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2022年7月12日 (火)

企業物価指数(PPI)に見る物価高の原因は何なのか?

本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+9.2%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価、6月9.2%上昇 民間予測上回る
日銀が12日発表した6月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は113.8と、前年同月比9.2%上昇した。前年の水準を上回るのは16カ月連続。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う供給制約への懸念から、エネルギーなどの資源価格が高止まりしている。24年ぶりの円安も物価高に拍車をかけた。
上昇率は民間予測の中央値である8.9%を0.3ポイント上回った。6月の指数は調査を開始した1960年以降で最も高かった。5月の上昇率は先月発表時点の9.1%から9.3%に、4月の上昇率も9.8%から9.9%に上方修正された。
国内ではエネルギー価格の高止まりを背景に、企業物価の上昇が続く。指数の5%以上の上昇は12カ月連続で、10.4%の上昇率を記録した1980年12月以来の高い伸びを維持している。前回の上昇局面では1970年代に2度発生した石油危機の影響で、高い企業物価の伸びを記録していた。
公表した515品目のうち、上昇したのは8割にあたる409品目だった。上昇率を品目別に見ると、原油価格上昇の影響を受けやすい石油・石炭製品(22.2%)や化学製品(12.5%)、電力・都市ガス・水道(28.2%)などが水準を押し上げた。飲食料品(4.6%)など、消費者に近い品目にも値上げが波及している。
6月には外国為替市場で円が一時、1ドル=137円に達し、24年ぶりの円安水準を記録した。円ベースの輸入物価の上昇率は46.3%と、ドルなど契約通貨ベースの25.8%を上回った。足元の円安が企業の物価を押し上げている。一方、円ベースの輸出物価の上昇率は19.1%、契約通貨ベースは5.9%にとどまった。
外国為替市場で円は足元で1ドル=137円前後で推移する。利上げを進める米国と大規模緩和を続ける日本の金融政策の違いで金利差が広がり、金利の高いドルにマネーが流れ込んでいる。米連邦準備理事会(FRB)はインフレ対応でさらなる利上げを見据えており、円安が企業物価を押し上げる構図が続きそうだ。
2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は長期化しており、エネルギー価格は当面、高止まりが見込まれる。元売り会社への補助金支給など、政府の「激変緩和措置」はエネルギー価格の押し下げに作用したが、前年同月比では上昇分を補えなかった。
5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年同月比2.1%上昇するなど、企業の物価高騰の影響が家計にも及びつつある。日銀が掲げる物価2%の物価安定目標に達しているが、インフレは一時的として現在の金融緩和方針を堅持する構え。
物価変動の影響を除いた5月の実質賃金は、前年同月比1.8%減と物価上昇による賃金の目減りが鮮明になっている。春季労使交渉(春闘)での平均賃上げ率も2%程度にとどまっており、景気後退の懸念が高まっている。

とても長くなりましたが、いつもの通り、包括的に取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+8.9%と見込まれていましたので、実績の+9.2%はやや上振れしています。PPI上昇の要因は主として3点あり、とりあえずの現象面では、コストプッシュが大きな要因となっています。すなわち、第1に、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格の上昇、さらに、第2に、我が国製造業のサプライチェーンにおける半導体などの供給制約が上げられます。第3に、コストプッシュとデマンドプルの両面から、為替レートが減価している円安要因です。
実は、先月、大学で開催された講演会でマルクス主義経済学から見た金融政策の量的緩和について、大きな発見がありました。すなわち、石油をはじめとする資源価格高騰は、直接にはロシアによるウクライナ侵攻が目立っている一方で、バックグラウンドで大きく緩和が進んだ金融政策が資産としての一次産品価格の上昇を引き起こしている、という見方です。これに従えば、金融緩和による通貨供給増が一般国民の家計から通常の財・サービスに向かうのではなく、資産市場に流れ込んで資産価格を引き上げているわけです。株式や債券をはじめとする金融資産、地価に支えられたマンション価格、そして、石油をはじめとする一次産品価格も同様、ということです。ですから、逆に、石油をはじめとする資源価格、すなわち、一次産品価格を引き下げようとすれば金融政策を引き締めることが必要になりますが、問題はどの国の金融政策を引き締める必要があるか、という点です。直感的に、日本ではなく米国だろうと私は考えています。何とも、評価の難しいところですが、米国が金融引締めを続ければドル供給が伸び悩み、結果として、石油という資産の価格が低下する可能性が十分あります。少なくとも、世界的に石油需要が大きく増加しているというわけではありませんから、ドル供給を引き締めることによって石油という資産に流れるドルを縮小させれば、おそらく、通常の財・サービスよりも資産価格はボラタイルでしょうから、一気に石油価格が低下する可能性もあります。ヨソの引締めによって日本が石油価格低下という恩恵を受ける可能性もあったりするかもしれません。

私は決してマルクス主義経済学に詳しいわけではなく、官庁出身のエコノミストとして主流はど真ん中だと考えているのですが、石油を資産と考えれば金融緩和によるマネーが資産である石油価格を押し上げた、という視点は成り立つような気がします。う~ん、マルクス主義経済学って、こういう考え方をするんだっけ、と改めて知らされました。

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