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2022年2月28日 (月)

2か月連続の減産となった鉱工業生産指数(IIP)と基調判断が下方修正された商業販売統計の先行きはどうなるか?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.3%の減産でした。減産は2か月連続です。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.6%増の12兆2950億円、とコチラは4か月連続の増加を示した一方で、季節調整済み指数では前月から▲1.9%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

1月鉱工業生産、前月比1.3%低下 2月予測は5.7%上昇
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比1.3%低下の95.2だった。低下は2カ月連続。生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.7%低下だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では2月が5.7%上昇、3月は0.1%上昇を見込んでいる。
1月の小売販売額、1.6%増
経済産業省が28日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.6%増の12兆2950億円だった。増加は4カ月連続。季節調整済みの前月比は1.9%減だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が3.0%増の1兆6770億円だった。既存店ベースでは2.6%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は2.9%増の9537億円だった。

いずれもとてもコンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前月と比べて▲0.7%の減産という予想でしたので、まずまず「こんなもん」という受止めかという気がします。加えて、減産の要因が、またまた、部品調達の停滞や物流の逼迫ということですし、足元の2~3月については、製造工業生産予測指数で見て、それぞれ、+5.7%、+0.1%の増産を予測していることから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。もっとも、製造工業生産予測指数の上方バイアスを取り除いた補正値では、2月増産は+0.7%に大きく圧縮されますが、それでも増産は増産です。繰り返しになりますが、1月の減産は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株のアジアなどにおける感染拡大により、自動車工業を中心として、部品の供給制約、あるいは、物流の停滞などのグローバルなサプライチェーンに起因しています。ですから、経済産業省による解説記事「1月生産は2か月連続の前月比低下」では、中でも、自動車工業が前月比▲17.2%の減産となって、ヘッドラインの▲1.3%の減産を超えて、というか、その約2倍の▲2.69%の寄与度を持っています。今後の生産の行方はCOVID-19の感染拡大、そして、これに伴うグローバルなサプライチェーンにおける部品供給や物流の停滞などに加えて、ロシアのウクライナ侵攻の経済的影響次第という面があり、いずれも、私のような不勉強なエコノミストには到底予測し難いのですが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復の方向にあるのは間違いないと私も考えています。でも、それほど単純な道のりではない、と考えるべきです。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。前のIIPのグラフと同じで、影を付けた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、通常、多くのエコノミストや報道では、この統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で見ているような気がします。しかしながら、経済産業省のリポートでは、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で基調判断を示しているようで、1月の移動平均指数は前月から▲0.7%の低下と試算しています。3カ月ぶりの低下であり、1月統計における季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比はプラスながら、基調判断は12月までの「持ち直しの動き」から、1月までのトレンドで「横ばい傾向」に下方修正されています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、本日公表の商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていないことから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響は過小評価されている可能性が十分あります。飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響は、商業販売統計には十分には現れていないわけです。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、物価上昇があれば販売額の上昇という結果になります。現在、日本では先進各国におけるような大きなインフレは認識されていませんが、世界では石油などの資源価格の上昇をはじめとする供給要因と世界的な景気の持ち直しによる需要要因とで、物価の上昇が始まっており、米国では中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FED)が3月の利上げを示唆したりしている段階です。我が国でも、小売業販売額の前年同月比伸び率を業種別に詳しく見ると、燃料小売業が昨年2021年10月から+20%を超え、1月統計では+22.8%を記録していますが、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これら2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりも悲観的に見る必要が十分ある、と私は考えています。

いずれにせよ、経済の先行き見通しは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)、とくに、オミクロン型変異株の感染状況、それに、ロシアのウクライナ侵攻、などに大きく左右されそうな気がします。

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