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2022年3月19日 (土)

今週の読書は環境ビジネスの本をはじめとして計4冊!!!

今週の読書は4冊で、読書感想文は以下の通りです。
1冊目の吉高まり・小林光『GREEN BUSINESS』(木楽舎)は国連SDGsの中心となる環境ビジネスについての大学の講義を中心に構成しています。ただ、私は環境ビジネスや経済的な環境問題の解決にはかなり大きな疑問を持っています。2冊めの佐藤究『テスカトリポカ』(角川書店)は、第165回直木賞受賞作品の話題作です。3冊めの周防柳『身もこがれつつ』(中央公論新社)は私が大いに注目している古典古代を舞台とした時代小説であり、藤原定家を主人公に「小倉百人一首」の選定もテーマのひとつにしています。最後の4冊目のまさきとしか『あの日、君は何をした』(小学館文庫)は歪んだ親子関係を中心に据えたミステリですが、母親以上のとんでもない「モンスター」が隠れています。
なお、今年2022年に入ってからの新刊書読書は、本日の4冊を含めて計42冊となっています。ややスローペースです。

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まず、吉高まり・小林光『GREEN BUSINESS』(木楽舎) です。著者は、環境ビジネスの実践者としての起業家と環境省事務次官ご出身の研究者です。環境分野についてはSDGsの中でも中心に位置すべき課題なのですが、基本的に、企業ではコストセクターとして認識されています。私の知り合いなんかが勤務している金融機関の調査部門が、直接の稼ぎはなくてコストセクターといえるものの、それなりに企業の稼ぎに貢献しているのとは異なっています。すなわち、市場における価格メカニズムでは私的なコストしか考慮されず、環境という長期かつ自然を相手にした社会的コストは反映されないわけです。ですから、省エネとかでコストカットになる企業行動は奨励される一方で、コストをかけて環境を維持ないし改善しようとする企業活動は、レピュテーションの維持改善との見合いでしか評価されません。ですから、本書で取り上げられている環境ビジネスとは、こういった環境コストをいかにして企業に強いるかというコンサル活動が中心に据えられています。コンプライアンスとか、レピュテーションとかで企業に圧力をかけつつ、環境ビジネスを展開するというわけです。私はここに大きな市場経済の限界を見てしまいます。主流派エコノミストの目から見れば、コストとベネフィットの見合いで合理的な個人や企業は行動します。例えば、駐車料金が7000円である一方で、駐車違反の反則金が5000円であれば、後者の方が割安である限り駐車場には駐めずに駐車違反するだろうと考えるわけです。もちろん、この交通反則行為で免停や免許取り消しになるという限界的な効果があれば話は別です。しかしながら、環境負荷に関しては超長期的には人類の存続が不可能になる可能性が十分あり、カタストロフィックな転換点があると考えるべきです。そして、超長期的な資源配分については市場では評価できません。ですから、経済的なインセンティブでは環境問題は、特に超長期的な環境問題は解決できないと考えるべきです。環境はビジネスにはなりえない、というのが私の基本的な考えです。ただし、いかなる場合でも初期には、こういった指南ビジネス、コンサルがビジネスとして成り立ってしまいます。多くの一般大衆の理解が進んでいないからです。まあ、専門的な知識ある人が理解が浅いグループに情報を伝授するのは、私の属する教育の世界をはじめとしていっぱいあって、永遠にコンサルのビジネルは続くわけですが、ただ、本書を読んで、環境はビジネスではなくコンプライアンスとして強制力を持って環境の維持改善がなされるべきであるという結論が得られると思います。

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次に、佐藤究『テスカトリポカ』(角川書店) です。著者は、ミステリ作家であり、本書は第165回直木賞受賞作品です。550ページを超える大作であり、出版社も特設サイトを開設していたりする話題作です。何と申しましょうかで、私なんぞの一般ピープルには極めて特異で小説でしかお目にかかれない世界です。メキシコの薬物の世界と日本の反社の世界、さらに、インドネシアの闇社会が手を結んで、薬物にとどまらない臓器ビジネスまで展開されています。登場人物が極めて多岐に渡って、しかも、多様でありながら、人物造形がとてもクリアで判りやすくなっています。エコノミストは人間は損得勘定で動くと考えていますが、そういった理性的な判断に基づく行動ではなく、感情的な衝動に任せて破壊的行動を取る人物、さらに、それを暴力と利得の両方からコントロールしようとする人物、さらに、そういった反社会的な犯罪組織が薬物中毒者も巻き込みつつ、巨大は組織を形成して行く経緯、などなど、クライム小説としての大きな要素をいくつか含みながらストーリが展開していきます。神聖ローマ帝国の分割のような4兄弟のカルテル運営などの家族=familiaについての考え方、あるいは、カトリック以前のメキシコにおけるアステカ神の信仰、さらに、それらの要素をひとつにまとめる日本という土地柄、などなど色んな要素を含んで、何ともいえません。私は公務員から教員という極めて何の変哲もないながら、いわば、表社会をつつがなく生きてきた一般ピープルなもので、この読書に際しては、世間的な評判を基にした読書前の「怖いもの見たさ」的な部分もありました。どこまでリアリティを感じるかは読者にもよると思います。

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次に、周防柳『身もこがれつつ』(中央公論新社) です。著者は、もちろん、小説家なんですが、私は2017年刊行の『蘇我の娘の古事記』から古典古代に時代小説家として注目しています。不勉強にして、この作家の現代小説は読んだことがありません。ということで、この作品はタイトルや表紙画像からも理解されるように、同じ作者の『逢坂の六人』にも通ずる和歌の世界を舞台にしています。主人公は「小倉百人一首」の編集で現代人の人口にも膾炙している藤原定家です。そして、親友の藤原家隆と後鳥羽上皇との3人が主要な登場人物となり、何と、ラブストーリーなのですが、この男3人でラブストーリーが展開されます。男3人の三角関係なわけで、とても複雑です。もちろん、百人一首の選定過程も織り込まれています。しかし、物語のクライマックスは恋の鞘当てではなく、1221年の承久の乱となります。小説とはいえ歴史的な事実は動かし難く、鎌倉幕府軍にアッサリと破れた朝廷側は、後鳥羽上皇は隠岐島の、そして、順徳上皇は佐渡島に、それぞれ配流されます。そして、藤原定家は後鳥羽上皇とは距離を置いて嵯峨野小倉山山荘に蟄居し難を逃れます。時々の藤原定家の心情や行動が極めてつまびらかに明らかにされ、それでも、古歌に基礎をおいて歌論を展開し、かつ、自信も秀歌を詠む藤原定家の人物像をよく表現しています。なお、本書は昨年7月の出版ですが、百人一首のシーズンであるお正月の前に読んでおけばよかった、と後悔しています。

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最後に、まさきとしか『あの日、君は何をした』(小学館文庫) です。著者は、『完璧な母親』で歪んだ親子関係を基にした小説で話題になりました。本書は、一昨年2020年7月に文庫で出版されていて、この読書感想文は1年半くらい前までは新刊書読書としてOKと考えていますので、許容範囲としてギリギリかもしれません。ということで、本書もやや歪んだ親子関係、家族関係を基にしたミステリとなっています。第1部で15年前の殺人事件が取り上げられ、犯人と間違えられて逃走した卒業直前の中学生が自転車でトラックに衝突して死亡するという事件、そして、精神的に壊れてゆく母親が描き出され、第2部では若い会社員の女性が殺さた事件で、不倫相手の疾走が、そして、その失踪した不倫相手の妻の無関心と母親の必死の捜索が注目されます。この第1部と第2部で、パッと見では登場人物が重ならないのですが、それも含めて大きな謎が解き明かされます。小説を通じて「モンスター」だと考えられていた第1部の母親なのですが、じつは、さらに巨大な「モンスター」がいた、という手の込んだストーリに仕上がっていて、ミステリファンとしてはとても楽しめますが、逆に、歪んだ親子関係とか隠されたモンスターの存在とか、読後感はそれほどいいわけではありません。「驚愕のラスト」という出版社の謳い文句がまずまずよく当てはまる気がします。

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