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2022年6月29日 (水)

順調な持ち直しの動きが続く5月の商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.6%増の12兆3880億円、季節調整済み指数でも前月から+0.6%増を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

小売販売額、5月3.6%増 行動制限なく百貨店が前年超え
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比3.6%増の12兆3880億円で、3カ月連続の増加となった。3年ぶりに新型コロナウイルスによる行動制限のない大型連休となり、百貨店などで前年を大きく上回った。経産省は基調判断を「緩やかに持ち直している」に引き上げた。
百貨店は前年同月比55.3%増の4301億円となった。コンビニエンスストアは3.5%増の1兆78億円だった。経産省は「行動制限が解除され、時短営業の反動で消費が伸びた」との見方を示した。
スーパーは1.1%減の1兆2507億円、家電大型専門店は3.3%減の3704億円、ホームセンターは3.9%減の3101億円だった。小売業販売額を季節調整済みの前月比で見ると0.6%上昇した。

よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、ロイターがまとめた市場の事前コンセンサスによれば、統計のヘッドラインである前年同月比で+3.3%増でしたので、実績の+3.6%増はホンの少しだけ上振れていますが、まあ、予想の範囲内といえます。小売販売は3月21日にまん延防止等重点措置が終了したことに伴って、直近の4~5月統計を見る限り、内需にサポートされた回復を示していると私は受け止めています。とくに、5月統計にはゴールデンウィーク期間が含まれますので、行動制限の有無はそれなりの重みを持ちます。季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、5月統計では、この3か月後方移動平均が+1.1%の上昇となり、基調判断を「持ち直しの動き」から「緩やかに持ち直している」に半ノッチ上方改定しています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、対人サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、物販よりも飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。ただし、逆に、行動制限が撤廃された現段階では、リバウンドも大きい可能性は否定できません。加えて、燃料小売業の販売額は前年同月比で+15.0%増なのですが、かなりの部分は物価上昇による水増しが占めると考えられ、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これらの2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりもさらに現実的に見る必要が十分あります。

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