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2022年4月28日 (木)

緩やかながら増産続く鉱工業生産指数(IIP)と横ばい傾向の商業販売統計!!!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.3%の増産でした。商業販売統計のうちの小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.8%減の11兆5370億円、と5か月ぶりの減少を示した一方で、季節調整済み指数でも前月から▲0.8%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

3月の鉱工業生産、前月比0.3%上昇 4月予測は5.8%上昇
経済産業省が28日発表した3月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比0.3%上昇の96.5だった。生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.5%上昇だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では4月が5.8%上昇、5月は0.8%低下を見込んでいる。
3月の小売販売額、0.9%増
経済産業省が28日発表した3月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.9%増の13兆6280億円だった。増加は2カ月ぶり。季節調整済みの前月比は2.0%増だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が2.1%増の1兆7047億円だった。既存店ベースでは1.5%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は1.7%増の9960億円だった。

とてもコンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前月と比べて+0.5%の増産という予想でしたので、まずまず「こんなもん」という受止めかという気がします。加えて、足元の4~5月については製造工業生産予測指数で見て、4月+5.8%の増産の後、5月は▲+0.8%の減産を予測していて、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。もっとも、製造工業生産予測指数の上方バイアスを取り除いた補正値では、4月増産は+0.8%に大きく圧縮されますが、それでも増産は増産です。基本的には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染拡大が抑制されていて、需要が増加したことに基づく増産と考えるべきです。経済産業省による解説記事「3月生産は2か月連続の前月比上昇」では、3月半ばの福島沖地震の影響などにより自動車工業が前月比▲6.0%の減産となって、▲0.87%の寄与度を示している一方で、増産の代表業種として、半導体需要の増加で好調な半導体製造装置をはじめとして需要が増加した生産用機械工業が前月比+3.3%増産、寄与度+0.29%、さらに、新製品の生産拡大などを受けた化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)が+5.4%の増産、寄与度も+0.21%などと業種別の動向を明らかにしています。
今後の生産の行方はCOVID-19の感染拡大、そして、これに伴うグローバルなサプライチェーンにおける部品供給や物流の停滞などに加えて、ロシアのウクライナ侵攻による資源価格の高騰に伴うコストプッシュなどの経済的影響次第ということになります。加えて、かなり無謀な「ゼロコロナ」政策を追求する中国において、上海が強烈なロックダウン状態にあり、中国における物流や生産がこれからどのような影響を及ぼすかもリスクとなるものと考えられます。いずれも、私のような不勉強なエコノミストには予測し難い経済外要因なのですが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復の方向にあるのは間違いないと私は考えています。しかしながら、先行きリスクは下振れの方が大きいように受け止めています。特に、自動車工業は4~5月に減産を予定している企業もあり、我が国リーディング産業だけに影響が大きい可能性があります。

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通常、多くのエコノミストや報道では、この統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で見ているような気がします。しかしながら、経済産業省のリポートでは、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で基調判断を示しているようで、1月の移動平均指数は前月から+0.1%の上昇下と試算しています。2月統計では▲0.7%減でしたから、基調判断としてはトレンドで「横ばい傾向」と据え置かれています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていないことから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響は過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、特に、この3月21日まで一部地域ながらまん延防止等重点措置の期間中だったわけで、飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、燃料小売業の販売額は前年同月比で+15.2%増なのですが、かなりの部分は物価上昇による水増しが占めると考えられ、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これら2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりも悲観的に見る必要が十分ある、と私は考えています。

最後に、本日まで日銀金融政策決定会合が開催され、日銀は異次元緩和を維持し、指し値オペを強行てでも長期金利を抑制する姿勢を明らかにしています。結果として円安が進行していますが、私はインフレ率2%と同様に、これくらいの円安は想定の範囲内と考えています。「展望リポート」では今年度2022年度の生鮮食品を除くコア消費者物価上昇率について、1月時点の+1.1%から+1.9%に引き上げましたが、物価上昇は一時的、というよりも、インフレ目標に達していないのですから、引締めに転じる金融政策運営はあり得ない、と私も大いに同意しています。

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