鮮食品を含む総合は0.8%上昇した。
あわせて発表した21年平均のCPIは、生鮮食品を除く総合が99.8となり、20年に比べ0.2%下落した。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも+0.6%の予想でしたので、やや下振れたとはいえ、まずまず、予想の範囲内といえます。基本的に、国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、ガソリン・灯油などのエネルギー価格が前年同月比で+16.4%の上昇を記録して、ヘッドライン上昇率に対して+1.12%の寄与を示していますので、逆に、マイナス寄与の項目を見ると、通信料(携帯電話)が前年同月比▲53.6%の下落で、▲1.48%の寄与となっています。エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落のバランスで、寄与度だけを見ると携帯電話通信料の方が絶対値で大きいのですが、エネルギー価格の上昇が経済全体に波及して、さらに、人手不足の影響などもあって、プラスという結果となったと私は受け止めています。ただ、別の政策要因というか、何というか、昨年のGoToトラベルによる値引きの反動で、宿泊料が前年同月比+44.0%の上昇を見せ、寄与度も+0.29%あります。
先行きの物価動向を考えると、国際商品市況における石油価格の上昇に加えて、人手不足の影響もあり、国内外の景気回復とともに、物価は緩やかに上昇幅を拡大していくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、10~12月統計では前年同月比上昇率で+8~9%台に達しています。物価は上昇基調にあると考えるべきです。
我が国のデフレの初期に「悪い物価下落」と「いい物価下落」という二分法が幅を利かせた時期があります。今回も石油価格上昇に伴うコストプッシュのインフレですので、同じような二分法の議論も聞かれます。しかし、適切に賃上げが進めば、我が国にとってはデフレ脱却のチャンスとなる可能性もあることから、決して悲観的に考える必要はないと私は受け止めています。
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