米国雇用統計は人手不足を示し米国金融政策は引締めモードに入るのか?
日本時間の今夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、本日公表の1月統計では+467千人増と大幅増を記録し、失業率は前月の3.9%から1月には4.0%とほぼ横ばいです。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に4パラだけ引用すると以下の通りです。
Economy added 467,000 jobs in January despite omicron surge, unemployment rose to 4%
U.S. employers unexpectedly added a booming 467,000 jobs in January even as COVID’s omicron variant kept millions of Americans out of work.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey of households, rose from 3.9% to 4%, the Labor Department said Friday.
Unemployment, however, rose for an encouraging reason. Many Americans streamed into a favorable labor market. The share of adults working or looking for jobs increased sharply from 61.9% to 62.2%, though that's still well below the pre-COVID mark of 63.4%.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated a modest 150,000 jobs were added last month but many projected an outright decline.
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。
引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+150千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+467千人増は大きく上振れた印象です。加えて、先月2021年12月統計は+300千人超の上方改定で前月差+510千人増となっています。失業率は前月統計から上昇したとはいえ、ほぼ横ばいの4.0%ですし、これは米国連邦準備制度理事会(FED)が長期的な均衡水準と見ている失業率と変わりありません。ですから、総合的に考えると、米国雇用は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大もあって、人手不足が続いていると考えるべきです。そして、この人手不足が国際商品市況における石油などの資源価格の上昇と相まって、米国の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は+7%に達しています。ですから、3月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が引き上げられる運びとなっており、量的緩和政策によって膨らんだバランスシートの縮小も進むのではないかと見られています。加えて、今年2022年には従来から市場で予想されてきた年4回の利上げではなく、5回になるのではないか、との見方も少なくないようです。いずれにせよ、米国金融政策は明らかに景気回復よりもインフレ抑制を重視する引締めモードに入っており、日銀との金融政策スタンスの差が大きくなる可能性があります。
私のような高圧経済支持者からすれば、COVID-19パンデミック前には失業率は3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえまず、多少のインフレを許容してでも今少し需要拡大を図るのも一案だと考えていますが、インフレ動向からすれば金融政策が引き締め方向に進むのは当然と考えるエコノミストも多いのかもしれません。オミクロン型変異株の感染拡大が終息したとはとても思えない段階ながら、金融政策はポストコロナの新たな段階に入りつつあるようです。
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