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2022年7月23日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとして新書3冊を含めて計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通りです。
今週の5冊を含めて、今年に入ってから新刊書読書は計126冊となりました。年間200冊のペースを少し超えているような気がします。

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まず、福田慎一[編]『コロナ時代の日本経済』(東京大学出版会)です。編者は、東京大学経済学部の研究者であり、日本におけるマクロ経済研究の第一人者の1人といえます。編者や出版社からして学術書なのでしょうが、それほど小難しげな内容ではなく、幅広い読者にオススメできます。序章と終章を編者が執筆していて、それ以外は2部構成となっています。第Ⅰ部では経済政策を取り上げて、財政政策、競争政策、地域金融の3章を置いていて、第Ⅱ部では日本経済の現状分析というのか、サプライチェーン、雇用とリカレント教育、そして、気候変動やサステイナビリティの3章となっています。第2章の競争政策については、確かにコロナ禍で在宅勤務が進むなどのデジタル化が加速したとはいうものの、ややコロナにこじつけた感がないでもありませんが、ほかの5章については、確かにコロナによって新たに提起された諸問題であろうと私は受け止めています。中でも、私が注目したのは、やっぱり、第Ⅱ部のいくつかの章です。悪いのですが、第Ⅰ部の初っ端の財政政策では、いかにも主流派エコノミストの観点から財政赤字削減を論じ立てられると、やや方向性が違いすぎると感じていしまいました。加えて、終章では福田教授の従来からの主張なのでしょうが、コロナ禍で傷んだ日本経済になお「痛みを伴う構造改革の必要」を主張しています。そこまで財政赤字削減や緊縮財政が重要なのでしょうか。私の経済に対する見方とはかなり方向性が異なるとしかいいようがありません。ということで、第Ⅱ部に着目し、まず、サプライチェーンにおけるリスク管理なのですが、これについては決定打はありえません。コロナに限らず気候変動の下で天災や異常気象によるリスクも大きくなってきている印象があり、雇サプライチェーンの維持管理のみならず、自社の生産や流通のマネジメントにもプランBによるカバーなども考えられるべきなのでしょう。そして、私がもっとも注目したのが、雇用とリカレント教育です。もっとも重要なコロナの経済的帰結のひとつは産業構造の変化です。付加価値ベースの産業構造とともに、雇用構造も大きく変化しました。高校でも教えているペティ-クラークの法則に沿って、農林水産といった第1次産業から、製造業などの第2次産業、そして非製造業、というか、サービス業の第3次産業へと付加価値生産や雇用者が時とともにシフトします。そして、最先端産業のひとつが極めて労働集約的な対人サービス、典型的には、ホテルやレストランなどのサービス業であり、コロナによるダメージがもっとも大きかった分野のひとつです。しかし、ホテルやレストランで対人サービスに従事していた人材を、人手不足だからといってデジタル産業で活躍してもらう、というのは簡単ではありません。ミスマッチが大き過ぎます。いわゆる職業訓練も重要なのですが、何らかの大規模な実践的な教育過程が必要になります。しかし、現状ではリカレント教育とは、あくまで私が見る範囲ですが、かなり実践的な色彩が薄い気がします。私が知る限り、もっとも早くからリカレント教育に取り組んだのは日本女子大学で、現状でももっとも進んでいる気がしますが、日本女子大学クラスの実践的なリカレント教育に取り組んでいる大学はとても少ない、という印象を私は持っています。私の単なる「印象」が間違っていることを願います。

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次に、福田ますみ『ポリコレの正体』(方丈社)です。著者は、ノンフィクション・ライターだそうです。タイトル通りに、PC、とか、「ポリコレ」と略称されるポリティカル・コレクトネス、すなわち、政治的に正しい言葉の使い方、に関して、大きな疑問を提起しつつ、ポリコレ以外のリベラルな運動全体を疑問視しています。構成は実に巧みで、確かに大きな疑問を生じる可能性の高いトランスジェンダー女性の運動能力から始めています。トランスジェンダー女性ですから元は男性であったわけです。オリンピックをはじめとしてさまざまな運動競技が男女別に分かれて競っているのは、男性の方が運動能力が高いと一般には考えられているからであって、男性からトランスジェンダーした女性の方が運動能力が高い可能性があるわけで、そのトランスジェンダー女性を女性枠で競技させることの是非から説き始めています。それから、LGBT一般にお話を拡大し、かつての誰かさんのように、著者の気に食わないポリコレを重視する人達を「反日」のレッテルを貼って、それでお仕舞です。その中に、チラリとブラック・ライブズ・マター(BLM)も忍び込ませたりしています。加えて、日本では少し反応の薄い宗教も含めていたりします。例えば、米国のオバマ元大統領は「メリー・クリスマス」とはいわずに、「ハッピー・ホリデイ」のカードを送っていたとかで、ポリコレだとメリー・クリスマスと言えなくなる、というような示唆をしています。私自身は宗教にはそれなりに敏感で、私が死んだ後には「冥福」という言葉は使って欲しくないと考えています。私は浄土真宗の門徒ですので、死んだ瞬間に浄土に生まれ変わるわけで、冥土の幸福なんて言及しないで欲しいと考えています。ということで、話を本題に戻すと、本書はかなりお粗末なリポートだと私は受け止めました。要するに、ポリコレを重視する向きとか、LGBTに寛容な人とか、BLMを支持する人達に、左翼、リベラル、マルクス主義などのレッテルを貼って、それで著者は満足しているようです。著者と考えを同じくして、さらに、同じ論証のレベルで満足できる読者であればOKなんでしょうが、私には疑問だらけでした。そして、ノンフィクション・ライターらしく、何人かにインタビューしているようなのですが、左翼とか、マルクス主義のレッテルを主張するうちの1人は、今話題の統一協会、現在は名称変更して、世界平和統一家庭連合の機関紙である「世界日報」の編集者だったりします。もう1人は私のよく知らない大学の外国人研究者です。この2人にインタビューした結果を著者の主張のバックグラウンドに置いています。統一協会の関係者が「ポリコレは左翼だ、共産党だ、マルクス主義だ」といったインタビュー結果を引いた主張にどれだけ信頼を置けるのかは疑問です。ただ、私はこういった私自身の方向性の反対を主張する本は、可能な範囲で読んでおくべきかと考えています。本書の他には、例えば、2019年10月に読書感想文をポストしたマーク・モラノ『「地球温暖化」の不都合な真実』なんかもそうです。私自身の主張は極めてクリアなのですが、一応、反対意見にも目配りが必要です。本書はそういう意味の読書でした。

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次に、永濱利廣『日本病』(講談社現代新書)です。著者は、第一生命経済研のエコノミストです。その昔に「英国病」というのがあって、かなり先進国病に近いニュアンスで使われていたようなところがありました。すなわち、キャッチアップ型の成長が難しい段階に経済社会の発展段階が達した、というものです。しかし、本書では「日本病」とは、低所得・低物価・低金利・低成長の4低をもって「日本病」の特徴としています。そして、この4低を解き明かして、現在の金融緩和を継続扨せつつ、新たに財政支出の拡大をもって、言葉としては出現しませんが、「高圧経済」を実現し、「日本病」の克服を目指しています。まず、そもそも論で、1990年代初頭のバブル崩壊後の政策対応で、もっともマズかったのは金融機関の不良債権処理を再優先課題として取り組んでしまって、大規模な金融緩和が遅れた点を指摘しています。まったく、その通りだと思います。金融緩和による景気対策がなく、加えて、財政政策による需要拡大も大きく遅れて1990年代後半になり、結局、プルーデンス政策としての不良債権処理が最重要課題とされてしまい、しかも、政府による公的資金投入ではなく、不良債権の切離しによる処理が優先されましたので、いわゆる貸し渋りや貸し剥がしが横行したわけです。それに対して、リーマン・ショック後の米国では当時のバーナンキ議長の指導力の賜か、大規模な金融緩和を素早く実施し、かなりの程度に景気回復を軌道に乗せました。もちろん、サマーズ教授らによる「長期不況論」は根強く残っており、さらに、2020年からは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が経済社会に大きなダメージを及ぼしましたから、低成長が継続しているという見方は根強く残っています。また、所得という点に関しては、本書では韓国における最低賃金の引上げを例に上げています(p.20-21)。最低賃金については、ムリに引き上げれば負担力ない中小企業の倒産が増えたり、生産性低い労働者の間で失業が発生したりという伝統的な見方もあって、議論のあるところですが、不平等や貧困の解決には有効という実証結果も出てきており、日本でも議論が深まることを期待しています。特に、本書の結論では一定の留保が必要と私は考えます。第1に、欧米での格差の拡大が高所得層のさらなる所得増によってもたらされている一方で、日本では逆に低所得層の所得の伸び悩みから格差が拡大し貧困が深刻化しています。本書では日本の「総貧困化」を強調するあまり、この点が軽視されています。ですから、本書での主張、すなわち、アベノミクスでは金融政策は成功したが、財政政策が緊縮に運営されたのでデフレ脱却には力不足だった、という点は私も同意しますが、財政政策の中でも闇雲な財政支出拡大ではなく所得の再分配に十分配慮した財政政策が必要と私は考えています。アベノミクスが失敗したのは財政政策が緊縮だったからというのは否定しないものの、財政政策の中でも分配政策が欠けていたから、というのが最大の要因だと私は考えています。第2に、本書の結論のひとつになっている雇用の流動化の促進については疑問があります。この雇用流動化は、本日つけの朝日新聞のインタビューでも著者は繰り返して主張しています。しかし、雇用の流動化は、現時点までの経験でいえば、本書で主張されているように、高生産性労働者が高賃金職へ移動することを容易にする道を開くわけではなく、逆に現在まで一貫して賃金切下げという結果をもたらしてきました。加えて、雇用の流動化が進めば、いわゆるデスキリング deskilling = 熟練崩壊にもつながりかねません。従って、ここまで非正規雇用の割合が拡大した中で、雇用の流動化をさらに進めるべきかどうか、私は大きな疑問を持っています。

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次に、保坂俊司『インド宗教興亡史』(ちくま新書)です。著者は、中央大学の研究者であり、専門は比較宗教学、比較文明論、インド思想だそうです。私は仏教徒です。それも、浄土真宗の門徒です。仏教はインドに由来することは多くの日本人が知っていることと思いますが、同時に、英国の植民地となったときのインドはムガル帝国というイスラム国家でしたし、現在はヒンズー教徒が多い、というのもかなりの程度に知られているのではないかと思います。すなわち、何がいいたいのかというと、インドでは宗教的な変遷がそれなりに繰り返されてきた、ということです。それはそれで、産業革命以前の先進国であった、という意味なのかもしれませんが、同時に産業革命以前の先進国であった中国はインドほどの宗教的な変遷はなく、中国に由来する大規模な宗教も、せいぜいが道教くらいではないか、それも、世界的なレベルでの宗教には達していない、という気がします。世界的な大宗教といえば、欧米先進国のキリスト教、南アジアから東南アジア、さらに、東アジアにかけての仏教、中東や北アフリカ諸国、あるいは、インドネシアとマレーシアのようなイスラム教、の3宗教があり、ディアスポラで世界に拡散したユダヤ教も4番目に入れる人がいるかも知れません。本書におけるインド宗教概念はp.37の図に明確に示されています。そして、私のような専門外のものからすれば、とても新鮮だったのは、インドに由来する仏教はインドでは実はバラモン教化し、バラモン教に教義や儀礼とともに吸収され、そのバラモン教はヒンズー教に進化発展した、という見方です。それらとは独立に、イスラム教のシク教、さらに別に、ジャイナ教などについても不勉強にして、本書で改めて教義について知ったくらい、私は宗教に関してはシロートですので、実に新鮮なインドにおける宗教の変遷を勉強した気になりました。私が宗教に関して不勉強なのは、圧倒的に他力本願の浄土宗の門徒であるからです。「南無阿弥陀仏」と念仏すれば、それだけで輪廻転生から解脱して極楽浄土に生まれ変われる、というお気楽な宗教ですのでそれ以外の宗教には目が向きません。ですから、子供達が大学に入学した際には3点だけ「ヤメておいた方がいい活動」に関して注意を垂れています。すなわち、第1に宗教については手を出すべきではなく、浄土真宗の門徒で満足しておいた方がいい、ということです。もちろん、子供達の信教の自由を侵害しようとする気はありませんが、安倍元総理の暗殺で話題になっている統一協会なんてのが、今でも大学では活動していたりします。第2に、マルチ商法の勧誘が来たら、逃げられると自信があれば手を染めてもいいが、友達を失うだろうからヤメておいた方がいい、第3に、学生運動は信念を持って取り組むのであれば反対はしない、ということです。宗教については、私はその程度の知識ですので、インドの宗教に関してとても勉強になった読書でした。最後に、例の安倍元総理の暗殺に関する報道などで「統一教会」という書き方を見かけますが、私は統一協会だと考えています。というのは、下村文部科学大臣の時に名称変更を許可された世界平和統一家庭連合の旧称は、世界基督教統一神霊協会であり、略称にするのであれば最後の2文字はカルトならざるキリスト教と紛らわしい「教会」ではなく、「協会」とすべきと考えています。なお、日本基督教団の「統一協会に関するご相談について」と題するサイトでも「統一協会」と表記されていることを付け加えておきます。

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最後に、笹山敬輔『ドリフターズとその時代』(文春新書)です。著者は、たぶんオーバードクターの演劇研究者です。タイトル通りに、ドリフターズ(ドリフ)に関して論じています。何といっても、1970年代から80年代はじめにかけてのテレビ番組「全員集合」が圧倒的な記憶にあります。そして、本書で論じるところでは、少なくとも志村けんが加入する前までは、ドリフは明らかに音楽バンドであり、私でも知っているところですが、ビートルズが初来日した際に武道館で前座バンドのひとつを務めています。ただ、志村けんはミュージシャンではありません。ということで、コミック・バンドとしては、ドリフの前の高度成長期に活躍したクレイジー・キャッツがあまりにも有名で、まさに、そのラインでドリフも活動を始めています。戦前・戦中には敵性音楽として禁止されていたジャズやハワイアンなどの米国の音楽なのですが、戦後米軍が進駐してきて、ダンスホールやナイトクラブなどで一気に需要が高まります。そして、日本でもこういったバンドが活動を始め、その中で音楽とともにコミカルなコントなども入れた活動も見られ、日本国内でも人気を博するわけです。時はちょうど映画、さらにテレビといった映像が音声だけのラジオに代わって前面に出た時代です。そして、ドリフと同じ時代にコント55号が出現し、お茶の間の人気となります。萩本欽一なわけです。そして、本書では、コント55号や萩本欽一は浅草的なアドリブで進めるコント、ドリフはきっちりと計算され尽くしたアレンジに基づくコント、と見なしています。加えて、ドリフではリーダーたるいかりや長介の絶対的・独裁者的な存在にも着目しています。そして時代が流れて、1980年代には土曜日の8時という同じ枠でドリフの「全員集合」と北野武や明石家さんまなどの「ひょうきん族」が視聴率を競って激突するわけです。「ひょうきん族」がコスチュームにも工夫したコントを繰り広げたのに対し、ドリフの「全員集合」では生活や学校・職場などに密着したコントが展開されます。このあたりの本書の対比も見事です。そして、荒井注に代わって加入した志村けんがドリフの新たな時代を切り開き、いかりや長介に取って代わって21世紀には「喜劇王」の立場に上り詰めた、と評価しています。もちろん、2020年のコロナ感染拡大の初期に志村けんは亡くなります。我が家の子供達は「バカ殿様」が大好きでした。私もDVDを買ったりして、大いに楽しみました。まったく、惜しい人物が亡くなったものだと私も思います。

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