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2022年2月15日 (火)

2021年10-12月期GDP統計速報1次QEはコロナ感染の谷間で大きなプラス成長!!!

本日、内閣府から昨年2021年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.8%、年率では+3.0%と、9月末での新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言の解除による消費の拡大などを受けてプラス成長となっていす。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

21年10-12月期GDP、年率5.4%増 個人消費好調で
内閣府が15日発表した2021年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.3%増、年率換算では5.4%増だった。2四半期ぶりにプラス成長となった。緊急事態宣言の解除により個人消費が伸長した。自動車などの部品調達難も緩和し、輸出増につながった。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比1.4%増、年率換算で5.9%増だった。
実質GDPの内訳は、内需寄与度が1.1%分のプラス、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。
項目別にみると、個人消費は前期比で2.7%増加した。緊急事態宣言が解除され外出に伴う飲食や宿泊需要が回復した。増加率は5四半期ぶりの大きさ。
住宅投資は0.9%減、設備投資は0.4%増だった。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。
公共投資は3.3%のマイナスだった。
輸出は自動車生産の回復などにより1.0%増となった。輸入が0.3%減少したこともGDPにプラスに寄与した。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.5%増、年率では2.0%増だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス1.3%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは1.1%のプラスだった。
同時に発表した2021年の実質GDPは前年比1.7%増と、3年ぶりにプラスとなった。名目GDPは0.8%増だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/10-122021/1-32021/4-62021-7-92021/10-12
国内総生産GDP+1.8▲0.5+0.6▲0.7+1.3
民間消費+1.6▲0.8+0.7▲0.9+2.7
民間住宅▲0.1+0.9+1.0▲1.6▲0.9
民間設備+1.2+0.4+2.0▲2.4+0.4
民間在庫 *(▲0.2)(+0.1)(+0.0)(+0.1)(▲0.1)
公的需要+0.9▲0.8▲0.1+0.2▲0.9
内需寄与度 *(+1.1)(▲0.4)(+0.7)(▲0.8)(+1.1)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.8)(▲0.1)(▲0.1)(+0.1)(+0.2)
輸出+10.7+2.2+3.1▲0.3+1.0
輸入+5.5+3.0+3.8▲0.9▲0.3
国内総所得 (GDI)+1.9▲1.1+0.1▲1.5+0.7
国民総所得 (GNI)+2.1▲1.0+0.2▲1.5+0.8
名目GDP+1.3▲0.4+0.2▲1.0+0.5
雇用者報酬 (実質)+1.7+1.2+0.2▲0.2+0.3
GDPデフレータ+0.2▲0.1▲1.1▲1.2▲1.3
国内需要デフレータ▲0.7▲0.5+0.3+0.5+1.1

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2021年10~12月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち、赤の消費や水色の設備投資、また、黒の純輸出のプラス寄与が大きく見えます。

photo

昨日も1次QE予想を取り上げましたが、多くのシンクタンクが大きなプラス成長を見込んでいました。また、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも前期比+1.4%、前期比年率+5.9%という結果が示されています。そして、実績が前期比+1.3%、前期比年率+5.4%ですから、ほぼほぼジャストミートしたと私は受け止めています。高成長の要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大と深く関連していて、需要面からは、2021年9月末で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関する緊急事態宣言が解除され、今年2022年1月に入ってからのCOVID-19のオミクロン型変異株の猛烈な感染拡大が始まる前、いわば、COVID-19の感染の谷間に2021年10~12月期がスポンとはまったことから、消費が大きく伸びました。供給面からは、自動車などの部品供給制約の緩和が進み、生産や輸出が回復しています。ですから、この2021年10~12月期の高成長は完全に過去の数字であり、今年2022年1月以降の回復継続はCOVID-19次第です。今年2022年1~3月期の成長率については、よくて成長率の大幅低下、悪ければマイナス成長の可能性もあります。現時点で1月の主要統計すらすべてが利用可能となっているわけではありませんので、何とも見通し難いわけながら、私の勝手な希望として何とかプラス成長を願っています。世間一般では、大和総研のリポートでは「前期比年率+0.3%」、ニッセイ基礎研のリポートでも「前期比年率ゼロ%台のプラス成長」などとされている一方で、第一生命経済研のリポートでは「1-3月期のマイナス成長の可能性も否定できない状況」などと指摘されています。
その上で、特に報道などでは取り上げられていませんが、私の独自観点も含めて上のテーブルから2点だけ指摘しておきたいと思います。いずれも原因は石油をはじめとする資源価格の上昇なのですが、第1に、交易条件が悪化しています。2021年10~12月期には、GDP成長率が+1.3%に達している一方で、国内総所得(GDI)の伸びは+0.7%、国民総所得(GNI)も+0.8%にとどまっています。この差は大雑把にいえば交易条件の悪化です。2021年中の交易条件のGDP成長率への寄与度は、1~3月期▲0.6%、4~6月期▲0.5%、7~9月期▲0.8%、そして、10~12月期も▲0.6%となっています。交易条件の悪化とは、すなわち、輸入するために、より多くの輸出をしなければならなくなっているわけです。第2に、同じように資源価格の上昇から、GDPデフレータと国内需要デフレータが逆の動きをしています。上のテーブルにも見られる通り、2021年4~6月期から10~12月期まで3四半期に渡ってGDPデフレータは▲1%超の大きなマイナスを記録し、しかもマイナス幅が大きくなっています。これは、資源価格の上昇を受けて輸入デフレータが上昇し、輸入がGDPから控除されるために、輸入デフレータの上昇がGDPデフレータにはマイナスで寄与しているためです。他方で、国内需要デフレータは同じ時期に3四半期連続でプラスとなり、そのプラス幅が拡大して、10~12月期には+1%超を記録しています。この国内需要デフレータの上昇は資源価格の上昇が国内で波及しているために生じています。おそらく、家計や企業の物価に関する実感は、下がり続けているGDPデフレータではなく、国内需要デフレータの動きと同じ方向感なのだろう、と私は考えています。ですから、GDPデフレータに着目した分析や政策運営は、おそらく、混乱をもたらすだけなので避けるべきです。

繰り返しになりますが、10~12月期の高成長は足元から目先の経済動向を考える上で、ほとんど何の参考にもなりません。よりていねいに経済動向を見る必要があります。

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