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2022年1月20日 (木)

5か月連続で貿易赤字を記録した貿易統計から何を読み取るべきか?

本日、財務省から昨年2021年12月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+17.5%増の7兆8814億円、輸入額も+41.1%増の8兆4638億円、差引き貿易収支は▲5824億円となり、5か月連続で貿易赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を手短に引用すると以下の通りです。

21年12月の貿易収支、5824億円の赤字
財務省が20日発表した2021年12月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5824億円の赤字だった。赤字は5カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は7840億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比17.5%増の7兆8814億円、輸入額は41.1%増の8兆4638億円だった。中国向け輸出額は10.8%増、輸入額は20.5%増だった。

いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易黒字が+8000億円弱でしたので、実績の▲5824億円の赤字は、予想レンジの上限である▲6229億円を超えて、貿易赤字は赤字ながら小幅にとどまった、という印象です。季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は5か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は今年2021年5月から始まっていて、したがって、8か月連続となります。輸出入に分けて見ると、季節調整していない原系列のデータでも、季節調整済みの系列でも、輸出入とも増加のトレンドにあり、いずれも2020年初頭の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前の水準を超える勢いです。足元では、半導体などの部品の供給制約から脱しつつある自動車生産の回復に伴って輸出が増加する一方で、輸入では国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇が我が国輸入額の押上げに寄与していることは明らかです。
12月の貿易統計を輸出入別に少し詳しく見ると、輸出については輸出全体では前年同月比で+17.5%増と回復を示しています。我が国の主力輸出品である自動車が半導体などの部品供給の制約から出しつつあり、1兆1030億円、+17.5%増と伸びを高めています。自動車以外にも、我が国の主要輸出品である一般機械が1兆5654億円、+17.6%増、電気機器も1兆4629億円、+14.9%増を記録しています。現在のオミクロン型の変異株によるCOVID-19パンデミックの影響は何とも計り知れませんが、足元では我が国のリーディング・インダストリーは輸出を伸ばしているといえそうです。輸出を全体としてみれば、主として先進国の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想しています。ただし、先進国ではなく中国向け輸出についてはやや注意が必要かもしれません。すなわち、1月に公表されたOECD先行指標(CLI)では、"China: Growth losing momentum" と指摘されており、私の計算でも、中国の国別の先行指標が前年同月比で見て昨年2021年10月からマイナスを示していて、少しずつながらそのマイナス幅が拡大しています。まったくタイミングを同じくして、我が国の輸出数量指数の前年同月比も昨年2021年10月から12月までマイナスを続けています。中国経済については、先行きの動向が注目されるところです。輸入については、原油及び粗油の12月の輸入額は8675億円と前年同月比で+116.6%の大きな増加を記録しています。ただし、数量ベースでは+7.1%増にとどまっていますので、増加の圧倒的な要因は価格ということになります。繰り返しになりますが、国際商品市況で石油価格が大きく上昇していますから、それほど価格弾力性が大きくないとはいえ、我が国の輸入額を大きく押し上げています。我が国の輸入合計の前年同月比伸び率は12月の貿易統計で+41.1%増でしたが、原油及び粗油以外の液化天然ガスなども含めて、鉱物性燃料の寄与度がほぼ半分の+20.1%を占めています。ただ、従来から主張しているように、私は必要な財貨・サービスは輸入をケチるべきではないと考えています。5か月連続の貿易赤字を批判するオピニオンリーダーがいるかも知れませんが、私はエコノミストとして貿易赤字を「悪いこと」だとは考えていません。例えば、12月統計の輸入では半導体等電子部品の輸入額が3569億円、+70.5%増となっていますが、これは自動車の生産、ひいては輸出に必要な部品の輸入ですから、輸入すべきは輸入すればいいと考えています。

繰り返しになりますが、貿易、特に、輸出の先行きについては、世界経済の回復とともに緩やかに回復するものと見込んでいます。ただし、オミクロン型の変異株をはじめとする新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大がどこまで広がるのか、また、パンデミックの経済的な影響も含めて、それほどの見識を有しているわけではありません。このあたりはエコノミストの守備範囲を超えていると諦めています。マクドナルドのポテトの大きなサイズはいつになったら提供できるのでしょうか?

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