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2022年5月24日 (火)

リクルートワークス研のコラム「なぜ今最低賃金を引き上げるべきなのか」を読む!

昨日、リクルートワークス研のサイトにコラム「なぜ今最低賃金を引き上げるべきなのか」がポストされています。私自身の見方に近い部分が多く、グラフとともに簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、ワークス研のサイトから 最低賃金の推移とパート労働者の時給 のグラフを引用すると上の通りです。民主党政権から安倍内閣のアベノミクスにおいて、まだまだ不十分とはいえ、最低賃金がかなり上昇を示してきたことは事実だろうと私は考えており、上のパネルはその私の直感をサポートしていると受け止めています。さらに、世間一般では、そうはいっても、日本の賃金はサッパリ上がっていないではないか、という見方が広く普及しており、私もその見方に賛成なのですが、下のパネルはパート労働者の時給をプロットしており、最低賃金の上昇率に近い伸びとなっている点が明らかに示されています。すなわち、世間一般の賃金は平均的にはそれほど上がっていませんが、最低賃金に近い非正規労働者の賃金は最低賃金に並行して上がっているわけです。

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続いて、ワークス研のサイトから 人手不足と景況感 のグラフを引用すると上の通りです。見ての通りに、景気動向指数と日銀短観に加えて、労働力調査から失業率をプロットしています。失業率は逆サイクルながら、3指標が十分シンクロしているのが見て取れます。実体経済に合わせて企業マインドがシンクロしていますので、日本経済が人手不足の状態にあるとコラムでは結論しています。そして、「失業率が高く、働きたいのに働けない人が労働市場に多くいる環境下においては、最低賃金の引き上げは好ましくない」一方で、「企業が深刻な人手不足の状態に陥っており市場に働き手が不足している状況下にあれば、最低賃金の引き上げはそのデメリットよりメリットの方が上回る」と主張し、「現在の日本の労働市場の状況を振り返ってみれば、最低賃金引き上げのデメリットを憂慮するような状況にない」と結論しています。最低賃金を引き上げれば雇用が減少する、という新古典派的な理論上の帰結、すなわち、「最低賃金引き上げのデメリット」を、日本経済の現状に照らして真っ向から否定しています。まったく私も同感です。

外国人技能実習生のお話など、私が疑問に思わないでもない議論も含まれていますし、最後のパラで「今日本の技術発展の最も大きなネックとなっているのは、労働市場における安い労働コスト」というのも、基本的にいいとしても、やや過ぎたる表現のような気がしないでもありません。特に、中小企業への支援は必要と私は考えています。そして、最後に、最低賃金は政府が決めるとしても、労働市場次第で賃金が自動的に上がるわけではなく、労働者サイドの団結したパワーも必要である点はこのコラムでは忘れられています。こういったいくつかの点は別にしても、最低賃金を上げるべきであるとの分析は、まさに、そろそろそういった議論がなされるシーズンだけに大いに結構ではないか、と私は考えています。

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