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2022年5月20日 (金)

日銀のインフレ目標を超える+2.1%に達した消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.1%を記録しています。物価上昇は七か月連続です。7年ぶりの+2%超の物価上昇です。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.8%にとどまっています。これでも、1年9か月ぶりの上昇です。また、エネルギーを含めたヘッドラインCPIは+2.5%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

4月の物価上昇率、7年ぶり2%超 エネルギー価格高騰で
総務省が20日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.4となり、前年同月比2.1%上昇した。消費増税の影響があった15年3月(2.2%)以来、7年1カ月ぶりに2%を超えた。資源高で電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇した。原材料高で食料品も上がった。
2%は、日銀が目標としてかかげている。米欧も同様の水準をめざしている。物価がこのペースで安定して上がることで、企業収益の拡大や賃上げにつながり、経済が活性化する好循環が生まれると考えられている。
日本の場合、物価上昇圧力は弱く、外的要因に左右されやすい。上昇率が2%に達するのは、消費税を8%に上げた14年4月からの1年間を除くと、世界的な資源高だった08年9月以来、13年7カ月ぶりとなる。今回、生鮮食品も含む総合指数が2.5%上がった。消費増税の影響があった時期を除くと、1991年12月以来の高い上昇率になった。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.1%の予想でしたので、ジャストミートしました。基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による物価上昇と考えるべきです。もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレと考えるべきです。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、4月統計における上昇率は+19.1%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.38%あります。この寄与度のうち、電気代がちょうど半分の+0.69%ともっとも大きく、次いで、ガソリン代の+0.32%、都市ガス台の+0.21%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%とホンのちょっぴり上昇率は下げ止まりました。ただ、かなり高い上昇率で高止まっていることは確かです。加えて、生鮮食品を除く食料も+2.6%の上昇を示しており、+0.58%の寄与となっています。
物価について、いくつか考えるべきポイントがあります。第1に、+2%というのは2013年からの日銀物価目標であるということです。ようやく9年間もの異次元緩和を続けて、そして、悲しくも、こういった異次元緩和によるディマンドプルではなく、コストプッシュによりインフレ目標がようやく達成されたというわけです。しかも、欧米では、特に米国で+8%超の物価上昇となっているなど、日本のインフレを大きく上回る物価上昇となっている点は忘れるべきではありません。第2に、このインフレに対して、日経新聞の記事を見ると、松野官房長官は政府の方針として、「価格転嫁や賃上げを促し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものにする」と述べています。私はかねてから主張しているように、賃金や所得が増えないことを前提として物価を抑え込もうとするのではなく、物価上昇に見合った賃上げの実現が必要と考えています。ですから、基本的に政府のこの方針には賛成です。ただし、単に、企業に価格転嫁や賃上げを求めるだけでなく、政府としても、保育園・幼稚園や小中高をはじめとして学校は公立が多くて、しかも、「ブラックな職場」と考える国民も少なくないわけですから、これらの教職員のお給料を増額し、さらに、介護報酬などを適切に引き上げることが求められます。公務員給与に対する人事院勧告という制度的な制約は理解するものの、積極的な賃上げや報酬引上げが必要となります。加えて、エネルギー価格上昇で経営が苦しくなる中小企業などへの支援も必要です。第3に、そうはいっても、現在のインフレは短期に終了する可能性が高く、少なくとも、1970年代のような物価上昇率がさらに高まるリスクは極めて小さい、という緩やかなコンセンサスがエコノミストの中にはあるように私は受け止めています。おそらく、1年後にはふたたびインフレ率が+2%を下回っている可能性がかなりあると考えるべきです。一方で、過剰にインフレに反応すべきではない、という説も成り立ちますが、他方で、+2%の物価目標をサポートするためにも賃上げや所得の増加を志向した企業行動や政策が必要と考えるべきです。

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