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2022年6月30日 (木)

大きな低下を示した5月の鉱工業生産指数(IIP)をどう見るか?

本日、経済産業省から5月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。ヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲7.2%の減産でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の鉱工業生産7.2%マイナス 自動車など低下
経済産業省が30日に発表した5月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は88.3となり、前月比7.2%下がった。マイナスは2カ月連続。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国の上海市などの都市封鎖で生産や物流が停滞した影響が続いた。自動車工業、電気・情報通信機械工業などが低下し、経産省は生産の基調判断を「足踏みをしている」から「弱含み」に引き下げた。
指数そのものは2020年8月以来、前月比の下落幅は20年5月以来の水準だった。新型コロナが世界的に拡大し、生産が停滞したとき以来の大幅な落ち込みになる。
全15業種のうち13業種が低下、上昇は2業種だった。自動車工業は8.0%のマイナスで、下落の寄与度が最も大きかった。普通トラックや普通乗用車の低下が目立った。電気・情報通信機械工業は11.3%のマイナスだった。車載用のリチウムイオン蓄電池などの生産が鈍った。生産用機械工業は5.1%低下した。
上昇した2業種では、無機・有機化学工業は3.9%、石油・石炭製品工業は8.9%の伸びだった。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は6月が前月比12%、7月は2.5%の上昇を見込む。6月1日から中国・上海市のロックダウンが解除され調達の制約が一定程度緩和される見通しだ。ただ供給制約の緩和は段階的で、先行きには不透明感がある。

よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月と比べて▲0.2%のわずかな減産という予想でしたが、実績の▲7.2%減は予想レンジの下限である▲1.2%減を大きく超えて、ネガティブなサプライズと私は受け止めています。減産の主因はサプライサイドと物流、特に、上海のロックダウンに起因すると考えられています。また、先行きに関しては、引用した記事にもある通り、製造工業生産予測指数によれば6月の増産は+12.0%なのですが、経済産業省では上方バイアスを除去すると補正値では+4.9%の増産との試算を出しています。そんなこんなで、これも引用した記事にあるように、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断をまたまた引き下げています。すなわち、前月には「持ち直しの動きがみられる」から「足踏みをしている」に引き下げ、さらに、今月「弱含み」に引き下げています。毎月のように基調が下方修正されるものいかがなものか、という気がします。加えて、5月の減産の主因がホントに上海のロックダウンに起因するのであれば、すでに6月1日からロックダウンが解除されているわけですから、6月の生産はかなり大きな増産に転じる可能性が十分あります。加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染拡大も増加に転じたおそれがあるとしても、水準としては抑制されていますから期待は大きいものがあります。
5月統計の生産や出荷について、少し詳しく見ておくと、生産も出荷も産業別には自動車工業と電気・情報通信機械工業で低下が大きくなっています。まさに、我が国のリーディング・インダストリーだと考えるべきです。逆に、石油・石炭製品工業と無機・有機化学工業で出荷も生産も上昇しています。実に、資源価格の高騰、それに伴う国内価格の上昇が盛んに報じられている中で、製品の価格が上昇している石油・石炭製品工業の出荷や生産が増加しているわけです。通常の経済学の想定によれば、コストプッシュで価格が上昇して、供給曲線が左方シフトすれば、価格の上昇と生産・出荷の減少が見られるハズなのですが、生産・出荷は増加しているとの統計が示されています。石油・石炭製品工業の生産・出荷が伸びている品目としては、軽油、ジェット燃料油、ガソリン等が上げられています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限が撤廃され、航空機の燃料需要が増加した、という面はあると考えられるものの、ガソリンも上げられており、価格引上げというよりは先高感による需要増なのかもしれません。まあ、単月の結果ですし、断定的な結論を導くことは難しいながら、無理やりにこじつければ、あくまで無理やりに解釈すれば、ということで、インフレの生産拡大効果といえるかもしれません。

5月統計における自動車工業と電気・情報通信機械工業、さらに、石油・石炭製品工業の動向に関する私の見方は、ややこじつけとしても、毎月のように鉱工業生産指数(IIP)の基調判断が変更されて、とてもconfusingなのですが、ホントに上海ロックダウンの影響が大きいのであれば、6月統計を見たいというのが多くのエコノミストのホンネではないか、という気がします。強くします。

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2022年6月29日 (水)

順調な持ち直しの動きが続く5月の商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.6%増の12兆3880億円、季節調整済み指数でも前月から+0.6%増を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

小売販売額、5月3.6%増 行動制限なく百貨店が前年超え
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比3.6%増の12兆3880億円で、3カ月連続の増加となった。3年ぶりに新型コロナウイルスによる行動制限のない大型連休となり、百貨店などで前年を大きく上回った。経産省は基調判断を「緩やかに持ち直している」に引き上げた。
百貨店は前年同月比55.3%増の4301億円となった。コンビニエンスストアは3.5%増の1兆78億円だった。経産省は「行動制限が解除され、時短営業の反動で消費が伸びた」との見方を示した。
スーパーは1.1%減の1兆2507億円、家電大型専門店は3.3%減の3704億円、ホームセンターは3.9%減の3101億円だった。小売業販売額を季節調整済みの前月比で見ると0.6%上昇した。

よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、ロイターがまとめた市場の事前コンセンサスによれば、統計のヘッドラインである前年同月比で+3.3%増でしたので、実績の+3.6%増はホンの少しだけ上振れていますが、まあ、予想の範囲内といえます。小売販売は3月21日にまん延防止等重点措置が終了したことに伴って、直近の4~5月統計を見る限り、内需にサポートされた回復を示していると私は受け止めています。とくに、5月統計にはゴールデンウィーク期間が含まれますので、行動制限の有無はそれなりの重みを持ちます。季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、5月統計では、この3か月後方移動平均が+1.1%の上昇となり、基調判断を「持ち直しの動き」から「緩やかに持ち直している」に半ノッチ上方改定しています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、対人サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、物販よりも飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。ただし、逆に、行動制限が撤廃された現段階では、リバウンドも大きい可能性は否定できません。加えて、燃料小売業の販売額は前年同月比で+15.0%増なのですが、かなりの部分は物価上昇による水増しが占めると考えられ、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これらの2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりもさらに現実的に見る必要が十分あります。

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2022年6月28日 (火)

日本の道路はスピードが出せないのか?

久しぶりに、いくつか国際機関のサイトを見ていて、6月8日に公表されていた経済協力開発機構(OECD)の「経済見通し」OECD Economic Outlook をすっかり見逃していたことに気づきました。まあ、こんなこともあります。ということで、気を取り直して、国際通貨基金(IMF)のサイトで IMF Blog "Where Are the World's Fastest Roads?" と題する記事を見つけました。以下の Working Paper で開発した手法に基づく推計です。

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上の Maszoro and Soto (2022) で開発された手法に基づいて、この pp7-9 で Table 2. Mean Speed Scores by Country が推計されており、それに基づく世界地図となっています。それほど熱心にペーパーを読んだわけではありませんが、道路渋滞がひどいとスピードを出せずにスコアが悪くなることになっています。ちなみに、日本のスコアは81です。韓国の93や中国の90を下回り、トップの米国の107にはるかに及びません。私が海外生活を送って自動車の運転をした経験があるのは、チリ92とインドネシア55という、上の地図でもほぼほぼ両極端な2国なのですが、もう30年とか20年も前のことながら、実に、私の実感によく合致しています。当然ながら、チリではスイスイと渋滞なく運転できましたし、インドネシアのジャカルタでは、平日は勤務先の役所の運転手さんに送迎してもらっていたのですが、朝夕の通勤時は渋滞がひどかったです。でも、日曜日なんかに私が運転して家族で出かける際にはさすがにそれほどの渋滞ではありませんでした。
国内では私はもう何十年も自動車は持っておらず、自転車しか乗っていません。それも、夏休みや春休みの休暇期間中の大学への通勤を別にすれば、ほとんどが週末乗っているだけです。引越す前の東京都内では自動車の数が多かったのか、それほど道路にスピード感はなくて、ほぼほぼ路線バスに匹敵するくらいのスピードで自転車に乗っていた記憶があります。でも、東京から関西に引越した今となっては、私の自転車はスピードの点で路線バスにまったくかないません。琵琶湖周辺では道路が空いているのか、はたまた、私が年齢とともに運動能力を落としたのか、そのあたりは不明です。

国際機関であるIMFの情報を取り上げましたが、久しぶりに「海外生活の思い出の日記」に分類しておきます。

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2022年6月27日 (月)

金曜日公表予定の6月調査の日銀短観の予想やいかに?

今週金曜日7月1日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は来年度2022年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナ危機といった経済外要因の動向次第という面がある一方で、それなりに時間を経過してシンクタンクの見方も一定方向に収斂しつつあるような気がします。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+14
+9
<+0.8>
n.a.
日本総研+12
+15
<+5.0%>
先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査対比+2%ポイントの上昇を予想。活動制限の解除によるサービス消費を中心とした個人消費の持ち直しが進むほか、供給制約の緩和期待で景況感は下支えされる見通し。もっとも、一段の資源高や中国景気の停滞など、先行き不透明感が根強い点には注意が必要。
大和総研+11
+12
<+5.8%>
大企業製造業では、供給制約の緩和による生産の拡大を見込む「自動車」の業況判断DI(先行き)が上昇するとみている。さらに、北京での感染拡大という懸念はあるものの、上海におけるロックダウンが解除されたことで、中国向け輸出の持ち直しが見込まれることが、「電気機械」の業況判断DI(先行き)を押し上げると見込む。ただし「食料品」では、原材料価格の高騰による収益の悪化が業況判断DI(先行き)を低下させると予想する。大企業非製造業については、新たなGo To トラベル事業の実施やインバウンドの受け入れ再開など、経済活動の正常化の進展と政策的な後押しへの期待感から、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」といった業種で業況判断DI(先行き)が上昇すると予想する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+13
+12
<+6.5%>
製造業・業況判断DIの先行きは1ポイントの改善を予測する。上海のロックダウンなどによる減産の影響がはく落し、自動車を中心に業況は改善するだろう。ただし、ウクライナ情勢を巡る先行き不透明感や、資源高による採算悪化への懸念などから、大幅な改善には至らないと予想している。
非製造業・業況判断DIの先行きは4ポイントの改善を見込む。対人接触型サービス消費持ち直しへの期待から、宿泊・飲食サービスや対個人サービス中心に改善するだろう。感染者数・重症者数の減少を受けて感染への不安が後退する中、政府が旅行振興策を再開することへの期待が高まっている。日系大手航空会社は、今年7,8月の国内線便数をコロナ禍前比9割超まで増やす計画を発表した。また、政府が観光客受け入れ再開を決めたことで、インバウンドに復調の兆しが見られる点も業況の押し上げ要因になるだろう。
ただし、財消費については伸び悩みが予想される。昨年から続く資源高と足元の円安が相まって、様々な商品の価格が上昇する一方、相対的に賃金の伸びは鈍い。今後も企業による値上げが進み、消費者の節約志向が一層強まることで、卸・小売業などの業況は押し下げられるとみている。
ニッセイ基礎研+12
+14
<+6.3%>
先行きの景況感は総じて小幅な改善を予想。製造業では供給制約の緩和と中国の経済活動再開への期待、非製造業では旅行喚起策や水際対策緩和などに伴う人流のさらなる回復への期待がそれぞれ景況感の追い風になる。ただし、ウクライナ情勢や世界的なインフレ、中国の都市封鎖再導入の可能性など海外経済を巡る不透明感は強いほか、原材料価格の上昇・高止まりに対する懸念も根強いとみられることから、大幅な改善は見込みづらい。
第一生命経済研+14
+13
<大企業製造業+15.2%>
次回6月の短観は、世界経済の減速に対して、円安がマインド押し上げに効くかどうかが注目される。業況DIは、製造業が横ばい、非製造業は改善とみる。物価上昇圧力が、販売価格・仕入価格DIにどう表れるかも注目される。
三菱総研+13
+13
<+7.6%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が6月時点から横ばいの+13%ポイント、非製造業は+2%ポイント上昇の+15%ポイントと予測する。製造業は、資源価格の高止まりや夏場の電力不足が懸念されるが、供給制約が徐々に解消に向かうとみることから、横ばいを予想する。非製造業は、経済活動の再開が本格化すること、インバウンドの受け入れ再開などから改善を見込む。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+10
+13
<大企業全産業+9.4%>
(大企業製造業)先行きは、コスト高が続くことへの懸念は残る一方、半導体など部品不足による供給制約の緩和が期待され、自動車など加工業種を中心に14と、4ポイントの改善が見込まれる。
(大企業非製造業)先行きは、新型コロナ・オミクロン株の新規感染者数の減少を背景に、経済社会活動の活発化が期待され、6ポイント改善の19と改善が見込まれる。
農林中金総研+12
+13
<+2.0%>
先行きに関しては、引き続き、一次産品価格の高騰による収益圧迫への警戒が強いほか、欧米諸国での利上げ加速による景気鈍化懸念や夏場の電力不足も不安材料ともみられるが、5%台半ばの成長を目標とする中国の景気テコ入れ策、サービス消費やインバウンド需要の回復への期待も強いと思われる。以上から大企業・製造業は11、中小企業・製造業は▲7と、今回予測からともに▲1ポイントの悪化予想と見込む。一方、大企業・非製造業は16と今回予測から+3ポイント、中小企業・非製造業は▲2で今回予測から+1ポイントと、いずれも改善方向と予想する。

見れば明らかなのですが、ほぼ、日銀短観の業況判断DIのヘッドラインとなる大企業製造業ではやや悪化、逆に、大企業非製造業ではやや改善、というのが大雑把なコンセンサスかという気がします。その改善と悪化の程度により、大企業製造業の業況判断DIの方が大企業非製造業より水準が高かったり、あるいは、逆だったり、はたまた、同水準だったりするわけなのでしょう。でも、DIですので変化の方向とその大きさが重要であり、DIの水準は2の次になります。まあ、メディアではこれを理解しないニュースが出るかもしれませんが、そのあたりはしっかりと理解しておきたいものです。そして、ヘッドラインで私が着目した先行きについては、どのシンクタンクでも緩やかな改善を見込んでいます。すなわち、製造業については6月調査では、ウクライナ危機などによるコストアップや中国上海のロックダウンの影響を受けての半導体部品の不足などから、一時的に業況判断DIは悪化に振れましたが、先行きは緩やかながら改善、との見立てです。他方、非製造業も同じように緩やかな改善なのですが、これは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大次第、というように私は受け止めています。現在の足元の6gタウ下旬の時点で、すでにCOVID-19の新規感染者数は新規変異株のために増加に転じたとの見方も出ているようですし、もちろん、感染拡大だけではなく変異株の重篤度にもよりますので、専門家ならざる私にはなんとも見通せませんが、場合によっては、夏休みの行楽シーズンに向けて何らかの行動制限を伴う措置が取られる可能性のゼロではありません。また、設備投資計画は3月調査が例年になくプラスで始まりましたが、6月調査では例年通りに順調に上積みされる計画が示されています。さらに、先行きの注目点として、いくつか上げておきたいと思います。まず、今回の6月調査の日銀短観については、私は「事業計画の前提となっている想定為替レート」にも注目しています。3月調査の時点では対米ドルで111.93円となっていましたが、現在の足元の実績データではすでに2割くらいの円安方向で動いています。これを企業としていかに見込んでいるかは注目に値します。そして、日銀短観を離れてさらに2点指摘すると、今夏の猛暑の可能性です。ラ。ニーニャだか、エル・ニーニョだかの影響があるらしく、今冬は厳寒でしたし、今夏は猛暑ともいわれています。通常、夏が暑くて冬が寒いのは経済にとって好条件と考えられるのですが、今夏の東電管内においては電力需要の逼迫から生産への影響が出るかどうか、気にかかっています。そして、米国のリセッションの可能性です。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FED)はインフレ封じ込めのために猛烈な金融引締めを進める可能性が高く、米国がリセッションに陥る可能性も小さくありません。貿易面では日本はすでに米国よりも中国の影響のほうが大きいのでしょうが、さはさりながら、米国景気の動向はとっても気にかかるところです。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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2022年6月26日 (日)

熊谷選手のサヨナラ打で中日を3タテ!!!

 十一 RHE
中  日00031010000 5150
阪  神30000002001x 6151

延長11回に熊谷選手のサヨナラ打で、中日を3タテでした。
打者陣では、試合を決めた11回の熊谷選手のサヨナラ打は見事でしたが、当たりとしてははるかに落ちるものの、8回の中野遊撃手のしぶとい同点打も見逃せません。起死回生の一打でした。さらに、10回の佐藤輝選手のレーザービームによるホームタッチアウトも守備のプレーとして特筆すべきものがありました。湯浅投手を救ってくれました。投手陣では、先発の西純矢投手はもう少し長く投げさせて欲しい気がしました。また、11回の渡辺投手は三者凡退に抑えて、サヨナラへの流れを作る投球でした。3勝目おめでとうございます。

次の横浜戦も、
がんばれタイガース!

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2022年6月25日 (土)

序盤から猛虎打線が爆発し伊藤投手が8回無失点に抑えて中日に大勝!!!

  RHE
中  日000000000 091
阪  神13140100x 10142

序盤から猛虎打線が爆発し、先発伊藤投手が8回を無失点に抑えて、中日に連勝でした。
先発の伊藤投手は毎回のようにピンチを迎えながら、粘り強いピッチングで8回を無失点に抑え、斉藤投手に最終回を託します。逆に、というか、何というか、打線は序盤からことごとくチャンスに決定打が出まくりで、大量点を奪い10-0の大勝でした。いつものジョークですが、明日の試合に何点か取っておきたいくらいでした。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書はかなり難解な経済学の学術書からミステリのアンソロジーまで幅広く計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、ダニエル・ハウスマン『経済学の哲学入門』(勁草書房)は、マイクロ経済学の理論の中心のひとつを形成する選好や選択の基礎となる効用=utikityに関して議論し、さらに、そもそも、エコノミストが何を考察しているのか、何を分析しているのか、について哲学的な考えを取りまとめています。かなり専門性の高い学術書です。続いて、ジャン=ダヴィド・ゼトゥン『延びすぎた寿命』(河出書房新社)では、歴史的に人間の寿命が延びてきた医学や衛生学の進歩を跡付けるとともに、ケース-ディートンの研究成果に着目して、長らく延び続けてきた寿命が反転して、逆に短縮化している可能性について議論しています。稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)は、サブスクで限界費用が無料になった映画やドラマの視聴について、タイトル通りに、早送りで観る人たちについて考察しています。私は特に財の消費方法についてエコノミストとしてわだかまりはありません。続いて、山崎雅弘『未完の敗戦』(集英社新書)は、戦前・戦中的な個人よりも全体を尊ぶ、まさにその意味で全体主義的な部分が決して敗戦で一掃されず、今でも戦争を美化し占領軍に「押し付けられた』という意味で憲法「改正」を目標とする勢力が残存した理由について議論しています。最後に、辻村深月ほか『神様の罠』(文春文庫)は昨年年央に出版されて、ミステリを中心にアンソロジーを編んでいます。それほど大した作品が集められているとは思えませんが、私の好きな作家の作品が収録されています。
なお、今週の5冊を含めて、今年に入ってから新刊書読書は計116冊となりました。半年で軽く100冊を越え、昨年の112冊のペースを超えました。ですので、少し余裕を持って、新刊書ならざる読書にも励みたいと思い、近藤史恵『ホテル・ピーベリー』と方丈貴恵の『孤島の来訪者』を読みました。特に後者については、これで方丈貴恵の主たる作品、すなわち、長編ミステリ3冊は全部読んだと思います。本日の読書感想文と併せて、これら2冊もFacebookの然るべきグループでそのうちに個別にシェアしたいと思います。

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まず、ダニエル・ハウスマン『経済学の哲学入門』(勁草書房)です。著者は、米国ウィスコンシン大学の名誉教授です。英語の原題は Preference, Value, Choice, and Welfare であり、2011年の出版です。本書はミクロ経済の選択に関する学術書であり、ハッキリいって難しいです。200ページほどのボリュームであるにもかかわらず、一応、大学の経済学部の教授職を務めている私が3日かけて読んでいます。学部生や一般のビジネスパーソンにはオススメしません。専門分野が近い大学院生レベルの理解力が必要そうな気がします。まず、何を本書で議論しているかといえば、マイクロな経済学者が何をやっているのか、そして、その方法論は正しいのか、という議論から始めています。そして、私の理解では、マイクロな経済学における選択の基準となっている効用=utiliyuとは、いったい何なのか、という問いに本書では答えようと試みています。そして、著者の結論として早々に示されるのは、効用とは総主観比較評価をもとにしていて、これに基づいて経済的な選択が行われているにもかかわらず、経済学者による選択理論、例えば、顕示選好などは総主観比較評価に基づいた効用概念となっていない、と批判します。私のようなマクロエコノミストからすれば、選択が総主観比較評価に基づいているという点は当然なのですが、逆にいって、マイクロな経済学者が総比較評価以外の評価で選択を決定しているとは、とても思えません。しかし、セン教授の選択理論なんかは、確かに、本書で指摘しているように総主観比較評価ではないかもしれない、という程度には理解します。でも、経済学者がそれほど大きな問題と考えていない「効用とは何か」という点について、ここまで取り上げて議論する意味は私には理解できません。こういった議論を、さらに、ゲーム理論に拡張し、さらに、厚生経済学にも適用されます。ここまでは書評をパスします。私が何とかキャッチアップしたのは、最後の経済心理学に入ってからです。選択には合理性という観点から、すべての選択肢の間で効用の順序付けが出来るという意味での完備性と順番が逆転することがない推移性を満たすと合理的な選択、ということになり、著者は加えて文脈からの独立性と選択の決定性を4条件としているのですが、経済心理学に入れば、ツベルスキー=カーネマンのプロスペクト理論が登場し、文脈からの独立性を犠牲にし、さらに、完備性と推移性を修正した上で、決定性を保持する、といわれれば、よく理解できます。最後に、マクロエコノミストである私にとって難しかったのはもう2点あり、第1は英語と日本語の対応関係です。本書ではadvantageという英語に「便益」という日本語を当てています。確かに、何らかの「お得感」というくらいの表現かもしれませんが、実に何度も何度も登場します。第2に、マイクロな経済学における選択の問題を哲学していますので、序数的なカウントを前提にしています。私のようなマクロエコノミストには、これが馴染みありません。マクロ経済学ではGDPにせよ、インフレ率にせよ、失業率にせよ、すべてが基数的なカウントとなります。すなわち、順番だけが問題なのではなく、絶対量の数値が把握できるわけです。マイクロな経済学では選択を考える際に、その昔のベンサム的な功利主義をとうに卒業していますので、効用=utilityを定量的に把握することをしません。それでも、効用が何になのかについては重要、というのが経済哲学の考え方なのかもしれません。繰り返しになりますが、それなりの専門性高く、しかも、必要性も高い、という読者にのみオススメします。

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次に、ジャン=ダヴィド・ゼトゥン『延びすぎた寿命』(河出書房新社)です。著者は、パリ在住の肝臓・消化器疾患の専門医、医学博士であり、欧州最大の病院グループである公的扶助パリ病院機構で特別研究員を務めています。フランス語の原題は La Grande Extension であり、2021年の出版です。本書は4部構成となっていて、先史時代から20世紀初頭の第1次世界大戦のグレート・インフルエンザ、いわゆるスペイン風邪までを「微生物の時代」とし、大雑把にそれ以降、特に第2次世界大戦後の1945年以降を「医学の時代」として、時代順に医療や衛生の歴史を振り返った後、21世紀の健康を巡る問題を取り上げ、最後に、寿命が後退し始めた直近足元の状況を取り上げています。第1部と第2部は、それほど私自身も興味ないのですが、後半の2部、21世紀に入ってからは医療や衛生だけではなく、健康格差や慢性疾患、特に、大きな問題として、タバコ、アルコール、運動不足、肥満を4つのリスクとして上げています。そして、本書の最大のテーマであろう寿命の後退については、経済社会的な問題としてケース-ディートン夫妻の研究成果、すなわち、非ヒスパニックの白人中年男性の米国人の死亡率上昇について、さまざまな考察を展開しています。もちろん、健康や寿命については、医療と衛生だけではなく、経済社会的な食事、というか、栄養状態とかが関係し、本書で指摘しているタバコ、アルコール、運動不足、肥満の4つのリスクも重要です。ですから、ごく単純にオピオイドの過剰摂取だけでもってケース-ディートンの研究成果を説明するのはムリがあります。しかも、それに自殺が加わります。それにしては、本書では精神疾患についてはかなり手を抜いています。平均寿命の延びが止まって、一部のクラスでは反転を見せているのは事実でしょうし、おそらく、永遠に寿命の延伸が続くとは誰も考えていません。ただ、ケース-ディートンによる『絶望死のアメリカ』(みすず書房)を私も読んで、昨年2021年9月の読書感想文をポストしていますが、この寿命の後退の原因は、自殺、薬物、アルコール、クオリティの低い医療制度、そして、何よりも貧困や格差の拡大であると分析されており、その上で、医療制度の改革、労働組合とコーポレートガバナンス、累進税制とユニバーサルなベーシックインカムの導入、反トラスト政策の推進、レントシーキングの防止策、教育制度の改善、などを対応策として上げています。本書でも、基本的な対応策のラインはケース-ディートンと変わりありませんが、特に、本書独自の分析、というか、表現として行動と環境に着目しています。環境とは、気候を指しており、気候変動が人類の寿命に影響する可能性は鋭く指摘されています。繰り返しになりますが、人類の平均寿命がどこまでも果てしなく延びてゆくとは考えられないわけで、その上で、ケース-ディートン的な個別米国における限定されたクラスの分析ではなく、地球上の人類の寿命を考えるのであれば、確かに、寿命の後退は気候変動=地球温暖化によってもたらされるのかもしれない、と専門外の私なんかは考えてしまいました。

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次に、稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)です。著者は、ライター、コラムニスト、 編集者と紹介されています。本書では、タイトル通りに、映画やドラマを早送りで観る人たちについて考えています。一言でいえば、映画やドラマを芸術として鑑賞するのではなく、コンテンツとして消費する、という表現が取られていて、判ったような判らないような言葉遊びと感じる読者もいるかも知れません。サブスクで限界的に無料になったこういった「見放題サービス」二無限とは言わないまでも、大きな需要が生じるのは当然で、その需要を満たそうとすれば時間を圧縮してタイパのいい早送り、というのはある意味で当然、という気もします。ただ、小学生と同じようなレベルで、映画やドラマを「観た」ことにしておかないと、仲間内での会話についていけない、という意味で「幼稚化」との考えも成り立つかもしれません。さらに、見ていないと仲間内で話題についていけずに、本書では「マウントを取られる」、と表現してます。加えて、映画やドラマのこういった早送りで観るコンテンツ消費から、生産者サイドにリパーカッションがあって、映画やドラマでやたらとセリフで説明してしまう例が現れ始めた可能性についても言及しています。ということで、私から独自に2点指摘しておきたいと思います。第1に、映画やドラマを早送りで観るというのは、製作者や提供者の意図に反している、あるいは、通常のやり方から異なっている、という趣旨なのかもしれませんが、そんな財・サービスの使用や消費なんていくらでもあります。まず、何を持って問題とする、という表現は違うかもしれませんが、観察対象に置いて解明しようとしているのか、私には十分には理解できませんでした。まあ、ほのかには判るわけですが、十分には理解できなかったわけです。包丁を調理に使うのではなく人殺しに使う、といった極端な例は別としても、例えば、自動車やオートバイを本来の移動や運輸で使うのではなく、ドライブ、あるいはもっと言えば、スピードを出してストレス解消、スカッとする、という用途に使うのはどうなのか。それがさらに進んで、暴走族ならどうなのか。いろんな論点があると思います。あるいは、映画やドラマに近いところでいえば、書画・骨董や稀覯本を鑑賞目的ではなく、資産として値上がり待ちで所有するのはどうなのか。エコノミストとしては、すべてがOKに見えます。その意味で、理解が及びませんでした。第2に、映画やドラマを早送りしてまでして観て、知り合いから観ていないことを指摘されてマウンティングされるのを防止するという意味が、これは、著者の言いたい意味ではなく、早送りして見る人の言う意味が、私には判りません。私はもともとマウンティングを取る意欲に欠けていて、生物的なオスとして欠陥がある可能性は自覚しています。ついでにいうなら、1980年代後半のバブル期にいわゆる「適齢期」を迎えたために、両方相まって結婚が遅れたのだろうと自己分析していたりします。それはともかく、映画やドラマに関してマウントされるというまでのポピュラリティある映画やドラマがもしあるのであれば、それは著者のいう芸術を飛び越えて教養と表現すべきではなかろうか、とすら思います。この点も浅はかにも理解が及びませんでした。いずれにせよ、消費財、あるいは芸術であっても、非常に変わっら使い方をし、そして、それが一定理にかなっている、というのはままあることです。テレビなんかでも面白おかしく紹介されています。違いますかね?

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次に、山崎雅弘『未完の敗戦』(集英社新書)です。著者は、戦史・紛争史の研究家だそうです。私はそれほど馴染みがありません。本書はタイトルから直感的に受ける印象は戦史とかの関係なのかもしれませんが、内容は敗戦によって決して昔の「大日本帝国」的な非民主的だった日本が民主的な国家に生まれ変わったわけではない、ということで、私も大いに賛同します。誰も責任を取らずに国民や部下を使い捨てにするような非民主的な昔の日本は敗戦では一掃されなかった、ということですから、歴史観としては私と同じで民主主義的な革命、ないし、大改革が必要と考えるべきです。そして、その先に社会主義革命を考えるのであれば、まさに、戦前からの講座派的な歴史観と一致します。まず、現状分析として、かつての戦前・戦中的に個人の価値観が国家や集団に従属するという部分が日本には大きく残っていることは事実として認められるのだろうと私は考えます。そして、その最悪の例として本書では靖国神社や太平洋戦争の「美化」、例えば、植民地アジアを欧米列強から「解放」する戦いであったとみなしたり、逆に、南京事件などの日本軍の蛮行を否定したりする歴史修正主義を上げています。そして、戦後の憲法を占領軍に「押し付けられた」と考えて改憲を企てる勢力も広く残っている、というか、それを党の綱領に掲げる政党が国会の第1党として政権を担って総理大臣を輩出しているわけです。私自身は、個人として戦死者を偲んで靖国神社に参拝するのは、百歩譲ってOKとしても、公人として戦争賛美につながりかねない靖国神社参拝はお止めになった方がよろしい、という考えです。そして、本書では保守と革新という言葉でそういったグループ、ないし、アンチ・グループを呼んでいますが、私は保守というよりは反動なのではなかろうかという気がします。私の考えでは、歴史は前進するものであり、その前進を止めようとするのは保守、前進どころか歴史を前に戻そうとするのが反動、そして、歴史をさらに前に進めようとするのが進歩派なのだろうと考えています。そして、こういった日本の民主化が不徹底に終わったのは、本書で指摘する通り、東西冷戦であることは明らかなのですが、では、なぜ、ドイツではナチスが徹底的に否定されている一方で、日本の民主化、というか、戦前の戦争推進派の否定が進んでいないのか、という疑問は残ります。私も専門外ですので大きな謎です。まあ、西欧と極東という位置だけではなく、民度の差がある、といわれればそれまでなのかもしれませんが、謎は謎です。もうひとつの要因として、本書の著者は教育を重視しています。批判的な観点を育成する教育になっていない、というわけです。ただ、これは双方向であって、教育に批判的な人格形成の要素が盛り込まれていないから、個人として民主主義的に未成熟であるともいえますが、民主主義が不徹底だから教育のこういった個人としての批判的見方の涵養が含まれない、とも考えられます。ただ、教育の一端を担う身としては考えさせられる見方であることは自覚しています。いずれにせよ、日本の経済社会、あるいは、日本人の国民性などを考える上で重要な視点を提供してくれた読書でした。

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最後に、辻村深月ほか『神様の罠』(文春文庫)です。なかなか豪華にも、人気のミステリ作家6人によるアンソロジーです。収録順に、乾くるみ「夫の余命」、米澤穂信「崖の下」、芦沢央「投了図」、大山誠一郎「孤独な容疑者」、有栖川有栖「推理研VSパズル研」、辻村深月「2020年のロマンス詐欺」の6作品で構成されています。すべて、文藝春秋社の『オール読物』に収録された作品です。最初の「夫の余命」は、余命1年と宣告されながらも結婚した若いカップルについて、日付を明記しつつ時系列を逆にたどります。『イニシエーション・ラブ』の作者らしく、みごとに読者をミスリードします。「崖の下」は、男女4人のスキーヤーが雪山で遭難し、うち1人が明らかな他殺体で見つかった殺人事件の謎解きです。凶器は何か、がポイントになります。「投了図」は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための緊急事態宣言か何かの行動制限下で、古本屋の主人について、将棋のタイトル戦の中止を訴える張り紙をした自粛警察ではないかと、妻が疑います。ミステリとみなさない読者もいそうです。「孤独な容疑者」は、迷宮入りした過去の殺人事件を再捜査する中で、アリバイトリックを解き明かす、という作品ですが、こんなことが現在の日本で可能なのだろうか、という意味で、やや納得いかない点が残りました。「推理研VSパズル研」は、学生アリスの作品です。パズル研から推理研に出題された謎解きについて、江上部長が見事に解決するという論理パズルをテーマにしています。最後の「2020年のロマンス詐欺」も、コロナ禍で行動制限が続く東京で、山形から出て来たばかりの大学生がロマンス詐欺の片棒を担ごうとしつつも、思い込み激しく見事に脱線する、というストーリです。私の読み込み不足なのかもしれませんが、少し物足りない作品、疑問ありの作品が多く、これだけの作者を集めたにしては、それほどいい出来のアンソロジーではありません。その中で、冒頭の乾くるみ「夫の余命」と米澤穂信「崖の下」の2作が光っていると私は思います。逆に、辻村深月「2020年のロマンス詐欺」はあまりにナイーブ、というか、いかにも田舎から東京に出てきたばかりの大学生を主人公に据えるのがよさそうな作品、という気がします。ちなみに、どうでもいいことながら、「ナイーブ」という用語の私の用法について、簡単に記しておきます。その昔、絵画に「ナイーブ派」ないし「ナーブ・アート」一派がありました。19世紀末から20世紀初頭ですから、印象派なんかとよく似た時期に活躍していて、今でこそ「素朴派」と邦訳されていますが、私の知る限り、その昔は「稚拙派」と呼ぶ評論家がいたりしました。「ナイーブ」とは決してニュートラルな表現ではないし、ひょっとしたらよくない意味で使われている可能性がありますのでご注意ください。

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2022年6月24日 (金)

消費者物価指数(CPI)と企業向けサービス価格指数(SPPI)の動向を考える!!!

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (PPI)が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。まず、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.1%を記録しています。物価上昇は9か月連続です。7年ぶりの+2%超の物価上昇が先月から続いています。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.8%にとどまっています。また、企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+9.0%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の全国消費者物価、2.1%上昇 食料や家電の値上がりで
総務省が24日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比2.1%上昇した。上昇は9カ月連続で、2%台を付けたのは前月に続いて2カ月連続となる。エネルギー価格が引き続き上昇しているほか、原材料価格の高騰を受けた生鮮食品を除く食料の上昇、部品供給不足を受けた家電製品の値上がりなどがCPIを押し上げた。
QUICKがまとめた市場予想の中央値(2.1%上昇)と一致した。伸び率は4月(2.1%上昇)と同水準だった。
エネルギーは前年同月比17.1%上昇と高騰が続いているが、前月(19.1%上昇)からは伸び率が縮小した。このうち、原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」は18.6%上昇、「都市ガス代」は22.3%上昇と大幅な伸びとなった。「ガソリン」も前年同月比では13.1%上昇となったが、政府の補助金による抑制効果などで前月に比べて伸び率は鈍化した。
生鮮食品を除く食料は前年同月比2.7%上昇と、15年3月(3.8%上昇)以来7年2カ月ぶりの伸び率となった。値上げによって調理カレーや唐揚げなどの上昇が目立ったほか、同様に値上げが相次ぐハンバーガーや寿司など外食も押し上げに寄与した。「家庭用耐久財」は7.4%上昇した。中国のロックダウン(都市封鎖)や半導体不足を背景にしたルームエアコンの上昇がけん引した。
一方、携帯電話の通信料は前年同月比22.5%下落した。
生鮮食品を除く総合指数は前月比で0.1%上昇した。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.8%上昇した。生鮮食品を含む総合は前年同月比2.5%上昇し、9カ月連続でプラスとなった。
5月の企業向けサービス価格、1.8%上昇 上昇幅が拡大
日銀が24日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は106.7と、前年同月比で1.8%上昇した。15カ月連続のプラスで、上昇幅は4月(1.7%)から拡大。エネルギー価格の高騰などから運輸・郵便が上昇した。指数そのものは前月から横ばいだった。
運輸・郵便のうち、国際運輸関連が大きく上昇した。外航貨物輸送では燃料価格の上昇に加え、中国のロックダウン(都市封鎖)解除を見越した運賃価格の上昇も押し上げ要因になった。
不動産は店舗の賃料が主因となって上昇した。新型コロナウイルス感染対策のまん延防止等重点措置(まん防)の解除で外出する人が増え、店舗の売り上げと連動して賃料が上昇した影響とみられる。
調査の対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは95品目、下落は21品目だった。

長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.1%の予想でしたので、ジャストミートしました。基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきです。もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀金融政策による需要面からの物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、5月統計における上昇率は+17.1%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.26%あります。この寄与度のうち、電気代がちょうど半分の+0.63%ともっとも大きく、次いで、ガソリン代の+0.27%、都市ガス代の+0.21%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%、5月統計では+17.1%と、ホンのちょっぴりながら上昇率は下げ止まりつつあるようにも見えます。ただ、かなり高い上昇率で高止まっていることは確かです。加えて、生鮮食品を除く食料も4月統計の+2.6%上昇に続いて、5月統計でも+2.7%の上昇を示しており、+0.60%の寄与となっています。

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続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは上の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇の要因も、基本的に、消費者物価指数(CPI)と同じで、供給面からのインフレといえます。大類別でヘッドライン上昇率に対してもっとも寄与度が大きかったのは運輸・郵便であり、+4.8%の上昇、0.77%の寄与となっています。寄与度で見てその次に大きい大類別は土木建築サービスをはじめとする諸サービスであり、上昇率こそ+1.5%と大きくないのですが、寄与度は+0.53%あります。また、景気に敏感な広告も上昇率+4.4%、寄与度+0.21%を示しています。運輸・郵便は石油価格上昇などによるコストプッシュの要因が強いと考えるべきですが、諸サービスや広告についてはコストプッシュばかりとはいえません。まあ、SPPIには直接にエネルギーや資源価格を反映する大類別がありませんので、円安とともに資源価格上昇が波及しているという見方は成り立つとはいえ、人手不足の影響はそれなりにあるのだろうと私は受け止めています。

最後に、参議院議員選挙が本格的に開始され、現在の物価についての議論も盛んです。ただ、私が考えるに、現在のインフレ目標+2%に近い実績物価上昇率をもって日銀を批判するのは疑問です。というのも、個々人の受け止めはさまざまとしても、メディアの論調ではつい半年ほど前までは物価目標+2%が達成されない、という事実をもって日銀を批判していたように私は見ていたのですが、それが今では+2%の物価上昇を批判しているように見受けられます。+2%の物価目標が達成されないといっては批判され、物価上昇が+2%だといっては批判されるのでは、日銀も立場がありません。他方で、物価に対する批判が大きいのは、バックグラウンドで生活が苦しくなっているからではないかと私は想像しています。しかし、物価上昇だけを「悪者」にしていたのでは、そのほかに生活を苦しくさせている要因を見逃すことにもなりかねません。物価上昇も含めて生活が苦しくなっているのであれば、ケインズ的には収入が増える必要があります。反ケインズ的には生活を切り詰める必要があるかもしれません。私はエコノミストとして、生活を切り詰めるよりは収入を増加させる方法を探りたいと思います。

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2022年6月23日 (木)

いよいよ参議院議員選挙が始まった模様!!!

あまりよく認識していなかったのですが、参議院議員選挙が始まった模様です。昨夜のニュースで見て、夕刊でも報じられています。どうでもいいことながら、総務省の参議院選挙イメージキャラは、生田絵梨花さんと市川猿之助のようです。どういう取合わせなのか、私にはよく判りません。
どうでもいいことが続いて、多くの人もそうだという気がしていますが、私もTwitterやFacebookなどのSNSでは複数のアカウントを持っていたりします。中心は、ポケモンやタイガースといった脈絡ない趣味アカと経済・読書などのお仕事アカです。昨日午後からこれらのSNSのうち、Twitterのお仕事アカは選挙のツイートが半分超のような気がします。もちろん、Twitterの趣味アカは特に大きな変化ありません。なぜか、Facebookは趣味アカもお仕事アカも両方とも、それほど昨日の状況から変化ないように感じます。Instagramはアカウントは持っていても、ほとんどアクセスしていないので不明ながら、Twitterのメディアとしての特性なのか、私のフォローがヘンなのか、よく判りませんが、みなさん選挙に熱心に取り組んでおられることが把握できました。私も微力ながら、学生諸君に投票に行くようにオススメしたいと思います。

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2022年6月22日 (水)

リクルートによる5月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

来週金曜日7月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。参照しているリポートは以下の通りです。計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、以下の出典に直接当たって引用するようお願いします。

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まず、いつものグラフは上の通りです。アルバイト・パートの時給の方は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響ありながら底堅い印象で、前年同月比で見て、1月+1.1%増、2月+1.5%増、3月+1.6%増、4月+1.5%増の後、5月も+2.8%増となっています。ただし、2020年1~4月のコロナ直前ないし初期には+3%を超える伸びを示したこともありましたので、やや物足りない気もしますが、時給を見れば、昨年2021年年央から1,100円を上回る水準が続いており、かなり堅調な動きを示しています。他方、派遣スタッフの方は今年2022年1月+1.1%増、2月+1.4%増の後、3月▲0.1%減、4月+1.3%増の後、5月は前年から横ばいとなっています。
まず、アルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は、繰り返しになりますが、5月には+2.8%、+31円増加の1,123円を記録しています。職種別では、「専門職系」(+65円、+5.1%)、「フード系」(+46円、+4.6%)、「事務系」(+54円、+4.5%)、「営業系」(+53円、+4.3%)、「販売・サービス系」(+31円、+2.9%)、「製造・物流・清掃系」(+25円、+2.3%)、とすべての職種で増加を示しています。地域別でも関東・東海・関西のすべての地域でプラスとなっています。なお、「製造・物流・清掃系」を除いて、すべての職種で、前年同月から+2.8%以上の伸びを示しているにもかかわらず、平均で+2.8%増というのは、いわゆるシンプソン効果で、平均時給が低い「フード系」や「販売・サービス系」といった職種の雇用が増加しているのだと推測しています。あるいは、何らかのバグがプログラムに入っている可能性も否定できません。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、5月は前年から横ばいにとどまりました。職種別では、「製造・物流・清掃系」(+41円、+3.2%)、「営業・販売・サービス系」(+33円、+2.3%)、「医療介護・教育系」(+30円、+2.1%)、「オフィスワーク系」(+27円、+1.8%)、「クリエイティブ系」(+16円、+0.9%)、はプラスとなっている一方で、「IT・技術系」(▲47円、▲2.2%)だけがマイナスを記録しています。派遣スタッフの6つのカテゴリを詳しく見ると、「IT・技術系」の時給だけが2,000円を超えていて、段違いに高くなっていて、全体の平均を押し下げています。なお、地域別には、関西だけが前年から横ばいで、関東と東海はマイナスを記録しています。

基本的に、アルバイト・パートも派遣スタッフもお給料は堅調であり、まん延防止等重点措置の解除後の順調な景気回復に伴う人手不足の広がりを感じさせる内容となっています。

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2022年6月21日 (火)

本年度の国家公務員採用総合職試験の結果やいかに?

昨日6月20日、人事院から国家公務員採用総合職試験の合格者発表がプレスリリースされています。院卒・大卒を合わせて、申込者≈受験者15,330人、合格者1,873人、倍率8.2倍となっています。なお、女性の合格者数は、院卒・大卒合わせて573人で過去最多、女性比率は30.6%となっています。
私が興味あったのは出身大学別の合格者数なのですが、pdfの資料3にあり、以下の通りです。

大学名合格者数
東京大217
京都大130
北海道大111
早稲田大84
東北大75
慶應義塾大71
立命館大63
岡山大61
中央大49
千葉大47

人事院資料には、合格者数10人以上の大学が取り上げられているのですが、このブログでは上位トップテンまでとしました。上位の東京大217人、京都大130人というのは例年通りという気もします。なお、この後には、大阪大46人、名古屋大45人と続きます。時事通信の記事によれば、「出身大学別の合格者は東京大の217人が最も多いが、前年度から39人減少し、総合職試験が始まった12年度以降で最少となった。」ということのようです。一応、我が母校と勤務校がともにランクインしています。

まったく違う話題ながら、スターバックスの原宿店が閉店したと聞き及びました。青山に住んでいる時に何度か入ったことがあります。まあ、もっと近いスタバがいっぱいありましたから、それほど馴染みはありませんでしたし、どうして閉店したのかは知りませんが、それでも、ちょっとだけ東京を懐かしんでおります。

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2022年6月20日 (月)

帝国データバンクによる「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート (2022年6月)」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、先週6月15日に帝国データバンクにから「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート (2022年6月)」の結果が明らかにされています。今年2022年7~9月期に値上げを予定している企業は4月調査の時点から+10%ポイントも増加しています。食品が多いとの結果です。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 自社の主な商品・サービスについて、2022年4月以降に値上げした/する企業は68.5%と7割近くに達した。2022年6月以降に「値上げした/もしくはする予定」の企業は合計で37.0%となった。また、4月に実施した同様の調査と比べて、「2022年7~9月ごろに値上げ予定」の企業(8.6%→19.9%)は10ポイント超上昇
  2. 業界別でみると、『卸売』や『製造』で値上げが進む一方、『サービス』や『運輸・倉庫』で全体よりも値上げを実施した企業の割合が低かった

ということで、これでほぼほぼすべてが尽くされているような気がしますが、リポートからグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 企業の値上げ動向 に関するグラフを引用すると上の通りです。値上げを実施済・予定の企業は68.5%と⅔超に達しています。しかも、今年2022年7~9月期に値上げ予定の企業は、4月調査時点では8.6%でしたが、今回6月調査では19.9%と+10%ポイント超の値上げ見込みとなっています。

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続いて、リポートから 2022年4月以降に値上げ実施済・予定企業のうちの主な業種 に関するテーブルを引用すると上の通りです。まあ、軽く想像される範囲かもしれません。また、今回は取り上げませんが、リポートでは、「値上げ実施済み・予定」と回答した企業の声、あるいは、「値上げしたいが、できない」と回答した企業の声などにも注目しています。後者の値上げできない企業の声としては、「値上げはしたいが需要がない」とする貸切バス業者の回答が私の目につきました。

このブログで何度も繰り返しているように、原材料費の値上がりや円安による輸入品価格の上昇は価格転嫁できるような経済状況、すなわち、家計や中小企業などの所得をサポートしつつ、大企業の価格影響力を弱める政策が必要です。特に、下請け企業や納入元の中小企業の値上げを受け入れないような大企業の価格影響力がデフレを長期化させています。かつての消費税率引上げの際に取られたような価格転嫁をスムーズに実施するための監視制度の充実も一案かもしれません。また、大企業に値上げを受け入れてもらえないような中小企業への支援も必要です。

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2022年6月19日 (日)

リリーフ陣が打ち込まれて5連勝でストップ!!!

  RHE
横  浜003001030 7101
阪  神030000100 480

リリーフ陣が打ち込まれて、5連勝でストップでした。
先発の西純矢投手は先制タイムリーはよかったものの、ピッチングでは直後に追いつかれて、早々に降板でした。8回には湯浅投手が横浜打線に捕まって決定的な3点を失いました。打線もイマイチでした。2回には下位打線のラッキーパンチで3点を先制しましたが。後は、チャンスに決定打不足で、不調時の阪神打線に戻ったかのような不甲斐なさでした。3位に上がったものの、ヤクルトの背中は遠そうです。

次の広島戦は、
がんばれタイガース!

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2022年6月18日 (土)

伊藤投手が横浜打線を抑え4番5番の4得点を守って阪神5連勝!!!

  RHE
横  浜100000000 130
阪  神20200000x 480

伊藤投手のナイスピッチングで4番佐藤輝選手と5番大山選手の長打による4得点を守って横浜に連勝、交流戦終盤からは5連勝です。
先発の伊藤投手は初回こそソロホームランを許したものの、2回以降はピシャリと横浜打線を抑えました。テレビ解説でも指摘されていたように、なぜか、ライトフライトショートゴロが多かった印象です。打線は序盤から得点を重ね、初回は4番に座った佐藤輝選手のツーベースですぐに逆転し、3回には大山選手のツーランで加点しています。まあ、3-4点あれば阪神投手陣の出来からして勝率はかなり高くなります。
ただし、油断は禁物です。広島が負ければAクラス3位に入ると浮かれているようですが、それほど甘くはないと思います。これで流れが変わって、これからタイガースの快進撃が始まると思ってはいけません。シーズンで出しに連敗した時と選手も監督・コーチもまったく顔ぶれは代わっていないわけですから、そのうちに、連敗もあり得ますし、ここは慎重に受け止めるのが吉ではないでしょうか。

明日は3タテ6連勝目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は日本共産党国会議員による経済書をはじめ計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、大門実紀史『やさしく強い経済』(新日本出版社)は日本共産党の国会議員が新自由主義=ネオリベな現在の経済政策に代わるリベラルな経済政策を提言しています。私はほとんどの論点で賛成なのですが、金融政策運営と財政収支均衡に関して疑問を持っています。続いて、ジリアン・テット『ANTHRO VISION』(日本経済新聞出版)は英国「フィナンシャル・タイムズ」紙のジャーナリストが、経済や金融に人類学的な視点を導入する利点を強調しています。さらに、宮部みゆき『子宝船』(PHP研究所)は人気のミステリ作家の時代小説仕立ての謎解きです。「きたきた捕物帖」シリーズの第2巻です。そして、宮内悠介『かくして彼女は宴で語る』(幻冬舎)は、これも人気のミステリ・SF作家が実在の「パンの会」を舞台にした短編ミステリで、女給が安楽椅子探偵となって謎解きをします。最後に、おおたとしまさ『ルポ 名門校』(ちくま新書)では、日本各地の高校の名門校を取り上げて、単なる大学進学校とは違う顔を持つ名門校の取材結果を取りまとめています。
なお、今週の5冊を含めて、今年に入ってから新刊書読書は計111冊となりました。6月半ばで軽く100冊を越えました。昨年は6月最後の土曜日で112冊でしたので、昨年を少し上回るペースです。ですので、少し余裕を持って、新刊書ならざる読書にも励みたいと思います。また、本日の読書感想文は、Facebookの然るべきグループでそのうちにシェアしたいと思います。

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まず、大門実紀史『やさしく強い経済』(新日本出版社)です。著者は、日本共産党の国会議員であり、経済問題の論客としても知られています。本書では、新自由主義=ネオリベな冷たく弱い経済から、より分配を重視した表題通りのやさしく強い経済を目指す経済政策のアウトラインを示す試みがなされています。ただ、150ページ余りのやや小振りな経済書ですので、足りない部分はいっぱいあります。2章構成で、第1章はネオリベ経済政策への批判に費やされており、第2章が私からすればメインとなります。その第2章では、第1章からの議論の続きで、極めて大雑把な私の理解ながら、冷たい=格差拡大、弱い=成長できない、から、結局、岸田内閣が腰砕けになってしまった分配の重視、ないし、成長から分配への経済の流れを戻す試みがいくつか提案されています。成長から分配へ、の「やさしい」方の大きな流れについては、私も従来から主張しているように、大企業を中心に内部留保利益=利益剰余金への課税、さらに、富裕層への課税強化、そして、消費税率の引下げを主張しています。まったくその通りです。そして、第2章後半の「強い」方の政策としては、賃上げと社会保障の充実による所得の底上げ、環境重視の気候変動抑止の政策による成長の強化、ジェンダー平等の達成による成長力の強化、個人情報保護を徹底したデジタル社会の発展の方向性、そして、教育や研究の自由を保証し中小企業を支援するなどの人的資本の重視の5点を上げています。私は諸手を挙げて賛成です。一応、というか、何というか、富裕層減税によるトリクルダウンが生じなかったという Hope and Linberg "The economic consequences of major tax cuts for the rich" キチンとした最新の学術文献も参照されています。その上で、あえて、その上で、3点、大きな2点とやや細かな1点について疑問を呈しておきます。まず、本書では、中央銀行の金融政策に関して何の言及もありません。大きく片手落ちだと私は感じています。私は現在の黒田総裁のもとでの異次元緩和は継続されるべきであり、金融政策が引締めに転じるのは間違った政策だと考えています。もっといえば、現在の水準くらいの円安は日本経済に決して大きなマイナスではなく、少なくとも政策的に、為替介入であれ、金融政策であれ、為替をターゲットにした政策によって「円安修正」を行うべきではないと考えています。加えて、物価についても、2013年には+2%のインフレ目標が政府と日銀で合意されており、現状のコアCPI上昇率+2%近傍の物価上昇は批判の対象にはならないと考えています。おそらく、私を含めた多くのエコノミストは、年内に+5%には遠く及ばずコアCPI上昇率はピークアウトするものと予想しています。その上で、黒田総裁の例の「物価上昇に対して家計の許容度が上昇している」発言に、たぶん、著者も批判を加えたのであろうと想像していますが、まさか、今さらながらに「中央銀行は政府から独立」なんてお題目で逃げを打つことなく、国民生活に大きな影響を及ぼす金融政策に関しても正面から発言することを期待します。もうひとつの大きな点は、財政政策における収支均衡の問題です。10年余前に当時の民主党を中心とする政権交代がありました。その差異、私はまだ総務省統計局に勤務していましたが、マニフェストに盛り込まれた政策を実行するための財源を確保するために、いわゆる「事業仕分け」が行われて、結局のところは緊縮財政に陥って国民の支持を失った記憶があります。そのあたりについても、例えば、プライマリ・バランスの黒字化達成目標なども何ら言及はありません。最近の岸田総理による軍事費拡大方針の表明についても、軍事費拡大とともに財源についても日本共産党の志位委員長がツイッタで疑問を呈しています。軍事費拡大は反対だが、国債による財源調達ならもっと反対、ということなのでしょうか。そうだとすれば、日本共産党が政権を取った際には国債ならざる財源で財政政策を運営するのか、という疑問もあります。もっと簡潔に、れいわ新選組と同じく「国債による財源調達もアリ」というのを大っぴらに認めるのも一案かと思わないでもありません。最後に、小さな点ですが、プライバシの確保についてです。私は市場との関わりにおけるプライバシがどこまで保護されるのかについては、それほど自信がありません。もちろん、他方で、市場との関わりのないベッドルームのプライバシについてはガッチリと保護されるべきであると考えますが、市場と個人の間の売買や資産購入や雇用と労働については、それほどプライバシはないものと覚悟しています。マネーロンダリングとまでいわないとしても、市場との取引情報はプライバシ保護の対象とすべきかどうか、かなりの程度にオープンにすべきではないのか、私は現時点でEUのGDPRのような規制はやややり過ぎのおそれがあると考えています。GAFAは、こういった市場との関係の個人情報を収集していますので、私自身はそれほど問題は大きくないし、少なくとも、現時点で国民が一方的に大きな損失を被っているのではない、と考えています。アマゾンのリコメンドなんかも、プライバシ侵害というよりは利便性の向上をもたらす部分も無視できない、と考えています。このプライバシの問題はやや別としても、中央銀行の金融政策と財政政策の大きな論点については、ぜひとも、正面から論じていただきたいと思います。

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次に、ジリアン・テット『ANTHRO VISION』(日本経済新聞出版)です。著者は、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のジャーナリストであり、ケンブリッジ大学から社会人類学の博士号を取得しています。FTは日経に買収されたとはいえ、ロンドンをベースにした経済紙であり、人類学とは関連薄い気もしますが、逆に、というか、それだけに、経済や金融に関する問題を読み解く際に、経済学や経営学ではなく人類学を応用する可能性を本書では議論しています。そして、その試みはハッキリいって失敗しています。そりゃあそうです。ムリがあります。確かに、感染症のパンデミックについては、まだ、人類学的な観点からのアプローチが可能だといえます。本書だけではなく、例えば、イタリア人はハグをするので感染が拡大した、なんて議論もありました。でも、金融などのデータがしっかりした分野ではモデルをキチンと組んで分析する学問体系が有利に決まっています。私は人類学はほとんど知りませんが、データのに基づくモデルを組んで分析する学問であるかどうかは疑問を持っています。もちろん、何らかの科学である限りはモデルを組んで分析をするわけですが、そのモデルがデータを基に組まれているとは限りません。経営学のケーススタディなんかは、観察結果をデータ化するのではなく、別の方法でモデル化しているようにしか私には見えません。ですから、ケーススタディでは良好な結果があ示されているとしても、確率的に失敗ケースがいっぱいありそうな気がしてなりません。失敗ケースに目を向けることなく、成功ケースだけを取り出してケーススタディしても、幅広い応用が可能であるかどうかは怪しいと思います。ただ、本書でも指摘しているように、将来の不確実性が大きく高まっている時代にあっては、経済学や経営学だけではない幅広い知見を総動員する必要が高まっていることも事実です。最も、他方で、AIがビッグデータを用いて問題解明に当たる時代なのですから、人類学の方法論から大きく遠ざかっているのも認めざるを得ません。加えて、著者自身が明らかにしているように、著者はリーマン・ブラザーズの破綻も、ケンブリッジ・アナリティカの暗躍も、実は、見逃していると明記しています。まあ、人類学の知見がそれらの対しては実践的には役に立たなかったわけです。当然のように、失敗ケースも成功ケースの裏側に数多くあるわけで、そのあたりのバランスを取りつつ読み進むのが吉かもしれません。

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次に、宮部みゆき『子宝船』(PHP研究所)です。著者は、我が国でももっとも売れているミステリ作家の1人です。本書のサブタイトルは「きたきた捕物帖(二)」となっていて、一昨年2020年9月26日に読書感想文をポストした『きたきた捕物帖』に続いてシリーズ第2弾となります。出版社の方でも力が入っているようで、特設サイトを開設していたりします。キャスティング、というか、人物相関図がとても判りやすくなっています。しかも、このシリーズに限定せず、同じ作者の他の作品とのリンケージも明らかにしてくれています。例えば、本書の主人公である北一が住んでいるのは、勘右衛門が差配する通称富勘長屋なのですが、『桜ほうさら』の主人公であった古橋笙之介も江戸では同じ富勘長屋に住んでいました。また、出版社は違いますが、政五郎親分やその配下だった記憶力抜群のおでこは「ぼんくら」シリーズにも登場します。おでこが記憶をたどるのは「ぼんくら」シリーズとまったく同じだったりします。ということで、この作品は3章構成なのですが、ストーリとしては2つの物語が詰め込まれています。第1章では、宝船の七福神の絵から子供を授かった家でありながら、子供が亡くなった後には弁財天が下船していた絵が見つかった事件が2件相次いで生じ、その絵を書いた酒屋で騒動が持ち上がって、町衆が解決するものの、北一は遅れて真相に気がつく、という軽い謎解きです。第2章と第3章が続き物で、弁当屋の親子3人がトリカブトの毒で死にます。そして、拷問により犯人が「自白」し、そのまま獄死して一件落着となるのですが、真犯人を北一が追いかけます。その北一を奉行所の検視役である栗山周五郎がバックアップします。この一家3人殺人事件で政五郎親分やおでこが登場します。実は、私は宮部みゆきの時代小説のシリーズの中では「ぼんくら」がもっとも好きで、出来もよかったと評価しているのですが、どうも、このままシリーズの続きは出ないようなウワサです。従って、というわけでもないのですが、出版社が違うにもかかわらず、ホンの少しだけリンケージをこの「きたきた捕物帖」シリーズに残しているのではないか、と私は想像しています。ひょっとしたら、この「きたきた捕物帖」は宮部みゆきの時代小説の集大成となるシリーズなのかもしれません。本書だけは大学の生協で買って読みました。1割引は有り難いです。

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次に、宮内悠介『かくして彼女は宴で語る』(幻冬舎)です。著者は、人気の若手ミステリ・SF作家であり、私はどちらかというとSF作家として評価していたりします。本書はサブタイトルに見えるように、明治期末から大正期にかけて活躍した作家や画家といった文人墨客が「牧神=パンの会」に集まって、各回ごとに謎解きをする、という趣向です。5話構成となっています。ホントは、それだけでなく、実は、最終話にちょっとしたサプライズが隠されていたりします。この作品の登場人物は、私もそう詳しくないのですが、ほぼほ実在していたようですし、「パンの会」そのものは確実に実在したもので、『スバル』系の詩人たちと『方寸』系の画家たちが語らって作ったロマン主義運動のサロンだったと、物の本には書かれていたりします。しかも、その第1回の集まりが「第一やまと」という料理屋で開催されたのも事実でそうです。そして、毎回謎解き、ということで、女給のあやのが安楽椅子探偵の役割を演じて解明をして、パンの会にご出席の上流階級の文人墨客を出し抜きます。ただ、ミステリに詳しい読者であれば、これがアシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズで給仕のヘンリーが謎解きをするのと同じ趣向であることは明確でしょうし、本書の第1章の最後の覚え書きでも作者自身がそう記しています。というか、この覚え書きを付すのもまた「黒後家蜘蛛の会」シリーズと同じといっていいかもしれません。そして、謎解きそのものは、ハッキリいって、凡庸です。しかも、「黒後家蜘蛛の会」と同じで、真相を確かめようがありませんから、まあ、言葉は悪いですが、出席者を納得させ説き伏せればそれで謎解きとして成立、ということになります。ただし、「頃後家蜘蛛の会」シリーズと異なる点がいくつかあります。まずは、「黒後家蜘蛛の会」シリーズの登場人物が、たぶん、上流階級ではあっても、まあ、一般ピープルと大きくは違わない人物像を前提としているのに対して、この作品では明治-大正期の実在の文人墨客を登場させていますし、それなりに、私のようなシロートからすれば、雰囲気ある会話をしているように見えます。ただ、登場人物に生気は感じられません。会話が面白いだけです。そして、「黒後家蜘蛛の会」シリーズと圧倒的に異なるのは、最終話でいくつかのとんでもない仕掛けがなされていることです。まず、ややネタバレかもしれませんが、謎を解く安楽椅子探偵役のあやの正体に驚かされる読者が多いと思います。そして、これもネタバレしてしまいそうなのですが、ある意味でメタ構造になっていて、最終5話で前の謎解きが振り返られるとともに、本書を離れた歴史のタイムトラベルめいた小説としての構造に驚かされます。いや、ミステリなのに、やや突っ込んだ感想文になってしまいました。少し反省しています。

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最後に、おおたとしまさ『ルポ 名門校』(ちくま新書)です。著者は、教育ジャーナリストであり、同種のものとして、私は同じ著者の『名門校とは何か?』(朝日新書)を2015年5月23日の読書感想文でポストしています。ということで、ここでいう「名門校」というのは、高校レベルの名門校です。ですから、大学ではありません。最後の方で明かされますが、著者の頭には、英国のパブリック・スクールのようなものがイメージされているようです。そして、決して大学進学一本槍ではないティーンエイジャーのころの高校生活の楽しさを満喫できる名門校が取りそろえて紹介されています。私も本書の見方には賛成です。というのも、学年が進むほど専門性が高くなり、高校というのは、ギリギリでその後の専門分野が入り乱れて学生間での異質性がかなり高いからです。異質性高くダイバーシティが進んでいる方が、ある意味で、友人関係というのは面白い可能性があります。一応、ここであからさまな自慢なのですが、私と2人の倅が卒業した高校は3校とも本書で取り上げていただいております。一応、我が母校は名門校の末席に連なっているという誇りは確認できました。ただ、男女比では圧倒的に男子校が多いような気がします。もちろん、公立校も数多く取り上げられていますし、私立高でも男女共学校は少なくないのですが、やっぱり、男子単学が多いのは、まさか、取材不足ではないのでしょうが、どうしても大学進学がひとつの名門高校の目安になるためであると私は理解しました。ただ、少なくとも、私の出身校は本書で言うところの自由とか、リベラルとよくマッチしています。バンカラで統制の行き届いた高校も、ある意味では魅力なのかもしれませんが、名門校とまでいわないとしても、特色ある教育という意味では自由な校風とリベラルな教育、ということになりそうです。ただ、本書では緩いという意味での自由ではない、と指摘していますが、私の出身校はハッキリいって緩かったような気がします。そして、自由な校風であるのは、言って悪いですが、そもそも大学受験に適した、というか、それなりの大学に合格するくらいの学力を持った生徒を集めているから、シャカリキになって詰め込む必要がない、というのもあります。生徒や学生ではなく、ある学校を名門校に育て上げていくためには、大学進学実績を作り上げるのが近道であることはいうまでもありませんし、実際にそういうコースを辿って名門校となった高校も少なくないと思いますが、その名門校といわれるステータスを得ることができれば、後は、自然といい生徒が集まっていい大学進学実績が残せる、という好循環に入るような気もします。ただ、そういった名門校入りすることがそもそも難しいのかもしれません。

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2022年6月17日 (金)

リクルートの考える週休3日制の4つのタイプやいかに?

2か月前の4月4日付けの記事で、リクルートのワークス研のコラムを引用して、週休3日制について取り上げましたが、その続きで、6月15日付けのワークス研のコラム「イントロダクション 週休3日制は、4つのタイプへと進化」を考えたいと思います。

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リクルートワークス研のサイトから引用したテーブルは上の通りです。すなわち、以前には、週の労働時間や業務量の総量は変えず、1日の労働時間を長くする A「圧縮労働型」、労働日数や週の労働時間、業務量を削減し、それに給与などを対応させる B「労働日数(時間)・報酬削減型」、労働日数や週の労働時間を削減するが、労働生産性を上げて、アウトプットやクオリティ、業績を維持することで、報酬を維持する C「労働日数(時間)削減・報酬維持型」、の3累計であったのですが、新たに、月または年単位の上限労働時間内で、業務の繁閑に合わせて自律的に稼働を調整する D「フレキシブル労働型」が加わっています。すなわち、雇用者自身が業務の繁閑によって週休何日とするかをフレキシブルに決めるものです。導入企業の行を見て明らかなように、どうもご本体のリクルートがこのDカテゴリーに当てはまるようです。
ということで、ワークス研のサイトにあるテーブル、すなわち、3月28日付けのリポートと今回の6月15日付けのコラムを比較すると、D「フレキシブル労働型」の列が加わっていますが、逆に、給与額の行が削除されています。以前は、A「圧縮労働型」では変わらない、B「労働日数(時間)・報酬削減型」ではその名の通り労働時間に合わせて減少、C「労働日数(時間)削減・報酬維持型」でもその名の通り変わらないが、業績により変動の可能性あり、ということになっていましたが、新たに加えられたDの給与額については特に言及がありません。まあ、労働サービスの提供がフレキシブルであるからには、給与もフレキシブルなのだろうと私は理解しています。そして、どうして、Dを加えたのかといえば、日本企業の事例を見ると、A「圧縮労働型」、B「労働日数(時間)・報酬削減型」、D「フレキシブル労働型」の3つが主流らしい、と言う理由が上げられています。まあ、何と申しましょうかで、マイクロソフトよりも、ご本体のリクルートや日立の方がメジャーと考えるべきなのかもしれません。

いずれにせよ、ゆっくりとした変化なのかもしれませんが、雇用が変化すれば、その上部構造である国民生活や文化や何やも確実に変化します。ひとつは、メンバーシップ型からジョブ型への、おそらく、主として入り口の変化であり、もうひとつはこういったフレキシビリティを高めて、休暇が増える方向です。私が現役でいる間にそういった大きな変化に決着がつくとは思えませんが、先が楽しみです。

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2022年6月16日 (木)

10か月連続の赤字を記録した5月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額が+15.8%増の7兆2521億円、輸入額は何と+48.9%増の9兆6367億円、差引き貿易収支は▲2兆3847億円の赤字となり、10か月連続で貿易赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字2兆3847億円 5月、資源高で過去2番目
財務省が16日発表した5月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆3846億円の赤字だった。赤字額は比較可能な1979年以降で2番目に大きく、5月としては最大だった。エネルギー価格の高騰や円安の影響で輸入額は前年同月比48.9%増の9兆6367億円と、3カ月連続で過去最高を更新した。
赤字は10カ月連続。輸入はアラブ首長国連邦(UAE)やオーストラリアからを中心に、原油を含む原粗油と液化天然ガス(LNG)がそれぞれ2.5倍に増えた。石炭は3.7倍となった。原粗油の輸入額は14カ月連続で増加し、数量ベースでも7カ月連続で増えている。
貿易赤字が過去最大となったのは2014年1月の2兆7951億円で、11年の東日本大震災後の原子力発電所停止によりLNGなどの燃料輸入額が膨らんだ。14年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要をにらんだ輸入も増えていた。
22年5月の輸出額は15.8%増の7兆2520億円だった。鉄鋼が60.2%増、灯油など鉱物性燃料が5倍に増えた。
地域別にみると、対米国の貿易黒字は8.6%減の3278億円で3カ月ぶりに減少した。輸入が24.2%増の9268億円となり、液化石油ガスが79.3%増、航空機向けを含む原動機が58.5%増えた。自動車の輸出は15.6%減と落ち込んだ。新型コロナウイルスや世界的な半導体不足が響いている。
中国向けの自動車輸出も36.3%減った。中国との貿易収支は6077億円の赤字で、14カ月連続の赤字となった。スマートフォンを含む通信機の輸入が25.7%増、集積回路などの半導体等電子部品の輸入が54.9%増となり、赤字を拡大させる要因となった。
対ロシアの貿易収支は1469億円の赤字で、赤字額は2.7倍に膨らんだ。ウクライナ侵攻による物流網の混乱や日本政府の輸出禁止措置を背景に、輸出は57.1%減の263億円だった。一方、輸入はエネルギー価格の高騰で49.8%増の1732億円だった。原粗油と石炭はそれぞれ数量ベースで34.9%減、43.2%減となったが、価格高騰により輸入額としては31%増、2.2倍への増加となった。

やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲兆円を超える貿易赤字が見込まれていて、予想レンジで貿易赤字が最も大きいケースで▲2.5兆円でしたので、実績の▲2兆3847億円の貿易赤字はやや下振れた印象ながら、まあ、こんなもんという受止めかもしれません。季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は昨年2021年8月から今年2022年5月までの10か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は昨年2021年4月から始まっていて、従って、1年を超えて14か月連続となります。しかも、貿易赤字学がだんだんと拡大しているのが見て取れます。輸出額もそこそこ伸びているのですが、輸入が輸出を上回って拡大しているのが貿易赤字の原因です。もっとも、私の主張は従来から変わりなく、エネルギーや資源価格の上昇に伴う輸入額の増加に起因する貿易赤字なのですが、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字は悲観する必要はない、と考えています。
5月の貿易統計を品目別に少し詳しく見ると、すべて季節調整していない原系列の統計の前年同月比で、輸出では自動車の輸出が金額ベースで▲7.9%減、台数ベースでも▲16.6%の大きな減少を示しています。その昔の1970年代の石油危機で石油価格が大きく上昇した際には、燃費のいい日本車が販売を大きく伸ばしており、足元でも同じように石油価格が上昇しているのですが、物流と部品供給の制約のために自動車輸出は明らかに停滞しています。ほかに金額ベースと数量ベースが比較できるもののうち、我が国の主力輸出品となっているものを見ると、半導体等電子部品のうちのICは金額ベースでは+25.8%増と大きく伸びましたが、数量ベースでは▲5.5%減となっていますし、電算機類(含周辺機器)も金額ベースで+1.0%増ながら、数量ベースでは▲32.7%減を記録しています。ほかにも、金額ベースでは伸びている一方で、数量ベースでは減少している輸出品が少なくありません。もちろん、金額ベースで増加しているのは為替の円安などの価格要因と考えるべきです。輸入では、まず、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油の輸入額が大きく増加しています。これも前年同月比で見て数量ベースで+26.7%増が金額ベースで+147.2%増と大きく水増しされます。昨年5月から金額ベースで2.5倍の増加となっているわけです。液化天然ガス(LNG)も数量ベースでは+16.3%増であるにもかかわらず、金額ベースでは+154.7%増と、原油及び粗油と同様です。加えて、ワクチンを含む医薬品も増加しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+15.4%増を記録しています。でも、当然ながら、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は極めて少数派ではないかと考えられます。

足元の円安について、その昔のJカーブ効果を持ち出せば、タイムラグ少なく輸入価格を上昇させ輸入額を押し上げる一方で、輸出の価格競争力を高めて輸出増をもたらすのにはタイムラグがある程度あります。ただ、このタイムラグの差は最近では大きくない可能性も考慮しておかねばなりません。また別の面で、エネルギー価格高騰を受けて、日経新聞が「石油元売り、資源高で純利益最高に 22年3月」、あるいは、「7商社、資源高で最終最高益 三菱商事が22年3月期首位に」などと報じているように、石油元売り各社や総合商社などのエネルギー関連企業が大きな利益を上げている点は見逃すべきではありません。

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2022年6月15日 (水)

大幅増を記録した4月統計の機械受注に何が起こったのか?

本日、内閣府から4月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+10.8%増の9,630億円の大幅増となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、4月10.8%増 市場予測を大幅に上回る
内閣府が15日発表した2022年4月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く)は前月比10.8%増加した。増加は2カ月連続。伸び率はQUICKがまとめた市場予測の中央値(1.5%減)を大幅に上回った。
3月末に新型コロナウイルス感染対策のまん延防止等重点措置が解除され、需要回復への期待が高まり、企業の投資姿勢が回復した。オミクロン型の流行がピークだった1、2月に2カ月連続マイナスとなった反動も出た。
製造業は10.3%増、非製造業は8.9%増だった。ともに2カ月連続の増加だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲1.5%減の予想でしたし、レンジの上限でも+3.0%増でしたので、実績の+10.8%増は大きく上振れた印象です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に半ノッチ上方改定しています。今年に入って1~3月期のコア機械受注は前期比で▲3.6%減でしたし、4~6月期の見通しも▲8.1%減の2兆3,706億円と、さらに落ち込む予想であったのですが、実は、3月統計では+7.1%増でしたし、本日公表の4月統計ではさらに上昇率を高めて+10.8%増を記録しています。加えて、業種別にも、製造業が+10.3%増、非製造業も+8.9%増と、いずれも2ケタの伸びに近い数字を残しています。さらにさらにで、先行指標である外需も+52.1%増という高い伸びとなっています。
機械受注の4月統計で、いったい、何が起こっているのか、私自身が4月統計の「機械受注統計調査報告」と題する内閣府の詳細なリポートを見ても、詳細は判明しません。東京で働いていたころでエコノミスト仲間も多く、私自身もそれらしい活動をしていた際には、アチコチに連絡して情報を集めたのかもしれませんが、関西の片田舎に引っ込んだ身としては、なかなか情報収集もままならず、4月統計の機械受注の2ケタ増については、特に何か突飛なイベントがあったわけではないようだ、としか判りません。例えば、第一生命経済研のリポートでも、「4月は大型案件も無く、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことで、企業が設備投資意欲を強めている」と分析していますし、大和総研のリポートでも、特に、製造業については、「基幹産業からの受注が軒並み増加」としています。ただ、1点だけ私が注目したのは、4月統計の前月比で石油製品・石炭製品が+119.8%増ともっとも大きな伸びを示しています。資源高でインフレ高進、とメディアで報じられ、価格抑制のために補助金を受けている業界で設備投資を大きく増やそうとしているわけです。もちろん、地球温暖化・気候変動の防止のための温室効果ガス排出抑制を目指す投資が、どのくらいを占めるのかは私には情報がありませんが、やや気にかかる結果であることは確かです。
最後に、機械受注や設備投資の先行きについては、引き続き、緩やかな増加を示すものと私は考えています。

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2022年6月14日 (火)

GDP比1%の財政リソースがあれば何が出来るか?

防衛費の大幅増額が、いわゆる「骨太の方針」に盛り込まれています。出典は以下の通り。

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他方、報道では以下のAERAdot.の記事を見かけました。そこで示されているのが上のグラフです。

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GDP比1%、すなわち、額で5兆円余りの財政リソースがあれば何が出来るか、いつも授業で使っている上のグラフを思い出してしまいました。国立社会保障・人口問題研究所「令和元(2019)年度 社会保障費用統計 (概要)」p.4から 政策分野別社会支出の国際比較 を引用しています。日本の社会保障では、一番下の「高齢」区分はGDP比9%近くに達していて、米英はもちろん、ドイツすら上回って、北欧の社会福祉大国であるスェーデンの9.09%に匹敵するほどの額となっています。他方で、市松模様の「家族」区分は1.73%にとどまっていて、スェーデンの3.40%どころか、英国の3.24%、フランスの2.88%、ドイツの2.39%の後塵を拝しています。GDP比1%を防衛費=軍事費ではなく、社会保障の「家族」区分に充当できないものか、と考える日本国民は私だけではないと思います。まあ、▲2-3%ポイントの消費税減税に充てる、というのもいいかもしれません。

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2022年6月13日 (月)

2四半期連続でマイナスとなった法人企業景気予測調査BSIをどう見るか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元4~6月期が▲0.9と2四半期連続のマイナスを記録しています。ただ、続く7~9月期は+6.3、10~12月期も+6.4とプラスに回帰する見込みです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感2期連続マイナス 4-6月期、法人企業調査
内閣府と財務省が13日発表した4~6月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス0.9と2四半期連続でマイナスになった。ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格や原材料価格が高騰し、調達コストの上昇懸念から企業の景況感が悪くなった。
BSIは自社の景況が前の四半期より「上昇」と答えた企業の割合から「下降」の割合を引いた数値。今回の調査は5月15日が回答の基準日となる。
大企業のうち製造業はマイナス9.9、非製造業がプラス3.4だった。新型コロナウイルスの広がりに伴う行動制限が緩やかになったプラス効果がみられた一方、中国の都市封鎖による世界的な生産活動の停滞が響いた。
1~3月期の調査では4~6月期の景況の見通しについて製造業と非製造業のいずれもプラスになると見込んでいた。その時点の見通しに比べると、今回の調査では製造業で15.8ポイント、非製造業は0.7ポイント下振れた。1~3月期の大企業全産業のBSIはマイナス7.5だった。

いつものように、よく取りまとめられています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業の景況判断BSIのグラフは下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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この統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)で見ると、昨年2021年10~12月期には、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が大きく鈍化し、BSIもプラスを記録していましたが、今年2022年が明けてオミクロン型変異株の大流行のため一気にマイナスに落ち込んでいます。コロナの感染拡大に伴うまん延防止等重点措置が企業マインドに大きく影を落としている、と考えるべきです。さらに1~3月期からは、ロシアによるウクライナ侵攻に伴って石油をはじめとする資源価格の高騰、さらにそれに拍車をかける円安の進行などがあって、インフレが進行しコストアップが企業活動に影響をしているわけです。一応、7~9月期からは再びプラスに回帰する見込みであるものの、不透明感は払拭されていません。
統計のヘッドラインとなる景況判断BSI以外の注目点を上げると、従業員数判断BSIから見た雇用は大企業、中堅企業、中小企業ともに「不足気味」超となっているものの、2022年中は不足超の幅は緩やかに縮小する見込みが示されています。人手不足がうかがえます。また、企業収益に関しては、2022年度の売上は増加する一方で、経常利益が減少するという意味で、いわゆる増収減益が見込まれています。特に、製造業で半現役、非製造業では増益が見込まれていますので、輸出需要がありながらも輸入原材料に依存する割合の高い製造業においてはウクライナ危機やインフレ・円安の影響を受ける一方で、内需に依存する割合の高い非製造業は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に対して脆弱、という特徴が見出だせるような気がします。また、今年度2022年度の設備投資計画は+16.0%増と3月調査時点での+8.2%増とから大きく上方修正され、かなり大きなプラスが計画されています。製造業+26.4%増、非製造業+11.2%増と、ともに2ケタ増が見込まれています。

さて、7月1日に公表される予定の6月調査の日銀短観やいかに?

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2022年6月12日 (日)

ガンケル投手が危なげなく完投してオリックスを3タテ!!!

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阪  神002020203 9110
オリックス000000001 150

ガンケル投手のナイスピッチングと佐藤輝選手の6打点でオリックスを3タテしました。
先発のガンケル投手は最終回に失点したものの、ゴロの山を築いて危なげないピッチングでした。少しお休みがあるのでリリーフ陣はスタンバイしていたのでしょうが、何の必要もありませんでした。打つ方は、佐藤輝選手の6打点をはじめとして、クリンナップ3人で9点を叩き出しました。私はBS TBSを見ながら、鳥谷敬氏の解説をたっぷりと堪能しました。
ただし、油断は禁物です。これで流れが変わって、これからタイガースの快進撃が始まると思ってはいけません。今季は文句なくBクラス、と私は見込んでいます。

交流戦明けも、
がんばれタイガース!

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スカパーのワクワクプレゼントに当選してBIGBOSSのマグカップをゲット!!!

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朝から出かけてプールで3,000メートルほど泳いで、午後から帰宅すると宅配荷物が届いていました。とても派手に、「スカパーワクワクプレゼント」のシールが貼ってあり、中を確かめると、BIGBOSSのマグカップが入っていました。正しくは、ファイターズロゴマグカップだそうです。
スカパーの何にいつ応募したのかはまったく記憶にありませんが、まあ、何も当たらないよりはマグカップのゲットはうれしいところです。我が家では子供達が小さいころから、下の倅が抜群のくじ運の強さを持っていました。私や上のおにいちゃんがスカを連発する中で、下の倅だけが、決して1等や特等を引き当てるわけではありませんが、2等3等あたりをゲットしていた記憶があり、家族みんなが下の子のくじ運の強さを認識していて、たった1回しか引けない場合は下の子が我が家を代表してくじを引いていたりしました。

もちろん、私はファイターズのファンではありません。今のこの時点でも、BS TBSで鳥谷敬氏の解説を聞きながら阪神タイガースの試合を見ています。つい先ほど、4番に座った佐藤輝選手のツーベースで6-0として好調です。

がんばれタイガース!

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2022年6月11日 (土)

今週の読書は興味深い経済書のほか合わせて計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通り計5冊です。
まず、ダニエル・サスキンド『World without Work』(みすず書房)は、マシンの能力が人間に追いついて超えるとどうなるか、という思考実験の場を与えてくれます。「特異点=シンギュラリティ」という言葉こそほとんど使っていませんが、その後の経済や労働についてのヒントが得られます。パラグ・カンナ『移動力と接続性』上下(原書房)は、気候変動と地球温暖化が進み、内陸部であれば高地、あるいは、北方の未開の地に移住する可能性を示唆しています。ただし、移民は現地に「同化」することが前提の議論のような気がしますので、多様化やダイバーシティとは少し違う気もします。塩田武士『朱色の化身』(講談社)はグリコ・森永事件を扱った『罪の声』の作者の手になるミステリです。ガンで闘病中の父からの依頼により女性を探す中で、さまざまな社会問題を含めて事実関係が明らかになります。最後に、ジョン・メイナード・ケインズ『ケインズ 説得論集』(日経ビジネス文庫)はインフレとデフレ、あるいは、金本位制などについて論じています。100年近い昔の議論とはとても思えないほど、現在のマクロ経済にも通ずる慧眼に驚かされます。
なお、今週の5冊を含めて、今年に入ってから新刊書読書は計106冊となりました。6月半ばで100冊を越えましたので、何とか、年間200冊を少し超えるレベルには達するのではないかと考えています。これら新刊書読書のほかに、先週書いておくのを忘れたのですが、6月に入ってから、東野圭吾『美しき凶器』(光文社文庫)を読みましたのでFacebookでシェアしておきました。

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まず、ダニエル・サスキンド『World without Work』(みすず書房) です。著者は、英国オックスフォード大学のエコノミストであり、AI倫理研究所の研究者でもあります。英語の原題はそのままに World without Work であり、2020年の出版です。3部構成となっていて、第1部が背景、第2部が脅威、第3部が対策を扱っています。ということで、とても秀逸な経済書です。現状分析にやや偏って、対応策が少し弱い気もしますが、私なんかはもっとそうです。まずもって、いわゆるシンギュラリティ、すなわち、マシンの能力が人間を超える、という意味を本書の著者は正確に理解してます。もちろん、本書でも的確かつ明確に指摘しているように、シンギュラリティが突然やって来て、今日からは昨日までとまったく違う、というわけではなく、徐々に切り替わっていくのでしょうが、要するに、機械が人間の能力を超える、ということは、人間が何もしなくていい、というか、何も出来なくなってしまう、ということなのです。機械がすべてをやってくれて、特に、機械が機械を作り出したり、修理したり出来る、という意味なのです。ですから、本書の第2部で指摘しているように、機械は徐々に人間のタスクを侵食してきて、すなわち、人間労働や芸術活動までを代替してきて、そして、シンギュラリティからはすべてを代替することになります。シンギュラリティまでは、スキル偏重型の技術進歩の下で、マシンを扱える高スキル高賃金労働とマシンではなく従来型の人間労働に依存する低スキル低賃金労働に二極分解していましたが、シンギュラリティ以降、人間はマシンを扱う能力がマシンよりも低くなるわけですので、マシンを扱うのはマシンであって、人間はすること、というか、労働という名の活動は不要になります。より高性能なマシンを作るのは現在あるマシンであり、人間ではありません。ですから、馬が自動車に取って代わられたのと同じです。今でも馬はいて、何らかの活動にいそしんでいるわけですが、もはや、自動車が現れる前に馬が運送や移動で果たした役割はほぼほぼなくなっているのは広く知られている通りです。あるいは、猫の親子を考えれば、子猫が怪我をすると親猫は舐めて傷の治りを早くしようと試みる場合がありますが、人間の獣医が出現すれば、おそらく、親猫は相変わらず子猫を舐め続けるとは思いますが、そういった行為はそれほど必要ではなくなります。それと同じと考えるべきです。この点を理解しているエコノミストは極めて少ない、というか、個人としてのエコノミストにせよ、経済書にせよ、この点を理解して明記明言している例は不勉強にして私は知りません。ただ、私自身は本書の著者に賛同していて、この意味でのシンギュラリティは、2045年や2047年ではないかもしれないですが、やって来ると思っています。ただ、アセモグルとレストレポのように、マシンが人間労働を代替すると、さらに複雑な人間労働が生み出されて、永遠に、ではないとしても、かなり先までシンギュラリティは来やしない、と見なす向きも少なくありません。そのあたりは経済学的見地というよりも工学的な見方であろうと私は考えています。ただ、このシンギュラリティの後で行うべき本書第3部の対策がやや貧弱です。学校教育や職業訓練を鼻でせせら笑うのはOKとしても、ユニバーサルなベーシックインカム(UBI)ではなく、条件付きのベーシックインカム(CBI)で対応、というのは、まあ、それしかないのかもしれませんが、やや疑問なしとしません。というのは、経済政策運営でも、ひょっとしたら、人間よりもマシンの能力が上回る可能性があると私は考えており、そうなると、チンパンジーを動物園に入れたような扱いをマシンが人間に対してする可能性は否定できないと想像しています。ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモデウス』と似た見方かもしれません。

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次に、パラグ・カンナ『移動力と接続性』上下(原書房) です。著者は、インド出身のグローバル戦略家だそうです。同じ出版社から『「接続性」の地政学』を出版しており、これまた同じ出版社から『アジアの世紀』上下を出版していて、私は2020年2月15日付けの読書感想文をポストしています。英語の原題は Move であり、2021年の出版です。上の表紙画像に見られるように、日本語のサブタイトルは「文明3.0の地政学」となっていますが、大雑把に文明1.0とは放牧を含む農耕社会であり、文明2.0は製造業中心の工業社会、そして、本書の第13章のタイトルとなっている文明3.0が現在の世界であり、移住が繰り返されながらも、接続性も保たれる、という意味なんだろうと思います。しかし、ここで「移住」とは二重の意味を持たされており、積極的によりよい環境を求めて移住する場合と何かの厄災から逃れるべく移住する場合の両方を含んでいます。ですから、移住先として好まれるのは、いうまでもなく、人口動態のバランスが良く、政治的に安定しており、経済的にも繁栄し、環境も安定している場所、ということになります。本書ではこういった移住先について、いろんな観点から議論を進めていますが、気候変動が進む結果として地球は温暖化し、内陸部であれば高地、あるいは、北方の未開の地に移住する可能性を示唆しています。ロシアによるウクライナ侵攻の前の出版ですので、シベリアなんかがターゲットのひとつになっているわけです。そうした中で、本書の著者は世界人口が21世紀半ばに減少に転じるというシナリオを基本としています。このため、若年層の奪い合いが生じる可能性もありますし、いずれの観点からも移住や移民が増加するトレンドは不動のものとして前提されています。でも、欧州諸国で、あるいは米国でもネオナショナリストによる移民に対する嫌悪感の拡大が見受けられるのですが、著者はこういった勢力は高齢世代に指示されているだけであり、時間とともに支持を失う、と考えているようです。そうかもしれません。従って、世界の対立軸は若者対年長者となる未来が描かれています。その後、長々と世界各地の移住先としての魅力が取り上げられており、日本では沖縄にスポットが当たっています。ただし、こういった移住の魅力を語る大前提が、いわゆる移民の「同化」に置かれています。すなわち、半ば多様性を否定しているように私には見受けられます。もしも、移民が同化せずに母国の文化を守り続けるのであれば、本書の議論は半分くらい否定されそうな気すらします。ただし、私の直感では移動=移住出来るのは、移住のための十分な資金を持っている富裕層が中心となるように見受けられ、こういった富裕層は容易に同化しない可能性が高いのではないかと考えています。いずれにせよ、本書の著者の議論でもっとも感心したのは、移動=移住により大きな混乱がもたらされることは否定できないながら、それが進化というものである、と指摘している点です。悪く評価すれば「開き直り」とも見えかねませんが、私はかなりの程度に同意します。単なる安定であれば中世に人類は達成しているわけで、その後の産業革命以降の人新世は混乱しつつも進歩していた、と考えるべきなのかもしれません。

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次に、塩田武士『朱色の化身』(講談社) です。著者は、ミステリ作家あであり、特に、私の印象に残っているのはグリコ・森永事件について解き明かそうと試みた『罪の声』です。確か、私は見ていませんが、昨年映画化されています。ということで、主人公はライターの大路亨です。物語は、その主人公がガンを患う元新聞記者の父から辻珠緒という女性を探すように言われるところから始まります。この女性は、かつては、一世を風靡したゲームの開発者として知られた存在だったのですが、突如として姿を消しました。そして、ほぼほぼストーリーは主人公がこの女性を探す中でインタビューした相手、すなわち、辻珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚などが語る言葉、ということになります。それらから浮かび上がるのは、昭和31年1956年の福井あわら温泉の大火が何らかのきっかけとなっているという点でした。チェーン・インタビューという言葉があるのかどうか私は知りませんが、辻珠緒の生涯を追って次々とインタビューを重ね、バブル初期の男女雇用機会均等法、もちろん、バブル期の銀行活動、そして、ゲーム開発車となってからのゲーム依存症などなど、女性個人の動向とともに社会問題を浮き彫りにしつつ人探しは進みます。ですから、最後の最後に山場があるのはミステリの常套手段ですが、私の好きなタイプのミステリであり、タマネギの皮をむくように徐々に真実が明らかにされてゆきます。ただし、難点はいくつかあって、まず、海外ミステリのように登場人物が多すぎます。まあ、私が読んだ範囲でも仕方なく、というか、必要あってインタビューしているのですが、もう少し要点をかいつまんでコンパクトに仕上がらなかったものか、という気はします。もうひとつは、社会的な問題点をミステリに入れ込もうとした松本清張以来の我が国ミステリ界のひとつの潮流ではありますが、やや社会問題の質が異なりすぎて、バブルや男女雇用機会均等法までは1980年代半ばから後半にかけて社会的に広く認識されたことは事実ですが、ゲーム依存症については、私なんかがそうで、それほど広く国民一般に関係するわけではなく、逆に、関係ない人は関係ないのではないか、という気もします。ただ、ジャーナリスト的にひとつひとつ事実を明らかにした上で、それらのリンケージを考え、論理的に必然な結論を導く、という意味では上質のミステリに仕上がっています。ただし、考え方にもよりますが、ラストがやや物足りないと感じる読者はいそうな気がします。私もそうです。繰り返しになりますが、ジャーナリスト的にひとつひとつ事実を積み上げるプロセスは大いに評価しますが、そのプロセスに対して結果がショボい、と感じてしまうのは私の読み方が未熟で浅いのかもしれません。でも、劇的な幕切れが欲しいという読者は、私以外にも少なくないのではないか、と想像しています。

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最後に、ジョン・メイナード・ケインズ『ケインズ 説得論集』(日経ビジネス文庫) です。著者は、いうまでもなく、偉大な英国人エコノミストであり、マクロ経済学の創始者といえます。基本的に、5部構成を取っていて、インフレとデフレ、金本位制、自由放任の終わり、未来、繁栄への道、を取り上げています。学術誌ではなく、一般メディアへの投稿を中心に収録していて、判りやすくはなっていますが、それなりに昔の文体だという気がします。邦訳の時点で工夫されているのだとは理解しますが、40年ほど前に私が大学生だったころに読んだ経済書とはこんなものだったか、と思い起こさせるものがありました。ということで、小説を読んだのではないので文体に関してはともかく、マクロ経済学に関して現時点でも通用する立派な理論が集められています。というのは、本書に収録された記事をケインズが書いたのは1920年代から30年代にかけてであり、第2部で論じられているように、金本位制が世界的なスタンダードとなっている経済社会です。そういった時代の制約があるハズなのですが、それを感じさせません。インフレとデフレについては、現時点でも同じ議論が通用します。インフレとデフレのどちらもストックとしての富や資産への影響を及ぼし、単純化すれば、インフレは負債のある人に有利で、資産や債権のある人に不利に作用します。デフレは反対です。ただし、インフレが生産刺激的であるのに対して、デフレは生産を抑制する方向で作用します。こういったマクロ経済学の面で、今でも十分に理解されているとは言い難いポイントを極めて正確に指摘しています。そして、金本位制や自由放任については経済政策運営の観点からとても否定的な議論を展開します。少なくとも、その時点の英国でトピックとなっていた第1次世界対戦後の英国の金本位制復帰における為替レートについては、現在でも通用する議論です。広く知られたように、実は、我が国でも従来レートでの金本位制復帰を目指したがために、ひどいデフレを経験したのは英国と同じです。現時点でも、円安が金融政策の湿性のように報じるメディアがいくつかありますが、というよりも、そういった論調での報道の方が多いくらいですが、おそらく、ケインズであれば為替レートについては現時点での我が国のメディアとは違う方向の議論を展開したものと私は想像します。ケインズが明らかにしたのは、不況期ないし景気後退期に需要が不足するのであれば、政府が需要を創出するのか、それとも、民間経済でコストを削減するのか、のどちらかが必要となる中で、前者の方がいいのではないか、という点を説得しようとしているのだと思います。円安が短期的に家計や企業といった国内経済主体の実質所得を低下させるのは事実ですが、円安をいかに所得増加につなげるか、を考えるのがエコノミストの役割です。まあ、いずれにせよ、戦後経済社会では、特に1950-50年代は米国のニクソン大統領がいうように "We are all Keynesians now" だったわけですから、ケインズは説得に成功したんだろうと思います。

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2022年6月10日 (金)

世界銀行「世界経済見通し」Grobal Economic Prospects はスタグフレーションを予想しているのか?

今週火曜日の6月7日に、世界銀行から「世界経済見通し」Grobal Economic Prospects が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関の経済見通しとしては、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)、あるいは、アジア開発銀行(ADB)などの見通しほど注目されているわけではありませんが、私のこのブログはこういった国際機関のリポートに着目するのもひとつの特徴ですので、簡単に取り上げておきたいと思います。

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リポート p.4 からGDP成長率の総括表を引用すると上の通りです。右の2行が今年2022年1月時点での見通しからの乖離幅となっています。当然、1月時点ではロシアによるウクライナ侵攻が始まっていませんでしたので、すべてではないものの大雑把に、その影響が現れていると考えるべきです。世界経済の成長率も、先進国の成長率も、新興国・途上国の成長率も、今年2022年については同じように、1月時点での見通しから▲1.2%ポイントの下方修正となっていて、来年2023年についてもわずかながら下方修正が見込まれています。我が日本については、2022年▲0.7%ポイントの下方修正ですから、まだ影響は小さいのかもしれません。成長率以外では、下2行が石油価格とエネルギーを除く商品価格となっていて、ともに、2022年は大幅な価格上昇が見込まれています。
世銀のプレスリリースでは冒頭で、ロシアのウクライナ侵攻は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるダメージをさらに悪化させ、世界経済の減速を拡大させ、低成長とインフレ高騰が長引く可能性がある "Compounding the damage from the COVID-19 pandemic, the Russian invasion of Ukraine has magnified the slowdown in the global economy, which is entering what could become a protracted period of feeble growth and elevated inflation" と指摘しています。もちろん、インフレ高騰に呼応した金融引締めも、日本以外では米国をはじめとして、幅広く開始されており、経済成長が急減速する中でスタグフレーションのリスクが高まっています "Stagflation Risk Rises Amid Sharp Slowdown in Growth" ということになります。私が興味を引かれたのは、第1章の見通しの中で、Special Focus 1 として、Stagnation と題して分析が加えられた中に、1970年代の石油危機の際のインフレとの対比が行われています。石油危機の1970年代から40年を経て、現在では、先進国だけでなく途上国や新興国でも、中央銀行の金融政策をはじめとする安定化政策や構造改革が進んでおり、何とかインフレを管理できる体制が整っている、として、少なくとも決して悲観すべきではない、という論調でした。途上国に強い影響力を持つ世銀からのメッセージです。私も大いに同意します。

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目を国内のインフレに転じると、本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は先月4月統計の+9.8%からやや上昇幅が縮小して、今月の5月統計では+9.1%となっています。いつものグラフは上の通りであり、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をそれぞれプロットしています。色分けは判例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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2022年6月 9日 (木)

経団連21世紀政策研究所リポート「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」を読む!!!

やや旧聞に属するトピックかもしれませんが、先週の6月2日に経団連21世紀政策研究所から「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」と題するリポートが明らかにされています。経団連のサイトにpdfでアップロードされているんですが、200ページ近いボリュームですので、私はお願いして印刷物を郵送していただきました。
本リポートでは、1990年のバブル崩壊以降、日本経済が需要不足とデフレに陥り、賃金が上昇しない中で企業の利益剰余金や配当だけが伸びていることから、家計が疲弊して中間層が没落した、という問題意識に立って、いくつかの分析と中間層復活に向けた政策提言を行っています。それらの中から、私の方で重要と考えるポイントをいくつか取り上げておきたいと思います。

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まず、日本経済の現状は支出側で需要不足であり、分配側の中間層の衰退と悪循環をなしている、という認識が示されます。上の概念図はリポートp.2から 現状分析の全体イメージ を引用しています。ちょっとだけ話を逸れると、今週は日経ビジネス文庫で『ケインズ説得論集』を読みましたので、明後日の土曜日の読書感想文で取り上げる予定ですが、経済が停滞している際には、ケインズは明確に、需要の拡大もしくは生産費の引下げが必要であると指摘しています。当然、望ましいのは前者の需要の拡大なのですが、日銀こそ黒田総裁の下で拡張的な金融政策に転じたものの、アベノミクスの失敗は2014年から2度に渡って消費税率を引き上げたことであり、財政による需要のサポートがありませんでした。エグゼクティブサマリーに続く本リポート第2章では財政運営について、プライマリーバランスの黒字化目標と国際の60年償還ルールが緊縮財政の原因と指摘し、第3章では財政破綻論に対して反論を加えています。
この第2章と第3章で現状分析がなされた上で、第4章以降の政策提言が加えられています。すなわち、第4章では、私が必ずしも好まない観念論のようにも見えますが、デジタル化やグリーン化に対応しつつ、コロナなどによる意識変化や新たな価値観に沿った投資、2030年に向けて100兆円レベルの投資の必要性を提言しています。この第4章は、やや別として、第5章では高圧経済の下での労働力の流動化の必要性を明らかにしています。そうです、高圧経済ではなく需要不足の現状で労働力を流動化させても賃金の停滞に帰結するだけです。その上で、第6章では公的部門での賃上げと雇用拡大の必要性を提言しています。公務員もそうなのかもしれませんが、特に介護職員などの報酬引上げも視野に入れる必要があります。これは政策運営で十分可能な範囲です。最後に、第7章では地方からの資金流出をストップし、資金が地域内で投資される環境整備を提言しています。
経団連に関係するシンクタンクで、ここまでの議論がなされて立派なリポートが明らかにされた点については、ハッキリいって、私はビックリです。中央銀行は独立だとか、財政均衡を目指す、なんて、緊縮型の経済政策運営に基づく主張が多いのかと思っていたものですから、かなり驚いています。

私は大学院の授業で、いわゆるGDPの三面等価、すなわち、支出と生産と分配、ないし所得の3つの側面において、政府の役割を指摘しています。もちろん、ミクロ経済学的に独占や外部経済などの市場の失敗に対応することも重要ですが、マクロ経済学の観点からGDPの三面等価を例に出した政府の役割を簡単に説明しています。ただ、生産に政府が介入するのは社会主義的であると言い置いた後、支出面では政府支出を直接的にコントロールできるわけですし、アベノミクスではまったく無視されていた分配を岸田内閣ではもっと重視されるべきと期待しつつも、最近のいわゆる「骨太の方針」では、分配が軽視されて成長に重点が置かれており、失敗に終わったアベノミクスと変わるところは見受けられません。ぜひとも、分配面を重視して中間層を復活させ日本経済のさらなる活性化を目指してほしいものだと期待しています。
ちなみに蛇足ながら、GDPの三面等価に着目した政府介入について、私の大学院での授業では、支出における政府の役割を重視する向きは Keynesian state、生産に政府が介入するのは Socialist state、そして、分配に政府が積極的に介入するのは Welfare state、と説明することにしています。ひょっとしたら、少し違うかもしれませんが、大学院生の間で大雑把に理解されているような気がします。

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2022年6月 8日 (水)

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEから上方修正されるもマイナス成長にとどまる!!!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.1%、年率では▲0.5%と円安や資源高による交易条件の悪化などによりマイナス成長を記録していますが、先月公表された1次QEからはわずかながら上方改定されています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率0.5%減、1-3月改定値 消費回復で上方修正
内閣府が8日発表した2022年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%減、年率0.5%減だった。5月に公表した速報値(前期比0.2%減、年率1.0%減)から上方修正した。企業の設備投資や公共投資などが下振れしたものの、個人消費が回復した。
QUICKが事前にまとめた民間エコノミスト予測の中心値(年率1.1%減)を上回った。
GDPの半分以上を占める個人消費が前期比0.1%増と、微減としていた速報値からプラスに転じた。自動車販売など耐久財のマイナス幅は0.8%と、速報値(1.6%減)から縮小した。サービス向けの消費も携帯電話などの通信料が上振れし、マイナス幅が縮んだ。
財務省が1日に発表した法人企業統計などを在庫や設備投資に反映した。民間在庫変動のGDP押し上げ効果はプラス0.5ポイントと、速報値(プラス0.2ポイント)から上方修正した。自動車など輸送機械で仕掛かり品の在庫が増えたことが要因とみられる。
設備投資は前期比0.7%減で、速報値(0.5%増)から下振れした。自動車メーカーでの減少が響いた。速報段階より後に公表された統計でソフトウエア投資が想定より少なかったのも加味した。公共投資も3.9%減と、速報値(3.6%減)から下方修正した。
1~3月期の実質GDPは年換算の実額で538兆円となり、速報値(537兆円)から微増した。新型コロナウイルス禍前の19年10~12月期(541兆円)に近い。
21年度のGDPは2.2%増で、速報段階の2.1%増から上方修正した。設備投資は0.8%増と速報値(1.3%増)から下方修正したものの、個人消費や民間在庫変動が押し上げにつながった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2021/1-32021/4-62021/7-92021/10-122022/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.4+0.6▲0.8+1.0▲0.2▲0.1
民間消費▲0.8+0.7▲1.0+2.4▲0.0+0.1
民間住宅+1.0+1.0▲1.7▲1.1▲1.1▲1.2
民間設備+0.5+2.0▲2.4+0.1+0.5▲0.7
民間在庫 *(▲0.1)(+0.2)(+0.1)(▲0.1)(+0.2)(+0.5)
公的需要▲0.5▲0.1+0.0▲1.1▲0.2▲0.4
内需寄与度 *(▲0.5)(+0.9)(▲0.9)(+0.9)(+0.2)(+0.3)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.2)(+0.1)(+0.1)(▲0.4)(▲0.4)
輸出+2.6+2.8▲0.3+0.9+1.1+1.1
輸入+1.8+4.3▲0.8+0.3+3.4+3.3
国内総所得 (GDI)▲1.2+0.2▲1.6+0.4▲0.7▲0.6
国民総所得 (GNI)▲1.1+0.3▲1.6+0.5▲0.3▲0.2
名目GDP▲0.7+0.4▲1.1+0.3+0.1+0.2
雇用者報酬+1.1+0.2▲0.2+0.3▲0.4▲0.3
GDPデフレータ▲0.1▲1.1▲1.2▲1.3▲0.4▲0.5
内需デフレータ▲0.5+0.3+0.6+1.1+1.8+1.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち灰色の在庫のプラス寄与と黒の純輸出=外需のマイナス寄与が大きくなっています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは1次QEから下方修正されて前期比年率成長率が▲1.1%でしたが、実績は上方修正されての▲0.5%でしたので、やや上振れた印象です。しかも、テーブルに収録したように、インフレの影響とはいえ名目GDP成長率がプラスとなっています。実質所得の面から物価上昇により購買力が目減りしたことは確かですが、名目値で計測される売上などについては大きなマイナスではないのではないか、と私は考えています。消費はほぼほぼ前期2021年10~12月期から横ばいです。ただし、その他の内需項目である設備投資や住宅投資などは軒並み前期比マイナスですので、在庫が積み上がった影響を除いた内需寄与度はマイナスです。むしろ、外需によってマイナス成長となった印象です。輸入が大きく増加しているわけです。別の表現をすれば、資源高と円安による交易条件の悪化に起因するマイナス成長と考えるべきです。もっとも、メディアではストーリーとして一般受けしやすい「コロナによるまん延防止等重点措置のために消費が停滞」というミスリードな報道を続けているものも散見されます。さすがに、引用した日経新聞は「個人消費が回復」と明記していますが、読売新聞の記事では「コロナによるまん延防止等重点措置がケシカラン」といわんばかりのご意見を堅持しているようです。何らかの隠された意図があるのかもしれません。ただし、 内需についても在庫変動の寄与度がGDP成長率に対して+0.5%もあり、それでも内需寄与度が+0.3%にとどまっているわけですから、経済成長の姿としては決して望ましいものではないと私は受け止めています。他方で、足元の経済状況から考えて、4~6月期はある程度のプラス成長の可能性が高い、と考えるべきです。物価についてもう少し詳しく見ておくと、上のテーブルにある通り、GDPデフレータは低下している一方で、国内需要デフレータは上昇しています。すなわち、GDPの控除項目である輸入の価格上昇に起因するインフレですから、GDPデフレータは低下、輸入価格が国内に波及してホームメード・インフレとなって国内需要デフレータは上昇、となっているわけです。国内需要デフレータの上昇がインフレの生活実感に近いと私は受け止めています。

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最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャー公表されています。ヘッドラインを見ると、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+3.6ポイント上昇の54.0と改善し、先行き判断DIも+2.2ポイント上昇の52.5となっています。いつものグラフは上の通りです。

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2022年6月 7日 (火)

前月から横ばいとなった景気動向指数の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から4月の景気動向指数公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数が前月から+2.1ポイント上昇の102.9を示し、CI一致指数は前月から横ばいの96.8を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

4月の景気一致指数、横ばい 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した4月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比横ばいの96.8となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.1ポイント低下だった。数カ月後の景気を示す先行指数は2.1ポイント上昇の102.9だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、4月統計についてCI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、プラスの寄与が大きい順に、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.30ポイント、商業販売額(小売業)(前年同月比)+0.24ポイント、有効求人倍率(除学卒)+0.17ポイント、などとなっています。他方、マイナス寄与が大きいのは、輸出数量指数▲0.32ポイント、鉱工業用生産財出荷指数▲0.21ポイント、生産指数(鉱工業)▲0.20ポイント、などが目立っています。CI一致指数は前月から横ばいですたが、基調判断は「拡大」で据え置かれています。
景気動向については、3月統計公表時には、3月21日でまん延防止等重点措置が解除され、消費のリバウンドなどにより「改善」を続ける可能性が高いと考えていたのですが、なんと、輸出が足を引っ張ってCI一致指数は前月から横ばいでした。景気の先行きに関しては、私自身は割合と楽観しています。すなわち、ブースター接種が効果を現し始めており、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の国内新規感染者数が足元でかなり減少しています。国内だけでなく、中国でも上海がロックダウンが解除されています。他方で、ウクライナ危機は長引きそうだと報じられています。ただし、私自身は国内のインフレや円安には楽観的ですが、メディアの報道などからマインドに悪影響を及ぼす可能性もなしとはしません。ですから、景気の先行きリスクはニュートラルと私は見込んでいます。先月時点ではやや下方のリスクの方が大きいと感じていたのですが、ビミョーに修正したいと思います。

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2022年6月 6日 (月)

明後日公表予定の1-3月期GDP統計速報2次QEの予想はやや下方修正か?

先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明後日の6月8日に1~3月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。今年2022年の1~3月期には、海外への所得移転による交易条件の悪化を主因に、1次QEの成長率はマイナス成長でした。まあ、メディアでは、まん延防止等重点措置が3月21日に解除されるまで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大のために行動制限が広がっていたことに原因を求める論調がいっぱいでしたが、私はこういった議論には疑問を持っています。ということで、多くのシンクタンクでは、2次QEに向けて小幅な改定が予想されています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、2次QEですので、法人企業統計のオマケで取り上げているシンクタンクも少なくありません。明示的に4~6月期以降の見通しに言及しているのは、みずほリサーチ&テクノロジーズだけであり、極めて詳細な需要項目別などの見通しを明らかにしていますが、いろいろな事情があって、以下のテーブルでは一部省略して最初のパートだけをピックアップしてあります。詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.2%
(▲1.0%)
n.a.
日本総研▲0.3%
(▲1.4%)
1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が減少に転じるほか、公共投資も下方改定される見込み。その結果、成長率は前期比年率▲1.4%(前期比▲0.3%)と、1次QE(前期比年率▲1.0%、前期比▲0.2%)から小幅に下方改定される見込み。
大和総研▲0.2%
(▲0.8%)
1-3月期GDP2次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP 成長率が前期比年率▲0.8%と、1次速報(同▲1.0%)から僅かに上方修正されると予想する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.2%
(▲1.0%)
4~6月期は、経済活動制限の解除、ブースター接種の進展や経口治療薬の普及に伴い、対人サービス消費を中心に経済活動の回復が見込まれる。コロナ禍で高所得者を中心に積みあがった貯蓄も消費原資となるだろう。現時点では、4~6月期は年率+3%台半ば程度のプラス成長を予測している。
4月中旬まで新規感染者数が地方を中心に増加傾向で推移したことを受けて消費行動が慎重化し、人出(全国の小売・娯楽モビリティ)は4月に入りいったん回復傾向が一服した。しかし、その後新規感染者数の増勢鈍化に伴い、人出は再び回復に向かった。GWの人出は、東北や北陸など地方で昨年末を上回る水準まで急回復した一方、東京など都市圏の回復は緩慢であったように地域差がみられたが、全国でみれば昨年末の水準まで回復した。足元で新規感染者数は緩やかに減少しており、GW後の感染拡大は一時的なものにとどまったようだ。政府による観光支援策についても、都道府県独自の「県民割」の広域ブロック化に続き、早ければ6月にもGoToトラベル事業の再開が見込まれ、対人サービス消費は回復に向かうとみてよいだろう。
ニッセイ基礎研▲0.3%
(▲1.1%)
6/8公表予定の22年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.3%(前期比年率▲1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲1.0%)とほぼ変わらないだろう。
第一生命経済研▲0.3%
(▲1.3%)
2022年1-3月期実質GDP(2次速報)を前期比年率▲1.3%(前期比▲0.3%)と、1次速報の前期比年率▲1.0%(前期比▲0.2%)から若干下方修正されると予想する。
伊藤忠総研▲0.2%
(▲0.9%)
1~3月期の実質GDP成長率は2次速報で前期比▲0.2%(年率▲0.9%)とほぼ1次速報から変化ない見通し。設備投資が下方修正される一方で民間在庫投資は上方修正される見込み。景気の基調判断も変わらず、2021年度中は一進一退が続き停滞との評価。労働分配率が史上最低水準で推移しており今後の賃金上昇に期待。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.3%
(▲1.4%)
2022年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.3%(前期比年率換算-1.4%)と1次速報値の同-0.2%(同-1.0%)から下方に修正される見込みである。修正幅は小幅であり、景気に対しての判断が修正されることはない。
三菱総研▲0.1%
(▲0.5%)
2022年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.1%(年率▲0.5%)と、1次速報値(同▲0.2%(年率▲1.0%))から上方修正を予測する。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比▲0.3%、前期比年率▲1.1%のマイナス成長が見込まれています。私は法人企業統計を見た際、1次QEの前期比▲0.2%、前期比年率▲1.0%ヨリ、ホンの少しだけ下方修正、という直感を持ちましたので、大雑把にそういったラインに乗っていると思います。基本的に、1~3月期の日本経済は海外への所得移転、すなわち、交易条件の悪化によりマイナス成長となった、と考えるべきです。しかしながら、おそらく、メディアでは、新型コロナウイルス(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大に伴うまん延防止等重点措置が「主因」とする論調ばかりだろうと、私は予想しています。たぶん、ひょっとしたら、あるいは、まさかと思いますが、どこかに、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に対する国民の怨嗟を煽りたい勢力の「陰謀」かもしれません。いずれにせよ、誤解したり、騙されたりしないように気をつけましょう!
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。

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2022年6月 5日 (日)

甲子園の満員のファンの後押しを受けてファイターズを3タテしてタイガース5連勝!!!

  RHE
日本ハム000003000 352
阪  神00400004x 8101

甲子園が満員にって、迫力満点の応援をバックに、タイガース5連勝でした。
先発の伊藤将司投手がよく投げ、3回には佐藤輝選手の先制タイムリーと大山選手のスリーランで4点を先取し、6回にファイターズに追いすがられても、8回には小野寺選手の満塁の走者一掃のスリーベースなどで4点をダメ押しし、ファイターズを3タテして5連勝でした。ただし、一言だけハッキリさせておくと、これで流れが変わって、これからタイガースの快進撃が始まると思ってはいけません。今季は文句なくBクラス、多分、最下位でシーズンを終えることになると私は見込んでいます。

次のソフトバンク戦も、
がんばれタイガース!

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低い失業率が続く5月の米国雇用統計から何を読み取るか?

日本時間の一昨日、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の5月統計では+390千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.6%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に3パラだけ引用すると以下の通りです。

Hiring stays strong. Unemployment is flat. But is a slowdown coming? Here's what May's job report shows.
U.S. employers added a robust 390,000 jobs in May as the labor market continued to defy high inflation, persistent worker shortages and rising interest rates.
The unemployment rate was unchanged at 3.6%, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 325,000 jobs were added last month.

コンパクトによく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事の第3パラにもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+325千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+390千人増はやや上振れた印象です。ですから、引用した USA Today 紙の記事のタイトルも "Hiring stays strong." で始まっていたりします。失業率についても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック前の2020年1~2月には3.5%まで低下していましたが、この50年ぶりの水準に今年2022年3~5月の3.6%は肉薄しています。失業率だけからすれば、米国労働市場はほぼほぼ完全雇用状態に近いと考えるべきです。雇用逼迫に基づくホームメード・インフレに加えて、エネルギーをはじめとする資源価格の急騰が加わって米国ではインフレが加速し、消費者物価は前年比で+8%を超える上昇率に達していることから、米国連邦準備制度理事会(FED)ではインフレ抑制を優先して利上げを急いでいます。場合によっては、リセッションの可能性も充分あると私は考えています。というのも、FEDのパウエル議長は中間選挙に対する配慮は全然しなさそうな気がしているからです。

目を国内に転ずると、4月の消費者物価指数(CPI)統計では、昨年からの携帯電話料金引下げの効果が剥落し、一気に、コアCPI上昇率は+2.1%に達しました。日銀インフレ目標を上回ってしまったわけです。メディアでは「インフレ高騰」の大合唱が始まっています。いずれにせよ、米国では金融政策はハッキリと引き締めに転じていますが、景気回復の思わしくない我が国では、物価上昇と景気や雇用との兼ね合いで金融政策の舵取りが難しい段階に達しています。

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2022年6月 4日 (土)

青柳投手のナイスピッチングで阪神4連勝!!!

  RHE
日本ハム000000000 050
阪  神00012000x 390

最終回こそ岩崎投手にマウンドを譲りましたが、青柳投手のナイスピッチングで4連勝でした。
まず、投手陣については、先発の青柳投手に尽きます。8回4安打の無失点ですから文句のつけようがありません。打線も、昨夜3ホーマーの大山選手の先制打が4回に飛び出し、5回も上位打線で追加点を奪うなど、少ないチャンスをモノにして3点をもぎ取っています。どなたかの解説にあったように、3点もあれば阪神の勝利の確率はかなり高くなります。満員の週末の甲子園に詰めかけたファンも満足だったのではないでしょうか。それにしても、大山選手のインタビューはつまんないですね。その昔の掛布さんのような気の利いた一言が出ないものかと心配になります。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は統計書をはじめとしていろいろ読んで計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通り、経済書やエッセイ、さらに新書まで計5冊です。
まず、佐藤正広『数字はつくられた』(東京外国語大学出版会)は、統計の歴史に関する資料集のような位置づけで読むのが適当かという気がします。ただ、著者の統計に関する専門性はそれほど高くないと感じました。、次に、坂本信雄『京都発 地位経済の再考』(八千代出版)は、タイトル通りに、京都の経済や地域振興に関してコンパクトに取りまとめられています。続いて、上原彩子『指先から、世界とつながる』(ヤマハ)は、世界で活躍する日本人ピアニストのエッセイです。こういった超一流の人物のバイタリティ溢れる活動には、ただただ圧倒されるばかりです。さらに、谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)は、ドンキホーテを例にして、社会学的な観点から、チェーンストアの進出が決して地方に画一性をもたらすものではない、ということを考察しています。最後に、松尾剛次『日本仏教史入門』(平凡社新書)では、仏教伝来のころや聖徳太子の古典古代から始まって、大きな活気となった鎌倉仏教の開花、江戸期の停滞を経て、明治初期の廃仏毀釈、そして現在へと我が国仏教史をコンパクトに後付ています。
最後に、今週の5冊を含めて、今年に入ってから新刊書読書は計101冊と去年に比べてちょっぴりスローペースながら、少しずつ追いついてきた気がします。何とか、年間200冊を少し超えるレベルには達するのではないかと考えています。

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まず、佐藤正広『数字はつくられた』(東京外国語大学出版会) です。著者は、一橋大学・東京外国語大学の研究者です。はしがきでタイトルの意味を述べていますが、「ねつ造」ではないという意味らしく、単にアイキャッチャーなのだろうと私は解釈しています。ですから、相次ぐ政府統計部局の統計改ざんとは関係ありませんし、そういった「期待」を基に読むのはNGだろうと思います。基本的に、我が国の統計史をひも解こうとしているのですが、統計に関係するグループとして5つを考えます。すなわち、統計学者、統計に関する意思決定を下す政治家、統計実務家、調査対象、統計利用者、です。これをムリヤリに2次元のカーテシアン座標に落とし込もうとします。そのあたりが第2章で取り上げられています。少なくとも、私は第5の統計利用者を第2の意思決定者と同一視するのはムリがあると考えますし、少なくともこの試みは明確に失敗していますから、これ以上考える必要はありません。むしろ、統計史としての資料集として考える方がいいと私は考えます。著者のオリジナルな主張も少なくありませんが、統計資料名を一覧にしているとか、調査票をそのまま転載している部分が「半分」は言い過ぎとしても、かなりのボリュームに上ります。その資料的な価値はあるといえます。ただ、極めて残念なのは2点あり、第1に、日本の統計の歴史であって、明治期に先進国から輸入された諸外国の統計とは何ら比較がなされていません。例えば、ウンベルト・エーコ『プラハの墓地』(東京創元社)では、当時のフランスでは統計局が情報部の一部門であるかのような記述があります。日本ではどうだったのか、一考に値する歴史の一場面だという気がするのは、私だけでしょうか。第2に、日本の統計の歴史を概観するとしても、日本の統計に関する組織上の無理解が目立ちます。私も経済官庁から一時的に総務省統計局に出向していただけで、それほど詳しくもないのですが、それでも、統計局の統計と各省庁の統計の違いくらいは理解しています。すなわち、2001年の中央省庁再編まで日本では当時の「省」は業所管であり、「庁」はそうではありませんでした。今では、防衛省とか、環境省とかが、業所管でない「省」なのですが、2000年まではそうだったわけです。統計にはその当時の組織上の特色が残っていることから、業を所管している省では、その業の統計、あるいは、その省の業務に関する統計を作成しています。典型的には、経済産業省の鉱工業生産指数とか、商業販売統計とか、財務省の通関統計、厚生労働省の有効求人倍率、などで、役所の所管する業に関する統計と、役所そのものが遂行している業務に関する統計です。他方で、多くの場合は、事業所ではなく一般家計に対する調査になるのですが、所管する業や業務に関係ない社会全体を俯瞰する統計は統計局で作成しています。典型的には、国勢調査とか、消費者物価指数とかです。ということで、結論なのですが、そもそも、分析する2次元モデルに無理がある上に、諸外国との比較がなく、しかも、日本における統計組織に関する基礎知識も十分ではないようなので、結論はあってなきがごときもので、それほど参考にもなりません。最後の最後に、しかも、製本が悪くてページがバラバラになってしまいそうな雑な作りです。私は何か新聞の書評で見て読んだのですが、決してオススメしません。

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次に、坂本信雄『京都発 地位経済の再考』(八千代出版) です。著者は、ノンキャリアながら、私の役所の先輩であり、京都学園大学での研究者としてご活躍でした。たぶん、私とは面識があると思います。ということで、京都学園大学は、今では、京都先端科学大学といって、亀岡市にあります。私自身は宇治市の出身なものですから、やや方向は違います。本書では、京都府や亀岡市などの経済動向や人口減少の影響、コロナと観光事業、NPO法人などによる市民活動、地方における公共サービスの行方、自治体における幸福度、などについてエコノミストや地方振興の立場からいろんな論点について議論しています。私はマクロエコノミストとして、ほぼほぼ地方振興には無関心であり、長崎大学に出向していた折には九州や長崎についてまったく見識がなくて、郷土愛に燃える長崎経済人などには辟易したものですが、さすがに自分の出身の関西に戻ってきて、それなりに地方経済には関心があります。一応、地域学会の会員でもあります。ただ、地方において将来不安があるのは財源です。日銀が政府の「子会社」であるかどうかはともかく、中央政府は国債を発行して中央銀行が市中から買い取ってくれれば、税収が不足してもインフレにさえならなければ、それなりの財源を確保することが出来ます。しかし、発券銀行を持たない地方公共団体はそうは行きません。財源を確保した上でなければ公共サービスの提供はサステイナブルではありません。ですから、本書ではスコープ外としていますが、京都市は深刻な財源不足に陥っており、2019年度決算では、いわゆる「将来負担比率」が190%を超えており、政令指定市20市の中で最悪です。ダントツといっていいかもしれません。最大の要因は京都市地下鉄です。料金がバカ高で、私も使い勝手が悪く感じていましたが、私の実感では、時間帯によっては、いわゆる「敬老パス」で無料で乗車しているお年寄りの方が多いくらいではないか、とすら見えました。加えて、小学生の虫歯治療費の全額助成とか、ムダに手厚い市民サービスが充実しています。市役所職員の給与水準が極めて高く、私は地元民ですので、府庁職員と市役所職員のご夫婦を知っているのですが、市役所の給与水準に不調職員の方がびっくりしていました。こういった支出が多くて、ムダなサービスがいっぱいですから、京都市の財政難も理解できます。段々と、脱線が激しくなってしまいましたが、ことほどさように、地方経済や地域振興には無知なもので、本書はとても参考になりました。

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次に、上原彩子『指先から、世界とつながる』(ヤマハ) です。著者は、ピアニストです。チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門でグランプリを獲得しています。小柄な体をめいっぱい使って、躍動するようなプレー・スタイルと記憶しています。そのエッセイです。ヤマハの教室から、東京のマスタークラスに通い、パリで生活してヨーロッパを舞台に活躍しながら、本書で私は初めて知りましたが、20代半ばで、いわゆる「できちゃった婚」で結婚して女の子3人の母親となり、それでもめいっぱいピアニストとして活躍しています。実は、私もピアノを習っていた経験があります。もっとも、私の場合は大学生の大人になってから習い始め、一番熱心に弾いていたのは30代前半で、在チリ大使館に赴任した折に88鍵フルスケールの電子ピアノを日本から地球の裏側まで持って行き、現地の音大教授に習っていました。でも、今となっては、自動車の運転とピアノの演奏についてはまったく自信がなく、私自身の満足感よりも周囲の迷惑の方が大きかろうと思いますので、決して手を出すまいと決めています。でもこういったピアニストのエッセイを読むのは大好きです。また、もう30年近くも前のことながら、ワルシャワに出張する機会があり、お土産でショパンの手の石膏像にとても心動かされながらも、自制心強く買わなかったことも思い出します。やや話が脱線しましたが、いずれにせよ、私はこういった世界的に活躍している芸術家のエッセイとか、あるいは、すでに引退した米国政治家の回顧録とかを読んで強く感じつのは、そのバイタリティ、というか、エネルギー溢れる活動ぶりです。私のような凡人にはとてもかないません。凡人の悲しいところで、私なんかは何をやっても世界レベルどころか日本レベルにも達しません。最後に、どうでもいいことながら、本書で「オヤ」と思ったのは、著者の中学生くらいの折の写真が何枚か収録されているのですが、メガネをかけています。スコアを見るのに必要だったのかもしれません。私も、先生が弾いて下さるのを後ろから見るというレッスンがあって、とてもスコアが見にくかったのを記憶していたりします。そして、私が知っているレッスン仲間の高校生の女の子で、「メガネをかけるくらいなら、ピアノを諦める」といって、実際にピアノレッスンをやらなくなってしまった人がいたりします。メガネとピアノ、お年ごろの女性には、もちろん、男性にも悩ましい選択なのかもしれません。本題に戻って、本書では、さまざまな作曲家の作品についての著者の感想めいた実体験談もコラムで収録されています。ショパンがやや軽く扱われているような気がしますし、リストは取り上げられていません。でも、ロシア派のピアニストらしく、チャイコフスキーをはじめとして、私のような初心者にはとても難しそうな作曲家が並んでいます。あまりにも当たり前のことですが、大きな差を感じてしまいます。

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次に、谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書) です。著者は、早大の大学院生のようです。本書では、ドンキに代表されるチェーンストアの出店が、地域の商店街と対比される形で、地方や地域の特色を減じ画一性をもたらすのではないか、という懸念に対して、ドンキのケーススタディによって反論しようと試みています。ただ、やや私の目から見て心配なのは、第1に、そういった地方色にマイナスなのはチェーンストアではなく、マスメディアではないのか、という気がするのですが、ソチラにはスコープが向いていないようです。第2に、本書のタイトルに象徴されるようにドンペンと回遊型の商品ディスプレーに特化した議論を展開していて、何を売っているかという商品ラインナップには目が向いていません。以上が、特に第2の点がエコノミストの私の目から見てやや心配な点です。ということで、本書で注目しているドンペンは、目立つということが主たる目的なのだろうと思いますが、本書では、思い切って拡大解釈して、レヴィ-ストロースの砂時計型形象まで持ち出して、内と外とを渾然一体とする作用を強調しています。このあたりは、作者の意図とともに、私にはよく理解できません。さらに、ジャングルのような商品ディスプレーといったドンキの特徴を羅列していき、本屋さんのヴィレッジ・ヴァンガードと対比させる形で、セミ・ラティス型にしかなり得ないヴィレヴァンとセミ・ラティス型にもツリー型にもなれるドンキの違いについても解説してくれます。ここはそれなりに理解できます。ただ、その昔に、ドンキに集まったDQNについては、現時点で掘り起こすのはムリがあります。そもそも、「DQN」は差別用語ではなかったでしたっけ、という危惧もあります。こういったさまざまな対象を持ってきてドンキの特徴を浮かび上がらせようとしますが、私の目から見て、ここまでは、むしろ、チェーンストア代表たるドンキが地方に対して画一性をもたらす懸念を増加させかねない主張に見えます。そして、私から見てドンキが唯一地方に画一性を持ち込まない、と見られる根拠は、いわゆる「居抜き」による買収を主とした店舗展開です。まったく何もないグリーンフィールドから新たな店舗を展開するのではなく、居抜きで買い取ってドンキにしてしまうわけですから、ドンキになる前のお店の特徴は一定残ることになります。ただ、居抜きの店舗展開をしないチェーンストアであれば地方に画一性を持ち込むことになるので、この議論はドンキをはじめとする居抜きの店舗展開をするチェーンストアだけに成り立つわけで、やや不安を覚えます。最後に、本書の著者は、小さいころにドンキの北池袋店に行って恐竜キングで遊んだ記憶から始めています。我が家の子供達でいえば、恐竜キングの1世代前のムシキングに当たります。しかも、私は2年前に完済に引越す前まで城北地区の川越街道近くに住まいし、ドンキの練馬店とか北池袋店には、ある種の懐かしさを覚えます。その前に青山に住んでいた折にはドンキ六本木店もよく利用しました。東京住まいであれば、ちょっとした大きなチェーンストアに行くのが、日常生活を少しだけ離れた家族の楽しみのような気がします。その目的地のひとつは、確かにドンキなのかもしれません。

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最後に、松尾剛次『日本仏教史入門』(平凡社新書) です。著者は、山形大学の名誉教授であり、専門は日本中世史、宗教社会学だそうです。本書は、タイトル通りに大陸から日本にもたらされた仏教の歴史をとてもコンパクトに取りまとめています。ということで、私は日本仏教を語る際には、自分の宗派である浄土真宗=一向宗の宗祖親鸞聖人の生きた鎌倉仏教がいつも気にかかるのですが、本書でも、最大のハイライトのひとつであり、いろんな意味で、とても常識的な日本における仏教史となっています。というか、私がほぼほぼ理解してい仏教史といえます。もちろん、私は専門外もいいところなので、勉強になった点はいくつもあります。まず、仏教伝来は末法の始まりを措定して552年であるとされ、当初は、国家鎮護の役割を持たされたというのは、中学校や高校で学ぶ通りです。まあ、疫病退散なんて、いまでも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対してアマビエ様を持ち出すくらいなのですから、日本の古典古代期にはそうだったんだろうと思います。そして、国家公務員と同じ官僧しかいない中で、鎌倉期には個人の救済が始まって、法然、親鸞、日蓮などが他力本願の宗派を開いたのに対して、道元と栄西が禅宗を中国から持ち込んだわけです。他力本願と自力の宗派が対比されています。ただ、浄土真宗の本願寺なんかは典型ですが、従来宗派と同じように武装し始めたのは鎌倉期から戦国の武家の世になったためであろうと私は考えています。自力・他力とも、いずれにせよ、天下国家を救うのではなく、自分という個人を救うという観点は重要であろうと私も思います。そして、本書では『歎異抄』を引いて、「ただ親鸞1人がためなり」ということを強調しています。それから、聖と俗の境目については、浄土宗と浄土真宗で少し差があり、私は在家の方から見てこの宗派2つにほとんど違いはないと考えているのですが、僧の側に違いがあります。すなわち、浄土宗の僧侶が得度して戎を守らねばならないのに対して、浄土真宗は僧侶の受戒は必要ないのではないかと思います。まあ、専門外ですから、私の理解が間違っているかもしれません。そして、徳川期には寺請制度とか檀家制度によって、典型的には仏教が大きく堕落して、現在の葬式仏教になる方向性が明らかになったわけです。ですから、私のような専門外の通俗的な理解では、その反動もあって明治期の廃仏毀釈が幅広く実行された、ということになります。ただ、本書ではその徳川期にも仏教界には一定の進歩が見られた、と指摘しています。すなわち、戒律復興運動や釈迦への回帰が志向されています。僧だけのレベルではなく、俗人にも十善戒が説かれたりしています。このあたりは、さすがに、私も知りませんでした。また、ほのかにしか知らなかった点で、隠元禅師が日本に持ち込んだのは黄檗宗という禅宗の一派だけでなく、その名の通りのインゲン豆や普茶料理などがあったとは、明示的な理解は初めてです。江戸末期から昭和期にかけての新宗教として、神道系の天理教、仏教系の創価学会が正面から取り上げられており、「個」を超える絆の重要性を本書では指摘していて、それなりの影響力が想像されます。仏教の難しい教義は最小限に止められており、さまざまな 仏教の影響力を知る上で参考になります。

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2022年6月 3日 (金)

カミさんと大学の交響楽団のコンサートに行く!!!

今夜は久しぶりにカミさんとおでかけでした。立命館大学交響楽団の定期演奏会に行きました。場所は、京都市地下鉄の北山駅からほど近い京都コンサートホールの大ホールでした。演目は以下の2曲です。交響楽団の演奏ですので、当然ながら、後者のドヴォルザーク 交響曲第8番がメインになります。

  • ブラームス: ハンガリー舞曲集より抜粋
  • ドヴォルザーク: 交響曲第8番

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上の画像はポスターです。会場は撮影禁止でしたので、悪しからず。
実は、私は前の長崎大学のころにも、長崎交響楽団のコンサートには時折行っていました。というのは、何と申しましょうかで、同僚教員が、というか、学部長も経験されて、私の在任中に定年を迎えられた大先輩が楽団のメンバーでオーボエを吹いていたので、研究室を回って来てチケットを売りつけられてしまうのです。私は東京に家族を残して長崎に単身赴任でしたから、1枚しか要らないというのに2枚買ってくれとしつこくせがまれた記憶があります。まあ、昔の思い出です。それにしても、長崎では市民交響楽団だったのですが、関西に戻ると、京都市交響楽団は昔から有名ですし、こうして我が勤務する大学にも交響楽団があるとは、そして、年2回のペースで100回を超える定期演奏会を開催しているとは、それなりに感激しました。チェコ・ロシアや東欧などの作曲家をベースに演奏しているようで、とてもよく鳴るオーケストラでした。

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2022年6月 2日 (木)

Sustainable Development Report 2022 を読む!!!

本日、6月2日、サックス教授ほかによる Sustainable Development Report 2022 が明らかにされています。
それほど幅広くもありませんが、私が見た範囲では朝日新聞が「日本のSDGs達成度、世界19位に低下 増えた『最低評価』」と題した記事で報じています。我が国のランキングに着目しているわけですが、それもそのはずで、500ページ近いリポートのうちで400ページあまりが Country Profile になっています。国際的なこういったリポートに注目するのは私のこのブログの特徴のひとつですので、Exective Summary からグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから SDG Index Score over time, world average を引用しています。見れば判るように、2010年から2021年までです。SDGsは2015年から始まっていますので、その少し前からプロットしています。グラフでは不明瞭なのですが、リポートでは、2021年のSDGスコアはわずかながら2020年から悪化したと報告しています。すなわち、"The average SDG Index score slightly declined in 2021, partly due to slow or nonexistent recovery in poor and vulnerable countries." ということであり、要するに新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響です。低所得国においてゴール1の貧困とゴール8の雇用と成長がCOVID-19パンデミック前の水準に回帰していない、と指摘しています。すなわち、"Multiple and overlapping health and security crises have led to a reversal in SDG progress. Performance on SDG 1 (No Poverty) and SDG 8 (Decent Work and Economic Growth) remains below pre-pandemic levels in many low-income countries (LICs) and lower-middle-income countries (LMICs)." ということです。

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続いて、上のグラフはリポートから Governments' Commitment and Efforts for the SDGs Score (pilot version) versus SDG Index Score を引用しています。元のグラフにはありませんが、やや見にくいので、日本のところに下向きの青矢印を追加してあります。当然ながら、政府のコミットメントとSDGスコアの間には緩やかな正の相関が見られます。"policy efforts and commitments supporting the SDGs vary significantly across countries, including among G20 countries. Ambitious and sound national targets, strategies, and plans are crucial to turning the SDGs into an action agenda." ということです。

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最後に、上の画像はリポートp.252から Japan country profile を引用しています。世界第19位というランクなのですが、特にゴール5のジェンダー格差が低スコアであり、加えて、ゴール12や13以下の環境関係のスコアが低くなっています。

ちなみに、リポートpp.14-15 の Table 2.1 2022 SDG Index ranking and score では世界163か国のランキングとスコアが明らかにされています。1位フィンランド、2位デンマーク、3位スウェーデンと上位は北欧諸国が独占しています。日本は昨年の18位から19位にランクダウンしていますが、一応、それでもアジア域内ではトップだったりします。

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2022年6月 1日 (水)

法人企業統計に見る企業収益は過去最高に迫り利益剰余金への課税の必要を考える!!!

本日、財務省から昨年1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+7.9%増の360兆7941億円、経常利益も+13.7%増の22兆8323億円、製造業・非製造業とも2ケタ増となっています。そして、設備投資は+3.0%増の14兆9040億円を記録しています。季節調整済みの系列で見ても、売上高、経常利益、設備投資とも軒並み前期比プラスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+3.4%増となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

1-3月期の設備投資、前年同期比3.0%増 法人企業統計
財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資額は前年同期比3.0%増の14兆9040億円だった。プラスは4四半期連続。このうち製造業は5.9%増、非製造業は1.6%増だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額(金融業、保険業を含む)は、前年同期比で4.5%増だった。
全産業の売上高は前年同期比7.9%増の360兆7941億円で、うち製造業が9.0%増、非製造業は7.5%増。経常利益は13.7%増の22兆8323億円で、うち製造業が18.4%増、非製造業は10.9%増だった。
今回の結果は、8日公表の1~3月期のGDP改定値に反映される。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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ということで、法人企業統計の結果について、今年2022年1月以降の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)オミクロン型変異株の感染拡大があったにもかかわらず、かなり堅調であったと考えるべきです。季節調整済みの系列で見て、売上は製造業・非製造業ともに増収であり、経常利益も製造業では増益でした。さすがに、非製造業はCOVID-19オミクロン型変異株の感染拡大により減益でしたが、製造業と合わせての経常利益はほぼ横ばいでした。上のグラフから明らかなように、売上高や設備投資は、いわゆるリーマン・ショック直前に記録した過去最高水準にまったく届いていませんが、経常利益だけはリーマン・ショック前の水準を十分に超えており、過去最高のレベルに匹敵するくらいの勢いであったことは確かです。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻、さらに、資源高や円安振興も含めての物価高騰、半導体をはじめとする製造業の部品供給の制約、今日から解除されたとはいえ、中国におけるロックダウンの影響などなど、4~6月期以降の企業活動は引き続き下振れリスクの方が大きいと考えられます。なお、設備投資については、これも季節調整済みの系列で前期比+0.3%増を記録しています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、人件費が長らく停滞する中で、経常利益はほぼほぼ過去最高水準に迫っています。ですから、この利益剰余金にも本格的に課税する必要性が高まっていると考えるべきです。

なお、本日の法人企業統計を受けて、来週6月8日に内閣府から1~3月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に下方修正されるであろうと考えていますが、大きな修正ではなかろうと予想しています。この2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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